1. オッペンハイマー
《ネタバレ》 ※すみません、以下長文です※ 3時間の超大作、とても観応えあり。 でも私は及第点(5点)を付ける。 その理由は以下。 3つの時系列を巧みに操る緻密な構成は流石ノーラン、この構成で3時間突っ走るのは並大抵の技量の監督さんでは無理だと思う。 時折織り込まれるオッペンハイマーが夢想?妄想?する量子力学を視覚化したかの様なイメージシーンがとても魅力的。 天才が普段感じている感覚とはこういうものなのか?と疑似体験させてくれている様で映像の力を感じる。 鑑賞し終えてアカデミー助演女優賞はエミリー・ブラントが受賞するべきだったと痛感する。 それ位力の入った素晴らしい演技をしている。 彼女の喜怒哀楽を情感込めて演じている様を観るだけでも入場料の価値は有る。 翻って、本作のテーマでもある原爆に付いては、私が被爆国である日本(今や「唯一の」とは言えなくなったが)国民で有る事を差し引いても、正直なところ途中から怒りを感じる位に極度な生温さを感じた。 オッペンハイマーは決して功名心から原爆製造を指揮したのでは無く、戦争に突入していた時代背景(戦争の為ならばいわば無尽蔵に金が使える。実際に町を作ってしまった程)や、当時はまだ机上の空論と位置付けられていたらしい量子力学を自分の目で具体的に見る事が出来る「原爆」と言う手っ取り早い方法に対し、科学者故の好奇心・探求心から抗い難い魅力を感じてしまったのかと思える。 だが、それ以降の広島と長崎への実際の原爆投下を経て彼がその「効果」を目の当たりにし、以降の水爆製造への反対運動やそれが転じて赤狩りの対象となり、いわば転落の人生を迎える事になる程に彼が反対と思うに至った「効果」の描写が、本作では極めて抽象的に描かれ過ぎていて、教育の一環として広島・長崎の惨状を知っている日本人ならともかく、『第二次大戦を早期終了させた(←この言葉には反吐が出る!)』と教えられている彼の国を筆頭に他の国々の人達にはどうにも説得力に欠けているのではと思わざるを得ない。 何も私はノーラン監督に広島と長崎の惨状を写実的に・リアリスティックに描いてほしかったとは思っていない。 過去の監督作で彼の映像作家としての力量にひれ伏した身としては、ノーラン監督なりのもっと観る側の感情を揺さぶる、 一度見たら決して忘れる事が出来ない程の映像の力で広島と長崎の惨状を表現できた筈だと思ってしまうのだ。 もう一線踏み込んでいれば、反戦・反核映画として映画史上に残る稀代の名作に成り得たのにと思うと残念で仕方がない。 最後に、本作鑑賞の前に以下を一読・一見しておく事を強くお勧めします。 ・オッペンハイマーのWikipedia。これを読んでも本作の場合はネタバレにはならないと私は思います。 ・BS朝日で2024/3/16に放送された「町山智弘のアメリカの今を知るTV」...ロス・アラモスのDownwindersと呼ばれる人達=いわば世界最初の原爆による被爆者達の事を私は知りませんでした。 この事実を知り、本作の作成の裏で何が有ったのかと勘ぐってしまった程です。 世界各国の老若男女が観て議論するべき作品で有る事は間違いないのですが、上記諸々含め私の採点は5点です。 [映画館(字幕)] 5点(2024-04-08 09:34:03) |
2. オットーという男
《ネタバレ》 安定のトム・ハンクス。 上手いですねぇ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-10-24 09:18:06) |
3. オールド
《ネタバレ》 この監督さんの場合、常に「シックス・センス」と比較され、一般人が思い付かない様な奇抜なオチを期待されるのが何とも可哀そう。 本作単体でみれば普通に面白かったです。 幼い娘さんが急成長しちゃっただけでなく、なんとまあご懐妊までしちゃってテントの中から登場するシーンは意表を付かれました。 一歩間違えば趣味の悪いコントになりかねない様な描写ながら、前振りが効を奏して気味悪くも印象深いシーンになってました。 私的には主人公夫婦が年老いていく描写も印象深いものでした。 旦那さんは目が見えなくなり、奥さんは耳が遠くなる。 普通はゆっくりと訪れる老化現象が短時間で現れた事への絶望的な思いと、それを受け入れざるを得ない妙に達観したかの様な描写は、私と妻の将来を考えるきっかけになりました。 オチはこの監督さん特有のズッコケ系では無く極めて真面目なもの。 このオチをどう捉えるかはこの(出たがりの)監督さんの何が好きなのか次第で評価が判れるのでしょう。 星新一や初期の藤子不二雄の短編と同じテイストで、私的には充分有りでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-13 12:09:10)(良:1票) |
