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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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81.  俺は善人だ
悪女と聖女の両面を演じさせて女優を売り出すパターンが 当時からあるが、これはその男優版である。 エドワード・G・ロビンソンが小心で実直なサラリーマンと 凶悪なギャングを巧みに演じ分ける。  双方がそれぞれの役を演じるシーンもあるので、計4パターンの芝居となるが、 善人役の愛嬌のある芝居が実に萌える。鏡への反射を使ったギャグや、 酒に酔って社長室から出てくる場面の陽気な振る舞いなどは傑作だ。  この後、その対照的な二人が同一ショット内で共演することになるのだが、 このツーショットがどのような仕掛けで撮られたものなのか。 その違和感のない画面つくりには様々な知恵や工夫が凝らされたのだろう。  様々な箇所でシーンの省略が効いていて、テンポもいい。 欲をいうなら、後半もっとジーン・アーサーの活躍が欲しかった。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-13 16:42:52)
82.  プリースト判事
ここでのウィル・ロジャースは特に判事の業務を行うわけでもない。 トム・ブラウンとアニタ・ブラウンの仲を取り持とうと、 ゴルフボールを飛ばし、茂みの陰で一人芝居をし、飴を伸ばしと、 ひたすら具体的に行動する。二人を物理的に近づけるために。  その周囲を、ステッピン・フォチェットら味のある黒人俳優が 音楽的なイントネーションで語らい、歌う。  さらには、ヤギやアヒルや鳥たちも視覚と聴覚を賑わかし、 大合唱が大団円を盛り上げる。  そんな飄々としたウィル・ロジャースが暗闇の部屋にランプを灯すと、壁に 飾ってあった妻と息子らしき肖像写真が明りの中に浮かび上がり、 それを静かに見つめる彼の顔が写真の家族と重なり合う。  こうした何気ない静かなひとときのうちに、 彼が若い2人のために世話を焼く心中までが 滲み出てくるようで、愛おしい。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-05 17:06:21)
83.  とらわれて夏 《ネタバレ》 
幾度も挿入される回想シーンが、ケイト・ウィンスレットのものなのか ジョシュ・ブローリンのものなのか。 瞬間的に把握しづらいところがあり、また類似場面の反復でもあって 物語を停滞させている気味があるが、それもまた 登場人物を苛むとらわれのイメージを増幅させてもいる。  時代背景を仄めかす映画ポスター類も序盤でさりげなく提示されるのみ。 ラストに活かされるパイ作りのシークエンスも思わせぶりなところが まるでない。そうした慎ましやかさが好ましい。  大団円の後日談。2人が並び歩く一本道の脇に揺れているのは何の作物だったか。 柔らかい光の中に静かに波打つ枝葉の音。 このラストショットが圧倒的に素晴らしい。 グリフィス的原風景に万感の叙情があふれている。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-08-01 15:25:28)
84.  ラッシュ/プライドと友情
ハワード・ホークスのように、プロフェッショナル達を描く。  初めてのレースシーンに流れる『GIMME SOME LOVIN’』の選曲と、 リアミラーを駆使したスピーディなカッティングは『デイズ・オブ・サンダー』の 故トニー・スコットへのオマージュかと思えば、そもそも音楽担当はハンス・ツィマー なのだった。  激しく煽られる芝生、土埃、雨飛沫といった対象物によって表現されるスピード感。 雨降る最終レース、スタート前の二人が交わす視線の交錯が印象深い。  そういえば、南波克行氏のロン・ハワード論でもかつて「水に飛び込む」ショット へのこだわりが指摘されていたが、このレース映画にも水への飛び込みが 抜かりなくワンシーン挿入されている。 ダニエル・ブリュールとアレクサンドラ・マリア・ララが結婚した夜のプールシーン がそれである。 そして、そこに繋がる二人の対話シーンが美しい。  窓外を見つめるクールなダニエル・ブリュールの胸部に ロン・ハワードがガラス窓を通して反射させるのは、 スピルバーグのような紅い炎ではなく、碧い水の揺らめきなのだ。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-11 17:17:01)
85.  恐怖のまわり道
