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西洋人はドラゴンが大好きだ。キリスト教的価値観の下、悪魔的存在に変わってしまってもファンタジー作品の「敵役」としては絶大だ。かつては悪魔ではなく、むしろ単なる小悪党であったり、逆に神の遣い的な要素が強かった彼らへの、無意識のうちの罪悪感がそうさせるのか。そこで出てきたのがこの「ドラゴンハート」、実は元ネタと思われるゲルマンの伝承がある。小悪党が財宝を守るためにドラゴンに姿を変えた。だからかそのドラゴンは凶悪というよりどことなく愛嬌があり、心臓を食べると生き物の言葉が分かるという特徴もあった。これが後に「ニーベルンゲンの指輪」となり、この「ドラゴンハート」にも繋がった。それまでの倒されるために存在するドラゴンとは違い、善なる存在、というよりは善悪を併せ持ち、人間を上回る叡智を持つ存在(「人類がまだ幼かった頃・・・」の話が象徴的)として描かれている。21世紀が目前となった時にこの映画が作られたのは決して偶然ではあるまい。まずは価値観の変化。キリスト教的価値観が以前ほど絶対的ではなくなり多様な価値観を認めるようになり、ファンタジーやSF小説では善のドラゴンも登場するようになった。そしてCGという技術革新は、操演では不可能だった複雑な動きを可能にした。この二つの変化が、人語を話し、叡智と愛嬌を併せ持ったドレイコを誕生させたといっても過言ではない。長々と書かせていただいたが、映画の出来以上にこのドレイコががまさに「現代」を象徴する存在であり、またキリスト教以前の原点に回帰した古くて新しいドラゴンとして稀有な魅力を持つドラゴンだと思っているからである。姿を見せず声だけのショーン・コネリーはこのドレイコがまさにはまり役で、その存在感と愛嬌がドレイコにも反映され、私などはだんだんドレイコの顔がコネリー自身に見えたほどだ。映画そのものはいい意味でラウレンティス一家らしい出来で、英雄箪にコミカルな要素を加えて飽きさせない(どこか間の抜けたピート・ポスルスウェイトがいい)。ラストシーンは感動のほかに、父ディノが製作した「フラッシュ・ゴードン」を思わせる演出もあって憎らしい。いろいろな意味で楽しめるお得な作品。
【合言葉は埜波と軍曹/埜波(のなみ)】さん 9点(2004-06-23 22:43:20)
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