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天才を描くとき、その天才の内面に凡人が寄り添うことは難しい。この作品は、視点を我々に近い「他者」に置いたことで、一人の天才を描き出すことに成功している。その圧倒的な才能を最も理解し愛しているからこそ、人間モーツァルトに果てしない嫉妬と憎悪を抱いてしまう心理は、悲しいことに、私という凡人は痛みと共感を持って理解できるのだ。モーツァルトが取り憑かれたようにレクイエムを楽譜に書き付けるシーンは、やはり天才のもとにはミューズが降りて来るのだと、私は鳥肌が立つような思いで見た。私を含め、すべての「向こう側へ行けなかった」人々に、この作品は残酷な痛みを感じさせるにも関わらず、私たちはそれを愛してやまない。
【一児の母】さん 10点(2004-06-16 10:37:18)(良:1票)
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