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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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41.  PUSH 光と闇の能力者 《ネタバレ》 
理詰めのX-MENといった趣で、超能力者の設定はよく考えられています。「我々が知らないだけで、こういう能力を持った人達は実在しているのかも」と錯覚させる絶妙なレベルに能力が設定されているし、超能力者にはそれぞれに人生があり家族もいるのだという当然の描写がなされていて、本当によく練られた話だと思います。劇中には9つのタイプの超能力が登場するのですが、それぞれの能力には特有の強みがあって、チェスや将棋のコマのように複数の能力を組み合わせることで敵勢力を出し抜くというゲーム感覚の戦いが繰り広げられます。「ウルヴァリンさえいれば済むじゃないか」というX-MENとは違い、集団戦の面白さを追求した絶妙な設定になっていると思います。問題は、脚本家と監督の力不足によりこの内容を2時間弱に納めきれていないこと。物語は唐突にはじまり、各々のキャラが何を考えているのかを把握する間もないまま話が終了するという残念な仕上がりとなっています。情報整理がヘタクソなので各能力の特徴すら説明しきれておらず(よくわからない能力の人が何人かいます)、Wikipediaの解説を読んで事前に知識を整理してから鑑賞する方が無難です。ラストの作戦などは複雑すぎて頭が痛くなったし、よくよく考えてみれば、あんなにもややこしくて偶然性に頼りまくった作戦なんてうまくいくわけがありません。その上、ドンデン系の映画に必要な「引き」の演出が出来ていないので、余計に映画がつまらなく感じます。見ているこっちは、途中でどうでもよくなってしまうのです。監督のポール・マクギガンはクライムサスペンスを得意とする人で、アメコミ風の世界を舞台にした大規模なミステリーをやろうとしていたようなのですが、SFの前提で鑑賞している観客がどれだけの情報量を吸収できるのかという計算が完全に狂っていました。あまりに詰め込み過ぎなのです。前作「ラッキーナンバー7」同様、企画倒れの映画だと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2012-01-19 01:05:46)(良:1票)
42.  プライド&グローリー
法の番人であるはずの警察官が悪に染まるという構図はいかにも映画向きだし、アメリカの公務員に多いアイリッシュ系は家族の絆が深いためドラマも深まる。そんな美味しい題材であるためか汚職警官ものはどれだけあるのか分からないほど多数製作されていますが、本作はそんな中の一本。ハリウッドのお家芸とだけあって本作はきっちり面白いのですが、同時にジャンルにおける標準的な完成度で特に目を惹く点もないため、「これだけか」というガッカリ感も少々あります。これだけの豪華キャストが顔を揃えたのだから、もっと見せてくれるものと期待していたのですが。
[DVD(吹替)] 5点(2012-01-12 19:08:11)(良:1票)
43.  復讐捜査線
メル・ギブソン8年ぶりの主演作にして、監督マーティン・キャンベル、脚本ウィリアム・モナハン、編集スチュアート・ベアード、音楽ハワード・ショアというご祝儀のような豪華メンバーが顔を揃えているだけに相当な映画なのだろうと期待して鑑賞したのですが、そんな期待を上回るバイオレンスの快作でした。デビュー作「マッドマックス」以来、家族を殺される男をひたすら演じてきたメル・ギブソンの真骨頂、怒りと悲しみに溢れるヒーローを演じさせると相変わらずこの人はよくハマります。彼に対する敵方の設定もよく考えられていて、巨大軍需企業、その軍需企業に飼われている上院議員、政府、政府の汚れ仕事を請け負う民間セキュリティ会社が同じ目的を持ちつつも別々の指令系統で動いており、そのために大きな混乱が生じているという設定は、妙に説得力があって「なるほどな」と感心しました。特に印象に残ったのがレイ・ウィンストン演じるセキュリティ会社の男で、「殺しを職業としている以上、指令が下れば個人的に恨みのない相手であっても俺はためらわずに殺す。俺にそうさせないよう、お前は絶対に一線を越えるなよ」とわざわざターゲットに警告しにくる職人気質にはグっときました。アクションは控え目なのですが、要所要所では腹にガツンとくる重厚な見せ場が用意されています。バイオレンス一筋のマーティン・キャンベルの手腕はこの手の渋い銃撃戦でこそ発揮されるようで、派手すぎないアクションのカッコよさには大興奮なのでした。
[DVD(吹替)] 8点(2011-12-19 01:00:10)(良:2票)
44.  ブギーナイツ 《ネタバレ》 
