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「世界でもっとも美しい50人の女性」にも選ばれたセロン。ただし美人がブスに変わったことだけが見所の映画では決してないと思う。 実話では、アイリーンの精神的な心の支えとなったセルビーはもっと悪人だった。この映画の宣伝文句「なぜ愛を知ってしまったのだろう?」という台詞からも分かるようにセロンの存在はこの映画に限っては、アイリーンの殺人動機の1つとして考えられて人物像が作られている。ここまで「飢えた愛」に焦点を当てられたのは、女性の監督だからかもしれない。アイリーンの過去は、精神障害の父親の自殺や、アル中の母親が育児放棄、それに近親相姦の繰り返しなど、たしかに不幸はあったが、だからといって 「生きるためには娼婦になり人を殺すしか方法がない」とは思わない。思わないのだけど、そんなつまらない常識を殺人犯のアイリーンにぶつけて「あなたの考えは間違っていますよ、同情の余地なんてないですよ」なんて言うつもりも、さらさらない。この映画を褒めたいのは、モンスターである主人公の行動を肯定もしていないし否定もしていないところ。 悪い家族環境が悪い人間を作ることはよくあるが、中にはそういう劣悪な環境から抜けだして光のある道に進める人も大勢いる。 アル中の父親から何度も殺されそうになったり、母親が父親を射殺するという経験をもつシャーリーズ・セロンがその1人ではないだろうか? もしかしたら彼女は、自分も一歩間違えればアイリーンと同じような売春婦の道、悪の道に突き進んでいたと思っていたのかもしれない。 そして頑張れば再生できたかもしれないのになぜアイリーンはモンスターになってしまったのだろうかという無念の思いもあったのでは?セロンの執念にも似た演技を見ていると、彼女が持っている重い過去がアイリーンを通して伝わってくる。美しさと心の強さを秘めたセロンが大切な勲章を手にした記念すべき作品を心から祝福したいです。
【花守湖】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-06-11 20:41:33)(良:1票)
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