Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さんの口コミ一覧
ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順1234
投稿日付順1234
変更日付順1234
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  ブラックホーク・ダウン
アメリカ万歳映画だと言う人もいますが、それは間違い。これはアメリカがどうしたとか、ソマリアがどうしたとかいう話ではなく、もっと普遍的な、戦争というテーマを包括的に扱った映画だと思います。ソマリア内戦はあくまで題材なのです。空襲の被害をテーマにした「火垂るの墓」が反米映画ではないのと同じです。この映画は政治的な意味において、戦争を肯定も否定もしていません。意見を超えた真実を見せようとしてるんです。「パール・ハーバー」のような代物とは混同されないように。戦場を徹底的に見せるという目的において、この映画は完全に成功しています。映像ですべてを語ってしまってますから。そして戦争というものの捉え方も、この映画は正しいと思います。兵士はなぜ戦うのか?そこに仲間がいるから、それだけ。反戦でも厭戦でもなく、これが戦場の真実、戦争を職業とした兵士の意見だと思います。アメリカの正義も、民主主義の布教もここにはないのです。この映画が提示するのは、よい悪いではないのです。
10点(2004-08-01 17:31:05)(笑:4票) (良:10票)
2.  ブレーキ・ダウン 《ネタバレ》 
東宝東和によって意味不明な放題をつけられたり(ブレーキダウンって何?)、実は共通点の少ない『激突!』と無理やり関連付けられたり、ジョナサン・モストウが驚異の新人扱いされたりと(モストウは1989年に監督デビュー済)、日本公開時にはやや過剰な宣伝がなされていた本作ですが、肝心の中身は、小細工に走らず一気に見せる、竹を割ったようなサスペンスアクションとして仕上がっています。90分、本当にハラハラドキドキさせられました。。。 本作の構成は極めて秀逸で、『バルカン超特急』のようなミステリーものと見せかけておいて、実は『悪魔のいけにえ』の流れを汲むテキサスものの変種でしたという本編には嬉しくなりました。奥さんがいなくなるミステリー部分にしても、『フライトプラン』のようなおかしな引っ張り方はせず、設定のボロが出る前にさっさとネタバラシをして第2幕へ入ってしまうという思い切りの良さには感動しました。第2幕はノンストップのサスペンスアクションとなるのですが、上記の通り、根底にはテキサスものの精神が横たわっているため、通常のサスペンスアクションにはない不快感が作品のスパイスとなっています。また、犯人像もよく考えられています。この手のサスペンスアクションでは、どれほど不気味な人間にするかという方向性で犯人像が作られていくものですが、本作はそれとは正反対のベクトル、家庭を持ち、意外と良いパパだったりもするという設定を置くことで、その一方で部外者に対してはいくらでも凶暴になれるという残酷性をより強調することに成功しています。これを演じるJTウォルシュのねちっこい存在感も素晴らしく、私が心から死んで欲しいと思った悪役トップ5に名を連ねるほどの印象を残しています。。。 もうひとつ評価すべきは、カート・ラッセルの演技の幅の広さです。従来より多様な役柄を演じてきたラッセルですが、本作ではそんなラッセルの個性が作品に大きく貢献しています。序盤では、田舎者に絡まれても喧嘩になるのが怖くてヘラヘラと誤魔化すような男だった主人公が、徐々にバイオレンスに染まっていくという『わらの犬』的な役柄を見事モノにしています。後半では「普通の男がそこまでやれるか」とツッコミたくなるような過激なアクションもこなすわけですが、ラッセルが本来持つ個性によって、そこに大きな違和感を覚えないという点にキャスティングの妙があります。
[DVD(字幕)] 9点(2014-07-15 01:22:19)(良:2票)
3.  フィクサー(2007)
本作は人生の岐路に立たされた男の物語であり、訴訟絡みは彼の人生を変えるイベントにすぎません。宣伝文句を期待して観た人はガッカリしたと思います。しかしドラマとしては超一流。人生の半分ですべてに行き詰った男の姿がリアルに描かれます。弁護士とはいえ名門大学出身ではないため、華々しい法廷ではなく裏のフィクサーとして生きるクレイトン。汚れ仕事しか知らない自分には明るいキャリアなどない、おまけに事業に失敗し借金を抱え、家族もいない、自分には何も残っていない。でもこんなはずじゃなかった。人より努力して弁護士になったのは、金銭面でもステータス面でも満たされ、人が羨む人生を送るため。でも今の自分はブルーカラーの弟にすら嫌味を言われ、別れた妻は気の弱そうな普通の男と再婚。こいつらより偉くなるはずじゃなかったのか?-そんな彼の折れそうな心を表現する印象的なシーンがふたつあります。ひとつは、借金を返すアテがなく、やむなく上司にお願いに行くシーン。彼は会社のためにフィクサーとなり、そのせいで自分のキャリアは潰れたと主張しますが、これは序盤、同じく汚れ仕事担当であるアーサーに対して彼自身がいった言葉の裏返し。「俺たちは自分で選んでフィクサーになったんだろ」。クレイトンはわかっているのです。