スクリーンプロセスの多用などはいかにも予算の制約を感じさせつつ、 一方ではトム・ニールの電話シーンに交換手がそれを繋いでいくショットを律儀に 入れもする。 低予算映画ならば真っ先に削れそうなショットなのだが、この簡潔な長距離電話の描写が あってこそ、後の大陸横断ヒッチハイクの距離感が印象づけられることになる。 同時にその電話線もまた終盤に活きてくるわけで、巧い。  道中、最初の思わぬ悲劇。 黒い車体に降りかかる激しい土砂降りの雨が、それだけでその後に主人公が陥っていく 泥沼状況を予感させる。 助手席で眠っていたかと思われたアン・サヴェージが不意に目を開けて 運転席のトム・ニールを凝視する、それだけの動き、その無表情がなんとも恐ろしい。  レコード盤からドラムへと、円によってスムーズにフラッシュバックへとカットを 繋ぐなど、編集の工夫も随所で光る。  満載されたノワールの意匠と低予算ならではの美徳が、不思議な魅力を放っている。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-07 23:42:25)
86.  条理ある疑いの彼方に 《ネタバレ》 
法廷内に据えられたテレビカメラが、審理の模様を中継している。 米国ならではの光景だ。 被告席に座るダナ・アンドリュースは彼に向けられたカメラを正面からじっと見据える。 彼を追い詰めていくのは、自らが捏造した状況証拠だけでなく、 マスメディアのレンズでもある。 『暗黒街の弾痕』のラストで、ヘンリー・フォンダを捉えるライフルの照準器のように。  映画のラスト、奥のドアへと退出する彼に、カメラのフラッシュが追い討ちをかける。 彼に浴びせられる、その唐突な白光が容赦無い。  予断を煽る新聞のセンセーショナルな大見出しや 儚く灰となる、証拠写真のネガ。  そこにメディアの危うさもまた浮かび上がってくる。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-01-25 23:56:24)
87.  呪いの家
夜の屋敷内、蝋燭の灯だけを光源とした照明設計が魅惑的な闇を創りだす。  その黒の中に白い影が亡霊のように浮かび上がる。  クライテリオン盤DVDはチャールズ・ラングJr.の モノクロームの美をよく引き出している。  巻頭の目眩く波間の空撮。 リスを追いかける犬のアクションによって家そのものをも演出していく手際。 女優陣を愛でるエレガントで艶やかなクロースアップ。 スクリーンプロセスと、緩やかな海風とボートの揺れとの見事なシンクロ。 その画面の充実ぶりはラストの夜明けの美しさまで一貫している。  萎れる花や、捲れる書物の頁など、慎ましい特殊効果もゴシックムードに相応しい。  崖から落ちかけるゲイル・ラッセルのロングショットには息を呑む。   
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-01-19 22:07:15)
88.  オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
アナログレコードの音楽に合わせて踊る、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンの俯瞰ショット。 ソファの上で弾むように脚を組み替えるミア・ワシコウスカの仕草。 静かな映画の中で、それらの滑らかな運動感がアクセント的に心地よい。  途中、そのミア・ワシコウスカの闖入によって館が三人所帯となることで ジャームッシュ流の移動の映画=ロードムービーとなる。 彼女の登場は、移動を促す契機としてあると云っても良い。  遠くに街の灯が散らばるデトロイトの寂れた夜道。 まばらな明かりの中に浮かび上がる廃墟の群れが、街の盛衰を偲ばせる。  勾配が特徴的なタンジールの石畳の路地。 黄昏のような、艶を帯びた妖しげな光の加減がエキゾチックで素晴らしい。  ランプを光源とした屋内シーンの見事さも見逃せない。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2013-12-23 23:24:51)
89.  ファインド・アウト
派手に車体をぶつけるばかりが能ではない、というカーチェイスがいい。 車種を幾度も変えつつ、 追走するパトカーの目眩めくライトの光芒がテンポの良いカッティングの中で 美しく映えて、車体の接触など一度も無いことが逆に一層の緊迫感を煽る。  運転座席での携帯通話という図の繰り返しは単調になりがちだが、 通話しているアマンダ・サイフリッドの背後の窓ガラスに意識的に 映り込んでいる雨滴、緩やかに流れていく街燈の光やマジックアワーの明かり、 そして森の闇が画面の動的なアクセントとして機能している。  「Just Watch Me」と懐柔を拒否し、「I lied」と何の躊躇もなく マッチの火を洞穴に投げ込み復讐を果たすヒロインの清々しいまでの豪胆。 全編に一貫した、一切躊躇のない無頼派の行動が何より魅力だ。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-10-16 01:04:20)
