741. ルーカスの初恋メモリー
《ネタバレ》 人とのコミュニケーションは下手、運動神経ゼロ、ルックスもぱっとしない。変にプライドだけは高いから、友達も少ない。憧れのあの人は、誰が見ても自分より100万倍くらい格好良い彼とうまくいってしまう。そして、気を遣われて逆に反発する。半ば自棄を起こして、前後をまるで考えない行動に出る。このルーカスという少年は、とても他人とは思えない(笑)。葬り去ったはずの私の忌まわしいトラウマを、容赦なく引きずり出してくれる。降参するしかありません。ラストに至る流れも、これ以外にはないというくらい見事なフィニッシュです。話の結論が出た後も、きちんとその後のフォローをしているところに、製作者の優しい眼差しを感じます。●再見して気づいたのですが、ルーカスとマギーの重要な会話は、すべて「暗い場所」で行われているんですね(マンホール下、校庭の木陰、橋の下、病室)。それが作品にリズムと奥行きを与えています。それとラスト、ルーカスとリナがくっつくであろうことを、リナだけをピンで映す画面割りのみで表し切っている。この職人技術! [DVD(字幕)] 9点(2019-03-05 00:48:47)(良:1票) |
742. ハイ・フィデリティ
ストーリーはあってないようなものですが、とにかく主人公のオタク人格の表現が楽しい。カメラ目線をこれだけ全面展開して、しかもそれがずばり成功している作品って、ほかにはないのでは?こういう主人公は、見ているだけで楽しいのだから、話の筋なんかは割とどうでもいいのです。それと、ジャック・ブラックのはまり役ぶりには大笑い。こういう中古盤屋の店員は、現実にも、たくさん存在します。オタク万歳! [ブルーレイ(字幕)] 7点(2019-03-04 01:38:37) |
743. ヒドゥン(1987)
《ネタバレ》 まず、悪玉の行動が、フェラーリだカセットテープだお姉ちゃんだと、物欲&煩悩まみれ一直線なのが笑えます。大体、宇宙から来たはずなのに、その思考の様式は地球の人間そのものだろ、とか突っ込んではいけません。また、乗り移る先も、最初の2人はいいとして、その後はそのストリッパーのお姉ちゃん!そして何と犬!と、思いもかけない発想が飛びだしてきて、これまた笑えます。全体の構成がシンプルであるがこその清冽なパワーすらあります。で、ただ、終盤は警部補や議員が絡んできて中途半端に重くなっているし、悪玉の目的に大統領就任とかを匂わせているのも、かえって煩悩の勢いを削いでいます(それならいっそ、直接大統領を乗っ取る!とかならまだよかったのですが)。 [DVD(字幕)] 6点(2019-02-28 00:59:49) |
744. ハッド
《ネタバレ》 全体に立ちこめる荒涼とした雰囲気にはいろいろ期待が高まるのですが、中盤まではそれっぽいシーンの積み重ねばかりで、少しもドラマが動かない。殺処分のシークエンスのインパクトはなかなかですし、そこから徐々に人がいなくなっていく展開も痺れますが、それだけでは回復できませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-02-27 00:31:12) |
745. マッキントッシュの男
主人公も周りの人たちも、妙に行動が回りくどい上に、結局何がしたいのかさっぱり分かりません。あれこれひねってこようとしているのは分からないでもないですが、それならもっと伏線を張るなり演技に工夫するなりしないと、制作側の都合の良い方向に動かしているだけになります。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-02-22 23:55:32) |
746. スノーデン
スノーデンが行ったことは、その覚悟と決断において瞠目すべきものであるし、作品としても、それを要領よくまとめている。ただ・・・この問題を扱うときは、国や政府に対して、この監視体制は何なんだ!という前に、そもそも国民に対して、こんなに監視されてて平気なんですか?という意識を広めないといけない。街角の防犯カメラにも、すでに広まったSNSにも、どこにでも紐付きになっているクレジットカードにも何も感じなくなった国民に対して。したがって、スノーデンの「行動」を描く前に、まず、その監視体制が、一般生活レベルにおいてどこにどのようになっているのか、というところに、もっと重点を置かなければならなかった。この作品はそこが弱いので、映画としてもやや平坦になり、また発信力を弱める(「でも仕方ないんじゃない?」と思わせてしまう)結果となっている。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-02-20 01:13:59) |
747. 暁の用心棒
《ネタバレ》 これはまた何ともつまらなかった・・・。主人公の動きも筋の流れも役者の芝居もものすごく適当で、一丁上がりで作ってしまった感満載です。最後のガトリング銃なんかは何とか盛り上げようとした形跡が窺えますが、それを使う必然性がないので、意味がありません。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2019-02-18 21:59:39) |
748. 121212 ニューヨーク、奇跡のライブ