でも、環境が悪かったから、会社が悪かったからと自分に言い訳しないとやってられない、この人生に納得いかない。それに対する上司の一言が突き刺さります。「お前が思うほど昔のお前は優秀じゃなかったかも」。もうひとつは、彼の経営するレストランの雇われ店長が、店を潰したことを謝りに来るシーン。彼を無視したクレイトンは、この様子を見てしまった幼い息子に「お前はあいつのような人間とは違う。お前は自分が思ってる以上に強い男なんだ。だからあいつみたいには絶対にならない」と自分自身に言い聞かせるように話しますが、この時の彼の弱さには胸が苦しくなりました。人生の中でもがき苦しむクレイトンは鏡ごしの私たちであり、矢のように鋭いセリフは私たちを貫きます。30代後半で脚本家に転向するもボーン・アイデンティティまでの10年は代表作のなかったギルロイ、15年に渡る下積みを経験したクルーニー、デビュー作が賞賛されるもその後は不遇の10年を送ったソダーバーグ、彼らの人生訓が込められたかのような、本当に重く素晴らしい作品でした。
[DVD(吹替)] 9点(2009-01-14 00:05:44)(良:3票)
4.  フレイルティー/妄執
ビックリしました。ビル・パクストンというぱっとしない俳優の初監督作で、しかもサイコサスペンスという難しいジャンルに挑戦なんて誰が期待するんだって思いますが、これが大変な出来で本当に驚かされました。確かに脚本の出来が秀逸というアドバンテージもありますが、監督の采配が驚くほど的確であることも否定できません。何を見せて何を見せないべきかという判断が非常に的確だし、役者から良い縁起を引き出しているのも自身が俳優のビル・パクストンならではと言えます。この映画が独特なのはサイコキラーの父親を持った子供達の物語ということであり、狙われる被害者や犯人を追う刑事を主役としてきたこれまでのサイコサスペンスとは一線を画しているところにこれまでにはない面白さがありますが、こうした前代未聞の題材だけに従来のサスペンスとはアプローチが大きく異なります。「羊たちの沈黙」のレクター博士や「セブン」のジョン・ドゥなどはおおよそこの世のものとは思えぬ異常性を発揮して作品の要となりましたが、ここでのサイコキラーはただ異常なだけではいけないのです。愛する父親が殺人鬼となった時に子供達はどんな反応を示すのかがテーマだけに、異常性を発揮する前の親子関係がきっちり描けていないと題材は価値を失います。そこに来て監督ビル・パクストンはこの特殊な親子関係を違和感なく見せてくるのですから大したものです。同時に俳優ビル・パクストンは良い父親と狂気のサイコキラーを多重人格ではなく同一人物の中で見せるという難しい演技も成功させているし、まさかここまで才能のある人だとは思いませんでした。知られざる傑作とはこのことなんだなと思わせる魅力的な映画です。
[DVD(吹替)] 9点(2006-11-18 01:32:10)(良:1票)
5.  ブラディ・サンデー
大して有名な映画でもないし、ポール・グリーングラスという人もさして有名監督ではないのであまり期待せずに見たのですが、ほとんどの日本人が知らないうちにこんなすごい映画が作られていたことに驚きました。1972年に起きた実話をきわめてマジメに再現する作品で、映画的な脚色やドラマティックな演出はことごとく排除され、音楽すら使わないという徹底ぶりなのですが、だからと言ってこの手の映画にありがちな企画倒れや製作者の自己満足に終わることなく、映画として十分におもしろく作られているのがすごいところ。この映画はもはや「ドキュメンタリータッチ」という生易しいものではなく、1972年1月30日という日を丸ごと再現することに挑み、成功しています。あたかもその日その場にカメラが居合わせたかのような映像やセリフが続いて空気感まで再現してみせ、観客もその場にいたかのような臨場感を味わわせてみせます。ドラマ的な脚色は廃されているため前半の話は淡々と進むものの、無作為なように見えて実は巧みに話をまとめていくので退屈さは感じさせず、見る側のテンションを落とさないまま「血の日曜日事件」へと突入していきます。「血の日曜日」での監督の手腕は本当に圧倒的で、平和的に行われるはずだったデモが徐々に混乱していき、やがて丸腰の市民への発砲へ至っていくまでの様子をデモ隊、イギリス軍の双方の視点を巧みに交えながら、きわめて的確に描いていきます。また画面作りもしっかりしていて、実際のデモの中にカメラがいたとしか思えないほどリアルな映像であの事件を観客にも追体験させる一方で、同時に映画的な見せ場としての機能も十分果たしており、不謹慎ながら見ている側を興奮させるのです。このポール・グリーングラスという監督はタダモノではありません。画面作りに並ではない才能を見せると同時に、インテリジェントな題材の脚本を自ら書き、もっとも適切な手法で見せてくるのですから。ウィリアム・フリードキンが今の世代の監督なら、多分こんな風になっただろうなと思わせるようなすごい監督です。
[DVD(字幕)] 9点(2006-10-24 22:32:18)(良:1票)
6.  フライト・オブ・フェニックス
