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1.  フェイブルマンズ 《ネタバレ》 
スピルバーグの映画って「怖い」ですよね。異世界とか怪物とかの「それ」ではなく、人間が怖いといったらありきたりですが、人と人のあいだにある「絶望的な溝」みたいなものが垣間見えてしまう「怖さ」っていうのかな。自分が「これは理解できないかもしれない」っていうものが目の前にあって、でもそれとなぜか対峙しなきゃいけなくって、でもやっぱりわからなくて・・みたいな瞬間。  巨匠の自伝的作品とはいえ「思ってたのと違うらしい」と聞いていたので、あまり期待せずに見てみたら、その「怖さ」の深源を見てしまったような、そんな作品でした。冒頭の『史上最大のショウ』でサム少年が夢中になったのは機関車の大事故のシーン。大人目線ではいかがなものか、というものではあるのですが、子どもがそこに吸い込まれる感じ、すごくよくわかる。ところがカメラを手にした頃から、サムはフィルムに「得体のしれないもの」が残ってしまう恐ろしさと対面する。父親の友人ベニーに向ける母親の視線なんて、思春期の少年が一番見ちゃいけないやつだし、母親だっておそらくあのフィルムを見るまでは自覚すらしてなかったかもしれない。でもフィルムに残っちゃったものはしょうがない。そこから始まる家族物語の顛末の辛いことったらない。母親はだんだんおかしくなり、猿にベニーと名付けるあたりで、決定的な「溝」が見えてしまう。一方で、イヤ〜なイジメっ子高校生もカメラを通せばなぜか「キラキラ」男子になってしまうことの不思議。カメラを向ければ、被写体の本心だけでなく、自分の奥底にある欲望にまで向き合うことになる・・・。  本作を見ると、映画賛歌どころか、スピルバーグの映画ってもしかして映画への「復讐」だったのか、とさえ思えてくる。偏執狂的ともいえる「恐怖」への執着、ヒューマンな映画にふと挿入される人間を突き放したような表現、そして、他者を理解することに対する諦めにも似た冷静さ、そして不謹慎なものがもたらす高揚感・・・。今までのスピルバーグ映画にあった二面性というか多面性の由来を見た感じ。「復讐」でもあるけれど「ラブレター」でもある。「思ってたのと違った」けど、こんな違いなら大歓迎。こんなん、スピルバーグにしか作れない「恐ろしい」映画でした。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-12-25 17:50:07)(良:1票)
2.  プロミシング・ヤング・ウーマン 《ネタバレ》 
「#Me Too」時代にふさわしいリベンジもので、主人公キャシーが対峙しているのは、友人を襲った人びとやそれを許した周囲の人たちだけでなく、「襲われたほうにも落ち度があった」という性暴力を正当化する語りとそれを支えるセクシズムそのものなのでしょう。「プロミシング・ヤング・マン」を守るためにその男と同等以上の能力も可能性もあったはずの女性の尊厳や生命がないがしろにされる社会のあり方への「復讐」として、彼女は毎晩バーへ行き、泥酔したふりをする彼女に言い寄る男たちに「成敗」を下す。彼女の「復讐」方法は、映画の雰囲気から予想していた「仕事人」風バイオレンスではなく、社会的・心理的に追い詰めるタイプだったのは少し意外だけど、その分リアルで男性観客に居心地の悪い思いをさせるには十分。なかでも、冒頭に声をかけるのが3人組のなかで唯一「ロッカールーム・トーク」に気乗りしないタイプの男だったり、それなりに誠実そうなライアンの「過去」だったり、わかりやすい「クソ男」でない風に見えるやつこそが「クソ」という描き方は秀逸で、男性としてはその分救いがないというか逃げ場がない。フェミニスト気取りの男を含め、どんな男もこの問題からは逃れられないぞという、なかなかキツいメッセージに思える。  そんな本作なので、いちおうは「復讐」は完遂されるものの、それもまた爽快感や解放からはほど遠い。ライアンの「正体」だったり、ラストへの流れはなんとなく予想できてしまう。パリス・ヒルトン、ブリトニー・スピアーズなどの「お騒がせ」系女性歌手曲の使用もテーマには合致しているけれど、少ししつこいというかベタにベタを重ねるようで演出過剰な気がするのも確か。とはいえ今、作られるべくして作られた作品。色褪せないうちに鑑賞することをお薦めします。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-06-11 08:28:21)