90.  クロエ(2009) 《ネタバレ》 
フルショットで撮られたジュリアン・ムーアが携帯電話で話し出すと、 相手方のアマンダ・サイフリッドの声も不自然なほど鮮明に聞こえてくる。  違和を感じた瞬間、カメラがパンすると同室に彼女が入り込んできていた事 が判明するという、そういったさり気ない音響の仕掛けが随所で巧い。  人物の背後からのライトを中心に、複数の光源を用いて 女優の金髪の輪郭線と瞳とを妖しく美しく輝かせるライティングの緻密さ。 拡散する影の動きも画面を重層化させて見事である。  手前の人物と、背景の窓枠・額縁・鏡・スクリーンを的確にレイアウトした構図など、 ショット一つ一つが官能的に決まっている。  見るものの欲望の投影たる鏡・窓ガラス。そこに幾度も映し出される ファム・ファタルとしてのアマンダ・サイフリッドは「虚像」の視覚的隠喩である。  『上海から来た女』を始めとする鏡の映画史に倣えば、 映画の構造上のクライマックスは、「砕け散る鏡(ガラス)」以外有り得ないことは 中盤には明らかになるだろう。  その映画的終結というべきスローモーションも美しい。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-07-17 23:09:54)
91.  オズ/はじまりの戦い
2D版を鑑賞。  噴煙の中に浮かび上がる『イングロリアス・バスターズ』のような映画内映画。 『蜘蛛巣城』のように、白霧と共に押し寄せてくる軍隊の影。 枯葉の落下や草の揺れなど細やかな動きに満ちた、高精細に造形された森の美術。 これらの立体的イメージはぜひ3D版で味わいたかった。  映画こそ魔法。その主題が声高でないところが好ましい。  透過光と火炎を派手に使った魔法合戦もよいが、マリオネットのレトロな味わいを残す 陶器の少女の愛くるしい仕草も絶品である。  あるいは幻燈のキスや、シルエットによるメタモルフォーゼなど、 簡素で古典的で不可視の表現ほど観客の想像を掻き立て、 画面に引き込む事も弁えているようだ。  暴力と正義のテーマ性を含ませたドラマだても『スパイダーマン』の監督らしく、 ラストの魔女同士の対決なども、地味ながらサム・ライミらしさがあっていい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2013-04-15 23:56:44)
92.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
ロバート・リチャードソンによる、ライトの強弱を極端につけた メリハリのある画面が西部劇によくはまっている。  会食シーンの張りつめた緊張感も、このライティングあってのものと云っていい。  松明の並ぶ夜襲場面の斜面のスケール感や、 バウンティ・ハンター:ジェイミー・フォックスの初仕事となる場面の 崖上からの俯瞰ショット。 または玄関口を見下ろすレオナルド・ディカプリオ邸の広間など、 高低を活かした空間処理が随所でドラマティックな効果をあげている。  ポイントを押さえた高速度撮影ショットのケレン味も、アップとロングの配分も、 作品トータルのドラマツルギーも、ジャンルのルールに忠実すぎるほど忠実であり、 その安定感こそ逆に不満要素かも知れない。  イーストウッド後では、本来タメとなるべきヒーロー&ヒロインの身体的被虐シーンも まるで物足りなく映ってしまう。  逆に、フォックスとクリストフ・ヴァルツが作中で二重の芝居を貫くために ポーカーフェイスを己に課す、その冷静を装う表情と内なる怒りのせめぎ合いが呼び込む 映画のエモーションこそ強烈だ。  上に並べた映画テクニックの巧さより何より、そこが本作の要だ。  あくまでクールな素振りと表情のまま、臨界点を超え 復讐のアクションに突入していく二人の姿に揺さぶられる。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2013-03-23 23:19:00)
93.  人生の特等席 《ネタバレ》 
ベネット・ミラー『マネーボール』では裏方に徹する功労者を表わすように、 ブラッド・ピットの像は濃い陰影が強調されていた。  イーストウッド&トム・スターンなら更にロー・キーかと思いきや、 ストーリーの明朗さとロケーションの解放感にあわせて、 ポジティヴな画調が爽やかだ。  暗闇が活かされるのは、 エイミー・アダムスからの電話をそれと知らずに悪態をついてしまう イーストウッドを照らすランプの灯や、夜の漆黒の湖、 忌わしい過去を仄めかす短いフラッシュバック映像くらいである。 その回想の中に一瞬現れる彼の禍々しい形相はやはり 『タイトロープ』からのものだろうか。  スコープサイズを活かした横並びの対話劇。 それを捉える奇を衒わない構図と編集。その堅実な語り口に品がある。  視力の衰退した静のイーストウッドに対し、 ビリヤードにダンスに投打にと、颯爽とした動が 魅力的なエイミー・アダムスが彼の球を打ち返す。  楽しげにグラウンドを駆ける娘と、彼女を眩しそうに見る父親。 そこで緩やかに旋回するカメラと、 静かに流れる音楽によって豊かな情感が流れてくる。  そして、彼女は何の躊躇もなく携帯電話を軽やかに投げ棄てる。  その決断のアクションのシンプルさ・軽快さこそが素晴らしい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2012-12-03 23:52:44)