これはすごいです。超地味なキャスト、超地味なお話のためにほとんど注目されなかった作品ですが、鑑賞後には「本物の映画を見たなぁ」と大満足できる傑作でした。オーソドックスで新しいものは何もないものの、話やキャラクターをちゃんと追いかけることでここまで面白いものができるんですね。あれこれ揉めながらもみんなで力を合わせるという展開はまさに直球勝負ですが、そこに小エピソードを適度なタイミングで挿入して話の緊迫感を維持するという計算の巧みさもあり、これはまさに理想的な脚本のあり方でしょう。そうした話の構成のうまさがあったからこそ、ラストがあれほど爽快だったんです。映画を好きになった子供の頃に感じていた、あの映画の本質的な楽しみを久々に味わったって感じです。そんな極上の脚本に加えて、ジョン・ムーア監督のビジュアルセンスも炸裂。「エネミーライン」のような駄作においてすら独特のビジュアル意匠を見せ付けていたジョン・ムーアのセンスがここでは大きく作品に貢献しています。思わず「もう一回見せて」と言いたくなるほどの圧倒的な墜落シーンの後はすべて砂漠。砂漠を延々2時間も見せられるわけですが、ジョン・ムーアの映像は砂漠の美しさや恐ろしさをあますところなく伝え、2時間の映像を単調にはしていません。「ドーン・オブ・ザ・デッド」のザック・スナイダー、「コンスタンティン」のフランシス・ローレンスと並んで、これからのハリウッド大作を引っ張って行きそうな才能だと思います。願わくば、マイケル・ベイではなくデビッド・フィンチャーのように育って欲しいものです。
[DVD(吹替)] 9点(2005-11-19 19:29:58)(良:1票)
7.  ブロブ/宇宙からの不明物体
この手のジャンルでは最高クラスの傑作です(B級モンスター映画でという括りですけど)。軍隊出動あたりでモンスター映画から怪獣映画に進化し、後半の怒涛の展開には燃えに燃えました。「ドリームキャッチャー」や「BATS蝙蝠地獄」など、軍隊出動のモンスター映画は数あれど、ここまでテンションをあげてくれる映画は滅多にありません。さすがフランク・ダラボン。主人公が高校生ってあたりがいかにも80年代ですね。これや「ザ・グリード」の続編をずっと待ってるんですけど、いつになったら作ってくれるんでしょう?
9点(2004-06-05 15:50:34)
8.  ブルー・リベンジ (2013) 《ネタバレ》 
情念のぶつかり合いこそが復讐映画の醍醐味なのですが、本作にはそれがありません。冒頭20分にはほとんどセリフがなく、観客に対する状況説明もなし。虚ろな目をしたホームレスが人を殺すのですが、この時点で観客は誰が誰を殺したのかがよくわからないため、そこには何の感情も起こらないのです。その後の説明で、どうやらこのホームレスは親の仇を殺したということが分かるのですが、当のホームレス自身も復讐による高揚感や、人を殺したことへの後悔といったありがちな感情をほとんど表していないという点が、作品の異様さをより高めています。 本作のテーマは復讐の連鎖であり、対テロ戦争開始後のアメリカ映画ではさんざん扱われてきて若干陳腐化の傾向もあるテーマですが、本作ではかつてなかった切り口でこれが描かれています。主人公は両親を殺されたショックで精神をやられてホームレスとなっていたが、現在の淡々とした表情を見るに、親の仇に対する怒りも時間とともに薄れていたようです。しかし、事前にやると決めておいた復讐は一応果たしに行く、失うもののないホームレスだから刑務所に入れられることも怖くないし。主人公がやり場のない怒りや、どうしようもない使命感に突き動かされているのではなく、ただ何となく復讐に走るという点が異様だったし、そのドラマ性のなさにある種のリアリティを感じさせられました。 しかし、事は一筋縄にはいきません。復讐を果たした自分が服役して終わるだろうという見込みは外れ、加害者家族は警察に被害届を出すのではなく、主人公(と姉一家)に報復するという行動に出ます。ここに、被害者一家と加害者一家の血で血を洗う抗争が始まるのですが、ザ・ホワイトトラッシュといった感じのイカつい風体と重武装、しかも貧困層らしくやたら人数の多い加害者一家に対して、戦闘力ゼロに等しく不意討ちをかけるしか逆転の目のない主人公はモルドールに潜入したホビット同然の存在。この絶望的な戦力差が作品に大変な緊張感を与えており、特に姉宅襲撃場面では『ノーカントリー』を初めて見た時並みにハラハラさせられました。 その後、加害者一家側の事情も明らかにされ、序盤で主人公が殺した相手が実は親の仇ではなかったこと、両親殺害の犯人はすでに死んでいることが判明します。しかし、一度始まった復讐の連鎖は誰にも止められず、第一の当事者である親の世代が全員鬼籍に入っているにも関わらず、子の世代はもはや何の目的かもよくわからない殺し合いを延々と続けます。これを終わらせるには、どちらかの家族が全滅するしかない。アメリカの対テロ戦争やパレスチナ問題など、多くの国際問題に共通する論点を主要登場人物10名程度の小さなドラマに圧縮してみせた脚本の出来が素晴らしく、単なるバイオレンスの佳作に終わらせない含蓄ある作品となっています。 監督のジェレミー・ソールニアーは記事によっては驚異の新人扱いされているものの、実際には本作以前にも10年ほどのキャリアを持つ人物です。長い下積みに終わりが見えず本作を最後に引退しようと考えていたものの、その最終作がカンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞して映画祭の目玉作品のひとつとなったことから、キャリアが一転しました。人生とは分からんものです。次回作の”GLEEN ROOM”も引き続き高評価を得ており、今後、大化けする可能性のある監督として要注目なのです。
