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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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261.  レゴバットマン ザ・ムービー 《ネタバレ》 
「会社のロゴ、どーん」だの、「黒から始まる映画は傑作」だのと、映画のキャラに関係しないはずの本編の外郭部分へバットマンがツッコミを入れまくるという序盤から遊び心の連続。前作『レゴ・ザ・ムービー』同様、権利関係にいくら金使ったんだと気になるほどのキャラクターの洪水に(バットマンを打倒するためにサウロンとヴォルデモートとエージェントスミスとキングコングとグレムリンがゴッサムシティに攻め込んできます)、スピーディかつ思考を凝らした見せ場の連続と、メタ的な遊びと王道の娯楽が混ざり合ったハイレベルな作品となっています。 また、本作で特筆すべきはバットマンについての真剣な考察がなされている点であり、かつて両親を亡くした強烈なトラウマから、そもそも人と関わらなければ別離の苦しみを味わうこともないという回避行動を無意識のうちにとるようになり、さらにはマスクの影に隠れる内に、もはや他人を求めているという自覚すら失った悲しいモンスターとして描かれています。その異常性は明らかな狂人であるジョーカーをも上回るレベルであり(ジョーカーは己の感情をある程度把握できている)、バットマンが抱える精神疾患がかなり丁寧に扱われています。ティム・バートン版や『ダークナイト』でもバットマンという非現実の存在に現実味を与えるべくその心理への考察はある程度なされていましたが、バットマンの心の闇をテーマに丸々一本映画を撮ったのは本作が初ではないでしょうか。前述した直感的に楽しい部分だけでなく、こうしたじっくり考えさせる部分もあって、かつ両者のバランスの取り方も絶妙なものであり、アメコミ映画としては理想的な完成度となっています。 うちの子供達も本作を楽しんでいましたが、この子達が大人になって本作を見返せば、この映画はこれほど深いことを語っていたのかとまた新たな驚きがあるはずです。そう考えると本作はめちゃくちゃに賞味期限の長い映画で、好きになれば一生付き合えるほどの情報量を持っています。レゴを題材としたファミリー向け映画であっても子供だましの作品にはせず、一切手を抜かずにこれほどのこだわりを持って作りあげたクリエイター達の志の高さも含めて、本作は愛せる作品になっています。 最後に、公開時には署名運動まで起こった芸人による吹き替え問題ですが、小島よしおは予想外に上手で、意外なことに作品の雰囲気を壊していません。自分のギャグをちょいちょい挟んでくる点はちょっとめんどくさかったし(当人の判断ではなく配給会社の指示に従っただけなのでしょうが)、吹き替え版の想定顧客と考えられる子供達には古すぎて伝わらないんじゃないかと心配になったりもしましたが、こちらも作品の品質を毀損するほどのノイズにはなっていません。最近では配給会社も慎重に人選するようになったのか、かつてのように作品全体を崩壊させるレベルのダメ吹き替えはなくなってきているように感じます。
[インターネット(吹替)] 7点(2018-02-28 00:13:43)(良:1票)
262.  グレイテスト・ショーマン 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 頭から尻尾まで歌とダンスの迫力と楽しさで貫かれたザッツ・エンターテイメントな作品であり、音響に恵まれたスクリーンで見る価値が充分にありました。とにかく楽しくてずっと見ていたいほどの幸福感があって、良い意味で実際の上映時間よりも体感時間の長い作品でした。 さらに驚かされたのは観客に余計な頭を使わせないよう無駄が徹底的に削ぎ落とされ、情報量がコントロールされた脚本の質です。例えば、生涯続くこととなるバーナムとチャリティの精神的なつながりの強さを序盤における以下の3つの描写で説明しきっています。 ・下層の出身だからという理由でチャリティの父親から蔑まれるバーナムと、そのバーナムに寄り添おうとするチャリティ ・海岸での二人の密会 ・廃墟の邸宅をファンタジーの世界に変えるバーナムの想像力とパフォーマンス、そして、それに魅了されるチャリティ さらには、その後のバーナムのすべての行動はこの3つの描写に象徴される彼の個性【上流階級に対する反骨精神】【男性としての魅力】【自分の夢に他人を取り込む力】を源流としたものであり、人物描写を実に簡潔に終わらせているのです。 全体的な構成も恐らく意図的に紋切り型を通しているのですが、そのことによって状況説明がほぼなしでも映画として成立するという効果が上がっています。歌が始まると物語の進行がピタっと止まってしまい、詰め込める情報量に限界があるというミュージカルの欠点を考慮した構成なのだろうと思いますが、これほど直感的な理解が可能な映画も珍しいと思います。  ただしこれって諸刃の刃で、製作者が意図的に切り捨てた深みという要素が本作の欠点にもなっています。鑑賞後数日経過してからこのレビューを書いているのですが、鑑賞直後には「傑作中の傑作!