3.  ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー 《ネタバレ》 
ストーリー的にはどういう映画になるかはおおよそ予想できていたし、だいたいその通りの作品でした。個人的には、その結果よりも「どうやって」の部分に興味があって久々の映画館へ。上映時間の長さは、王女シュリの成長を丁寧に描いた結果であるとは思うのですが、正直なところ前作のティ・チャラとキルモンガーの因縁と同じ重さを、シュリとネイモアの対決に負わせるのは酷というものでしょう。キルモンガーが背負ってきた大都市ゲットーの黒人の不平等の問題に対して、ネイモアが背負っているのは別名「ククルカン」(マヤの神)が示すようにヨーロッパ人によって滅ぼされた先住民族の物語。  冒頭に嫌な感じでフランスの高官が出てきますが、本作ではフランスの植民地であっていまもその遺産に苦しむハイチが鍵になり、ハイチ独立の英雄と同じ「トゥーサン」という人物の登場が示すように、所々でこれに関連するテーマが匂わされています。この名前は、本作がアフリカと北・南米を蹂躙してきたヨーロッパ人による帝国主義・植民地主義による苦難の歴史から起ち上がってきた人びと(アフリカ人、奴隷・元奴隷たち、そしてアメリカ大陸の先住民族)の物語であることを象徴しています。そして、チャドウィック・ボーズマン=ティ・チャラという軸を失ったため、本作は苦難を生きる/生きた人びとの群像劇的な物語として再構成されました。その結果、話のスケールが広がり、ライアン・クーグラー監督をはじめ製作者のねらいも明確になったと思います。こんな「ポストコロニアルな世界」を娯楽映画、それもヒーロー映画でみることになるとは、と妙に胸が熱くなりました。  ただ、前作からみてもスケールが広がった本作の文脈を日本の観客が読み取ることは難しいと思いますし、抽象度も高いので物語の推進力としても、それを背負うキャラの魅力としても、前作と比べると見劣りしてしまうのはたしかです。そもそも今日的な文化帝国主義の代表ディズニーのマーベル娯楽大作で、植民地主義批判をやってしまうことの矛盾も感じることも。そして、前作以上に女性の活躍が気持ちよく、シュリの「自由奔放な妹」キャラからの成長を長い時間をかけて描いた本作であればこそ、ラストのアレは必要だったのか・・・私には疑問でした。また、せっかく大きくなったスケールが、三作目でまた家族の血縁の物語に戻ってしまうのでは、どっかのSF大作と一緒じゃないかー。次もあるっぽいですが、そうならないことを切に願っています。
[映画館(字幕)] 7点(2022-11-21 19:18:08)(良:1票)
4.  ファントム・スレッド 《ネタバレ》 
あの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に続くPTA監督とダニエル・デイ=ルイスのタッグ、期待しないわけがない。序盤、初老の職人の美しい所作と厳格さ。そこに突如現れるウェイトレス。微妙に美人すぎないのがリアル。でも、服飾職人には彼女の立ち姿に「何か」を見たのだろう。そういう「何か」を描くのはPTA監督の18番。とくに職人の仕事の「完璧さ」を損なう客に対する行動によって、二人が心から「結ばれる」のは、まさに職人世界にある独特な価値観を見事に具現化している。ここまでは、過去最高傑作かも・・とワクワクしながら見てた。しかし、職人とモデルの関係は徐々にねじれていく。ここまでいつの間にかどちらが優位にあるのかわからなくなり、これまであり得なかった災厄を職人の「仕事」に持ち込む。完璧だった仕事が損なわれ、職人から生気が消えていく。PTA監督、これはいったい何を描いているのだろう。ファムファタルものなのかとも思うけれど、ラストの「穏やかさ」には完璧な世界からの解放さえも見える。自身が完璧主義者であり天才肌のPTA監督が描く、天才職人の完璧な世界の彼岸・・・とでもいうわけなのか。ただ、それがもう1人の天才ダニエル・デイ=ルイスの完璧な俳優人生を締めくくる映画なのだとしたら、その解放をもたらしたのが「毒キノコスープ」なのかと思うと、何だか居心地が悪い。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-12-07 21:58:54)
5.  ブラック・クランズマン 《ネタバレ》 