[インターネット(字幕)] 8点(2016-06-23 18:13:38)(良:2票)
9.  ブルーバレンタイン 《ネタバレ》 
子供とふざけていると「バカバカしいからやめて」、付き合っていた頃には喜んで聞いてくれていた冗談を言うと「うるさい」、ムードを出そうとすると「気持ち悪いから近寄らないで」、我が家で日夜繰り広げられている光景ですが、本作にはこれらに相当する場面がことごとく盛り込まれており、倦怠期に入った夫婦生活の実態が容赦なく描写されています。結婚を経験した人であれば世界中の誰もが「わかる、わかる」と頷ける内容となっており、個々の描写のリアリティで本作は他作品を圧倒しています。 同時に、ストーリーテリングの技の多さや、その洗練度でも本作は驚異的な水準に達しています。説明的なセリフはまったくないものの、小さなエピソードの積み重ねによって登場人物の背景や感情は完璧に伝わって来るし、何気なく眺めていたことの意味が後に明かされるという語り口は、映画全体に対する観客の関心を維持することに繋がっています。『エターナル・サンシャイン』や『(500)日のサマー』等、恋の始まりと終わりを同時に見せる映画は他にもあり、かつ、このジャンルは良作揃いだったりもしますが、映画としての完成度の高さでは、本作が最高ではないかと思います。 偶然の出会いから劇的な結婚まで「私たちは特別なカップル」と思っていた夫婦であっても、お互いへの熱を維持することは難しい。この二人は破局しますが、どちらが悪いわけでもないという点に男女関係の難しさがあります。冒頭、ある朝の一幕がすべてを物語っているのですが、この二人は生活のテンポがまるで噛み合っていません。物事が手順通りに進んでいかないとイライラするシンディに対して、子供の悪ふざけに付き合い、完全に立ち止まることもあるディーン。この差は人生観にも影響を与えていて、何かを成し遂げねばならないと常に目的意識を持つシンディに対して、家族と楽しく生きられることこそが重要であり、仕事なんて食べるための手段に過ぎないんだから一生懸命やる必要はないと考えるディーン。どちらも間違っていないからこそ問題は深刻で、直すべきものが見当たらない中で、時限爆弾のように破局が迫ってきます。そして一線を超えた後は、二人がともに引き返すことを願っても、もう戻れません。ディーンが勢いで結婚指輪を茂みに捨てるものの、すぐ間違いに気づいて指輪を探しに戻るが、もう見つからない。この場面が象徴的でした。
[DVD(字幕)] 8点(2015-08-29 00:09:20)(良:1票)
10.  ブッシュ 《ネタバレ》 
オリバー・ストーンは、政治的にはブッシュを毛嫌いする一方で、その出自には共通点が多く(同い年で、出身大学も同じ。強い父親の支配に苦しんだ経験も共通している)、ブッシュに対して同情的な視点で本作が作られている点は興味深かったです。『ニクソン』もそうでしたが、ストーンは嫌いなタイプの政治家を題材としながらも、その人となりをリサーチするうちに憐れみの感情を持つようです。 父親に決められたレールに乗っているうちは何もかもがうまくいかず、ブッシュの人生が好転したのは父の影響下から離れて自力で道を切り拓くようになって以降でした。実業家としての成功も自力であれば、政治家転身の際にも父親からの支援は受けられず(優秀な弟のジェブが優先された)、その人柄の良さと目的達成意欲の強さでコツコツと地盤を作って合衆国のトップにまで登りつめた苦労人であり、優秀すぎる父親を持ったことは彼にとって重荷でしかありませんでした。一方で内情を知らない第三者からは「親の七光り」だの「苦労知らずのボンボン」だのと言われ、そこを徹底的に攻撃されるという点が印象的でした。政治や外交について定見らしきものはなく、彼の政治活動は父親から認められようとする行為の延長だったようです。そこに、911が起こります。 戦争に係る意思決定は象徴的で、従軍経験のある父ブッシュは、湾岸戦争で米兵の犠牲が最小限で済んだことを幸いとし、イラク軍からの激しい抵抗が予想されるバグダッド侵攻を見送って早々に撤退する決定をしましたが、一方ベトナム戦争時代に兵役逃れをした子ブッシュは、どれほどの犠牲が出るのかも考えずに開戦の決定をします。父ブッシュとの繋がりが深いコリン・パウエルからは「911の弔い合戦なのに、なぜビン・ラディンではなくフセインと戦うのか」「フセイン政権を倒せばイラク国民に対する責任が生じるが、それを背負っていく覚悟はあるのか」と問われるが、それに対して明確に答えられない。イラク戦争で犠牲になった米兵やイラク人には気の毒ですが、ブッシュ個人の物語として見れば、イラク戦争も父親を越えようとするイベントのひとつだったのです。 ブッシュ本人は悪人ではない、むしろ近くにいれば友人になりたくなるような人物ではあるが、あの激動の時期の大統領としては最悪の人物だった。人生で常に望まれない場所に居る人物の悲喜劇として、本作は非常に見ごたえがありました。
[DVD(吹替)] 8点(2015-08-03 18:07:24)
11.  プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命
