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《ネタバレ》 愛人を作って逃げたクソオヤジが末期がん。母親は「くたばる瞬間のミジメなオヤジの顔を写真で撮ってきて見せろ」と姉妹に命令する。ふつうはありえない。しかしこの姉妹がとにかくユルイ。「そんなの面倒だよ」と意味不明なことを言い出す。姉妹の醸し出すユルイ空気が美しい自然風景と重なって、絶妙な癒し効果を生んでいたと思う。姉の設定は水商売の女、妹は不登校生徒、ろくでもない子供だという設定にしているが、物語がすすむにつれて、この2人が母親からどのように育てられたかが分かってくる。その象徴が火葬場へ向かうシーン。「私たちはお母さんから人を恨むような育て方はされていない」「私たち2人はお父さんを恨んでいない」ということに気が付くシーン。このシーンはクソオヤジを恨んでいないという事実よりも、むしろ姉妹が母親からどのように育てられたのかということにはじめて気が付いたことに重点が置かれている。母親の無限の愛情を再確認する大切なシーンだ。しかし火葬場で姉がくたばったオヤジに対して「オヤジ、アンタには感謝していないけど恨んでもねえぜ」と言っていたことでもわかるように、けっして2人はオヤジに対して愛情が芽生えたわけではない。そこは力説しておきたい。ラスト間際で宝くじの売店で働く母親を眺める姉妹のシーンが素晴らしい。夢を買うよりコメを買うと豪語していた母親、1日も休まずに汗水たらして働く姿─、カッコ悪い母親だと思っていた。しかし今自分たちがこうやってまっすぐに誰も恨まず、妬まず、素直に生きていられるのは母親のおかげなのだ。久しぶりに泣いたと思う。それと笑いのシーンが意外と多い。深刻になりがちなストーリーだが、姉妹が道端の人に「いま、ヒマですか?早くしないとお父さんが焼かれちゃうので火葬場に連れてってくれますか?」などユルさ加減が絶妙だ。ラストで母親がクソオヤジの骨を川に放り投げて「テメエなんて食われてしまえ」と言ったら本当に魚に食われてしまうシーンがシュールで最高でした。映像は終始美しいです。
【花守湖】さん [地上波(邦画)] 8点(2014-10-25 23:06:07)(良:1票)
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