撮影・編集は凝りに凝っており、技術的には非常にレベルの高い映画です。題材選びも面白いし脚本も素晴らしいので良く出来た佳作には仕上がっているのですが、惜しいところで傑作にはなりきれていないという印象です。この監督は登場人物を冷めた視点で描く傾向があり、傲慢な大富豪を描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」ではその傾向が吉と出ていましたが、若者の成長物語でもある本作では、この冷たさが時にアダとなっています。監督自身がキャラクター達を愛していないのでドラマはエモーショナルな抑揚に欠き、劇中さまざまな事件が起こってもどこか平板な印象を受けるのです。本作で例外的に感情が爆発するのは主人公エディが家出をする序盤なのですが、これは監督自身の経験を元にしているため。監督は映画以外の物には関心を抱けない人物であり、そのため学生時代には成績も悪かったようなのですが、彼の母親はそれを許さず口汚く罵られる日々が続いたとか。そんな過去を主人公エディにも追体験させたため、映画全体から浮いてしまうほどにあの場面だけが突出して生々しいのです。。。 本編で注目すべきはダメ人間達の生き様です。オヤジであるジャックをはじめポルノ一家の面々は「自分達は映画という作品を作っているのだ」という一点に人間としてのプライドをかけています。自分達は監督・俳優であって、裸だけが売りの人間ではないというプライドを。しかし劇中劇を見ると、悲しいほどにこのプライドが滑稽に感じます。セリフはすべて棒読みだし、演出も編集もボロボロ。無能な人間が寄り集まって「俺達はダメじゃないんだ」と傷を舐め合っているようにしか見えません。エディは裸以外にも取り柄があるはずだと信じてポルノ一家を飛び出しました。性描写のみに特化したAVを撮れと言われたジャックは「俺はフィルムメーカーだぞ!バカにするな!」と激怒し、激しくこれを拒否しました。しかし、結局彼らは裸の世界に戻ってきます。他に生きる場所がないことを思い知ったからです。唯一、ドン・チードル演じるバックはポルノ業界から脱出することに成功しますが、それは神がかった幸運のおかげであって彼が無能であることに変わりはありません。一家が再集合するラストをハッピーエンドと見る向きもありますが、ポルノという閉じた世界に居場所を見出さざるをえないエディ達の姿は、むしろバッドエンドと考えるべきでしょう。 
[DVD(吹替)] 7点(2011-10-29 21:14:27)
45.  フューリー(1978) 《ネタバレ》 
本来は90分程度で描くべき内容を2時間近くにまで引き延ばしており、正直かなりダルイです。緊張感皆無の追っかけ、恐怖心を微塵も抱かせない超能力者の脅威が何のメリハリもなくダラダラと描かれ、デ・パルマのやる気のなさが全編に漂っています。ビジュアルの巨匠による作品でありながら視覚的に面白いのは最後の1分だけで、あとは脚本に書いてあることをそのまま撮ってますという状態なのです。さらにこの映画を悲惨にしているのは脚本の出来が恐ろしく悪いことで、ダラダラとムダなエピソードが多い割に、本筋に関わる重要な点に限って舌っ足らず。元は親友同士だったというカーク・ダグラスとジョン・カサベテスの関係や、息子探しを献身的に手伝ってくれる看護師の人物像など、描かれるべきものがまったく描かれていません。主人公であるはずのカーク・ダグラスが中盤以降は空気同然の存在感となったり、空中浮遊のできる超能力者が転落死するという冗談のような展開を迎えたりと、一体何を考えて書かれたのか理解に苦しむ内容となっています。
[DVD(字幕)] 2点(2010-11-27 22:17:58)(良:1票)
46.  フレディVSジェイソン
「13日の金曜日」も「エルム街の悪夢」も何作かは見たことがあるものの、シリーズにそれほど思い入れはありません。どちらのシリーズもホラー映画の割には怖くなくて、強烈なキャラクターによる殺人ショーを鑑賞するものだという印象を持っていました。両者が初共演した本作についても同様の印象で、良く言えばオリジナルの特徴をきちんと踏襲した番外編なのですが、悪く言えばオリジナルの欠点を乗り越えることができず、オリジナルと同等の完成度に甘んじてしまった作品。どちらの印象を持つかで本作への評価は大きく変わるのですが、残念ながら私の印象は後者でした。。。本作の脚本を担当したのはデヴィッド・S・ゴイヤー、オリジナルシリーズに関わっていた監督・脚本家よりもレベルがふたつくらい上の人材を捕まえてきたわけですから、私は本作に期待していました。オリジナルの良い点は残しつつも、弱点はきちんとカバーするような出来にしてくるであろうと。しかし、出来たものはオリジナルと同等のレベルだったので、これにはガッカリでした。もちろん、ゴイヤーらしい仕事は見て取れます。両シリーズの設定を擦り合わせ、お約束を物語にうまく活かすという丁寧な仕事は相変わらずです。しかしそれだけで終わってしまっていて、本作をオリジナル以上の番外編にしようという工夫や努力がなかったのは残念でした。
[DVD(字幕)] 4点(2010-09-19 22:24:37)
47.  ブレイド2 《ネタバレ》 
前作のスティーブン・ノリントンはウェズリー・スナイプスと揉めて降板し、代わって登板したのは、念願の「ヘルボーイ」実写化のための実験がてら参加したギレルモ・デル・トロなのですが、彼の手腕によって前作を上回る出来となっています。この監督の美意識は相変わらず素晴らしく、激しくも美しいアクション、リーパーズ登場場面における恐怖演出、散りゆく者の儚さ等、本作に必要な演出は確実になされています。ただし脚本に難があって、作品全体としてはもう一歩と言えます。。。リーパーズという圧倒的な新種が登場し、これを倒さねばヴァンパイアも人類も存亡の危機に瀕する恐れがある。このため、因縁の関係にあったブレイドとヴァンパイアが一時休戦して手を組むというドラゴンボールみたいな話には燃えました。しかし、中盤より物語は迷走をはじめます。