『ブルーバレンタイン』の監督によるクライムドラマですが、丁寧な映画作りは相変わらずです。本作で提示されるのは、人間とは善と悪の間を行ったり来たりしながら生きているのだというひとつの真理。第1部の主人公・ルークは、自分が感知せぬ場所で生まれた息子を見捨てることができず、現在の生活のすべてを捨てて元カノと息子の元に向かうのですが、当の元カノはとっくに新しい恋人を作り、義父を含めた親子3人で仲良く暮らしていました。その後、ルークは悪質なストーカーと化すのですが、それでも観客はルークに感情移入し、彼の心理や行動を肯定したい気持ちにさせられます。やっていることは最低だが、当初の目的は美しく崇高だったではないかと。このあたりの感情の持っていき方のうまさには感心させられました。もしくは、第2部の主人公・エイヴリー。身内の不正に我慢できず行動を起こした正義の人だったが、この一件を自身のキャリアアップに利用しようと画策した瞬間から、狡猾な悪魔になってしまう。善とも悪とも割り切れない人間の業の深さが、見事にドラマ化されています。。。 豪華キャストの中でも、ルークを演じるライアン・ゴズリングのカリスマ性には目を奪われました。本作の登場人物の中で、もっともダメな人間はルークなのですが(ストーカーになる→復縁のための金が欲しくて強盗する→犯罪のスリルに飲まれて自滅する)、彼こそが作品中もっとも光っているという点に、ゴズリングの威光を感じさせられました。 
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2014-04-08 00:12:55)
12.  ブロークバック・マウンテン
本作は男同士の『ロミオとジュリエット』。悲恋ものとしてはかなり王道をいく内容なのですが、登場人物をゲイにするというコロンブスの卵的な発想によって陳腐化した物語を見事に蘇らせており、企画自体の目の付け所はかなり良かったと思います。何百年にも渡って全人類に愛されてきた物語を映画の骨子としているのですから、ある意味では負けるわけのない企画なのです。アン・リーもそのことをよく理解しているようで、奇をてらった演出は一切せず、素材の魅力だけで勝負しています。演出しすぎてバッシングを受けた『ハルク』の経験からきた判断なのでしょうが、この方向性は正しかったと思います。。。 ただし問題は、ゲイの性をどう描くのかという点にありました。男同士が抱き合ったりキスをしたりする場面なんて、実写でやると笑っちゃうしかないわけですから。かのイーストウッド御大ですら、『J・エドガー』では直接的な性描写を避けています。そこにきてアン・リーはこれを正々堂々と描いてみせるというチャレンジを行い、かつ、それに成功しました。裸の男が抱き合って会話する場面なんて見れたもんじゃないのに、この映画ではきちんとしたドラマのパーツとして生きているのです。これには驚きました。性描写に説得力があったのでドラマにも深みが増し、最後の密会で喧嘩別れする場面なんて、悲しくて涙が出そうになったほどです。。。 主演4人の演技もすべて最高です。本作の後、この4人は全員売れっ子となったのですから、後付けではありますが非常に的確なキャスティングだったと言えます。ゲイの末路を知っているために感情を押し殺そうとするヒース・レジャーと、気持ちを隠しきれないジェイク・ギレンホールの対比は面白かったし、20年という時間経過を伝える演技が出来ている点でも感心しました。ロマコメのイメージが強くて女優として伸び悩んでいたアン・ハサウェイは本作で思い切った役柄を演じ、見事イメージチェンジに成功しました。女優さんがキャリアに弾みを付けるためにヌードとなることは日本でもよくありますが、ここまで成功した例はかつてないのではないでしょうか。
[DVD(吹替)] 8点(2013-01-26 22:06:07)
13.  4デイズ 《ネタバレ》 
ポール・ハギスの「スリー・デイズ」にレニー・ハーリンの「5デイズ」と紛らわしくて仕方がない”デイズもの”の一本ですが、これがなかなかよくできています。ワンシチュエーションもののサスペンスとしては年に一本出会えるかどうかというレベル。設定に無理はあれど90分ならば勢いで乗り切れる。これは思わぬ拾いものでした。 【注意!ここから壮絶にネタバレします】 とにかく凄いのが脚本で、観客の先読みを巧みに利用する形で物語をぐいぐいと進めていきます。「実は核爆弾などなかったことがラストで明かされ、拷問の無意味さを説いて映画は終わる」、私はこんな結末を予想しながら観ていました。私以外の多くの観客も同じようなことを考えたのではないでしょうか。しかしそんな浅はかな先読みなど脚本家は百も承知であり、この”狂言説”はまんまと中盤のトリックに利用されます。「どうせ”狂言でした”がオチだろう」と思っている観客の目の前で53人の市民を爆殺してみせ、この犯人はホンモノであることを強く印象付けるのです。こうして予想を裏切られた観客はその後の展開がまったく見えなくなるのですが、観客が真っ白になったところで「ここからが本番だ」とばかりに二転三転の怒涛の展開を叩き込んでくる周到さには舌を巻きました。。。 この結末が読めない物語の中では、観客は己の倫理観をも問われることとなります。容疑者を痛めつけることは悪いことだということは明らかです。一方で、本気で人を殺そうとしている犯人を相手にした時には、綺麗ごとだけでは解決しないこともまた事実。では、どこまでの強硬手段ならば許されるのか?現実の戦いを知っているサミュエルは徹底的にやろうとしますが、トリニティらオーディエンス達はいつまで経っても腹を決められません。ショッピングモールを爆破された直後には殺意を持って犯人に襲いかかるものの、怒りが喉元を過ぎると再び生温いヒューマニズムが頭をもたげる。最終的には、米国人の良識によって核爆発が引き起こされるという皮肉な結末を迎えます。エグイ拷問をやっているサミュエルと犯人は、実は冷静な計算の中で動いており、良識派ぶってその拷問を眺めているオーディエンスの方が感情に流されているという構図こそが本作のミソ。「世論は本当に戦いを理解しているのか?」ということを鋭く問いかけてきます。