このところドラマや配信方面での活動が目立って、映画作家としては寡作だったスパイク・リーがスクリーンに帰ってきた。KKKへの潜入捜査モノと聞いてちょっと不安な部分もあったけれど、良くも悪くもスパイク・リー「らしい」映画だった。警察署にしても田舎のKKK支部の冴えない面々にしても、全体に漂う「ユルい」ムードは、ボン・ジュノ作品のような韓国映画っぽさもある。潜入捜査系としてはどちらかというと緊迫感よりもシチュエーションが作り出すズレた「笑い」優先。実在するKKKのリーダー、デヴィッド・デュークの黒人英語のマネなんて笑うしかない。そしてアンバランスに挿入されるメッセージ、クワメ・トゥーレの長い演説シーンとそれに心酔する黒人活動家たちの映像、クライマックスで自身も公民権運動の活動家だったハリー・ベラフォンテが語るリンチの物語、そしてリンチを引き起こした映画作品『國民の創生』を見て熱狂する白人男女たち。どれも明らかにバランスを崩して、急にドキュメンタリー的にじっくりとしつこいくらいの濃度で描く。一瞬、KKKもブラック・パワーも「どっちもどっち」と言いたくなるような「濃さ」を見せつけながらも、最後のクレジット前、トランプ大統領自身の「どっちもどっち」発言のニュース映像を見せ、「どっちもどっちではないのだ」と釘を刺す作り。いや、スパイク・リーほどのベテラン作家だったら、「バランスのいい」「ウェルメイドな」映画を作ることだってできるでしょ。こんなアンバランスさではオスカーは取れないってことだってわかってるでしょ。でも、彼は黒人監督として、それでは意味がないことも知ってる。ブラックパワーとホワイトパワーは違うということを言うためには、「お互い辛いよね」で傷をなめ合うのではなく、黒人がどんな歴史を歩んできたのか(「リンチ」の物語だ)、そして今もどんな世界を生きているのか(白人警官に押さえつけられ、殴られるのが当たり前の世界)、その違いをちゃんと見せつけなければいけないから、こんな「時事的」でアンバランスな映画を作ったのだろう。ついでにいえば、『グリーンブック』のようなウェルメイドな作品がオスカーに近いことだって知ってるし、だからこそ、彼自身が壇上で『グリーンブック』を批判するところまで織り込み済みの「作品」であったような気すらしてくる。まだまだこの世界にはスパイク・リーが必要だ。そう思わせるアンバランスで「らしい」一作でした。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-05-10 23:46:29)
6.  フォードvsフェラーリ 《ネタバレ》 
俳優の熱演とレースの迫力で面白かった、のだけれど、終わってみたらたくさんのモヤモヤが・・・。まず、レースシーン。たしかに迫力十分でこの映画の一番の見所だとは思うのですが、「見せ方」がNASCAR的なアメリカン・モータースポーツの見せ方を踏襲してて、ちょっと「ルマン」とは違うような。要するに、ギリギリに接近してのオーバーテイクとクラッシュのシーンが見せ場の中心で、24時間「耐久」レースであるルマンの戦略性やメカニックの重要性は軽視されてしまっている。実は優勝したマクラーレンはちゃんと24時間耐久レースをしていたのに、フォードだけが違うレースをしていて、だから結果がああなった、ようにも見えてしまうのだ。その考えでいけば、あのブレーキを交換してしまうという戦略はやっぱり論外。限界があるブレーキで24時間どう走りきるのかの戦略なのに(実は、あれでレース後失格になるという結末だと思っていたけど、違っていて驚いた)。これって、要するに実はモータースポーツに対する敬意にも欠いていて、アメリカ的な論理を押し切ってしまうのが、あまり愉快ではない。それから、ドラマ部分。主人公2人のあいだの論理の対立や葛藤のようなものはほとんどなく、唯一ぶつかった最初のレース遠征の件も、予定調和過ぎる「殴り合い」で解決・・って。結局、2人のあいだに「生き方」の違いが見られないから、レースカーの開発や出場に向けてのドラマ部分が全く盛り上がらない。ここで盛り上げ役になったのは、いかにも悪役の副社長なんだろうけど、組織の論理というよりはケンへの私怨で動いているように見えて、残念さを増幅させる。じゃあ、ドラマ軽視、レース文化軽視でも主人公2人のレース映画としての爽快さを優先させたのかと思えば、ルマン以後の顛末があまりにバタバタと進んで感情移入する間もなく終わってしまう。これだったら、レースで終幕して、その後は実話ものにありがちな字幕で説明でもよかったような。全体として、マンゴールドの演出は冴えていたと思うけど、脚本が稚拙で映画全体としてもったいないという、よくあるマンゴールド映画のかたちに落ち着いてしまったのが残念。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2020-02-23 23:14:42)(良:1票)