4. 黄金のアデーレ 名画の帰還
《ネタバレ》 素晴らしい作品だと思います。 第一次世界大戦~第二次世界大戦に至る世界史と、その波に市井の人達がどの様に翻弄されたのかを予備知識として持っていれば、 より一層この作品の良さが判るかと。 観賞のきっかけはヘレン・ミレンとタチアナ・マスラニー(「ボストン・ストロング」!!)が出演しているから。 この点では同一人物を演じる二人の演技を堪能させてもらい大満足。 ナチス(本当はこの三文字さえ私は書きたくない)がどんなに酷い事をしたのか、ホロコーストだけでは無く 本作で描かれた様な「芸術への冒涜行為」を知る意味でも、観て知っておく価値は有るかと思います。 史実によると、奴らは本当に沢山の芸術作品を強奪し、自分勝手に鑑賞しただけで無く、 敗戦が濃厚になったら数多くの芸術作品を洞窟等に隠したり、火を付けて燃やす等という非道を尽くしたとの事。 消失を免れても、どこに隠されたのか判らず所在不明の作品がそれこそまだ世界中に沢山あるそうです。 本当に酷い話です。 感想が作品から逸れてしまいましたが、映画と言う形を借りてこの様な史実を教えてくれるという意味でも、 本作は価値有るものだと思います。 それにしても、まるでタイタニックの様なラストの持って行き方、あれは反則でしょう。 嫁とテレビの前で嗚咽してしまいましたよ、私は。 最後に、本作を観賞される方には「ミケランジェロ・プロジェクト」の観賞を強くお勧めいたします。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-01-22 18:46:24)(良:2票) |
5. オクジャ/okja
《ネタバレ》 私は肉が大好きだ。 鶏肉・豚肉・牛肉・羊肉等々なんでもござれ。 でも、本作を観ながらよーく考えてみたら、わざわざ他の動物の命を頂いてまで肉を欲しているかというと、 決してそうでは無い様に思えてきた。 私がほしいのは、あの食感と味であって、鶏・豚・牛等の「生き物の肉」に拘ってはいない。 人工肉がここ数年で普及しそうな報道が相次いでいるが、それでも私は一向に構わない。 でも、実際にそうなると世界中で数百年の永きに渡り運営されてきた畜産業が大打撃を受けてしまう。 一つの産業が滅ぶ方が問題(人間の視点)なのか、人間の私利私欲の為に生き物を殺してまで肉を収穫する方が問題(生命の視点)なのか。 こういう事を観る人々に考えさせる為の作品なのかと思う。 なのでNetflixでの配信と言う視聴方法は上手い手だと思った。 それにしても、最後はやっぱり金なのか・・・ [インターネット(字幕)] 7点(2020-01-21 17:34:59) |
6. 女と男の観覧車
《ネタバレ》 良質な舞台演劇を観ている様でした。 ケイト・ウィンスレットは相変わらず綺麗で盤石の演技。 特に後半から終幕に掛けての神経衰弱ギリギリの演技は観ていて辛くなる程。 掘り出し物は旦那役のジム・ベルーシ。 人の良さそうな、それでいてうだつの上がらない疲れた中年オヤジを、 巻き舌の印象的な台詞回しで巧く演じており、彼を見直した次第です。 [映画館(字幕)] 7点(2018-06-24 12:50:02) |
7. オートマタ
《ネタバレ》 拡げた大風呂敷を回収し切れず、観客に対し謎掛けの形で無理やり中途半端な結末を押し付ける典型の様な作品... なのだが、これはなかなかの拾い物だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-12-12 18:24:20) |
8. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 終始淡々とした描写で物語が進行するので、これ本当にリドリー・スコット作品か? と思ってしまった程。 肩の力が抜けたかの様な飄々とした語り口が心地よく、磐石な映像の緻密さと相まって娯楽作として素晴らしい出来。 冒頭のマーズ・ローバーを使用した地球とのコミュニケーションの取り方は宇宙開発マニアならばニヤリとさせられる事必至。 マット・デイモンが途中で変な事をしだすのではないかと要らぬ心配をしてしまったのはご愛嬌。 どうせ見るなら大画面の映画館で観た方が絶対に良いと思います。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 8点(2016-03-07 18:51:33) |