ここ何年間で最高の作品!10点満点!」と思っていたものの、現時点では私の頭の中に驚くほど何も残っていません。 後々振り返ってみると、ネタふりだけで明確な回答が出されていない要素もいくつかありました。ひたすらに上を目指して止まらなくなるバーナムと、今の成功を充分としてここに留まることを願う周囲の人々との間で起こる軋轢や、フリークスの味方として成功を収めたバーナムが無自覚のうちに差別者側に回る件については、当事者達がどう納得して元サヤに戻ったのかがはっきりしていません。 確かに放火や破産という大イベントはありましたが、でもそれってバーナム側の事情ですよね。重要なのは一時期バーナムに不快な思いをさせられた人達がいかにしてバーナムを再度受け入れるかなのに、彼らが心情面でどう折り合ったのかが見事に誤魔化されています。もしこの辺りをうまく扱えていれば美談の中の良いスパイスになった可能性もあったのですが、全体のテンポを重視してこれらが切り捨てられたために、どこか絵空事を見せられているような後味になっています。 この手の人生讃歌的な映画って、見たことが人生のプラスに働くほどの強烈なパワーを持ってこそ傑作だと言えると思うのですが、本作はそのレベルには達しておらず、よくできた娯楽作に留まっています。どこかに強烈なサムシングが宿っていれば問答無用の傑作になったかもしれないのですが、本作は鑑賞後数時間でほとんどの要素が流れ去ってしまうのです。批評面での苦戦も、この辺りに原因があるのではないかと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2018-02-28 00:10:56)(良:1票)
263.  ダブル・ジョパディー 《ネタバレ》 
『ザ・ロック』の脚本家コンビによる作品なのですが、かなりエモーショナルな背景を持つ作品なのにおそらくは意図的に情緒的な部分が省略され、娯楽に特化した独特な作風となっています。多くを期待しすぎず、また頭を使い過ぎずに見れば、短めの上映時間はきっちりと楽しめる手堅い作品となっています。 旦那殺しの罪で投獄されたが、実は旦那と親友に裏切られ、高額な保険金付きの子供までを奪われていたことに気付く主人公。普通ならここでわが子をどうやって危険な父親と義母から引き離すのかを社会制度に沿って考えるところですが、主人公が次の瞬間にとった行動とは、復讐を誓って体を鍛え始めるということ。服役中の時間をハナから捨ててるんですね。この時点でバカ丸出しで、そこから先はこの低偏差値のまま映画は進んでいきます。 代表作『逃亡者』を見て出演依頼をされたんだろうなということが瞬時で分かるトミー・リーや、有色人種の脇役は主人公の助けになるというこの手の娯楽作の定番の流れなど、観客の予想をまるで裏切らずに物語は進んでいき、主人公はサクサクと旦那へと近づいていくのですが、圧倒的なテンポの良さとイベントの仕込み方の良さ、またアシュレイ・ジャッドの見栄えの良さで(なぜ彼女は本作以降伸び悩んだんでしょうか)、なかなか飽きずに見せてくれました。旦那をぶっ殺すというラストも非常に分かりやすく、「あ、終わったんだな」という点が誰の目にも明らかな親切設計となっています。 ところで、何度も人生をリセットし新天地でゼロからスタートしながらも、行く先々で地元の名士みたいになっているあの亭主って実はとんでもなく有能で、元嫁に殺されるような生き方をしなければ良かったのにと思いました。
[インターネット(字幕)] 7点(2018-02-20 19:06:50)
264.  エージェント・ウルトラ 《ネタバレ》 
本サイトでの平均点は最悪に近い上に、IMDBスコアも6.1と世界的に評判の悪い作品のようなのですが、私はなかなか楽しめました。映画とは自分の目で見るまで分からないものです。 風変わりな主人公が実は殺人マシーンで、徐々に記憶を取り戻しながら追っ手と戦うというお話はメル・ギブソン主演の『陰謀のセオリー』とまったく同じであり、さらにはブラックコメディという味付けも共通しており、MKウルトラ計画を扱った作品には特有のテンプレートでもあるのかと思ったのですが、アクションができるというイメージがまったくないジェシー・アイゼンバーグに殺人マシーン役をやらせた点が本作の新機軸であり、それまでなよなよしていた主人公にスイッチが入ると敵が瞬殺されるという描写にはなかなかのカタルシスがありました。 また、敵が同情の余地のまったくないアホであるという点でも主人公を応援したくなったし、このアホが田舎町を封鎖した上で十数人の殺人マシーンを投入して町全体を戦場に変えるという舞台設定にも燃えるものがあり、90分程度の中規模アクションとしては合格点だったと思います。 ただし、殺人スキルでは主人公が他を圧倒しており、彼と互角の勝負ができる敵がいなかったという点が、バトルアクションとしてはちょっと残念でした。ハントに最初に投入され、噛ませ犬的な役回りかと思われたラファがラスボスだったという展開には脱力させられたし、覚醒後の主人公がミッションを遂行するエンディングがまさかのアニメーション処理だった点でも、「え、見せてくれないの…」とガッカリでした。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-11-17 18:49:28)(良:1票)