ブレイドとの協定の裏でヴァンパイア側にはある陰謀があって、最終的にはいつも通りブレイドvsヴァンパイアの戦いに終わるのですが、後半の捻りがどう考えても不要で、これが原因で映画にいくつかの穴が発生しています。第一に、物々しく登場したヴァンパイア側の特殊部隊ブラッドパックの活躍の場がなくなってしまい、インパクトあるメンバーが揃っているにも関わらず、彼らが一体何者であるかもよくわからないままやられ役に終わっています。ドニー・イェンまでを動員したにも関わらず、彼の見せ場がドロップキックを一発決めるだけではあまりに物足りません。ブレイドとヴァンパイアが組むことによってアクションのバリエーションを増やせただろうし、戦いの合間では、本来敵対する者同士ながら両者に友情が芽生えるという男子悶絶の展開を入れることもできたはず。ブレイドとヴァンパイア女子との恋愛なんか要らないんです。この映画はどうせ男子しか見てないんだから。第二に、ラストのバトルでは誰に感情移入して見るべきかがよく分からないため、壮絶なアクションの連続にも関わらず観客のエモーションが付いて来ない結果となっています。ヴァンパイア側の陰謀が明らかになり、それによりリーパーズ誕生の秘密が判明すると、ドラマは「リーパーズかわいそう」という方向にシフトします。それに伴って今度はブレイドとリーパーズが組むのかと思いきや、よく理由が分からないのですがブレイドはリーパーズとの戦いを続けるため、どっちを応援していいのかがよく分かりません。
[DVD(字幕)] 6点(2010-09-10 21:16:18)(良:1票)
48.  ファイナルファンタジー
90年代にはMTV出身のクリエイターが異業種である映画業界に進出し注目を浴びましたが、今度はゲーム業界のクリエイターが映画業界に打って出る番だとして製作されたのが本作です。製作主体が本業の映画プロデューサーであり、クリエイターとしてゲーム業界出身者を起用するのならこの試みも成功したのかもしれません。しかし本作が致命的だったのは、ゲーム会社が主体となってゲームと同じ論理で映画を製作してしまったこと。キャラクター造形が浅いし、世界観も穴だらけ。もしゲームであれば、この程度の設定やドラマでも問題ありませんでした(設定が細かすぎるとゲームなど楽しんでいられないので、むしろ粗っぽくて調度良いくらい)。しかし映画にすると、ここまで雑な話では観客を納得させることはできません。。。物語を振り返ってみましょう。地球はエイリアンからの攻撃を受け、人類は絶滅寸前にまで追い込まれていた。これに対して軍部はゼウス砲と呼ばれる新兵器でエイリアンの本拠地である隕石を叩き、戦争を終結させようと考えている。一方で主人公はエイリアンに関する別の可能性を示唆する。あれは生物ではなく、生命エネルギーの残骸のようなものではないか?生物という前提で戦っていたため我々は勝てなかった。敵に対する認識をあらため、対処法を見直すべきではないのか?…話だけ聞くと面白そうなのですが、本作には根本的な問題があります。エイリアンが冒頭から「ファントム」と呼ばれているし、実体を持たず壁をも通過するその姿は、生物ではなくエネルギー体であることは誰の目にも明らか。主人公に「あれは生物じゃないのよ」と言われても、「そりゃそうだろ」としか思わないのです。そんな明らかなことを長々と説明する主人公と、この話を聞いて納得している仲間達はバカにしか見えません。本作は万事がこの調子。未知のエイリアンであるにも関わらず彼らに対して有効な銃やバリアーはすでに存在しているのですが、その経緯や理由は説明されず当たり前のものとして登場しています。SF映画をやりたければ画面に登場するアイテムと世界観には整合性が必要であることが分かっていないのです。現在の戦況も説明されないため、軍部が新兵器の使用を急ぐ理由もよくわかりません。主人公の体内にファントムが宿った経緯も不明。主人公がしばしば口にする「ガイアがなんとか」という話は理解不能。これでは映画と言えません。
[DVD(吹替)] 0点(2010-09-06 17:45:13)
49.  フィラデルフィア 《ネタバレ》 
難病ものにして、差別と闘う法廷劇。監督は「羊たちの沈黙」で主演男優賞と主演女優賞をダブル受賞させた(この快挙を成し遂げた監督は歴史上たった3人)ジョナサン・デミ。いかにも賞の匂いのプンプンする映画だけあって、素晴らしい俳優陣が集まっています。演技ができて華もあるトム・ハンクスとデンゼル・ワシントンは文句なしの仕事ぶりだし、ゲイの恋人を演じたバンデラスのなよなよした演技も見ものです。またこの手の社会派ドラマはハリウッドのお家芸だけあって、本編のお膳立てをする前半部分の処理もお見事。上映時間を冗長にすることなく観客に必要な情報を伝えるため、時に視点を変え、時に時間軸をいじりながら、手際良く設定を裁いていきます。楽しんで見るような題材ではないのですが、映画としてきちんと面白く撮られていること、観客に伝えるべきことを伝わるように表現する姿勢には好感が持てました。。。と、面白いのは前半まで。あれほどてきぱきとした前半と比較すると後半はえらくゆっくりしているし、かといってじっくり描くべき大きな山を作れているわけでもないので、正直言って退屈します。裁判の最初に、デンゼルは陪審員に向かって「これからやるのは映画で見るような裁判ではありません。劇的な証拠や証言者が見つかるという展開もありません」と宣言しますが、これは観客である私達に対する監督からの宣言だったようです。