[DVD(吹替)] 8点(2012-05-04 02:03:16)(良:1票)
14.  フェア・ゲーム(2010)
シンディ・クロフォードのお色気バカアクションと同じタイトルなので何となく舐めた目で鑑賞をはじめたのですが、本作は驚くほど硬派で見応えがあり、その面白さには目を見張りました。国家vs個人というハリウッドお決まりのテーマを扱っているのですが、個人が権力を敵に回した時の恐ろしさというものが非常にうまく表現されており、際立った見せ場がなくとも全編に渡って緊張感が維持されています。そして、「攻撃は最大の防御」と言わんばかりに政府に対する攻撃姿勢を強める旦那と、「これ以上傷を広げたくない」と沈黙を守る妻の対立もうまく処理されていて、どちらの主張にも「わかるわかる」と納得させられました。結果、観終わった後もあれこれと考えさせる内容となっており、21世紀版「インサイダー」とでも言うべきレベルには到達していると思います。。。 薬漬けにされた上で処刑されたサダム・フセイン、特殊部隊により殺害されたことになっているビン・ラディンと、スッキリしない結末を迎えるアメリカの対テロ戦争は今後も映画化されていくと思いますが、本作は将来生まれる作品群のお手本となることでしょう。 
[DVD(吹替)] 8点(2012-04-21 19:31:07)
15.  復讐捜査線
メル・ギブソン8年ぶりの主演作にして、監督マーティン・キャンベル、脚本ウィリアム・モナハン、編集スチュアート・ベアード、音楽ハワード・ショアというご祝儀のような豪華メンバーが顔を揃えているだけに相当な映画なのだろうと期待して鑑賞したのですが、そんな期待を上回るバイオレンスの快作でした。デビュー作「マッドマックス」以来、家族を殺される男をひたすら演じてきたメル・ギブソンの真骨頂、怒りと悲しみに溢れるヒーローを演じさせると相変わらずこの人はよくハマります。彼に対する敵方の設定もよく考えられていて、巨大軍需企業、その軍需企業に飼われている上院議員、政府、政府の汚れ仕事を請け負う民間セキュリティ会社が同じ目的を持ちつつも別々の指令系統で動いており、そのために大きな混乱が生じているという設定は、妙に説得力があって「なるほどな」と感心しました。特に印象に残ったのがレイ・ウィンストン演じるセキュリティ会社の男で、「殺しを職業としている以上、指令が下れば個人的に恨みのない相手であっても俺はためらわずに殺す。俺にそうさせないよう、お前は絶対に一線を越えるなよ」とわざわざターゲットに警告しにくる職人気質にはグっときました。アクションは控え目なのですが、要所要所では腹にガツンとくる重厚な見せ場が用意されています。バイオレンス一筋のマーティン・キャンベルの手腕はこの手の渋い銃撃戦でこそ発揮されるようで、派手すぎないアクションのカッコよさには大興奮なのでした。
[DVD(吹替)] 8点(2011-12-19 01:00:10)(良:2票)
16.  プルーフ・オブ・ライフ
映画の展開そのままに、撮影現場でラッセル・クロウとメグ・ライアンが本当に不倫をしてしまい、ゴシップの種にはなったものの映画としてまともに鑑賞されなかった気の毒な作品ですが、実はかなりよく出来ています。トニー・ギルロイの脚本は相変わらずキレがよく、プロの男を描かせるとこの人は最高の仕事をします。要件をビシっと述べるソーンの話し方は本当にかっこよく、現場を知り尽くしたプロという設定に負けないキャラクターがちゃんと構築されています。このソーン役にクロウを配置できたことは幸運で、スーツを着て粘り強く交渉する知的な姿も、迷彩服を着て敵地に乗り込む元特殊部隊としての姿も両方完璧にハマっており、「この人に任せておけば安心だ」という安心感も漂わせています。筋肉隆々でありながら知性を感じさせ、おまけにラブシーンをやれる色気を持った役者はハリウッドでもかなり希少であり、クロウでなければ演じられなかったキャラクターだったと思います。彼に対するメグ・ライアンもなかなかのものでした。本作以降は急激に衰えるものの、少なくとも2000年当時はハリウッドのトップにいた女優さんだけあって、華があるし演技も悪くありません。「♪恋する女はキレイさ~」とヒロミ郷も歌ってましたが、全出演作中もっとも美しく撮られているのが本作でもあります。なぜか常にノーブラでしたが、あれには何か理由でもあったんでしょうか?胸の垂れ具合は正直さみしかったです。。。作品の評価に戻りますが、監督も良い仕事をしています。ヘタに見せ場を入れず交渉の緊迫感だけで上映時間の大部分を引っ張っているのは監督の手腕によるところが大きいし、なんといってもラストのアクションがあまりに見事で驚いてしまいました。この監督さんはアクションを撮るイメージがなかったのですが、正直そこいらのアクション監督よりも腕前は遥かに上です。連絡を常にとりながら機動的に動く特殊部隊のアクションのかっこいいこと!ミッション物のアクションでは、本作のラストを超える映画を見たことがありません。ここでもクロウは大活躍で、銃を持った姿が本当に様になっています。彼が銃を撃つ映画は本作以外では「クィック&デッド」と「アメリカン・ギャングスター」くらいしかありませんが、銃がかなり似合う俳優さんなので、もっとアクションをやればいいのにと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-02-07 21:04:12)
