<ネタバレ>政治色が強く、長回し及びロングショットの多用で芸術映画を地で .. >(続きを読む)
<ネタバレ>政治色が強く、長回し及びロングショットの多用で芸術映画を地で行くアンゲロプロス監督作品の中では
一番分かり易く敷居の低い映画であることには間違いない。
深い黒で覆われたオープニングから引き込まれ、初めて列車に乗った時の高揚感に胸が躍る。
まだ見ぬ父親に宛てた繊細で詩的な手紙に雪で時間が止まった群衆、
失われていく馬の命と遠景の結婚式の対比、
あまりに透徹であまりに美しい映像の力に魅了される。
それ故に政治的・難解さといったフィルターがあまり掛かっておらず、
現実が寓話に侵食し破壊していく様をまざまざと見せ付けられる。
トラック運転手に犯されて"女"にされた姉や時代の流れで廃れていく旅芸人の一座、
ヘリに引き上げられた神の手がそれだろう。
再会し恋愛感情を抱いたにも関わらずすれ違いで別れる際の旅芸人の青年の詩的な台詞が胸に迫る。
悲惨な現実を経て、ボロボロになって辿りついた姉弟を迎え入れるようにそびえる樹木は、
死によって彷徨う姉弟を慰める父親そのものかもしれない。
ある意味で救いかもしれないし、監督の厭世観を感じさせた。