94.  エクスペンダブルズ2
序盤でのブルース・ウィリスとシルヴェスター・スタローンの対話を、 それぞれ別撮りしたかのような単調な切返し編集で焦らしながら、 シーンの最後ではしっかりと二人を横並びに収めてみせるあたりが憎い。  複数のスターを同一画面内にどう配置し、どういうアングルと距離で引き立てるか。 如何に編集で邪魔せずに、ジェイソン・ステイサムが「classic」と呼ぶ スター自身による体技をフルショットで見せるか。 そうした見得の切り方、ケレンの利かせ方が前作より格段に良く、 静のシーンを短く配置した緩急のバランス感覚もいい。  その静の中にも、朝霧・硝煙・葉巻の紫煙の動が演出され、 粒子の粗いザラついた感触の残る画面によく映えている。  そして、重低音の銃撃と爆発も祝砲と花火のように華々しい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2012-10-24 06:32:08)
95.  港々に女あり
気のいい海の男を演じるヴィクター・マクラグレンがいい。  見かけは無骨で喧嘩早い直情径行のキャラクター。 女性好きで荒くれたところもあるが、根の優しさが目元の表情と仕草に表れている。  酒場での喧嘩をきっかけとして無二の親友となる ロバート・アームストロングに保釈金を用立て、 二人一緒に海に落ちてずぶ濡れになりながら彼のタバコに火をつけてやり、 誤解があっても互いに小突き合いながら仲直りする、 その不器用な身振りの数々が気持ち良く、殴り合いのアクションも爽快だ。  そして、水夫の父を亡くした小さな子供の遊び相手をする彼がみせる 優しい表情が素晴らしく、情が滲み出ている。   歩哨やバンドを巻き込んだ酒場の乱闘の数々が楽しく、 妖艶なルイーズ・ブルックスの美貌が麗しく、 彼女をめぐる男二人のライバル関係と友情のドラマが痛快である。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2012-08-13 00:33:49)
96.  エスター
ピーター・サースガードの役柄が建築デザイナーであることを活かしたツリーハウスや ガーデンルーム、中央に階段を配した印象的な居間、あるいは凶器となる工具 (バール、万力)など、セットの高低と小道具を巧みにアクションに結び付けている。  その死角を強調した居住空間は秀逸なカメラワークと共に、 窃視の視線と盗み聞きのドラマにも効果を発揮する。  併せて、「話せない」こともまた視線の強度とサスペンスを生んでもいるだろう。  それだけに、インターネットはともかく携帯電話の安易な利用はドラマ的に少し勿体ない。  しかし、短いながらも強烈なインパクトのあるショットの数々が要所要所で利いている。  冒頭の逆光シーンの夢幻感。 ヴェラ・ファーミガがベッドで童話を語って聞かせる、その手話の身振り。 バックで暴走する車を内側から捉えたショットの恐怖感。 割れた鏡に映るイザベル・ファーマンの分裂した姿。 その顔に残るアイシャドウの黒。  公開バージョンのラストは、企業のシステムによって選択されたのだろうが、 監督が本来使いたかったのは、「割れた鏡」へのこだわりからしても 恐らく別バージョンの方ではないかと思う。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-06-09 21:59:08)
97.  ファミリー・ツリー 《ネタバレ》 
意識の戻らない母を逝かせる事が次女(アマラ・ミラー)に伝えられる。カメラは彼女の目に光る涙を見逃さない。幼さを残しながらも、気丈にその言葉を受け入れる彼女の表情。その一連のショットを繋ぐ寡黙で繊細で優しいディゾルブ処理が素晴らしい。  通俗に陥りそうな、親族会議でのスピーチを巧みに省略するのも、親子3人と少年の小さなシルエットがカウアイ島の渚を歩くロングショットの重なりが豊かな情感を醸成するのも、この適切なディゾルブ編集による。  単なるハワイの絵葉書的美観の羅列に陥らせずに、風や波の音と共に自然光を活かしながら、パンフォーカスやロングショットによって人物・自然・ポートレートを同化させる構図もシークエンスと主題を際立たせている。  その極めつけが、父ジョージ・クルーニー、長女シャイリーン・ウッドリー、次女アマラ・ミラーの親子がソファで寛ぐラストショットの一体感だろう。  母の形見の膝かけに包まる三人の真直ぐな視線。その背後にあるランプシェードの灯。額縁の絵。開放的な奥の空間。流れ続ける『皇帝ペンギン』のナレーション。  静かな時間の感覚が父娘の絆を炙り出すようで、秀逸だ。 