17.  フルメタル・ジャケット
戦友がバタバタと死に、その度に物語が生まれる戦争というおいしい題材を手にした時、映画監督はドラマや哲学を語ろうとします。プラトーン然り、ディアハンター然り、地獄の黙示録然り。しかしキューブリックは本作においていかなる主張もせず、戦争とは何か、ベトナム戦争とは一体何だったのかという断片を切り取ることのみを行っています。かつて「突撃」でベタベタの人間ドラマをやった以上、同じ題材で同じことはやらんという巨匠ならではのこだわりなのか、それとも天才たる先見性の為せる技なのか、ともかく前述の作品達よりも二歩も三歩も先を行った作品となっています。公開当時、あまりのショックから「これは軍隊の非人間性を描いたものだ」と勘違いされた前半の訓練についても、あれは海兵隊の訓練を忠実に再現しただけのものであって、あらためて見ると非常に客観的です。ハートマン軍曹は新兵達の前に立ち塞がる脅威ではあるものの、ヒールを演じているだけということを匂わせる描写がいくつも存在しています。人種差別はせず、クズとして全員平等に扱うと発言したり、「神を信じない」と言ってハートマンに楯ついたジョーカーを「根性がある」と言って認めたりと、決して個人的な感情から新兵達を罵倒しているのではなく、無茶苦茶に見えて実は訓練に必要な言動をとっていることがわかります。海兵隊に集まるのは徴兵された者ではなく、志願して軍隊に入ってきた者達です。そんな英雄気取りの若者を、わずか8週間の訓練で生きて祖国に帰還できるフルメタルジャケットに育て上げねばならない。いったん彼らの人格やプライドを粉々に壊し、真っ白になったところで生きて帰るための行動パターンや思考様式を流し込んでいるのです。ちなみに私が一番驚いたのはトイレの様子で、個室や仕切りはなく、便器がズラっと並んでいるのみというシンプルにも程がある作り。海兵隊はう○こも人と顔を合わせながらするのかと、そこまで徹底したプライドの破壊には心底恐れ入りました。後半は前半と比較すると平凡になりますが、それでも視覚的な見せ場は充実しています。カメラワークが秀逸で、戦場を走る兵士の背中をローアングルから捉える、戦争映画でお馴染みのショットなどは、本作が初めてではないでしょうか?かねてから素晴らしかった音楽の使い方にはさらに磨きがかかっており、こちらはタランティーノに多大な影響を与えたことが伺えます。
[DVD(字幕)] 8点(2010-01-28 22:12:56)(良:3票)
18.  プレッジ 《ネタバレ》 
この映画をはじめて見たのは学生の時でしたが、当時は「淡々とした展開でオチも決まらない中途半端なサスペンス」という印象で、鑑賞したこともすぐに忘れてしまいました。しかし社会に出て人生経験もそれなりに積んでから再度観賞すると、人生というものを鋭く描いた生涯忘れられない作品となります。努力は美しいことである、正しい行為は正しい結末へつながっているというハリウッド的な思考回路を完全否定、いかに正しい目的のためであっても、いくら愚直に頑張っても報われないことはある、それが裏目に出ることだってあるという情け容赦のない、しかしリアリティのある物語です。 もし主人公ジェリーが浮かれ気分のままパーティーに留まりあの現場に行っていなければ、もし被害者家族に対して口先だけで対応し約束(プレッジ)などその場限りで忘れるような人物であれば、定年後の余生は順調に送れていたことでしょう。しかしジェリーはあの現場に立ち会い、被害者家族と話すという誰もが躊躇した役を引き受け、そして家族との約束を忘れない正しい警察官でした。そんな、正しくあることが最悪の結末をもたらすというこの皮肉。 また、ジェリーが個人としての幸せに身を寄せようとする時、事件の名残が彼の前に現れ、約束を思い出させます。念願だったメキシコ湾へのフィッシングへ旅立とうとする時、好みの雑貨屋を手に入れ穏やかな余生を目の前にした時、ロリ・クリーシー親子と疑似的な家族関係を築き幸福な家庭を手にしようとした時、ジェリーは事件の残像と遭遇して、幸福を掴む寸前で事件へと戻っていきます。通常の映画であればこうした残像は目的を忘れた主人公に正しい行動を取らせるための「サイン」なのですが、本作では主人公の人生を狂わせることとなります。 結末は衝撃的ですが、ただ観客にショックを与えて終わりではなく、人生の真理のようなものを突き付けているところに、他の映画にはない深さがあります。また、先述した「サイン」の扱いなど普通の映画であれば主人公が報われるような流れを示しておきながら、観客の先読みを利用してこれを裏切る脚本の巧さにも感心しました。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-12-16 12:58:31)
