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わたしの小津の中でベスト。純粋で、端正で、品があって、キレイな映画。
小津はカラーになったら、ちょっと卑猥で下品な作品をつくるようになりますよね。エロおやじの大学教授とか、うんちの話とか。小津にとって「色がつく」ということは「エロくなる」ということだったように思う。もちろん、それはそれで面白いんだけど。でも、それに対して、小津のモノクロ時代の作品は、みんな清潔だし上品です。この作品は、全作品中でも異色作と言われるけど、次の「東京暮色」ほど特異な感じはしない。そもそも浮気なんて、登場人物が口々に言ってるように、どこにでもある話です。もしも、この作品が特異だとするならば、それは小津作品の中で唯一「春」を描いているということでしょう(じっさいの物語の季節は夏のようですけど)。「秋」とか「遅い春」といったイメージが強い小津映画の中で、この作品だけが、タイトルどおり「春」そのものを瑞々しく描いてる。男の人たちにまじって自由奔放にふるまう岸恵子が可愛くて好きです。かなり開放的で大胆ではあるけど、けっして慎ましさや、爽やかさや、瑞々しさというものが損なわれていない。まあ、これがカラー作品だったら、もうちょっと下品だったのかもしれませんけども。これはモノクロ時代の最後のほうの作品ですし、モノクロの小津作品の端正さがここで完成されてるように思います。長時間の映画ですが、まるで爽やかな短編佳作のようで、長さを感じさせません。 【まいか】さん [映画館(邦画)] 9点(2004-03-19 14:17:28)
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