弁護士による舌戦が繰り広げられることも、キーパーソンを巡る駆け引きもないため、法廷ものの醍醐味は味わえません。被告側弁護人によって論理を崩されてデンゼルは負けるのではないかという危機的局面を迎えることも、陪審員の心を動かせるかどうかという最後の緊張感もなく、こちらが勝つことが100%分かっている法廷劇がひたすら繰り広げられるのみです。好意的に捉えれば、エンターテイメントとしての装飾を排除した製作陣の真摯な姿勢の現れとも解釈できるのですが、ここまで何も起こらないのは映画としてちょっと寂しいかなと思います。ドラマ面についても、製作側が意図しているほど感動的には仕上がっていません。2時間感情移入して見てきたベケットが死ねば観客は悲しいと感じるに決まっているのですが、それ以上の感動につながっていません。ベケットと家族とのドラマがばっさり落とされているようでしたが、ここを克明にしておけば印象は変わったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2010-09-05 00:42:06)
50.  フリーダム・ライターズ
熱血先生ものとしては手堅くまとまっているのですが、あまりに良い子ちゃんな仕上がりで教育テレビでも見ているような印象を持ちました。先生と生徒が心を通わせる過程は随分とすんなりいってしまい、葛藤や軋轢が不足しています。例えば、生徒がいかに先生の授業に感動して生き方を改めようと思っても、それまでの不良仲間から距離を置くことや、所属していたギャングを辞めることには相当な苦労が必要なはず。そのような現実的な葛藤があまりに少なく、先生が良いことを言えばすぐに響く性根のまっすぐな生徒ばかりであり、なんだか都合の良い美談を聞かされているような気がしました。また、彼らが通じ合うきっかけとなった日記の扱いも雑で、あれだけ荒れていた生徒達が初日から素直に日記を書き始め、「先生、読んで」と自分達の気持ちをさらけ出す展開には疑問です。「小学校5年生程度の国語力しかない」と言われた不良達が、初日からそこいらの大学生でも書けないような達者な文章を披露することも不自然。実話を元にした物語ですが、舞台となる1994年から本作が製作される2007年までの13年間で、当事者達にとって都合の良い形に思い出が変質していったのではないでしょうか。そして本作の製作陣の姿勢を疑ったのが、熱血先生と対立することとなる教科主任の扱いです。生徒の心を掴むため形にはこだわらない熱血先生に対して、教科主任は形式的にカリキュラムをこなせばそれでよしと考え、事あるごとに熱血先生の障害となります。確かにこういうタイプはどの職場にもいて、たいていの場合、やる気ある人間の足を引っ張る有害な存在となるのですが、この教科主任を完全な悪として描く本作の姿勢には賛同できません。ある行動をとる人物を一定の型にはめ、それを一方的に悪と非難することは、人種間の対立を乗り越えて互いを知り合えという熱血先生の指導にまさに反しています。確かに彼女は頭が固く、教師でありながら生徒のためを思った行動のとれない人物でしたが、本作の舞台となるような荒れた学校においては、教師を無視する生徒とは真剣に向き合わず、お役所的に授業をこなすのみとする先生の処世術も、決して否定することができません。そうした他の先生達の背景を描くことなく、一方的に悪と断罪する姿勢には疑問です。作品のモデルとなった熱血先生がこの描写を良しとしているのであれば、この先生の性根も疑ってしまいます。
[DVD(吹替)] 4点(2010-08-04 00:11:32)(良:1票)
51.  プレデターズ(2010) 《ネタバレ》 
本作と「1」は、「エル・マリアッチ」と「デスペラード」の関係みたいなもので、リメイクと続編の中間のような感じです。さすがはロドリゲスだけあって「1」へのリスペクトが十分に感じられる脚本に仕上がっていて、随所に「1」を思わせる場面が見られます。本作の血がたぎるようなラストバトルは必見なのですが、その盛り上げ方・作品の息づかいまでが「1」に似せて作られており、そのリスペクトは相当なものです。音楽も「1」の勇猛なテーマ曲をそのまま使っており(しかし、今回はなぜかアラン・シルベストリが担当していない)、あの景気の良い音楽を最新作でも聞くことが出来て、それだけで興奮してしまいました。一方で「2」や「AVP」シリーズはなかったことにされており、この辺りのガンコさもオタク監督ならでは。物語は基本的に「1」と同じ流れで進行していくのですが、プレデターにも複数の種族があって、種族間で性格が異なるというのが本作の新機軸。今回相手となるのは我々の知っているプレデターではなく、より野蛮で凶暴そうな奴らです。こいつらの見た目の怖いこと!いつものプレデターを見るとホッとしてしまった程です。性格もより残忍であり、地球に来ていた高潔な狩人とはわけが違います。ラストでは、種族間の敵対関係を利用して我々の知っているタイプのプレデターが味方に付くという燃える展開まであって、シリーズ化に伴うバージョンアップとしては、この新機軸はなかなか良かったと思います。。。こうしたプレデターズに対する人間キャラクターもよく作り込まれています。特殊部隊員からヤクザから性犯罪者までをズラっと揃えた異色の顔触れなのですが、内輪揉めや仲間内の友情なども月並みだが自然に盛り込まれており、キャラクターで勝負させると、やはりロドリゲスは良い仕事をします。役者で特に良かったのはエイドリアン・ブロディで、彼が演じるのは「1」のシュワに相当する役柄なのですが、肉体派のイメージのなかったブロディが知性と残酷さとサバイバル能力を兼ね備えた、シュワと比較しても見劣りしない立派な戦士となっています。この化け方は全盛期のデ・ニーロ並みで、オスカー俳優の底力を見たような気がしました。一方でフィッシュバーンは作りすぎ、やりすぎで、彼の登場場面では物語が一時的に失速します。このキャラさえいなければ、より引き締まったアクション映画の佳作になったはずです。
[映画館(字幕)] 7点(2010-07-12 20:25:52)(良:2票)
52.  プルーフ・オブ・ライフ
映画の展開そのままに、撮影現場でラッセル・クロウとメグ・ライアンが本当に不倫をしてしまい、ゴシップの種にはなったものの映画としてまともに鑑賞されなかった気の毒な作品ですが、実はかなりよく出来ています。トニー・ギルロイの脚本は相変わらずキレがよく、プロの男を描かせるとこの人は最高の仕事をします。要件をビシっと述べるソーンの話し方は本当にかっこよく、現場を知り尽くしたプロという設定に負けないキャラクターがちゃんと構築されています。このソーン役にクロウを配置できたことは幸運で、スーツを着て粘り強く交渉する知的な姿も、迷彩服を着て敵地に乗り込む元特殊部隊としての姿も両方完璧にハマっており、「この人に任せておけば安心だ」という安心感も漂わせています。筋肉隆々でありながら知性を感じさせ、おまけにラブシーンをやれる色気を持った役者はハリウッドでもかなり希少であり、クロウでなければ演じられなかったキャラクターだったと思います。彼に対するメグ・ライアンもなかなかのものでした。本作以降は急激に衰えるものの、少なくとも2000年当時はハリウッドのトップにいた女優さんだけあって、華があるし演技も悪くありません。「♪恋する女はキレイさ~」とヒロミ郷も歌ってましたが、全出演作中もっとも美しく撮られているのが本作でもあります。なぜか常にノーブラでしたが、あれには何か理由でもあったんでしょうか?胸の垂れ具合は正直さみしかったです。。。作品の評価に戻りますが、監督も良い仕事をしています。ヘタに見せ場を入れず交渉の緊迫感だけで上映時間の大部分を引っ張っているのは監督の手腕によるところが大きいし、なんといってもラストのアクションがあまりに見事で驚いてしまいました。この監督さんはアクションを撮るイメージがなかったのですが、正直そこいらのアクション監督よりも腕前は遥かに上です。連絡を常にとりながら機動的に動く特殊部隊のアクションのかっこいいこと!ミッション物のアクションでは、本作のラストを超える映画を見たことがありません。ここでもクロウは大活躍で、銃を持った姿が本当に様になっています。彼が銃を撃つ映画は本作以外では「クィック&デッド」と「アメリカン・ギャングスター」くらいしかありませんが、銃がかなり似合う俳優さんなので、もっとアクションをやればいいのにと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-02-07 21:04:12)
53.  プラトーン 《ネタバレ》 
さすがは従軍経験者が作った作品だけあって、他の戦争映画とは説得力が違います。ジャングルの行軍で脱水症状を起こしたり、アリにたかられたり、雨の中で寝たりと、実際の現場を知ってる人間ならではの描写がこの映画を支えています。また、「強い北ベトナム軍」がきちんと描かれていることにも感心します。従来のベトナム戦争映画においては、負け戦だったはずなのになぜかアメリカ軍はベラボーに強く、一方で北ベトナム軍はヤラレ役に徹していました。そして、「アメリカは力では勝っていたが、メンタルで勝てなかった」と結論付けるのがお決まりのパターン。アメリカ人にとってのベトナム戦争の認識とは、自分の命も省みず突っ込んでくるアジア人の狂気に近い真剣さに勝てなかったというものであり、キューブリックですら、その認識に縛られた作品を作っていました。一方本作では、アメリカ兵達が強気なのは戦闘員のいない村を襲った時だけで、北ベトナム正規軍がやってくると聞けばビビりまくり、戦場ではパニックを起こしてボロ負けします。アメリカは神出鬼没のゲリラに負けたのでも、アジア人の野蛮なまでの狂気に負けたのでもなく、正規軍同士の戦いで負けたという、恐らくは史実に忠実な描写がなされています。このような切り口のベトナム戦争映画は現在に至るまで本作が唯一となっており、これも当事者として現場に立ち会っていたストーンならではの視点なのでしょう。残念だったのは、味方同士が私怨で殺し合うという展開が極端すぎて、全体から浮いてしまったことでしょうか。本作はストーンの思惑をも超えるほどリアリティの面で成功しており、そのため、戦場における殺人というショッキングな展開がいかにも作りもの臭くなっているのです。味方として与えるべき支援を与えず、嫌いなやつを見殺しにしたくらいの展開の方が調度良かったのではないでしょうか。また、比較的低予算で製作されたため銃のエフェクトがチャチなのも残念でした。こちらも、実際にアジアのジャングルで撮影した他の場面のビジュアルが良すぎたために、弱点が際立ってしまったという印象です。
[DVD(吹替)] 7点(2010-02-06 17:57:01)(良:2票)
54.  フルメタル・ジャケット
