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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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101.  サウスポー 《ネタバレ》 
失意のジェイク・ギレンホールの矮小さを俯瞰ショット、あるいは寝室の鏡、階段奥などの行き詰まりの陰影を以て表現したりもする訳だが、 ふと気を許すとまた顔面がスクリーンを占拠しだす。  画面奥の暗がりに座り込む彼から送られたピントが、娘が描いた家族の絵の方に合わされるのだが、 こうしたショットもかなり杜撰な上、肝心のファイトシーンの編集もちょっと許容出来ないレベルの乱雑さだ。 せめて音楽で盛り上げて欲しいところだが、ジェームズ・ホーナーを起用しながらほとんどメロディが印象に残らない。 新トレーナーとの交流、娘との葛藤ともども淡白すぎて劇になりきれていない感じである。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2016-06-09 22:37:37)
102.  エンド・オブ・キングダム 《ネタバレ》 
辞職願を出すか、出さぬか。生まれてくる子と妻の為にどうやら主人公は悩んでいるらしい。 事件を経て映画のラストにはあまりにも判りきった結論が出される訳だが、主人公の所謂人間味を垣間見せるための出来レース的設定としても、 つまらないエピソードだと思う。画面的にもパソコン前の入力作業でしかない訳で。  といいながら、一旦アクションが開始されればジェラルド・バトラーも機敏な銃捌きが様になっている。 クライマックスのアジト突入ではカメラも長廻しで縦横無尽に彼の動きを追い続けて臨場感をよく演出している。 その中で、現場リーダーとの間に交わされるやりとりと連帯感などさりげない部分が良い。 半面、反テロだとかの大きな物語の方ははっきり云えば胸糞悪い。  最終盤のアジト内の攻防もアイデア不足である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-06-03 23:10:48)
103.  シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 《ネタバレ》 
中盤の空港での大乱戦を何と形容したものかと思案していたら、他所のサイトで適切な表現を見つけた。曰く、「単なるバカ騒ぎ」。 フルメンバーに拘らずに不要な常連キャラクターは潔く削り、さらにクライマックスも舞台とキャラを限定したのはいいが、 結局は新規キャラとのプラスマイナス。 オールスターということらしいが、そもそもそれほど有難味を感じるキャストか、という話である。  いわゆるハリウッドスター映画のシステムとはいえ、ドラマパートは当然の如くアップショットの連発、アクションパートも毎度お馴染み エフェクト過多の小刻み編集。相変わらずである。  この一連のコミック映画、一昔以上前の日本アニメのような愛とか正義とか世界の平和とかの所謂「大きな物語」を語るのにうってつけらしい。 程よく紛争情勢や現在的な課題なんかを織り込んでシリアスを気取るが、やはり「単なるバカ騒ぎ」である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2016-05-17 00:17:46)
104.  ズートピア 《ネタバレ》 
『48時間』をもう一度観直したくなるような、定石どおりではあるけれど二者がそれぞれいがみ合つつも感化し合い、やがて信頼関係を築いていく過程が 丁寧で心を打つ。その最も決定的な転機となるのは、あのロープウェーのシーンだろう。 上司からバッジを取り上げられそうになる兎のジョディを見る、狐のニックの表情。その短い1ショットが彼の心の変化を的確に表現し、 後に語られる彼の過去のエピソードによってその改心を視覚的に裏付けていく。  冒頭の演劇を、二度目は策略として用いる。上京シーンの列車を、二度目はアクションとして用いる。その他、記者会見やナマケモノや ニンジン型レコーダーなど、あらゆるネタを二段三段と反復・転化させていく作劇スタイルが見事というしかない。  ミュージカルシーンの充実も相変わらずである。
[映画館(吹替)] 9点(2016-05-08 17:05:57)
105.  追憶の森 《ネタバレ》 
差しっぱなしにされた車のキーの強調や、手荷物を巡るやり取りなど、如何にも説明的で諄い感じの冒頭である。 語りに入ると流れ出す劇伴も、シーンの解釈を狭めてしまう。  キイロとフユのキーワードがドラマの中で効果的に決まってこないのも、視覚的な段取りが不十分な為ではないだろうか。 もっとその二つの意匠を種明かしに至る過程のどこかに仄めかしておくべきだと思うが。  焚火の傍で科白で語られる紅茶やシャツのエピソードについても、それらをナオミ・ワッツの不在の中で具象の画面として再提示させることで 影の気遣いと情愛を印象づける、そういう段取りも本来なら欲しいところである。  映画なのだから。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2016-05-07 22:23:37)