7.  2人のローマ教皇 《ネタバレ》 
アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスの2人のベテラン俳優のやりとりを見ているだけで楽しい。2人ともイギリス生まれの英語母語者なのに、ホプキンスのドイツ訛り英語(ときどきラテン語混じり)の独特の間とか、かつて『エビータ』ではフアン・ペロンを演じたプライスのスペイン語訛り英語のユーモラスな感じとか、役者ってすごいと素直に感心してしまう。そして、2人が母語ではない英語で会話することで生まれる不思議な距離感。意見は正反対でわかりあってるわけではないのに、それでも人間と人間が対話することで生まれる、心のどこかとどこかが「つながった」その瞬間を見事に描いていると思います。そして、物語は、ユーモラスな二人のやりとりの先に、それぞれが過去に犯した罪へとクローズアップしていく。罪ゆえに指導者の座を降りようとするベネディクト16世と、過去の罪に向かい合うがゆえに指導者の立場を躊躇するベルゴリオ枢機卿。リーダーシップとは何か。罪や過ちの「責任を取る」とはどういうことなのか。このあたりの道徳観がすっぽりと抜け落ちた自称指導者ばかりの世の中で、世界で最も古い、権威主義の象徴のようなローマ教会で起きた変化にまだまだ世の中捨てたものではない、という前向きな気持ちにさせてくれるのも素晴らしい。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-01-19 00:00:15)
8.  フランシス・ハ 《ネタバレ》 
『マリッジ・ストーリー』は今年の、『レディ・バード』は昨年のベスト作品だった私にとって悪いわけがない。序盤のグレタ・ガーウィグが踊るシーン。一生懸命踊ってるのは伝わるのに、素人の私が見ても「あ、ダメだこりゃ」と思わせるダンスぶりが素晴らしい。恋愛も友人も家族も、それなりに恵まれているのに満たされない。それでついつい張らなくてもいい意地を張って、金欠のくせになぜかパリに海外旅行してしまう。27歳という、夢を追うにも落ち着くにも微妙な年、『レディ・バード』のその後、『マリッジ・ストーリー』のその前を見ているかのような等身大の痛みと、じんわりと押し寄せる共感。モノクロで、ニューヨークの若者たちを描いて、ここぞというタイミングでボウイの『モダン・ラブ』が流れる、いかにもなアート系ミニシアター風だけど、やってることは人情喜劇。会話劇だけど余計な説明台詞は排除して、噛み気味のタイミングで短いエピソードを詰め込み、俳優たちの魅力的な演技で引っ張っていく手法は、まさにバームバック節。グレタ・ガーウィグとの黄金コンビ(+カイロ・レンになる前のアダム・ドライバーも!)を堪能できる、いまとなっては贅沢な一作です。
[インターネット(字幕)] 8点(2019-12-20 20:52:52)
9.  フロントランナー 《ネタバレ》 
個人的に贔屓なジェイソン・ライトマン監督作品でしかも政治劇ということで期待して鑑賞。大統領予備選挙での最有力候補(フロントランナー)がスキャンダルで転落、という大筋から考えると、政治的な陰謀ドラマ、とくに『ハウス・オブ・カード』的なものを期待してしまいますが、そこはライトマン監督、政治スリラーというよりは、個人の信条が徐々に時代とかみ合わなくなる悲哀の物語として、とてもパーソナルな政治映画という趣でまとめていました。都会的・知的かつセックスアピールもある有力政治家ゲイリー・ハート役にぴったりなヒュー・ジャックマン。信念を持つ政治家としての魅力と男性としてのちょっとした隙の共存が、こんなに似合う俳優もいないかと。そして、その信念ゆえに、彼は自分が陥った苦境を理解できず、記者会見で深みにはまっていく様子の空回り感、無力感も見事でした。自分の「正しさ」を確信するがゆえに、少しずつ変化する時代の空気を感じられない彼の姿にゾッとする男性観客も少なくないのでは? 政治家としての彼を信じながらも、少しずつ溝ができていく記者たちやスタッフとの関係の描き方も丁寧でした。ただ、ダイナミックな政治劇を期待するとちょっと肩すかしかも。なんでもないシーンでの視線や言葉の交わし方、表情とか細かいところに、映画の魅力が詰まっているタイプの作品だと思いました。 
