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《ネタバレ》 イーストウッドは本作で俳優業を引退すると語っていますが、それは非常に残念なことではあるけれども、しかし引退作としてはこれ以上ないほどの素晴らしい作品だったと思います。
本作は多民族国家米国の現実と、共生、戦争、赦し、戦うこと、生きること、死ぬこと、様々なテーマが重層的に描かれており、人々は作品のそこここに自分なりに琴線に触れる部分や共感する部分をみつけることになると思います。 それを80年近くの人生を生きてきたイーストウッドが暖かい目線で包み込んでいきます。 「荒野のガンマン」「ダーティハリー」と悪党を問答無用に鉛玉で倒してきたイーストウッドのキャラクターが、本作にいたって大きく成長し、新しい次元に到達したような感慨を憶えます。 彼の監督作品、特に「許されざる者」など90年代以降のものは、プロットだけ辿れば激しく荒々しいものなのですが、しかし実際の作品中に流れるのはとても穏やかで静かです。 そして彼の作品が独特なのは、多くのハリウッド欧米系作品が「生きること」を大きなテーマにしていることに対して「死ぬこと」「死に様」を要に持ってきているところだと思います。 本作の主人公ウォルトの「死に様」を、僕は大変羨ましく思いました。 ウォルトは自分なりの「義」を最期まで貫き通しました。たとてそれが不器用ではあってもそれが彼の人生だったのです。 ハリウッド作品にありがちなご都合主義や楽天的ラストを拒否しながらも鑑賞後に決して後味を悪くさせない、イーストウッドの作品。 スクリーンの向こうに生きる登場人物の、エンドロールのその先に続いていくであろう彼らの人生に思いを馳せたくなるのです。 【ロイ・ニアリー】さん [映画館(字幕)] 9点(2010-12-09 13:09:01)(良:1票)
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