106.  スポットライト 世紀のスクープ 《ネタバレ》 
被害者、弁護士にインタビューしつつ、メモを取る指先の動き。年鑑の名簿一行一行を定規でチェックしていく手作業。 そして、ひたすら足で歩いての訪問取材。  具体的な個人ではなく、システム・構造を追究するという 題材自体は文章向きかもしれないが、記者達の肉体作業を地道に描写していくことによって行動の映画にしている。  ドアを開けて人と会う、ドアが開いて人が顔を出す、そうしたドアを活用した人物の画面への現れが充実していて、 そのことが、画面への興味を途切れさせない。  『清しこの夜』の歌声がかぶる一連のモンタージュの抒情が染み入る。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-05-02 21:14:56)
107.  バットマン vs スーパーマン/ジャスティスの誕生 《ネタバレ》 
内容とはあまりにも不釣り合いな、冗談きつい上映時間。これだけで、才能ありませんと云っているようなもの。 当然の事ながら、ドラマの流れは淀みまくる。 例によって、どこまで効いているのかいないのか、痛覚のさっぱり伝わらぬインフレCGアクション。 案の定、身体を通して発露させるべき情動は希薄で、単に派手なスペクタクルに終始する。  要するに、『マン・オブ~』の欠陥そのままという事である。  そもそもがヒーロー対決ありきの企画なわけで、観る側からすれば動機付けが後付けとなるのは解りきった事。 もっと開き直ればよいものを、無理に理屈付けしようとするから苦しい言語説明となる。 原作の絡みなど、知ったことではない。  9.11を出汁に使うかような冒頭のビル崩壊スペクタクルからして不愉快になる。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-05-01 00:33:24)
108.  レヴェナント 蘇えりし者 《ネタバレ》 
冒頭でまずレオナルド・ディカプリオがほとんど瞬きをする事なく銃を撃つショットに少し驚き、この映画で彼はほとんど瞬きをする事が無いだろう事を なんとなく予感しその通りに進行していくのだが、そのディレクションの意味も中盤でより明瞭となる。  スコープサイズ画面の半分を遠景、半分を極端なクロースアップで占める構図の多用によっても、人物や動物の見開いた眼へのこだわりは特徴的だ。  もっとも、目を瞑る度に妻や息子の回想シーンや気取ったイメージショットが頻繁に現れてはドラマを引き延ばしにかかる訳だけれど。  そうした中、アルフォンソ・キュアロン『トゥモローワールド』の長廻しからさらに難易度を高めたアクションシーンの機動的なワンショットは やはり圧巻である。 樹上からの人体落下、顔面を貫通する矢、林間の乱戦から騎馬戦への視点切り替え、それらを繋いでゆく高難度のカメラワークの合間に陽光を瞬間的に入れ込んで生々しさを際立たせるところこそルベツキの本領だろう。  評判のよい「美しい景観」のロングショットはただ美観にとどまる限り、それ以上のものにはならない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2016-04-29 21:48:23)
109.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
高空から撮られた地表や街並みのショットが、ただそれだけで静かな不穏と緊迫を醸し出す。 スコープサイズの画面に美しく広がる地平線と独特の雲とトワイライトは、血生臭いドラマと対照を為す形で印象深い情景を見せつけてくる。  銀行の監視カメラ映像、暗視スコープ映像など、様々な媒体の挿入も効果的に決まっている上に、環境音に似せたBGMも画面から浮く事がない。  中盤のバーでのジョン・バーンサルや、ベッド脇に置かれた札束バンド、そしてラストのベランダで銃を持つエミリー・ブラントなど、フォーカスを巧妙に外すことで逆にそのぼやけた対象を強く意識させ観客に注視を促すという、サスペンスと情感の演出にもついつい乗せられてしまう。  べニチオ・デル・トロ自身の佇まいもさながら、特に後半の彼が凄みを増していくのは、暗闇と影を相乗的に活かした撮影にも拠るところも大だろう。 レースカーテンの揺れる奥に佇むデル・トロ。彼の表情に落ちる陰影の黒味は彼の内面を見事に具象化している。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-04-27 20:56:02)
110.  フィフス・ウェイブ 《ネタバレ》 