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 7点(2019-06-04 22:38:23)(良:1票)
10.  ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 《ネタバレ》 
前作未見なのに映画館へ。理由は、ここ毎年元旦に奥さんと映画館で『スターウォーズ』を見るのが習慣化してたのに『ハン・ソロ』を夏休み公開するというディズニーの暴挙のせい(こんな中年夫婦けっこう多いと思う)。で、何を見るか迷った結果、奥さんが「Netflixで前作を見たら面白かった」という理由でこれに。ちなみに前作はいつの間にかNetflixのラインナップからは姿を消してしまったため、私は未見。奥さんにあらすじを聞いて、いちおうネットでも内容を確認して映画館へ。結論としては、最低限でも知識があったおかげで、複雑なストーリーも退屈はせずに見れました。ただ、この映画に期待するのはそこなのだろうか・・・という感じのほうが強め。正直、『ハリポタ』もそうですが、J・K・ローリングに期待するのは、独創的な世界観にどっぷり浸ることであって、人間関係ドラマではない気が・・・。その世界観のなかでユニークなクリーチャーがワチャワチャするのを楽しみにしてた部分はあったのだけれど、その意味ではかなりの期待外れ。人間関係っていったって、某SW8作目と同様、最後に実はーーーでした、みたいな後出し感も強くて納得度は低め。あと、舞台設定が1920年代だったからこそ、終盤見せられる現代史とのシンクロに「おおっ」とはなるのですが、この映画で見たかったのってやっぱりそれじゃない、という感じのほうが大きかった。よかった点としては、ジョニー・デップ。キャリア的にも正念場だと思うけど、彼にしては「抑え」が効いていて凄みがあった。
[映画館(字幕)] 5点(2019-01-04 13:31:57)
11.  ファーゴ 《ネタバレ》 
些末な動機で始まった犯罪があれよあれよという間に大惨劇に。これは仕事がうまくいってないときに見てはいけないヤツだったかもしれない(笑)。状況の悪化は底なしなのだ。ウィリアム・H・メイシーが演じきってみせるつまらない男の「器」の小ささ、プロっぽいのにいつも最悪の方向に向かってしまう悪人2人組+同僚、そんな狂った歯車を一人で飄々と解いてみせるフランシス・マクドーマンド、みんな素晴らしい。コーエン兄弟の作風は好みが分かれるとは思うが、90分という時間に悲劇と喜劇を圧縮して見せたという点ではやっぱり最高傑作だと思う。ラストにマクドーマンドがどうやって「あいつ」をパトカーに乗せたのか、ってことだけは謎だったのだけれど、案外マクドーマンドのあのペースには悪人たちもかなわないということなのかもしれない。あと、今年見た『ブレードランナー2049』を思わせるロジャー・ディーキンスの雪の遠景や、同じくド田舎を舞台にした『スリー・ビルボード』でマクドーマンドが見せた本作とは全く違ったアプローチなど、20年後の現代映画につながるあれこれを再発見できるのも楽しい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-05-18 17:20:27)(良:1票)
12.  ブラックパンサー 《ネタバレ》 
MCUはすっかり食傷気味なのだけれど、これは本国での評判も聞いていたのと、もともとライアン・クーグラー監督とは相性がいいので、MCUというよりはクーグラー監督の最新作という気分で映画館へ。今作もやっぱりドラマ部分が魅力で、序盤にワカンダの文化と伝統の豊かさを見せつけながら、中盤からはそれが「閉鎖的な社会」だからこそあり得たという逆説へ持っていく構成は見事だ。そして、なんといっても悪役キルモンガーの存在は圧倒的。現代のアメリカ社会でマイノリティが陥る闇を描くことで、その暴力性や主張に深みをもたせて表現できているし、もともと悪そうに見えないマイケル・B・ジョーダンが演じるからこそ、その暴力の裏にある哀しみまで、しっかりと伝わってくる。冒頭のワカンダの昔話が亡き父がキルモンガーに語りかけてたってわかった時の切なさといったら・・・・。その分、終盤のキルモンガーによってワカンダを二分する戦いになる流れがちょっと性急に感じてしまった。とくにオコエが一転してキルモンガーと戦うくだりなど、もう少し苦悩があってもよかったのではないかなあ。