19.  フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い 《ネタバレ》 
優しいママに育てられ更生した元悪ガキ4人兄弟がママの死をきっかけに乱暴者に戻って復讐するという、男の男による男のための正しい映画です。葬式で兄弟が久しぶりに集まるシーンからして実に男描写がうまく、今はおとなしくしてるが目の奥にはワルさが活き活きと残ってるあの様子は実に絶妙。兄弟の絆やママへの愛情も冒頭の15分ほどでほぼ描き切れており、この辺は本当にうまいなと感心しました。ママは話の要でありながら登場シーンはほんのわずかしかありませんが、それでも兄弟が復讐に燃える動機となるには十分なほど彼女の人柄は伝わっているのです。この辺の出来がいいのでママのエピソードはもっと見たい気もしましたが、映画全体が湿っぽくなりすぎてテンポを妨げないようドラマを最小限にとどめている製作側の判断は正しかったと思います。荒っぽい下町の描写も類型的ながらもよくできており、出てくるやつがたいてい幼馴染みでいい歳したおじさんが「あいつはケンカ強くてよぉ」なんて言ってる様子は見ていて楽しかったです。世界中どんな国でも下町ってのはあんなもんなんですね。ちゃらちゃらしてる町の不良や若いチンピラを「本当のワルを教えてやる」とでも言わんばかりに4兄弟が痛めつける様子も実に痛快。男の見たいものが凝縮された素敵な映画です。がしかし、欲を言えば話のクライマックスをもっとエモーショナルにして欲しかったです。ママに加えて末の弟まで殺されて復讐に燃える3人が、多勢に無勢を承知の上で敵のアジトにかち込んでいくなんて展開にしてくれれば最強の漢映画となったかもしれないのに、そこそこトンチの利いたあの展開は話の流れにあまりそぐわないような気がしました。あんちゃんとボスの素手ゴロという決着の付け方は良かったのですが、ボスがあんちゃんと互角にやりあうってのも流れに沿ってないと思います。実力もないのに下の者に威張りまくるというキャラ設定だっただけに、今はカタギやってるが本当は死ぬほど強いあんちゃんにボコボコにされまくり、徹底的に情けない姿をさらす最期の方があのタイプには合ってたと思うし、今はツメを隠してる元不良が久しぶりに本物の実力を見せるカタルシスを味わうにもその方がよかったと思います。が、そんな不満も帳消しになるほど面白く、下町や不良の空気が気持ちよく、下町映画(そんなジャンルあるのか?)としては最高クラスの出来だったと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2006-11-03 20:54:21)(良:1票)
20.  ブラック・ダリア
この話にデ・パルマというのは最高の組み合わせではないでしょうか。性と殺人が密接に絡み合うというテーマはこれまでのデ・パルマが執拗に描いてきたものだし、残酷でドロドロしてるんだけどなぜか上品という風格もデ・パルマでこそ出せる独特の味わい。この話をもっともうまく見せられる監督はデ・パルマであり、またデ・パルマの才能をもっとも発揮できるのはこの話であり、両者にとって理想的な出会いであったと思います。正直、この映画の脚本自体はそれほどクォリティが高くありません。まず話が入り組みすぎてわかりにくすぎ。かなり映画を見慣れており、映画文法やデ・パルマの手法を正確に把握できる者ですら、最初から最後まで集中していなければ理解できないほどわかりづらいというのは映画の脚本としては致命的。一般の観客では到底理解不能な話になっているのはさすがに問題だと思います。また、それほどわかりづらい話でありながら、謎解きの興奮が薄いのも映画の脚本としては失格。見ている人間の頭をさんざん悩ませながら、結局謎のほとんどはセリフで語られてしまいます。もっと動きのある謎解きにしてくれないと、映画でやっている意味が半減します。そんな完璧とは言えない脚本なのですが、かなり良いメンバーが集まったおかげで謎解き以外にも見るべき要素が加わった結果、映画としては救われたと思います。時に過剰に感じられるデ・パルマのテクニックがこの映画の雰囲気には良く馴染んでいて、饒舌なテクニックにより業の深い話を効果的に見せると同時に、テクニックにはある意味機械的な感触があるおかげで、必要以上に陰惨さを感じさせず話の風格を妨げさせないという、相反するふたつの効果を挙げているのは驚きです。また、ジョシュ・ハートネットとスカーレット・ヨハンソンのふたりが期待以上に良く、このふたりが出ているだけで画面が引き締まっていました。ヒラリー・スワンクに絶世の美人の資産家令嬢をやらせたのはミスキャストでしたが、確かに彼女の演技力にも見るものはあり、そこに期待してのキャスティングだったのだろうなと思います。そんなわけで決して完成された映画ではなく、見る者がどの要素に重きを置くかで評価の大きく変わる映画ではありますが、私としては大いに評価したいと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2006-10-28 15:22:31)(良:3票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS