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《ネタバレ》 車のクラクションに驚く。この行為は普通の人なら当たり前です。「ブブー!!」と鳴って驚かなければクラクションである意味がない。この映画では何度もこのクラクションが効果的に使われていて観客を驚かす。それは肉体的な反射からくる驚きの恐怖です。本来ならこういう音で驚かす場面は好きではないのですが、流石はスピルバーグ、デビュー作にも関わらず即物的なホラーとは一線を画す一級のサスペンスとなっています。
この映画を語る時に既に言い尽くされていることですが、この映画の巨大トレーラーは恐怖映画に於ける怪物そのものです。気が付けば背後に忍び寄り、こちらが逃げるより遥かに速い猛スピードで追いかけてきて、咆哮(クラクション)を上げる。つまりやっていることは『JAWS』や『ジュラシック・パーク』と変わらない。 本作はそんな怪獣映画を実際に我々観客が日常的に体験してしまうかも知れない状況で展開させている点に一番の凄さがあるのではないでしょうか。どんなに映画を観ていてその作品世界に没入しようが、現実世界でサメのいる海に行くわけじゃないし、恐竜のいる島に行ける訳じゃない。でも道路を走っていて、トロい前の車を煽ったり追い越してしまうことは誰でも一度はしてしまったことがあるでしょう(私は逆にノロノロ走っていて煽られる事が多いですが)。そんな些細な行為で、怪物に襲われるかも知れない、その恐怖がこの映画にはあります。しかも怪獣の操り手の顔が分からない点でサスペンスを盛り上げる。 また、観客も主人公も「まさか命までは狙われてないよね?ハハハ……」と心の何処かで楽観視している。余りに理に適っていないからです。それがガソリン・スタンドで電話をかけているときにトレーラーが突っ込んできた時に確信へと変わる。ここからドライバーとの決戦(Duel)に決定的に移る点も見事でした。 個人的なベストシーンはトンネルの暗闇に潜んでいたトレーラーのヘッドライトが「カッ」と光るシーン。怪物が自分を待ち伏せしていた恐怖。主人公の「ヤツが帰ってきた……!」という台詞が正に私の感情そのものでした。あの瞬間、トレーラーは完全に目を爛々と光らせる怪物だった。 唯一の問題点はそれからのスピルバーグとは違い、テーマ性に乏しいということでしょうか。単純にトレーラーに追いかけられる恐怖を描いた映画、それ以上でも以下でもないですから。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 9点(2008-08-03 22:52:21)
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