265.  砂上の法廷 《ネタバレ》 
映画における裁判では「宣誓下にあるのだから、証言台に立たされた人間は真実のみを語っている」という暗黙の大前提が置かれているのですが、その大前提をひっくり返して「証人は、自分に都合の悪い話は捻じ曲げて証言する」ということを追及した点が、本作の新規性であると言えます。名作『羅生門』にも通じるアプローチですが、私はこれをリアリティの一種であると感じたし、二転三転する物語は物凄く楽しめました。 本作で描かれるウソの種類は2つあって、事件の核心部分の理解を意図的に操作しようとしてつくウソと、事件の真相とは直接関係ないが自分自身の触れて欲しくない部分をごまかすためにつくウソとがあります。後者については合理性のあるウソであるため、その人物の背景を紐解く中で不整合が自ずと露わになってくるのですが、難しいのが前者であり、その周辺にある些細なウソを切り崩していきながら「より確からしい理解とは何か」を探ることになっていきます。 作品は証言と回想を行き来しながら進むのですが、回想パートにウソはなく、少なくとも作り手が観客に対してインチキはしていないという点にも感心させられました。また、一見すると荒唐無稽に感じられるオチについても、ある思惑が想定外の形で別の思惑と結びつきながら結果的にこの歪みまくった構図が出来上がったという説明付けがなされており、決して「サプライズのためのオチ」とは感じませんでした。全体として矛盾がなく、おかしいと思われる部分にもよくよく考えればちゃんと説明が付けられており、実によく考えられたお話となっています。 キアヌの弱点である能面フェイスは、本作では観客に表情を読ませないという点で良い方向に作用しているし、疲れきってはいるが男を魅了する色気はギリギリ残っている人妻役に、こちらもくたびれきったレニー・ゼルウィガーが見事にハマっています。また、女性で見た目が良くて有色人種だから陪審員から正義の側に見られやすいという理由で主人公が傍らに置いているインターンの弁護士の堅物ぶり、この場にいるのは自分の実力を評価されているからだという勘違いぶりも面白く、キャスト面でもなかなか充実した作品だと感じました。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-11-10 18:41:58)(良:1票)
266.  バリー・シール/アメリカをはめた男
テレビドラマ『ナルコス』ではとんでもない悪人として描かれており、実際にどえらい悪人であるバリー・シールを愛すべき人物として描いた作品なのですが、トム・クルーズの持つ爽やかさや天真爛漫さが作品に大いに貢献しており、この悪人にとても感情移入して見ることができました。 御年55歳で実年齢よりも20歳近く年下の役柄を演じ、しかも「面白そうだから飛び込んでみました」みたいな無鉄砲なキャラクター像を違和感なく観客に伝えられるというトム・クルーズの個性には本当に恐れ入りました。本作の魅力の7割はトム・クルーズが担っていると言っても過言ではありません。 残り3割は、この時代に実機によるスタントを多用した映像の説得力でしょうか(この超絶スタントのために死者を出したようですが)。空を飛ぶ場面の開放感、「空は俺のものだぜ」感が見事に表現されており、この開放感が欲しくてバリー・シールは仕事をしており、自由に飛べるのなら積み荷は何でもよかったんだろうなということが感覚的によく理解できました。 全体的な軽さの反動でクライムアクションに必要なスリルを醸成できていなかったし、捜査の手が回った後半以降はこの手の映画のテンプレート通りでやや冗長さを感じさせられたものの、全体としてはよくできた娯楽作だと思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2017-10-31 18:38:36)
267.  トリプルX 再起動 《ネタバレ》 
まず断っておきますが、私は『1』『2』は嫌いです。 というわけで、まったく期待値の上がらない中での『3』の鑑賞でしたが、不良・遊び人・変わり者が世界を救うという前作までのコンセプトが丸まんま引き継がれた本作の前半は、やっぱり厳しかったですね。特に50前のヴィン・ディーゼルが気の良い不良役をやっている辺りが何とも痛々しいし、作品の世界観では彼がかなりモテる男という設定にも違和感があり、映画に全然乗れませんでした。 お話の方も、CIAの悪だくみをNSA所属のトリプルXチームが阻止するという何ともドメスティックな内容なのに、無駄に世界を股にかけているので状況が感覚的に分かりづらいし、トリプルXチームが中国人・インド人・タイ人とインターナショナルすぎる顔ぶれで構成されており、もはやNSAの一プログラムという設定が置き去りにされていたりと、もうメチャクチャなのです。一応はアメリカ映画ではあるものの、アメリカ人による鑑賞をまったく前提としていないかのようないい加減さ、闇鍋加減には少々困惑してしまいました。 が、ザンダーチームとゴーストチームが合流する後半の高揚感や、ヤケクソの如くてんこ盛りにされた見せ場の連続には目を見張るものがあり、クライマックスまで絶え間なく続くアクションにはかなり見せられました。好敵手だったザンダーとジャンがついに手を組むタイミングや、2代目トリプルXが救援に駆けつけるタイミングなども絶妙で、B級アクション界の巨匠であるD・J・カルーソ監督の手腕も絶好調。こんなに楽しいクソ映画は久しぶりだなぁと最後には大満足できました。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-10-28 15:17:52)
