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《ネタバレ》 三島由紀夫の作品は全く読んだ事はありません。読めばその魔力に吸い込まれるような気がして。
この映画を見ればその断片だけでも知る事が出来るのではないかと思い視聴しました。 しかしたった一人で1000人の中に飛び込むという肝の座り方。 この討論の冒頭三島由紀夫のスピーチがあるのですが、最も耳に入ってきました。 おそらくここで勝負あったんだと思います。 討論のメインである全学連の芥氏との討論は、東大随一の論客といわれる芥氏が三島をやり込めようと難解(というか、観念をこねくり回したような、人に伝えるつもりのない独りよがりな言論)を三島が丁寧に聞き取って優しく答えていくという展開。解放区、時間、空間、それみんなが目指した革命と関係あるの?これ皆が望んだ討論?ただ三島の対応能力の高さだけが目立っていく。論破するでもなく、誠実に答えていく姿が印象的。ただ見て何か感じるものは無し。 おそらく芥氏は同じ表現者(芥氏も表現者として仕事をしていたらしいが)としての格の差に嫉妬しており、敢えて分かりにくい言葉で議論を吹っかけている個人的な戦いの図に見えます。話をさえぎって揚げ足取りしてみたり、見下したように笑みを浮かべてみたり。途中で横やりを入れた学生の「俺は三島をぶん殴る会があるというから来た」のほうが本質を突いた議論になったのではないか。 そして50年後に芥氏本人へのインタビュー。自らを総括するでもなく彼自身の自己弁護なのか、キャラクターを含め彼の人間としての小ささが鼻についてしまって・・・。本人の思いは別に何かあるとしてもかなりガッカリな印象。 私としては、学生運動によってどんな世の中を目指していたのかが分かる議論になっているのだろうと思っていたのですが、そのへんの答えに近づくことは無く、あの討論で学生たちはいったい何をしたかったのだろう。あの討論で何かを得たのだろうか。三島に思いは伝える事が出来たのだろうか。「近代ゴリラ」なんて揶揄して三島を挑発したのはいいけれど、彼の圧倒的な存在感とユーモアと優しさの中で討論ごっこをさせてもらっただけなのでは。 映画としては、この時期の学生運動の様子や三島の行動等も同時に紹介されていたので時代のディテールは少し押さえることが出来たのは良かったですね。(雑誌の人気ランキングでも三島は男性で1位だったとか。当時の影響力と男の嫉妬が想像できる話。) 三島は学生たちの純粋さと一途さだけは認めようとしていた。 時代は流れ、終わってみればかの革命戦士たちは社会人として体制の中で何食わぬ顔で堂々と働いている・・・ 今を生きる若者は何か参考になった事はあるのだろうか。 さて、三島の作品を読んでみるか・・・そちらも未だ迷ってます。 【大治郎】さん [インターネット(邦画)] 5点(2021-09-28 09:28:05)
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