戦友がバタバタと死に、その度に物語が生まれる戦争というおいしい題材を手にした時、映画監督はドラマや哲学を語ろうとします。プラトーン然り、ディアハンター然り、地獄の黙示録然り。しかしキューブリックは本作においていかなる主張もせず、戦争とは何か、ベトナム戦争とは一体何だったのかという断片を切り取ることのみを行っています。かつて「突撃」でベタベタの人間ドラマをやった以上、同じ題材で同じことはやらんという巨匠ならではのこだわりなのか、それとも天才たる先見性の為せる技なのか、ともかく前述の作品達よりも二歩も三歩も先を行った作品となっています。公開当時、あまりのショックから「これは軍隊の非人間性を描いたものだ」と勘違いされた前半の訓練についても、あれは海兵隊の訓練を忠実に再現しただけのものであって、あらためて見ると非常に客観的です。ハートマン軍曹は新兵達の前に立ち塞がる脅威ではあるものの、ヒールを演じているだけということを匂わせる描写がいくつも存在しています。人種差別はせず、クズとして全員平等に扱うと発言したり、「神を信じない」と言ってハートマンに楯ついたジョーカーを「根性がある」と言って認めたりと、決して個人的な感情から新兵達を罵倒しているのではなく、無茶苦茶に見えて実は訓練に必要な言動をとっていることがわかります。海兵隊に集まるのは徴兵された者ではなく、志願して軍隊に入ってきた者達です。そんな英雄気取りの若者を、わずか8週間の訓練で生きて祖国に帰還できるフルメタルジャケットに育て上げねばならない。いったん彼らの人格やプライドを粉々に壊し、真っ白になったところで生きて帰るための行動パターンや思考様式を流し込んでいるのです。ちなみに私が一番驚いたのはトイレの様子で、個室や仕切りはなく、便器がズラっと並んでいるのみというシンプルにも程がある作り。海兵隊はう○こも人と顔を合わせながらするのかと、そこまで徹底したプライドの破壊には心底恐れ入りました。後半は前半と比較すると平凡になりますが、それでも視覚的な見せ場は充実しています。カメラワークが秀逸で、戦場を走る兵士の背中をローアングルから捉える、戦争映画でお馴染みのショットなどは、本作が初めてではないでしょうか?かねてから素晴らしかった音楽の使い方にはさらに磨きがかかっており、こちらはタランティーノに多大な影響を与えたことが伺えます。
[DVD(字幕)] 8点(2010-01-28 22:12:56)(良:3票)
55.  プレッジ 《ネタバレ》 
この映画をはじめて見たのは学生の時でしたが、当時は「淡々とした展開でオチも決まらない中途半端なサスペンス」という印象で、鑑賞したこともすぐに忘れてしまいました。しかし社会に出て人生経験もそれなりに積んでから再度観賞すると、人生というものを鋭く描いた生涯忘れられない作品となります。努力は美しいことである、正しい行為は正しい結末へつながっているというハリウッド的な思考回路を完全否定、いかに正しい目的のためであっても、いくら愚直に頑張っても報われないことはある、それが裏目に出ることだってあるという情け容赦のない、しかしリアリティのある物語です。 もし主人公ジェリーが浮かれ気分のままパーティーに留まりあの現場に行っていなければ、もし被害者家族に対して口先だけで対応し約束(プレッジ)などその場限りで忘れるような人物であれば、定年後の余生は順調に送れていたことでしょう。しかしジェリーはあの現場に立ち会い、被害者家族と話すという誰もが躊躇した役を引き受け、そして家族との約束を忘れない正しい警察官でした。そんな、正しくあることが最悪の結末をもたらすというこの皮肉。 また、ジェリーが個人としての幸せに身を寄せようとする時、事件の名残が彼の前に現れ、約束を思い出させます。念願だったメキシコ湾へのフィッシングへ旅立とうとする時、好みの雑貨屋を手に入れ穏やかな余生を目の前にした時、ロリ・クリーシー親子と疑似的な家族関係を築き幸福な家庭を手にしようとした時、ジェリーは事件の残像と遭遇して、幸福を掴む寸前で事件へと戻っていきます。通常の映画であればこうした残像は目的を忘れた主人公に正しい行動を取らせるための「サイン」なのですが、本作では主人公の人生を狂わせることとなります。 結末は衝撃的ですが、ただ観客にショックを与えて終わりではなく、人生の真理のようなものを突き付けているところに、他の映画にはない深さがあります。また、先述した「サイン」の扱いなど普通の映画であれば主人公が報われるような流れを示しておきながら、観客の先読みを利用してこれを裏切る脚本の巧さにも感心しました。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-12-16 12:58:31)
56.  プレデター
「コマンドー」でアクション映画のひとつの最終形を提示した後は、「レッドソニア」「ゴリラ」「バトルランナー」と箸にも棒にもかからない映画に出演していた州知事。アクション俳優としての適性がありすぎるためキャラが立ちすぎてしまい、彼が暴れるに足る敵がいなかったのです。共産主義国と戦っていたスタローンとは違い、東欧出身で激しい訛りのある州知事ではソ連を相手にするにも違和感があることも大きなネックでした。そんな中、「1000人の敵もひとりで倒してしまうコマンドーと、宇宙から来た凶悪エイリアンが戦ったら?」という中学生レベルの企画を持ってきたジョエル・シルバーは、アクション映画のプロデューサーとしてまたしても百点満点すぎる仕事をしています。カレーライスにトンカツをのせてみよう、ハンバーグに目玉焼きをのせてみよう、単純だがその豪快なサービス精神に惚れてしまう、そんなナイスな企画です。