268.  マリアンヌ
映画とは期待と満足度のバランスで決まると言われていますが、本作はまさにその典型。 ブラピにゼメキスという10年以上前に旬を過ぎた看板に、大作要素を微塵も感じさせない地味な宣伝と、積極的に映画館で見たいと思わせるような作品ではないものの、何となく見始めると2時間がアッという間に終わり、鑑賞後には良い印象が残ります。上手な監督、上手な脚本家、見栄えのする俳優が集まって作った映画は、やっぱりよく出来ていると思いました。 ただし突出した点もないので、数日経つと良かった点も思い出せないという、そんな映画。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-10-14 01:38:24)
269.  ヒットマンズ・ボディガード
自身がプロデュースも務めた『デッドプール』において、ライアン・レイノルズは「この映画にはサミュエル・L・ジャクソンは出てこないぞ」とネタにしていましたが、そんな2人の共演が晴れて実現したのが本作となります。その他、Netflix版『デアデビル』でエレクトラをやっていたエロディ・ユン、『ダークナイト』三部作でゴードン警部をやっていたゲイリー・オールドマンと、意図的にやってんのかと言いたくなるような豪華キャストによるB級アクションですが、肩肘張らずに見られる娯楽アクションとしてはなかなかの仕上がりとなっています。 前半のテンポの悪さにこそ多少、退屈させられたのですが、中盤におけるアムステルダムでの陸路と水路で同時進行する素晴らしいチェイスシーンから物語は急激に熱を帯び、ラストに向けて図ったように規模が大きくなっていくという見せ場の配分の良さ。また、タイトルにもあるようにヒットマンとボディガードがそれぞれアクションを繰り広げるため見せ場の密度は二倍となっており、製作費3000万ドルの中規模作品とは思えないほどの満足感を味わうことができます。 難を言えば、敵があまりに無個性で主人公2人にとっての重大な障害にはならなさそうだった点が挙げられます。敵の実働部隊にも主人公と同レベルの刺客がいれば、また盛り上がったと思うのですが。 しかし驚くのはNetflixの機動力で、全米で初登場No.1を獲った映画が、その翌週には日本で配信されるという常識的にありえないリリーススピード。劇場公開で一次的に稼ぎ、DVDやインターネット配信は二次使用という従来のコンテンツビジネスのあり方を根本的に変え、劇場公開とインターネット配信を同一のステータスに持っていこうとする彼らの姿勢が映画というものをどう変えるのかには、今後も要注目なのです。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-08-27 23:19:41)(良:1票)
270.  ゴールデンボーイ(1998) 《ネタバレ》 
ブライアン・シンガーが『ユージュアル・サスペクツ』の次回作として製作した作品であり、主演は当時人気絶頂だったブラッド・レンフロ、おまけにスティーブン・キング原作と話題性には事欠かない企画だったのですが、シャワールームの撮影においてヌードの強要があったとのことでエキストラの少年数人から訴訟を起こされて、完成後1年以上も作品を上映できない期間が発生し、すっかり熱の冷めた状態でロクな宣伝もないまま公開されたために興行的には惨敗。結果、ブライアン・シンガー監督作中においてもっとも注目度の低い作品となっているのですが、これがなかなか見ごたえがありました。 作品では、少年が悪に飲まれていく様がじっくり描かれるのですが、元ナチの老人にも一定程度感情移入の余地を作っており、その結果、悪とは誰にでも根付くものであるという含みを持たせている点が見事でした。並みの監督であれば元ナチは純粋悪として描くしかないところですが、シンガーには自身がユダヤ人であるという強みがあるため、この辺りに創作上の自由を持つという優位性があったのではないでしょうか。なお、シンガーは後に手掛ける『ワルキューレ』においてもナチの様式美等をじっくりと描いており、彼はユダヤ人カードを結構有効に使っています。 圧巻なのがブラッド・レンフロとイアン・マッケランの演技合戦なのですが、撮影当時14歳だったブラッド・レンフロが30年超のキャリアを誇るイアン・マッケランと互角に渡り合い、時に圧倒している点には驚かされました。本作を見るに、ルックスも演技力もあったレンフロならば後に大スターに成長することもできたはずなのに、私生活の乱れから代表作を残すことができず、わずか25歳で命を落としたことは残念で仕方ありません。 作品中で良くなかった点は、入院したドゥサンダーの隣のベッドにはかつての彼の被害者が入院しており、その被害者に正体を見破られるという後半の転換点があまりに強引すぎたこと。どんな凄い偶然だよとツッコミを入れてしまいました。トッドとドゥサンダーがやってきたことの結果としてドゥサンダーの正体が暴かれるという因果にまみれた展開とした方が、内容的にはしっくりくるのですが。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-08-19 03:14:51)