まあ、上映時間があるから仕方のないことではあるけれど、あのあたりの葛藤やティ・チャラ復活への経緯をもう少し丁寧に描いて2時間半の長編になったとしても、自分的にはOKだったかも。あと、韓国での『クリード』を思わせるワンショットのアクション演出はクーグラー監督らしくて印象的だったけど、終盤のアクションは少々平板だったかな。それから個人的にはおまけの国連演説はなくてもよかったかなと思いましたが(それよりオークランドでの黒人少年との絡みのほうがグッときた)、あの演説のストレートなメッセージが、映画館にいっぱいいた春休みらしき中高生男子に少しでも伝わってたら、それも意味があったのかなと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2018-03-15 18:15:12)
13.  プライベート・ライアン 《ネタバレ》 
公開直後、初めて見た時の感想は、圧倒的な冒頭30分に「とんでもないものを作りやがった」と思いつつも、その後のライアン救出作戦の非合理にどうしてもついて行けず、ラストの星条旗の愛国主義っぷりに辟易したという思いで(あと、いつもよりも冴えないジョン・ウィリアムズの音楽と共に)、いい印象を持たないまま一度も再見せず20年近く経っていました。ところが昨日『ダンケルク』を見て、その「ヌルい」感じが引っかかって、この映画を思い出し、冒頭30分だけでもと思って再見したところ、あれよあれよとハマってしまい、最後まで見てしまいました。このドラマ、やはりライアン救出作戦をどう解釈するかがポイントなんだと思うのですが、今回見て気づいて、ゾーっと恐ろしくなったのは、劇中、ライアン救出作戦は「広報ミッション(public relations mission)」だと説明されていること。ということは、この英雄譚は「宣伝(というかプロパガンダ)のために」用意されたことであり、トム・ハンクス扮するミラー中隊長もそのことをちゃんと理解しているのだ。このなんとも非合理な作戦の目的は、「母親に4人目の息子を送り帰す」ことで国内の士気と戦争への支持を保つこと、その1点なのである。イーストウッドが『父親たちの星条旗』で描いたプロパガンダと戦場の乖離というテーマを、この映画は戦場を舞台に描いて見せる。一見すれば、1人の無名兵士を救うために命をかける男たちの英雄物語でありながらも、その底辺には作戦そのものの空虚さと、その空虚を自認しながらもミッションを完遂しようとするミラーの「軍人」としてのあり方にどうにも複雑な思いを描く。だから、この映画に簡単に「感動」してしまってはダメだし(それじゃあプロパガンダと同じだ)、容易に「感動」できないようにスピルバーグはあえて作っているのだろう。ウィリアムズの音楽が冴えないのも、その両義性ゆえだ。彼の音楽は、こうゆう物語には明らかに合ってない。ラストにある色あせた星条旗の意味も、最初に感じた愛国主義なんかではなく、戦争で命を落とした多数の名も無き兵士たちへの鎮魂(彼らが守ろうとしたのは、ライアン家が象徴する無数の平凡な家族だった)と、それでも戦争を遂行する国家の非合理・不条理を象徴するものになる。スピルバーグの恐るべき傑作。
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2018-01-13 17:55:53)(良:3票)
14.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
公開終了間近に映画館で見られてよかった。ドゥニ・ヴィルヌーヴは『ボーダーライン』での絵作りがとても印象的だったので、期待通りのオリジナルな(でも前作ファンを怒らせない程度の共通項を持った)絵が満載で、定番の混沌とした都市だけでなく、冒頭の「農場」から、ラスヴェガスの廃墟、廃棄場、ラストの海から雪までどのシーンも美しい。この点では、2D字幕だったのが悔やまれる。本当はIMAXで見たかった。そして、この絵のなかで展開されるストーリーが本当に切ない。ライアン・ゴズリングはあまり好きな俳優ではないけど、彼にここまでどっぷり感情移入できるとは驚き。自身の存在を否定しながら生きてきた彼が、「自分は実は何者かであるんじゃないか」という思いを抱くことで生まれる残酷な物語。でも、その物語の顛末で「特別ではない生」を受け入れる姿は本当に美しい。遅いテンポもシーンへの没入感づくりという意味では正解。正直『ブレードランナー』1回目でこんなにエモーショナルな体験をするとは思ってもみなかった(前作で、「感動」できたのって何回目だったろう)。一方で、会話シーンなどの描き方にはやや不満あり。ウォレスの登場シーンは恥ずかしいくらいの過剰演出だし、デッカードとKの対話シーンは退屈。ただ、ジョイとラヴの登場シーンはテンポも演出もよかったので、単にヴィルヌーヴ監督(あるいは私)の趣味の問題かもしれない。いずれにせよ、失敗する姿しか浮かばなかったクレイジーなプロジェクトでここまでできればOKでしょう。十分に新しい映像体験だったと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2018-01-05 15:48:53)