9. オール・ユー・ニード・イズ・キル
《ネタバレ》 当に「王道」。 ラストの笑顔はトム・クルーズで無ければ出来ない。 ハリウッド大作らしく明るい終わり方だが、本作を観て原作に興味を持たれた方は是非、原作を読んで頂きたい。コミック版もお薦めです。 [映画館(字幕)] 8点(2014-12-17 10:25:25) |
10. オブリビオン(2013)
《ネタバレ》 (トム・クルーズのファンなので甘めの採点ご容赦を) これぞSFの王道。確かに、どこかで見た様なシーン・どこかで見た様な設定が本作ではテンコ盛りだ。 だけど、豊富な予算を有効活用した映像の持つ迫力がそんな事などどうでも良いと思わせてしまう。 アンドレア・ライズブロー演じるヴィクトリアがオルガ・キュリレンコの姿を見て過剰に反応する理由が最初は判らなかったのだが、全てが明らかになる終盤の回想シーンでその疑問も氷解。 「夫婦の写真」と併せて何とも切ない設定で、私に取っては本作の印象を更に良くする一因となった。 それにしても、改めてトム・クルーズは自分自身の売り込み方を熟知しているなと感じた。 今や「トム・クルーズ」は一つのブランドになったと考えても良く、齢50を超えて毎年何らかの作品を世に送り出し、多少の例外は有るものの同じイメージを維持するのは並大抵の事ではないと思う。 周囲の優秀なスタッフの尽力と、何よりも本人の努力する姿勢には素直に感服する。 [映画館(字幕)] 8点(2013-06-10 12:03:09) |
11. 狼男アメリカン
《ネタバレ》 面白い。簡潔なのも良い。 やっぱり映画はアイディアと熱意で面白くなるのだと言う事を再認識出来た。 後、あんなにフェロモン撒き散らしまくりのエロい看護婦さんが居る病院なら、私も入院してみたい。(爆) [DVD(字幕)] 7点(2011-05-03 18:37:40)(笑:1票) |
12. オー!マイ・ゴースト
《ネタバレ》 初めは軽い気持ちで鑑賞したのだが、これが予想外の拾い物だった。 内容はアメリカ映画でよく有る「幽霊が見える人」と「自分達の存在に気付いて欲しい幽霊たち」とのコミカルなやり取りが主体のカテゴリー。 だが、本作が他と大きく異なるのは主演の役者さん。 バリバリの英国訛り、ルックスも大してカッコ良く無くえっ?この人が主役??という感じなのだが、味の有る演技で映画の質をグッと上げてくれている。 聞けば英国では有名なベテランのコメディアンなのだとか。 芸の幅が広い役者さんをまた一人見つけられて嬉しいです。 終盤、思いを遂げた幽霊の皆さんが成仏(昇天?)して行くシーンは良いシーンでした。 ヒロインのティア・レオーニもお年を召されましたが相変わらずお綺麗で◎。 レンタルDVDの宣伝文句は「おくりびと」ですが、私は「シックスセンス大人版」だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-06-09 18:51:40) |
13. 狼よさらば
《ネタバレ》 救われない映画だ。 たとえ何人殺しても死んだ妻は戻って来ず、廃人になってしまった娘は回復しない。真犯人(ジェフ・ゴールドブラム、若い!)への復習も叶わず、無罪放免となり新たな土地へ移っても、そこにも標的になりそうな奴らばかり。 最後、指ピストルで「ニヤリ」と笑う主人公の顔に若干救われた気はするが、何とも釈然としない思いが残る。 一方、視点を変えて本作をある一人の男が自らの「野生」を確立していく映画として捉えれば、続編の内容から見ても自然な流れなのかも知れない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-07-23 12:54:43) |
14. オーロラの彼方へ
《ネタバレ》 皆様ご評価の通り確かに内容はご都合主義だが、最後の『まだ生きてるぞ・・・』という台詞にやられた。 自分がもし同じ状況になったら、36年前に死んだ親父に酒とタバコを止めさせるだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-05 14:54:22) |