271.  オクジャ/okja 《ネタバレ》 
今年のカンヌ映画祭ではペドロ・アルモドバルから「映画は大画面での視聴体験こそが重要であり、映画館で公開されない作品は審査対象とすべきではない」と批判され、一方でウィル・スミスは「うちの子供たちはNetflixがなければ観なかったはずの映画を観ている。おかげで世界中の映画を幅広く理解するようになった」と反論し、一大論争が巻き起こりましたが、その中心にいた作品こそが本作『オクジャ』なのです。 劇場未公開とはいえ5,000万ドルもの製作費がかけられた本作はとてつもなくゴージャスであり、オクジャを表現したVFXの凄さや、ソウルでのチェイスシーンのスピード感や迫力、そしてNYでの一大スペクタクルなど、とにかく見どころの多い作品となっています。 また、Netflixの主義として「作家には口出ししない」という方針があり、上記の通り劇場映画並みのクォリティを誇っている一方で、内容はかなり攻めています。普通の映画会社だったら絶対にOK出さないだろうなという内容であり、一応はR15指定となっていますが、鑑賞時の衝撃度は並みのR15作品を超えています。 本作は後味の残し方がめちゃくちゃ悪いのです。序盤では少女とオクジャの幸せな日常が描かれますが、監督自身も認めている通り『となりのトトロ』のような優しい画面となっており、この部分はどう見てもファミリー映画です。その後のソウルでのチェイスシーンにも一定の娯楽性やユーモアがあって少女の冒険談として見ることが可能なのですが、舞台がアメリカに移って以降のダークな雰囲気は完全に社会派作品。まるで別の映画となります。これが前半との落差で心理的に結構堪えます。 また、それならそれでシリアスに振り切ってくれれば頭を切り替えられるのですが、クライマックスではオクジャと子豚のみが救われるという、とても中途半端な終わり方をします。スーパーピッグ達が人道面で問題のある環境で大量飼育された後に屠殺されるという現実は何も変わらないまま、オクジャだけが幸せな環境に戻ってくるため、目の前の展開に喜んでいいのかが分からなくなるのです。 作品全体の根底には、「そうはいっても肉食は簡単にやめられない」という観客にとってのうしろめたさがあります。例えば戦争の醜さを描いた作品であれば「戦争は良くない。絶対にやってはいかん」と心に決めることができるのですが、食ともなれば自分と主題を切り離して考えることができません。自分のために生き物が殺されている、安く提供するために家畜達は劣悪な環境で生涯を終えている。こうした、普段は見て見ぬふりしていることを本作は容赦なく突き付けてくるため、とにかく後味が悪いのです。 ちなみに、今回の論争の結果、カンヌ映画祭では「フランスでの劇場公開」が審査条件として加わりました。そもそもNetflixを始めとした動画配信サービスに規制を設けていたフランスらしい決定ではありますが、制約条件が少なく本作のように尖った作品を輩出している動画配信サービスを締め出すことが、今後の停滞に繋がらなければいいのですが。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-08-19 02:22:31)(良:3票)
272.  マグニフィセント・セブン 《ネタバレ》 
アントワン・フークアは面白い映画も撮るが、それ以上に駄作も撮る監督であり、企画そのものの良否に相当左右される監督さんなんだろうと思っているのですが、それでもデンゼル・ワシントンと組んだ時のフークアは強い。しかもイーサン・ホークも合流で『トレーニング・デイ』のトリオが15年ぶりに結集したのだから、これは鉄板。きっちり面白かったです。キャラ立ちした7人の豪快さだったり、ぶっ殺してやりたいと心から願うほどの敵方の悪徳ぶりだったりと、西部劇に必要な要素がちゃんとぶち込まれているのです。本当に楽しめました。 ガトリング銃の異常な万能ぶりとか、スナイパー2名はファラデーの援護ではなくガトリング銃の射手を狙えばよかったんじゃないかとか、ナイフ・弓・斧の名手をメンバーに入れたにも関わらず、結局全員が銃で戦うんかいとか、戦闘にはいくつかツッコミどころもありましたが、そうした細かい問題を気にさせないほどの勢いがあって、少なくとも2時間は熱くさせてくれました。  ■ここからは、本作にとってのおじいさん的存在である『七人の侍』と比較した評価です。フークアは2004年の『キング・アーサー』でも『七人の侍』の真似事をしようとして失敗していましたが、本作でも集団アクションの面白さを追及することには失敗しています。具体的な文句は以下の通り。  この手の集団アクションには、組織論的な要素が不可欠です。強い個性を持つ人間を束ね、ひとつの方向に仕向けていくという過程こそが大きな見どころなのですが、本作ではそうした要素がほぼ皆無となっている点が残念でした。チザム以外の6人が命がけの仕事を引き受けた背景がよく分からないし、メンバー間の衝突というこの手の作品での恒例イベントも起こらないため、ちょっと味気ないなと思いました。 