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レビュー情報
《ネタバレ》 ◆これはクロの成長物語だと解釈しました。◆本作では形式上の二項対立が多用されています。クロとシロ、仁義と開発、善と悪など、一瞥するとわかり易い物語に見えてしまい、その分ストーリーの難解さに肩透かしを食らうのではないかと思う。しかし、二項対立を克服し、両面が並存していいんだと認めること=大人になること、なのだというのが本作の主張であると僕は受け止めました。◆クロは一見すると悪であるが、シロの面倒を見るやさしい一面を持つ。シロは、ああ見えて、人にガソリンをぶっ掛けて殺す残酷さを持ち合わせている。シロは善と悪が共存している大人な存在である。逆に、クロは、シロがいなければ善を施しえない子供である。◆そんなクロはシロと別離することによって、自分の本来持ち合わせていた善の施しの行き場を失い、同時に純粋な悪の心と向き合わざるを得なくなる。その存在が「イタチ」である。クロは純粋な悪の心と対峙し、自分がシロによって善の心を持ち合わせていたこと、純粋な悪にはなりきれないことを自覚し、あらためてシロとともに生きることに希望を見出す。クロの手に刻まれた傷は、そのものずばり、心に純粋な悪が潜んでいることを自覚した上でどう生きていくのか、という少年が大人になるための過程を描いているのだと思う。◆誰にでも悪の心はあるのだけれど、それを単なる道徳律で押し込めて無反省に生きているのは寂しい。そんなことを考えさせてくれる映画だった。
【もりたろう】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-10-01 00:16:03)
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