大状況の収拾を放棄するのならば、いっその事その中でヒロインが熊のヌイグルミを弟に届けるドラマにもっと特化すれば良かったのに。 かなり単純な謎解きに加え、特に肝心なクライマックスとなるべき基地潜入後の大雑把さはかなりキツい。 いくらでも危機状況とサスペンスを創り出せる状況にありながら、それすら放棄しているように見える。  冒頭シーンから、若者が銃を持つこと・撃つこと・撃たれることの重みにも拘って描写しているのがわかるが、 ならばそのテーマについてもヒロインの行動を以て何等かの映画的回答をして欲しいとも思う。 単にヒロインの大腿を見せる為だけのマクガフィンでは駄目でしょう。  徴兵制の批評も、やるならもっと痛烈にやって欲しい。  さすがに食傷気味となってきた災害によるカタストロフィとデストピアのビジュアル・エフェクトだが、 津波体験者の方にとってはトラウマを蘇らせる映像かもしれない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-04-24 22:04:41)
111.  リリーのすべて 《ネタバレ》 
『英国王のスピーチ』でのコリン・ファースの頼りなげな映画ヒーローぶりを大きく補佐していたのが、 ヘレナ・ボナム=カーターの魅力的な映画ヒロインであり、彼女の描写あってこそ主人公のコンプレックスも魅力に転化し得たといえる。  ここでも構造は変わっていない。エディ・レッドメインを献身的に見守るアリシア・ヴィキャンデルの表情を介することによって、 二人のドラマへの共感を促さんとする。そして、彼女も明快な心理的表情でもってよくそれに応えている。  例によって、映画は表情のクロースアップ主体。それによって衣類の肌触り・触覚性もまた拡大化されている。  密会場所となる集合住宅地の無味乾燥な佇まいとパースをつけたシンメトリックな縦構図や沼地の情景など、いかにも抽象的なロングショット が時折そこに挟まれるという具合だ。  ラスト、ようやく晴れ間を見せた空に舞うストールが主人公の開放を暗示する。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-03-24 23:47:24)
112.  マネー・ショート 華麗なる大逆転 《ネタバレ》 
いかにも、グリーングラス御用達のバリー・アクロイドらしいラフな手持ちカメラが実録風を演出する。 クリスチャン・ベールの表情にズームしつつピントを合わせてみせる手つきなどが相変わらずワザトラシイ。 当時の風俗のスチルが目まぐるしくコラージュされ、饒舌なビジネス台詞の応酬に嫌でも集中させられる。  システムのいかがわしさに次第に焦燥を表していくクリスチャン・ベールの神経症気味の芝居も相変わらず達者なら、 頑固一徹を体現するスティーブ・カレルの気難しい表情も次第にヒューモアを醸していく。  当初はクセのある身振りを見せる主人公らの姿が逆に真っ当さに転換し、業界全体のアブノーマルを炙り出していく。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-03-13 08:28:36)
113.  ザ・ブリザード 《ネタバレ》 
冒頭の車内の会話シーンから、3D映画らしからぬ深度の浅いショットとダサいピント送り、そして光量・光源不足の画面に萎える。 (ナイトシーンが多い事とは全く関係ない。) 2、3ショットで済むシーンに5、6ショット用いる不経済にも気が重くなる。  ホリデイ・グレインジャーを特権的に撮っているのは、公衆電話口で振り返らせる印象的な出のショットからして明らかだが、 彼女の出番が多い分、活劇の進行も鈍っている。だから陸のシーンは総じて退屈だが、海に乗り出して以降はようやく映画も動き出す。  ワッチから操舵盤のケイシー・アフレックまで、乗組員らが伝言を繋げていく縦移動ショットなどはなかなかの盛り上がりだ。  前半の露出アンダー気味の画面も、ようやくラストの暗闇に瞬くヘッドライトの光で報われる。 ライトを一旦消して点け直させるのは間抜けとしか思えないが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2016-03-04 20:00:20)
114.  スティーブ・ジョブズ(2015) 《ネタバレ》 
同タイトルだけにどうしても2013年版と比較してしまうが、主人公の来歴をオーソドクスに追いかけたあちらの平凡さに対して、 後出しとはいえアーロン・ソーキンのシナリオの卓越が際立っている。  三度の製品発表会、その開幕直前の慌ただしい舞台裏を映画の場とする、挿話の取捨選択・構成が大胆である。 人物は舞台裏をアクティブに動き回り、緩急自在のカット割りと会話劇の中から人物像を炙り出していく。 過去のフラッシュバックは申訳程度に短く挟まれるのみで、映画は現在進行形を貫くが、 1984年、1988年、1998年と、画面のシャープネスを微妙に変化させているような印象もあって、時代と人物の変化を視覚化する工夫がみられる。  2013年版では単に顛末の説明としてある取締役会での解任シーンが、こちらでは窓外の土砂降りの雨が強烈な視覚イメージとして 残るといった具合に、実録性よりも印象的な画作りに優位を置くスタンスも窺がえる。  ラスト、舞台袖に立つ娘と主人公の切返しショットがなかなか良い。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-03-01 23:50:29)