さらには、鉱山労働者や一般住民を3日で戦力に仕立て上げなければならないという課題についても、問題提起のみでそのプロセスが大幅に切り捨てられており、結局、射撃のうまい奴がいない問題はどうやって解決したんだよって感じでした。 組織面に関するツッコミの甘さは敵方も同じくで、ボーグ軍団は金で雇われた人間で構成されており、基本、雇い主のために捨て身になることはない組織であるはず。だとすれば、楽勝できると思われた相手から予想外の反撃を受け、命がけの戦いを挑まねばならないと分かった時点で組織内に動揺が走り、「金はいらねぇ」とか言って離脱する者が現れてもよかったし、その本気度の違いこそが住民側の勝機となるべきだったのですが、そうした「この立場の人だったら、きっとこう考えるだろう」というあるべき当然の反応が描かれていないために、モブはモブに徹するという残念なことになっています。 さらに、戦いの佳境では敵味方の区別なくガトリング銃での無差別攻撃がなされますが、味方に背後からガトリング銃で撃たれてもなおボーグのために戦い続ける手下達って一体どんな神経してるんだろうかと、この点の詰めの甘さにもガッカリでした。ガトリング掃射で一時的にボーグが優位に立ったが、強引な作戦によって手勢の大半が彼の元を離れたために、ガトリングを潰されると一気に劣勢に立たされるなどの展開であれば、より自然だったのですが。 チザムとボーグの組織作りの違いから入って、何が勝敗を分けたのかという視点で全体を構築すれば面白くなったはずなのに、結局「正義は勝つ」という伝統芸能に終わってしまってるんですよね。西部劇の伝統なんだからそれはそれで結構なんですが、わざわざ21世紀にリメイクした意義として、そこに現代的なアプローチを加えてもよかったのではないかと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-08-14 13:54:42)(良:1票)
273.  キングコング: 髑髏島の巨神
IMAX 3Dにて鑑賞。そもそも迫力のある作品である上に、要所要所で3D効果も上がっており、3D料金を払う価値はあったと思います。 愛が深すぎてゴッドファーザー並みの上映時間となったピージャク版の反省からか(ちなみにエクステンデッド版はゴッドファーザーPART2並み)、本作は怪獣大戦争に終始した作風が潔い限りでした。主要登場人物の顔と名前を一致させたところですぐにスカルアイランド入りする無駄の無さに加え、毎回恒例の原住民による白人女性捧げもの儀式も割愛されており、島に入ったアメリカ人をいきなりコングが迎えるという思い切ったショートカットがなされています。 しかも、1933年より一貫してコングにとって因縁の相手であり続けた空飛ぶ兵器を複数相手にして、いとも簡単に勝利するという対戦カードの組み方には興奮させられました。「今回のコングのパワーは桁違いです」ということを、序盤の時点で宣言しているのです。そこから先はひたすら怪獣が暴れるだけという本編ですが、実際には2時間近くある上映時間が体感上では90分程度に感じられたので、それだけダレ場なく集中できる作品だったのだろうと思います。 コングは過去最高の男前ぶり。島の治安維持に積極的に関与し、弱きを助ける正義の怪獣という立ち位置が明確にされており、その千両役者ぶりがまぶしいほどです。とはいえ、哺乳類に対する肩入れが強く、爬虫類系を無闇に敵視しているきらいがあるため、この辺りの気風から、同じく番長気質のゴジラと衝突することになるのではと推測しています。 上記の通り娯楽に特化したことの引き換えに、ドラマ性はほぼ皆無といってもいい内容であり、さらには、理由はよくわからないがひたすら狂っていて場を荒らし続けるサミュエルさんとか、何のために存在しているのか分からず、かつ、最後まで何の活躍もしないのに画面の片隅に写り続ける謎の中国人キャストとか、最近の悪しきハリウッド大作あるあるが何の工夫もなく本編にぶち込まれており、人間が写っている部分は何から何まで雑です。言葉を話さないという設定を与えられてモブに徹した原住民に至っては、どれだけ滅茶苦茶な端折り方をされてるんだよと笑ってしまいました。
[映画館(字幕)] 7点(2017-03-26 00:24:30)
274.  パッセンジャー(2016) 《ネタバレ》 
宣伝を見る限りではSFミステリーかと思いきや、冒頭で豪快にネタばらしをするためミステリー部分にはさして重きが置かれていません。2009年の『パンドラム』と似たような設定であるため、ミステリー部分を引っ張っても観客にとってのサプライズにはなりえないとした製作者側の判断があったのでしょうが、こうした取捨選択によってラブストーリーに重きを置いた簡潔な物語となっており、その判断は吉と出ています。ラブストーリーとしては、これがなかなか良くできているのです。惹かれあって、破局して、再生してという王道の展開がきちんと盛り込まれているし、クリス・プラットとジェニファー・ローレンスという今一番勢いのある俳優達の魅力によって、主人公カップルの好感度が非常に高くなっています。最後まで飽きずに楽しめました。 他方、SFとしてはあまり真剣に見られない作品となっています。宇宙船を運営しているのは民間企業らしいのですが、たった5,000人の乗客と物資を運ぶだけで恒星間航行のような大プロジェクトにかかるコストをペイできるようには見えないし、宇宙植民地にロマンを抱く入植者達はともかく、アヴァロン号のクルー達はどんな動機で人生を棒に振るような航海に臨んでいるのかも見えてきません。修理の技術を持つ主人公と、アヴァロン号のあらゆる区画へのアクセス権限を持つ船長がシステムエラーによって偶然に目を覚ましたことはご都合主義以外の何物でもないし、肝心の宇宙船修理も簡単な部品交換であらかた済んでしまうという激安ぶりで、考えれば考えるほどおかしな点が目に付く内容となっています。設定に対してもう少し丁寧な説明があれば作品全体の印象は格段に良くなったと思うのですが、たまに雑な部分があることは残念でした。