[映画館(字幕)] 8点(2012-05-24 22:27:10)
98.  アンノウン(2011) 《ネタバレ》 
リーアム・ニーソンがパスポートの入ったバッグを空港に置き忘れるのは、ホテルのカウンターでジャニュアリー・ジョーンズだけがチェックインするのを監視カメラが捉える状況を作り出すというあくまで単純な作劇上の必要性から逆算した設定であり、その彼女が爆弾を止めようとして失敗するのも、届かない手のサスペンス(前半の鋏と照応)と爆破のスペクタクルを構成するというシンプルな映画的要請からくるものである。  フィクションに囚われ「<らしさ>とか<首尾一貫性>とか<心理>とかにばかりこだわる観客」(ヒッチコック&トリュフォー「映画術」)にとっては、単にキャラクターの愚かな行動という見え方でしかなくなるのだが、ジャウマ・コレット=セラ監督はそうした<らしさ>にも<首尾一貫性>にも<心理>にも拘ることなく、ひたすら状況設定とサスペンス感覚を核として映画を見せていく。  画面の意匠のみならず、そうした作法自体が「映画術」の忠実な踏襲として芯が通っている。  曰く、「マクガフィンには何の意味も無いほうがいい。」(ヒッチコック) 曰く、「映画作家は何かを言うのではなく、見せるだけだ。」(トリュフォー)  鏡面を使った看護師瞬殺シーンの絶妙な構図。アフリカ系タクシー運転手の亡骸に当たる照明。 その状況の秀逸な見せ方ゆえに、ブルーノ・ガンツ、フランク・ランジェラらは勿論、僅かな登場シーンしかない端役キャストに至るまで個性があり、そのいずれもが印象強い。  鏡面に映る二人の虚像を破砕するリーアム・ニーソン。その破片を握りしめる右手と、立ちすくむダイアン・クルーガ―の構図。 爆発による停電でモノトーンとなった画面に漲る一瞬の緊張と、交感する二人の表情がいい。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-22 23:46:06)
99.  ある戦慄
夜の街を疾走する列車に被るロック風オープニング曲が非常にクールだ。  生々しいモノクロ・ロケ撮影による夜の都会の濡れた街路や、神経症的キャラクター群、そしてその濃い影が印象的なノワールスタイルを特徴とする前半部。  これから乗り合わせることになる登場人物たちの個性が列車の進行とカットバックされつつ簡潔明瞭に描写分けされていく。  そして密室劇となる後半部でもまた車両内の計18人それぞれを過不足なくドラマに関与させ、二部構成でサスペンスを醸成していく手捌きが巧みだ。  列車内はアメリカ社会の縮図と化し、その舞台劇的設定の中に人種差別・所得格差・同性愛・都市犯罪等々の社会問題を浮かび上がらせていくが、それはあくまでショットの力強さによる。  俳優の顔面と直近で正対するカメラの圧迫感が秀逸だ。 その時、視線を返されているのは観客自身である。  同性愛描写に関するコード改定が61年。 黒人問題を描いたラリー・ピアースの前作『わかれ道』が64年。 そして66年の新コード採用によって、アメリカの内包する苦悩が赤裸々に曝け出されている。 
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-05-15 22:48:19)
100.  心のともしび
『ジョニー・べリンダ』で口と耳の不自由を演じたジェーン・ワイマンが、本作では目の不自由を演じる。  宗教的主題という点でも通じており、本作では神格化された高徳の医師は表象されることがない。  ストーリーは通俗的ながら、屋内の人物に影を濃く落とすラッセル・メティのローキー画面の艶によってヒロインの失明のドラマと相乗させ、しっかりと映画にしている。  特に舞台をスイスへ移して以降のホテルのシーンは、暗がりの中にランプの灯りやヒロインの衣装のワインレッド、ライラックの青紫がよく映えて艶めかしい。  前半の湖畔のロケーションも良いが、単調になりがちなセット撮影パートも背景奥に窓外の風景を採り入れた多層的な構図によって画面を充実させている。  クライマックスの手術室上方のガラス窓に、執刀するロック・ハドソンの反射像と、それを見守るオットー・クルーガ―の像が重なり一体化するショットがその白眉だ。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-04-30 23:37:42)
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