カサブランカ の delft-Q さんのクチコミ・感想

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カサブランカ の delft-Q さんのクチコミ・感想
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《ネタバレ》 数々の名シーンが含まれていますが、私がもっとも強烈な印象を受けたのは、ラズロとイルザの乗った飛行機がまさに飛び立たんとしたときのこと。駆けつけたナチスの少佐が離陸を阻止するために管制塔へ連絡しようとするや、リックは何の躊躇もなくナチスの少佐を撃ち殺しました。何の躊躇もなく、です。

  あの情勢下のカサブランカでナチスの将校を殺害するなど自殺行為以外の何ものでもありません。自らの生命、自らのすべてをかけるといっても過言ではない一撃です。にもかかわらず、リックはほんのひとかけらのためらいも見せることなく、じつに素早く冷静にことを為しています。リックの女への愛の深さと堅固さがどれほどのものか、私はこの瞬間の出来事に圧倒されました。もし、自分がリックの立場なら、あのようにできるだろうか……。

  また、本作でのバーグマンの美しさは比類ありません。私はどちらかというと、バーグマンよりオードリー・ヘプバーン派ですが、それでもこの映画のバーグマンには魅了されずにはいられません。こんな女性に泣きすがられたら、男(私?)はイチコロです。

  どれほど愛し合っていても結ばれることのない愛という哀切、戦争というものの不条理性がじつにうまくハイブリッドされていて、大人の愛を描いた映画とも反戦的メッセージの映画ともいずれにも解釈することができます(どちらかと決めつける必要はないでしょう)。娯楽作品にして思想的作品、思想的作品にして娯楽作品というさじ加減が絶妙です。脚本の力に感嘆せざるを得ません。

  映画では己の愛を封印し、夫のため、あるいは世の中のためにリックのもとを去ったイルザですが、現実のイングリッド・バーグマンはイルザとは正反対の道を歩みました。夫と子どものいる身でありながら、ロッセリーニへと走り、そのことが原因となってハリウッドから締め出されました。ちょっと皮肉な逸話ですね。

  ところで、最近気づいたのですが、イルザの夫は「ラズロ」という名前で設定されていますが、「ラズロ」は「ラザロ」にとても近い名前ですよね。西洋社会で「ラザロ」といえば、キリスト教の物語に出てくる「復活のラザロ」が思い起こされます。ラザロは一度死んでしまったあと、イエスの奇跡によって蘇ります。本作のラズロもまた、一度は死んだと思われたのに(なのでイルザはパリでリックと恋に落ちた)、生きて再びイルザの前に現れているわけです。そうか、ラズロはラザロだったのか、と妙に納得しました。
delft-Qさん [CS・衛星(字幕)] 10点(2011-02-22 15:25:37)(良:1票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2023-10-09沈黙の艦隊(2023)6レビュー5.50点
2021-11-02DUNE デューン/砂の惑星(2021)5レビュー6.30点
2020-09-17道(1954)10レビュー7.91点
2019-12-25アウトロー(2012)6レビュー6.19点
2019-12-25スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け6レビュー6.76点
2019-07-02言の葉の庭4レビュー5.68点
2019-05-03キングダム(2019)8レビュー6.06点
2018-08-14ミッション:インポッシブル/フォールアウト7レビュー7.07点
2017-11-07君の名は。(2016)10レビュー6.97点
2017-09-24ブリッジ・オブ・スパイ7レビュー7.16点
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