[試写会(字幕)] 7点(2017-03-15 00:06:44)
275.  クライム・ヒート 《ネタバレ》 
【注意!壮絶にネタバレしています】   『ミスティック・リバー』のデニス・ルヘインが自身の著作を脚色し、オスカーノミネート作『闇を生きる男』のミヒャエル・R・ロスカムが監督をしたということで、案の定暗くじめじめとした映画でした。数発の銃弾がぶち込まれるクライマックスのサプライズとカタルシスのためだけに残りの107分があると言っても過言ではない特殊な構成をとっているのですが、かったるい本編部分は旬な役者、実力のある役者のパフォーマンスで何とかもたせています。 トム・ハーディは真面目に仕事をこなすバーテンにして、犬を愛する優しい男。彼女に見当違いなキレ方をされても、刑事からしつこい尋問を受けても、チンピラに変な絡まれ方をされても怒ったり取り乱したりすることなく、淡々と受け答えをする物腰が印象的なのですが、あまりの落ち着きぶりにかえって裏の顔の存在を感じさせるという演出が実にいい塩梅でした。切り落とされた強盗の腕を丁寧にラップで包む辺りから「こいつはおかしいんじゃないのか」と思わせておいて、殺人マシーンであったことが判明するクライマックスでは「やっぱりな」となりますが、この振れ幅の激しい役をトム・ハーディは見事にこなしています。本作の8割は彼の魅力で出来ています。 これが遺作となったジェームズ・ガンドルフィーニは、新興のチェチェンマフィアの台頭によって権力基盤を失った元ヤクザ者という役柄であり、現状を受け入れているトムハとは対照的に、いつか目にもの見せてやるのだという野心を捨てきれていません。本作のトラブルの元凶は彼なのですが、栄光を失った現状に安住したくないという心理が観客にも伝わる形となっているために、彼に対して悪印象は抱きませんでした。この辺りは、ハマり役だったガンドルフィーニの魅力によるところが大きかったと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-26 00:51:02)
276.  死霊館 エンフィールド事件
ホラー映画としては異例の長尺ですが、名高いエンフィールド事件の史実を丁寧に拾おうとしたり、厄介な能力に悩まされる次女とロレインの交流を描いたりと、映画としての完成度を高めることに多くの時間が使われており、なかなか奥行のある作品となっています。「『死霊館』でホラー映画は引退」と言っていたものの、その引退宣言を撤回してまで挑んだこの続編において、ジェームズ・ワンはフリードキンの『エクソシスト』やキューブリックの『シャイニング』をも射程に入れようとしていますが、確かにそれらの名作と並ぶほどの重厚さを持っています。 恐怖演出は、もうキレッキレ。怖い画の作り方はお手の物だし、音響などでビビらせるタイミングも絶妙です。飛び上がりそうになるほど怖い場面の連続であり、観客にもお化け屋敷を追体験させることに成功しています。ただし、悪魔云々の話になると途端に月並みになってしまうことが欠点であり、最後までお化け屋敷もので通した方がよかったと思います。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-01-16 00:05:05)(良:1票)
277.  SPY/スパイ
CIA諜報員達の顔と名前が割れてしまったから、仕方なく事務のおばさんが現場へ出ていくというコメディなのですが、笑わせるべき時にきちんと笑わせるし、誰からも期待されてなかった奴、相手から舐められていた奴が意外な強さを発揮するというカタルシスもあり、2時間はきっちり楽しませてもらいました。 ただし、男は無能、美人は性悪という描写はある意味で紋切型だったし、事務のおばさんが結局は凄腕スパイと同じ戦い方をするという点も工夫が足らないと思いました。この内容ならば、おばさんならではの戦い方で相手の意表を突いて勝ちを取る方がよかったと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-13 00:24:22)
278.  マネーモンスター 《ネタバレ》 