《ネタバレ》 2012年10月に発生したハリケーン「サンディ」の被災地援助のため、その年の12月に開催されたコンサートのドキュメンタリーです。半分以上は制作過程だったり舞台裏だったりの映像なので、コンサートそのものを見るためのものではありません。まあ見て分かるとおりの超豪華メンバーなので、それを見ているだけで楽しめるのですが、実はむしろ斬新だったのは、ロジャー・ウォーターズとエディ・ヴェダーのデュエットとか、ポール・マッカートニーとニルヴァーナのメンバーの共演とか、クリス・マーティンとマイケル・スタイプが歌うR.E.M.ナンバーみたいな「新旧共演」の部分だったりして。それと、映画の中でも当日のステージでもトップを買って出たスプリングスティーン。 [DVD(字幕)] 6点(2019-02-15 01:00:42) |
749. それでも夜は明ける
《ネタバレ》 じわじわっと何かが起こりそうで起こらずに進む展開は現実味があって良いのだが、そのまま特段の変化がないまま最後まで至り、しかも肝心なところでは救世主ブラピがミラクルのように解決してしまうとなると、拍子抜けの感は否めない。結果、12年という年月の経過があまり表現されていないことにもなっている。絞首シーンの延々続く静寂の引っ張りなど、強烈な演出の切れ味もいくつもあるんですけどね。●再見して、定点カメラで屋敷や周囲の林を背景に押さえたショットの数々が印象的だったので、+1点。考えてみれば、奴隷生活とは、人から言われたとおりのことをその場でするだけであって、自らの意思で動く場面というのがほぼありえない。そのことと一致した撮り方をしているので、作品に不思議な奥行きがあります。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2019-02-15 00:50:09) |
750. 刑事ジョン・ブック/目撃者
《ネタバレ》 これこそサスペンス・ロマンスの理想型です。無駄な台詞、無駄な場面、無駄な登場人物が一切存在しません。登場人物の心を細心の注意で大切に扱っている制作者側の真摯な姿勢が、どのシーンからも溢れています。冒頭15分で早くも前半クライマックスのトイレのシーンまで到達する手際の良さ、そこからサスペンス部分は素早く片付けて、ハリソンがベッドで唸っている間にいつの間にか作品世界まで自然にアーミッシュの村に移してしまう脚本の巧みさ。電気がないという村の生活習慣を逆に生かして、ランプの灯りとバックの暗さを最大限に駆使したカメラと照明の凄味。ケリー・マクギリスの素人美人な雰囲気と、ルーカス・ハースの吸い込まれるような瞳。すべてが見所満載です。 [DVD(字幕)] 9点(2019-02-13 02:41:56)(良:1票) |
751. マイレージ、マイライフ
《ネタバレ》 熟練の首切り職人の主人公の周辺に、対照的な女性二人を配置するという設定の時点で、いかにも観念的で説明的な描写に陥りそうな雰囲気が漂っているのだが、意外にも巧くまとまっていた。随所で徹底して空港シーンを入れ込むこだわりぶりと、首切りの会話を手を抜かずにいろんなパターンで展開する丁寧さが、作品の腰を強めている。最後に「やっぱり家族が大切だよね」に集約していくのは非常に安直という気がしないでもないが、女性二人との関係をあっけなく終わらせる皮肉ぶりが、作品を陳腐に落とす手前で救っている。余談だが、ここぞというところで懐かしのヤングM.C.の"Bust A Move"が、しかも本人登場で(!)炸裂するのは、ちょっと楽しかったりして。●再見して気づいたのですが、この脚本では、主人公の全体を通じての変化が、実に的確に切り取られているのですね。アレックスとの逢瀬、ナタリーへの教育(?)、妹の結婚式(と、義弟との接触)を通じて、徐々に見える世界が変わっていく。だから、悲願を達成した機長との会話シーンの虚しさに説得力がある。そして、それを自然に表現したクルーニー、ファーミガ、ケンドリックの演技も素晴らしい(空港での別れのシーン、すでに破綻を予感しているファーミガの表情!)。●難点は、最後の紹介状が余計なこと(ケンドリックの想像後ろ姿のショットが良かっただけに、関係はそこで終わらせてほしかった)、クルーニーとファーミガが最後に電話で喋るのが余計なこと(留守電メッセージとかで十分だったのでは)。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-02-12 00:45:05)(良:1票) |
752. ムーンライト
《ネタバレ》 幼年期と少年期は、特段目新しいところのない描写であり、このままだと駄作なのではないか、と思っていました(マハーシャラ・アリがあの出番だけでオスカーというのも・・・この後全般に関わってくるものだとばかり思っていました)。青年期になって、延々引っ張るレストランのシーンの緊張感はなかなかであり、やっと話が動き出してきたわけなのですが、よく考えると、売人としての主人公をほとんど描いていないのは大きな欠点。つまり、結局は観念的な造形に終始してしまったのです。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2019-02-12 00:42:57) |
753. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 事の背景なり詳細といったことはびっくりするくらい省き切っているのだが、その前提で大風呂敷を広げるだけ広げ、そして強引につじつまを合わせて収束するという突っ走りぶりは、そんなに嫌いではない。で、長回しは個人的に大好きなので、当然、点は甘め。●再見して気づいた点。(1)めちゃくちゃ主役っぽく登場するジュリアン・ムーアを、ものの30分で退場させる力技。こんなに早かったんだ。(2)やたらと各シーンで動物があれこれ登場するのも、ちゃんと意味があったんですね(空飛ぶ豚=そのものずばり「アニマルズ」もその一環?)。(3)これだけいろいろ詰め込んだら、普通はいくらでもダラダラ長くなってしまうんだけど、きっちり110分に収めている技も凄い。ということで1点プラス。 [DVD(字幕)] 8点(2019-02-03 23:48:36)(良:1票) |
754. ジョイ
デヴィッド・O・ラッセルって、良くも悪くも、あれこれ頭の中でこねくり回した感が満載で、それが時には斬新でもあるんだけど、一歩誤ると、役者がさっぱり躍動しないことにもなるんですよね。この作品では、それが悪い方に出ています。「単なる素人実業サクセスストーリーにしない俺って、やっぱりできる奴だろ?」みたいな囁きが、あっちこっちから聞こえてくるのです。あと、家族がどうこうというのを強調したかったのか、本題のモップに入るまでが長すぎで、その割に周辺人物はごちゃごちゃしたままです。焦点がやっと絞られてきた終盤では多少盛り上がりますが、それまででした。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2019-01-29 01:43:05) |
755. マネー・ピット
《ネタバレ》 こういうのは、人物側があれこれ頭をひねろうとして、それにもかかわらずさらに上を行くトラブルが起こる、からこそ面白いのであって、ただ単に順々に家が壊れていくだけでは、主人公が無策のマヌケに見えてしまうだけなのです。したがって、笑いになりません。●で、そんなことよりも大事なのは、途中でちらっと出てくるメタルバンド、クレジットによれば、ホワイト・ライオンではないですか!思わず戻して確認しましたが、あー確かに、ヴォーカルはマイク・トランプだし、ギターはヴィト・ブラッタですなー。時期的に、1st発表直後、2ndでのブレイク前ですよね。しかもこの"Web Of Desire"という曲、一部しか披露されませんが、割と格好良い上に、どのアルバムにも入ってないんじゃない?ということは、ものすごく貴重ですよね。この偉業に3点。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-01-28 00:36:53) |
756. オレゴン魂
ジョン・ウェイン老けたなあ・・・と思っていたら、75年の作品ですか。しかし一方で、ウェインと同じ年であるはずのキャサリンはいつものキャサリンのごとくガンガンに元気で、それをウェインが受け切れておらず、つまり、2人がかみ合っていないのです。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-01-26 11:47:57) |
757. アンブレイカブル
《ネタバレ》 明るく楽しいアメコミを、いかにジメジメじわじわ陰鬱に描いてみせるか、という素晴らしいひねくれオタク精神を立派に具現化してみせた作品。この作品はそれだけで十分だと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2019-01-26 11:37:08) |
758. 悲愁(1959)
すごく期待が高まりそうなメロドラマのはずなんですが・・・描写が表層的かつ平坦で、生活感もなければワクワク感もない。ペックは元アル中という設定なのですが、中毒性があるのか、単に酔っ払って陽気なだけなのかも分からない。つまり、シナリオをそのまま演者が実行して終わり、にしかなっていないのです。 [DVD(字幕)] 4点(2019-01-20 02:28:57) |
759. 永遠に美しく・・・
設定からしてもっとアホバカコメディになるはずなんですけど、ゼメキス監督はどこまでも真面目なのです。なので、視覚効果面が暴走する後半になると、何となく笑いも引きつってしまうのです。一方で、主演の3人も、「こういうのにも真面目に取り組むぞっ!」とばかりに、演技が重たいのです。結果、どこまでもどよんとした空気が漂ってしまっています。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2019-01-15 01:54:40) |
760. 殺したいほどアイ・ラブ・ユー
中盤までは皆さんの巧者ぶりに、笑えまではしないもののそこそこ楽しめましたが、途中でネタが尽きたのか、一気に手抜きに走ってしまいましたね(警察が来たあたり以降)。主人公夫妻の下の子としてこっそり登場し、翌年「カーリー・スー」で見事な主演ぶりを見せることになるアリサン・ポーターちゃんに+1点。 [DVD(字幕)] 4点(2019-01-14 22:13:03) |