15.  ブレックファスト・クラブ 《ネタバレ》 
青春の一作。シンプルマインズのDon't Youを聞いたら懐かしくなって見たくなった。同曲をバックに始まるオープニングは、やっぱり青春映画の新時代を告げたと思う。理由や背景は一切解説されないまま図書館に集まってくる5人の高校生たち。けれど、そこにすでに親との関係性や各自が抱える葛藤がきちんと描き込まれている。通常の学校生活では相容れないであろう生徒たちが、土曜の補習クラスに集まったことで始まる葛藤と友情。完全に悪役扱いの親や先生というのも80年代的だけれど、この割り切りのおかげで5人のやりとりに集中できる。若く演技も未熟な俳優たち(とくにアリー・シーディの作りすぎ演技は今見ると辛い)だけれど、だからこそ音楽やマリファナでハイになっているときの開放感(とくに、5人がそれぞれの形で踊るダンスシーンは本当に楽しい)には、これぞ青春映画!というところを感じるし、告白シーンのシリアスさは演技だけでなく、それぞれの俳優たちの内面を語ってるようにも思えてしまう。ただ、今見ると難点があるのも確か。実は今回見るまで完全に忘れてたのだけど、本作のエンディングでは2組のカップルが誕生してしまう。これは本当に不要! というか、これじゃー「月曜日に会ったら友達だ」っていうブライアンの感動的な一言が台無しだ。アリスンのお化粧もいらないし、それで簡単に惚れてしまうアンドリューも・・・。このあたりの軽さが80年代的なんだと思うのだけれど、この映画のラストは2010年代に見るには、やっぱりちょっと辛かった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-08-19 01:05:06)
16.  ファインディング・ドリー
夏休みということで子どもと鑑賞。ストーリーはほぼ言うことなし。相変わらずのピクサー印で、ドタバタを楽しく見せつつも、一つ一つのアクションにちゃんと意味がある。とくに、ニモとマーリンが「ドリーならどうするか」を考えるところが素敵。たとえ記憶障害を抱えていてついつい「うっとおしい」と思ってしまう相手であっても、相手の目線で物事をみることが、自分との「ちがい」を知り、相手に「共感」して「理解」することへの第一歩だという素敵なメッセージだったと思います。でも押しつけがましくなく、新登場のキャラクターも個性豊かで魅力的。ハラハラしたり、笑ったり、驚いたりしながら、気がついたらピクサーらしい世界観にどっぷり浸かり、ちょっと優しい気持ちで映画館から出ることができました。欲をいえば、中盤から後半はアクションの連続で、位置関係がよくわからなくなったりしても立ち止まって考えるする余裕がなく、ヤマの盛り上がりにつながるようなメリハリがもう少しあってもよかったかな、と思うくらい。
[映画館(字幕)] 8点(2016-07-25 17:02:36)(良:1票)
17.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 
映画公開時、事件の起きたフルートベール駅がある町の近くに住み、実際に事件が起きた地下鉄(BART)にほぼ毎日乗っていました。この映画で描かれる黒人に対する警察の暴力は、いま(2014年夏)ちょうど、アメリカではミズーリ州ファーガソンという町でも大きな問題となり(警察による10代の黒人少年の射殺事件とその後の抗議運動の強圧的な取締・・・)、この映画がアメリカが抱える大きな闇を象徴するものであることを物語っています。このようなテーマですから、当然もっと「主張」や「抗議」を全面に出した映画にすることもできたかもしれません。でも、この映画はそういう方法をとらず、1人の黒人青年の1日を丁寧に描くことによって、アメリカ固有の問題というよりも、普遍的なメッセージを持つ映画として昇華するのに成功したと思います。