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《ネタバレ》 ひとことでいえば愚直で純粋な映画。フランスの慧眼によって表舞台に出てこなければ一生お目にかかることができなかった映画。観客のノスタルジーを刺激する映像がとても美しかった。私のように今でもこういう場所の近くで住んでいる人間にとっては、かなり痛い映像でもある。ちょうど文化大革命期の中国において、反革命分子の子が再教育のために、奥深い山村へ飛ばされる、そういう場所の映像を思い出してしまった。都会の人間にはさぞかし癒される光景だろうが、実際にそこに暮らす人々にとっては、吉幾三の歌ではないが切実な問題なのです。過疎化は過去の遺物ではない。スズムシの泣き声は都会暮らしの人間にはさぞかし風流だろう、しかし私の住む場所では、スズムシだけではなく、近くの田んぼでカエルまでがゲロゲロ鳴いている。ちょうど「カサブランカ」という映画において、兵士たちがドイツ国歌とフランス国歌を張り合うように歌う名シーンがあるが、それと同様にスズムシとカエルが競い合うようにハーモニーを奏でている。嫌になってくる。家族構成も新鮮だった。無職で無気力なダメオヤジと、すぐに逝ってしまいそうなバアさんがいる。これで老人がボケたら目も当てられない大惨事になるのは火を見るより明らかだ。都会ならば一瞬で家族崩壊であろうシュチエーションでも、田舎ではそう簡単には壊れない。俳優陣は9割が素人。まったく演技せず、素で喋っているので、もごもご何を言っているのかよく分からないけど、特に理解する必要もないとおもう。そういう映画じゃない。なにかを感じる映画です。鉛色の空色や、食卓の場面で開けた障子の合間に見える山々の頂が目線の位置にあること、充分に共感できた。久しぶりに見ごたえがある映画と出会えたと思っている。
【花守湖】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-09-15 20:30:58)(良:1票)
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