以上、着想の段階では冗談のような趣旨の本作なのですが、一方で映画の作りは意外なまでに丁寧なもので、このサジ加減、プロとしての誠実な仕事ぶりは大変評価できます。。。まず脚本。州知事のみならずひとりひとりのキャラが立ちまくった特殊部隊の面々はよく作り込まれています。序盤にて彼らの圧倒的な強さを見せつけ、そんな彼らが得体の知れない敵に狙われていることを認識し、やがて壊滅へと追い込まれていくという展開はバランスの良い配分となっています。プレデターがなかなか姿を現さないという焦らし、そしていよいよ全貌を現すタイミングも良く、アクション映画の脚本としてはかなり完成度の高いものと言えるでしょう。次にプレデターのデザインですが、これは全盛期のスタン・ウィンストンが担当し、さらにジェームズ・キャメロンがスケッチに手を加えたという贅沢な過程で生み出されただけあって、そのインパクトは強烈なものがあります。ハイテクを使いこなし、一方で屈強な体力も有する野獣というありそうでなかった特性のエイリアンなのですが、ハイテクと野性味のバランス、見た目の異様さ、そして他に似たもののない斬新さが同居した、非常に秀逸なデザインとなっています。。。唯一残念なのはマクティアナンの演出が一本調子なことで、プレデター発見→特殊部隊が銃を乱射という同じようなアクションを何度も見せるだけなので、画にメリハリがありません。もう少し工夫が必要だったでしょう。
[地上波(吹替)] 6点(2009-10-12 00:41:05)
57.  ブレイド(1998) 《ネタバレ》 
シリーズが3本も作られ、テレビシリーズ化までされた作品だけあって、ブレイドのキャラが魅力的です。日本刀を振り回し、もう片方の手では銃を乱射、黒コートにサングラスの出で立ちでカンフーを決めるという、男子の憧れの結晶のような素敵なキャラクター。彼が登場するナイトクラブの乱闘は、その素晴らしすぎる武装とアクションに大興奮でした。そのかっこよさは「リローデッド」のモーフィアス、「アンダーワールド」のセリーン、「リベリオン」のクラリック達に受け継がれましたが、やはり最高なのはブレイドです。このキャラはウェズリー・スナイプスが演じたことが最大の強みで、この人はベルリン映画祭主演男優賞受賞者にしてマーシャルアーツの達人(12歳ではじめ、空手は5段の腕前)、動ける役者がアクションをやったことで、後続のキャラ達にはない凄味や説得力があります。また、まるでマフィアのようなバンパイア社会の作りこみも面白く(「アンダーワールド」に丸パクリされましたが)、バンパイアは何百年間も人間社会を裏で牛耳っており、警察権力も掌握しているため人を殺しても事件にならないという設定には、「我々が知らないだけで、この社会の裏側ではバンパイアとブレイドが戦っている」という他のアメコミ作品とは違った感覚があって新鮮です。ブレイドは社会から外れた無法者であり、警官に暴力行為を働くは、襲ったバンパイアから「活動資金がいる」と言って金品を奪い取る(ヒーローものに付きまとう活動資金の謎をうまくクリアー)はのやりたい放題。こうしたブラックな面も魅力的なのです。。。と、見るべきところは多いものの、お話の方がイマイチどころかイマニぐらいなのが残念。夜のシーンばかりでブレイドがデイウォーカーである設定がまったく活かされておらず、「ヴァンパイア最期の聖戦」のように、お休み中のバンパイアのアジトに襲撃をかけ、日光の下に引きずり出すという気の利いた展開があってもよかったように思います。またバンパイア社会にしても、チンピラを従えたフロストがいとも簡単に下克上できてしまうのでは、せっかくの設定が死んでしまいます。ブレイドと母親のエピソードはなくてもいいぐらいに印象に残らないし、フロストが血の神を蘇らせようとする動機は説明不足です。ついに蘇った血の神も意外と簡単に退治してしまい、計ったように尻すぼみに盛り下がって映画は終了してしまいました。
[DVD(字幕)] 5点(2009-09-21 19:43:01)
58.  ファーゴ
監督が何を言いたかったのかよくわからない映画でした。もしかしたら、ド壷にハマる人間を眺めるブラックコメディをやりたかっただけなのかもしれませんが、コーエン兄弟の映画にはコメディとは思えない度の過ぎた毒があり、最後に明確なオチやネタバラシもないため、「これは一体どういう映画だったのか」と自分の中で消化しきれない部分が残ります。脚本や演出の技術は非常に高いため、「よくわからなかったが、何か良いものを見たのだろう」という錯覚すら抱かせます。。。以上、全体の総括ができなかったため高い得点は付けませんでしたが、本作を構成するパーツは魅力的です。失態を重ねる無能な犯罪者と、さほど苦労もなく彼らを追い詰める田舎の妊婦所長(体を張って犯罪に立ち向かう一般的な警察像へのアンチテーゼ?)という構図からしてよく出来ています。一般の映画に出てくる犯罪者は頭のキレるプロフェッショナル揃いですが、現実的に考えると、頭の良い人間は犯罪に手を染めません。マトモな頭があれば、犯罪はリスクが高すぎることがわかるのです。よって、場当たり的に行動し、ちょっと考えればわかるようなミスを山ほど残していく本作の犯罪者は、ある意味で真を突いています。他方これに対する妊婦所長は、この手の映画にありがちなウルトラC級の推理などは披露しません。現場の状況から常識的に推測できることをつなぎ合わせ、それを辿ることで難なく犯人へと行きついてしまいます。殺人の現場に立っていてもランチやおやつの心配をしたり、捜査の過程でよその街に寄ることがあれば昔の友達に会ったりと、決して執念の捜査というわけではなく、また平気で人を殺す犯罪者への怒りを口にすることもなく、田舎のお役所仕事という側面が強いことにも独特のリアリティがあります。他にも、ガラスの外に現れた覆面の男を見ても状況が掴めず、誘拐犯が家に侵入する様子をボーっと眺める被害者のリアクションなど、映画としては掟破りだが確かにリアルだという描写が多く、監督達の鋭さには舌を巻きます。