この映画が描く主人公は、かつて刑務所にいたこともあったが、いまは家族に囲まれ、うまくいかない日常とも対峙しながら何とかまっとうに生きようとしています。彼が過ごす一日は、決して特殊なものではなく、多くの人が共有できるものであろうと思います。また、ラストの事件の描き方も、一方的な正義対悪の図式というよりは、新米警官が取り押さえた相手に抱く不安と恐怖が引き金となっているところも、非常によく考えられた脚本であると思います。この映画は、アメリカの社会問題を深いレベルで描いていますが、それにとどまらず、現代という社会が共有する「他者への不安」と「武装と威嚇への依存」という問題をしっかりと捉えている点で、すばらしい作品です。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2014-09-04 17:23:17)(良:1票)
18.  42~世界を変えた男~
クセのある映画の脚本に関わってきたヘルゲランド監督・脚本ということで期待したけど、内容はストレートな正統派伝記映画でした。差別にひたすら耐え続けるロビンソンの戦いは、周りの人たちの意識を変え、黒人たちにメジャースポーツへの門戸を開きます。そういう意味では、まさに「世界を変えた男」の物語。ただ、なぜ、いまこの映画なのかなあ。アフリカ系の大統領が登場し、MLBはもはや黒人ではなくドミニカなどのカリブ海出身者が多数を占める時代。スポーツの門戸は開いたけど、黒人の若者が直面する問題は依然として深刻で貧困・犯罪・暴力に晒され続けてる。そういう時代の側面に切り込まないと、「今」ロビンソンの映画を作る意味はあまりないように思う。ノスタルジックな偉人伝の域を出るものではないのが残念。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2013-12-08 03:02:01)(良:2票)
19.  プロメテウス 《ネタバレ》 
もう圧倒的な映像も、お約束のおバカな登場人物も「エイリアン印」。映像でごまかされるが深そうで浅い。でも、そういうものだと思えば、最新の迫力ある映像でけっこう楽しめたし、最後のエイリアン登場に「キター」と盛り上がれる。お口から入ってお腹からっていうのも、なぜか現場に取り残される2人組も、「主役の相方」なのにあっという間に殺されちゃうのも、もう定番中の定番になりつつあるけど、それを考えると、やっぱり第1作目の衝撃がハンパなかったというのだけはわかった。それと、ギーガーの造型の凄さもよくわかる。あのタコみたいなのからエイリアンになった瞬間は正直ほっとした。ただ、こういうのを第1作の監督がやっちゃうのは、ジョン・マクティアナンやジョン・アヴィルドセン並みに残念。リドリー・スコットで育ちましたみたいな若手監督にやらせてみてもよかったのでは。
[DVD(字幕)] 6点(2013-02-22 16:45:12)(良:1票)
20.  ブラッド・ダイヤモンド
アフリカ訛りの英語を見事にマスターしたディカプリオ、瞬間的に見せる美しさが光るジェニファー・コネリー、そして家族想いの父親を演じたジャイモン・フンスーの主演3人は見事で、長尺だが最後まで飽きさせない映画としてもなかなかの佳作であるとは感じる。ただ、最後まで何かがひっかかる。同じズウィック監督の『ラストサムライ』がそうだったように、「エンタメ」として成立させるために、相当に単純化されたであろうシエラレオネ内戦(とくにRUF)の描写には注意が必要な気がする。いくら植民地の歴史や多国籍企業の暗躍や政府・軍の腐敗を描いても、この映画のインパクトはそこではなく、図式的に描かれたRUF(あるいはアフリカ人の)残虐さであり、とりわけドラマティックに描かれた少年兵たちの姿であるように思える。この映画を見ることで知る「アフリカ」とは何だろう。『ラストサムライ』を見て日本を「知っている」と語る欧米人の滑稽さを知っている僕たちは、この映画が、娯楽映画の文法にきわめて忠実な作品であり、「アフリカ」はその文法に沿ってのみ描かれていることに気づくことができると思う。映画をみて、最後までつきまとっていた違和感の正体は、そんなことなのかと思いつつ、まだまだすっきりないというそんな気分である。たぶん、すっきりする必要もないと思うのだが。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-05-02 05:57:23)(良:3票)
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