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《ネタバレ》 傑作。潜水艦ものでコレに勝つには、戦闘描写を押し出すしかないと思わせるほど緻密。正直、演技の細かさにはうんざりするほどだ。
ジーン・ハックマンが、いい人だか悪い人だかよく分からない演技をするときは、ヤバい。その場面は異空間になり、こっちが悪いことをしたような気持ちになりドキドキしてしまう。そこにいい人に決まってるデンゼル・ワシントンを持ってくるんだからすれ違いは決定的になるに決まってる。そこを囲む脇役陣の手堅さときたら、配役が悪魔的に巧い。 95年当時の世界の不安定さときたら、今考えると病的妄想的な世界観が現実を包んでいて、それを払拭する情勢確認手段の少なさはちょっとスリル満点だ。それが日常だった。そこにきて、ロシアのクーデターという設定。当時ならあり得すぎる、ゴルバチョフが武力行使による拘束をされてしまう世界だからだ。 こうした空間の中で、権限委譲の不備を突いた事件が起きてしまうが、その処理のあまりの巧さにはぐうの音も出ない。ハンターと同調すれば密室の中の組織が崩壊してしまうことを誰よりも知る艦長と、ラムジーが副長に同調して必ずしもそこにいる全員が同調できないことを理解できないハンターのパワーバランスがすばらしい。 ラムジーが越権行為をすることで、解任され確認までの時間を作った訳だが、誤算は敵艦の攻撃だった。これにより部下を謀反に引きずり込んでしまうことになる。その苦悩の表現も秀逸だ。暗号を知るミサイル発射将校のウェップスに銃口を向けたが、これが開けさせるためではなく命令に従わせるためだった。彼を部下を救う上官にすることで謀反人になることから救った。同調した部下達の心理とは違うところに真意があった。 中止命令では、様々に反応する部下に複雑な内心を見せる。最後、ハンターは、委員会の聴取でラムジーの越権は、自作自演であったと知るわけだ。謀反が起こったと言うことがオフレコになって、クルーが不問に付され誰かが犠牲になるに違いない自分の聴取が行われなかった。 もちろんそう解釈をしない見方もアリだろうが、いかにも何でこんなことになったのかという表情をするハックマンを見ると、その方が面白い。ラムジーを悪役として据えるのも痛快だが、単純にそうしないところに妙がある。 【黒猫クック】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-12-30 17:06:21)(良:1票)
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