ジョディ・フォスター、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツというハリウッドの意識高い系が揃って参加しているだけに重厚な社会派サスペンスを予想していたのですが、実際にはフットワークの軽いコンパクトな犯罪ドラマでした。 本作で驚いたのはジョディ・フォスターの演出力や構成力の高さであり、実にうまくドラマが流れています。主要登場人物の紹介や人となりの説明を冒頭10分で簡潔に終わらせるとすぐに事件発生という手際の良さ。また、被害者と加害者から協力者へという主人公二人の関係性の変化も極めて自然であり、そこに違和感はありませんでした。リーが自身とカイルの幸福度をスコアー化し、金を持っていることが必ずしも幸福には繋がっていないという事実を突いたり、カイルが奥さんにこっぴどく叱られたりといった象徴的なイベントがうまく挿入されているため、語り口に説得力があるのです。 またサスペンスの構図もうまく作られています。小市民に過ぎないカイルではリーを撃てないことは誰の目にも明らかであるため、代わってリーの救出よりも爆弾解除を優先したい警察のスナイパーがリーの懐にある起爆装置を狙っているという設定を置いています。「リーは重傷を負うけど心臓には当たらない位置に撃つから、すぐに蘇生すれば大丈夫だと思う」などと怖い計画を立てているわけです。これにより、いつ発砲されるか分からないというサスペンスを作り出しており、うまく考えられた設定だと感心しました。 問題点は、鑑賞後に何も残らないということ。前述した幸福度のスコアー化や、大企業の資金運用の杜撰さなど、何か深いことを言おうとはしているものの、そのどれもが観客の思考や人生観に影響を与えるレベルにまでは昇華されていないのです。この辺りがもっと鋭く尖っていれば社会派サスペンスの秀作になった可能性もあっただけに、やや中途半端に終わった点は残念でした。 他方、衝動的で子供っぽいリーの後ろにはしっかり者のパティがいたり、愚かなカイルが奥さんに叱られたり、運用で大赤字を出したうえに隠蔽したアイビス社CEOの不正を女性幹部が暴いたりと、劣った男と賢い女という図式が全編に渡って繰り返し示される点は、ややしつこいかなと思いました。この点については、監督の個人的な志向が表に出すぎているように感じます。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-12 20:07:48)(良:2票)
279.  マニアック(2012) 《ネタバレ》 
母親の影響によりセクシュアリティを歪められたシリアルキラーという、当ジャンルの開祖である『サイコ』以来のド定番ネタ。さらには、高嶺の花に惚れたが、そもそも脈のない相手であるということが理解できずに夢ばかりが膨らんだ結果として失恋の衝撃も大きくなり、そもそも壊れ気味だった人格が余計に崩壊するという、コミュ障ものの金字塔『タクシードライバー』以来のド定番展開。2つの定番がきっちり詰め込まれた安定した作風であり、さらには短い上映時間で余計な要素も少なく、私はきっちり楽しめました。 子役上がり特有の童顔で、歳を重ねるほどに合う役柄がなくなってきている。しかもハゲてきちゃってて、見た目のバランスがおかしなことになっている。このままでは俳優としての将来はないねという状況にあって、イライジャ・ウッドは本作でかなり思い切った振り切り方をしています。青白い顔に生気のない目、イっちゃってる人役を完全にモノにしており、彼の演技だけで90分はもっています。また、吹替え版では浪川大輔さんが主人公役をやっているのですが、終始主人公視点という本作のルックスにおいては声も重要な要素であり、その点、フロド役と同じ声でぶっ壊れた主人公をやられるもんだから、衝撃はさらに倍増。そもそもの浪川さんの上手さもあって、吹替え版はかなり最高な出来となっています。
[DVD(吹替)] 7点(2016-12-26 19:05:53)
280.  ブーリン家の姉妹 《ネタバレ》 
「ヘンリー8世って離婚をバチカンに咎められ、逆ギレして英国教会を作った人ね」「ブーリン姉妹・・・誰?」という高校世界史レベルの知識で予習もなしに本作を鑑賞したのですが、それが正解でした。次に何が起こるのかサッパリわからないので終始ハラハラドキドキさせられ、ブーリン家の命運尽きたかと思われた後の、アンの娘は後のエリザベス女王でしたというオチにもびっくり仰天で、続いて『エリザベス』も見たくなりました。往々にして、歴史映画は史実を知らなければ楽しめない場合が多いのですが、本作は珍しくその逆のパターンをいっています。 上昇志向の強い長子が失敗し、無欲の次子がたまたま成功を掴むという兄弟・姉妹あるあるは興味深く感じました。人生とはそういうものです。また、失敗の経験から成功に対してより貪欲になり、目標達成のためには手段を選ばなくなったアン・ブーリンの性悪加減などはかなり怖く、彼女が本作のドラマ性やサスペンス性を高めていると同時に、カトリックからの離脱という英国史上屈指の大イベントの仕掛け人になったことへの説得力も与えており、歴史的事実と目の前のドラマをうまく融合させているものだと感心させられました。 演技派として認められようと必死だった頃のナタリー・ポートマンを姉役に、天性のカリスマ性で黙っていても巨匠との仕事が次々と舞い込んでいたスカーレット・ヨハンソンを妹役にあてたキャスティングも絶妙であり、この2人が作品を大いに盛り上げています。
[インターネット(字幕)] 7点(2016-12-05 15:28:22)(良:1票)
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