[DVD(吹替)] 6点(2009-07-21 19:05:49)
59.  フィクサー(2007)
本作は人生の岐路に立たされた男の物語であり、訴訟絡みは彼の人生を変えるイベントにすぎません。宣伝文句を期待して観た人はガッカリしたと思います。しかしドラマとしては超一流。人生の半分ですべてに行き詰った男の姿がリアルに描かれます。弁護士とはいえ名門大学出身ではないため、華々しい法廷ではなく裏のフィクサーとして生きるクレイトン。汚れ仕事しか知らない自分には明るいキャリアなどない、おまけに事業に失敗し借金を抱え、家族もいない、自分には何も残っていない。でもこんなはずじゃなかった。人より努力して弁護士になったのは、金銭面でもステータス面でも満たされ、人が羨む人生を送るため。でも今の自分はブルーカラーの弟にすら嫌味を言われ、別れた妻は気の弱そうな普通の男と再婚。こいつらより偉くなるはずじゃなかったのか?-そんな彼の折れそうな心を表現する印象的なシーンがふたつあります。ひとつは、借金を返すアテがなく、やむなく上司にお願いに行くシーン。彼は会社のためにフィクサーとなり、そのせいで自分のキャリアは潰れたと主張しますが、これは序盤、同じく汚れ仕事担当であるアーサーに対して彼自身がいった言葉の裏返し。「俺たちは自分で選んでフィクサーになったんだろ」。クレイトンはわかっているのです。でも、環境が悪かったから、会社が悪かったからと自分に言い訳しないとやってられない、この人生に納得いかない。それに対する上司の一言が突き刺さります。「お前が思うほど昔のお前は優秀じゃなかったかも」。もうひとつは、彼の経営するレストランの雇われ店長が、店を潰したことを謝りに来るシーン。彼を無視したクレイトンは、この様子を見てしまった幼い息子に「お前はあいつのような人間とは違う。お前は自分が思ってる以上に強い男なんだ。だからあいつみたいには絶対にならない」と自分自身に言い聞かせるように話しますが、この時の彼の弱さには胸が苦しくなりました。人生の中でもがき苦しむクレイトンは鏡ごしの私たちであり、矢のように鋭いセリフは私たちを貫きます。30代後半で脚本家に転向するもボーン・アイデンティティまでの10年は代表作のなかったギルロイ、15年に渡る下積みを経験したクルーニー、デビュー作が賞賛されるもその後は不遇の10年を送ったソダーバーグ、彼らの人生訓が込められたかのような、本当に重く素晴らしい作品でした。
[DVD(吹替)] 9点(2009-01-14 00:05:44)(良:3票)
60.  ブラッド・ダイヤモンド
「ラスト・サムライ」では時代劇で日本人を感動させるというウルトラCをやってのけたエドワード・ズィックがまたしてもやりましたね。綿密な研究により極めてリアルにアフリカの問題を描いた良作です。ダイアモンド争奪戦を軸に、政府軍とゲリラ勢力の対立、虐殺、少年兵、先進国の無関心、貧困につけこむ大企業・傭兵とさまざまな要素をぶち込み、これを破綻させることなく上質なドラマにまとめ上げ、さらに娯楽作としても満足の仕上がりにしてみせる手腕は相変わらず見事としか言いようがありません。ロケーションにこだわった映像の説得力は抜群でアフリカの悲惨な現実を浮き彫りにするし、アクションも見ごたえ十分。少年兵のくだりなどは特に恐ろしかった。また、主人公3人がそれぞれの思惑を持ってダイアモンドを目指すあたりにも感心しました。なんだかよくわからない理由でアクションをやる主人公の映画が多い中、本作の登場人物たちはそれぞれにしっかりとした動機を持っているので、余計な疑問を持たずにドラマに集中できましたから。「アミスタッド」「グラディエーター」とアフリカ人役でおなじみジャイモン・フンスゥ、頭の良い美人をやらせたら天下一のジェニファー・コネリー、「ハムナプトラ」「24シーズンⅣ」など胡散臭いえらいさんにピッタリのアーノルド・ボスルー、各自よくハマっていました。ただし唯一残念だったのがディカプリオで、確かに彼はよく頑張っていました。超現実派のひねくれ者が次第に人間味を取り戻す過程を嫌みなく巧みに演じていたし、アクションも非常によかった。ただ、アフリカの内戦を戦い抜いた百戦錬磨の傭兵にはどうしても見えないという大きな弱点が。体の線が細いし、あの童顔ではヒゲを生やしてもあまり強そうには見えません。同世代の俳優であればマーク・ウォルバーグあたりの方がより傭兵らしく見えたと思います。こういうとこ、顔のいい俳優は損ですよね。本人がいくら頑張っても、ルックスのせいでできる役柄が相当限られてしまうので。トム・クルーズもブラッド・ピットも苦労しているところですが、ディカプリオは兄貴分のジョニー・デップのように演技とルックスを両立できる俳優になれるのか。とりあえず今は成長過程だと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2007-04-13 01:41:28)(良:2票)
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