115.  ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 
何となしに山の稜線か地平線がまず最初に来るだろうと予想すると、それ以上の画と音楽でもって魅せてくれる。 下半身を雪に隠したキリスト像を配した印象的なアバンタイトルは後々のドラマを早くも仄めかすものだろう。 主舞台となるロッジは勿論、種田陽平氏の映画美術が冒頭から光る。  ドアや窓にこだわる種田氏だけあって、馬車のドアから始まり、山小屋のドアも、地下扉もキャラクターと密接に関係する。 そのメインのドアを幾度も幾度も開けては打ちつけさせて映画にアクセントをつけるタランティーノも流石というべきだろう。 納屋の大きな扉の開閉を逆光でシルエット処理したショットは、ジョン・フォードへの目くばせとしか思えない。  雪が家屋の隙間からチラホラと舞い散っている。毒入りポットのブルーが不吉なカラーを創り出す。 ロバート・リチャードソンの刻印たる強いライトが屋内のテーブル上に注がれ、タランティーノの毒を表すかのように独特の風情を帯びている。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-02-28 21:43:20)
116.  キャロル(2015) 《ネタバレ》 
テマティスム的には、色の主題なり、視線劇の充実が語られるのだろう。 デジタル・シャープネスが指向される今時に、この軟調画面の肌理と艶だけとっても「映画」を見た満足感を与えてくれる。 雨滴の乱反射や、窓ガラスの曇り、紫煙などがさらに画面を滲ませて一層味わい深さを増している。  リビングから玄関ドアに向けたカメラポジションが、奥の空間でやり取りする人物をさらに壁ラインでフレーミングする。 屋外からの望遠による二つの窓と、その間を移動しているだろう人物の見えない動き。 それら人物の見え隠れ具合が、こちらの視線を空間の中に自然と引き込んでいく。 こうした絶妙の構図取りもまた素晴らしい。  数ある視線のドラマの中でも、とりわけ極上というべきラストのケイト・ブランシェットの視線と表情は何と形容すべきだろう。 これはもう一度観に行きたい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2016-02-14 20:52:48)
117.  オデッセイ(2015) 《ネタバレ》 
この類の作品ならば普通なら主人公の追悼セレモニーのシーンなどで悲嘆にくれる家族の姿が登場するものなのだが、それが一切無いので、おや?と思う。 これはラストまで徹底していて、マット・デイモンの家族は台詞の中では語られても、それとわかる形では登場しない。 この省略は英断だろう。彼はあくまで一個のプロフェッショナルとして存在している。  火星への転進を決定した宇宙船のクルーが、家族と交信する中で帰還の延期を伝えると、彼の妻は画面の向こうで即座に理解を示し、 スクリーン上で互いに手を合わせる。 往年のトニー・スコットを思わせる、スクリーンを通してのさりげなくもエモーショナルな交感シーンに打たれる。  陽性の挿入曲に彩られながら、録画画面の中のマット・デイモンは軽妙に語り、 その一方で、終盤に控えめに登場する彼の痣だらけで痩せた裸身の後ろ姿のビジュアルは彼の艱難辛苦を雄弁に語る。 「危機感がない」からの冗談や軽口なのではない。絶望的状況だからこその精一杯のジョークなのだ。 こういった語りのバランスに唸る。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-02-14 06:13:47)
118.  ザ・ウォーク 《ネタバレ》 
パリの町中、歌を披露するヒロインとの出会いは視線劇から始まる。主人公の作った輪の内と外で今度は彼女とのパントマイムが始まる。 突然に雨が降り出し、彼は彼女を大きなパラソルの輪の内側へと招き入れる。2人が心を通わしていく流れがテンポよく進んで心地いい。  軽快な大道芸の動きの楽しさ。米語と仏語が交じり合う、言葉の響きの楽しさ。ふと挿入されるサイレントの趣向。 こうなると、ルネ・クレールを連想せずにはいられない。  高層階を一気に上っていき街を一望するカメラも、「自由の女神像」の上での語りも、 緊張のクライマックスに静かに『エリーゼのために』を奏でるセンスも、そこに通じるような感覚がある。  夜明けに向かい、うっすらと明るくなっていく地平線。 ジョセフ・ゴードン=レヴィットが歩みだす直前、雲が切れて景観が広がる瞬間には、張られたワイヤーの直線が生む 造形美とともに、映画の美がある。  エレベーターの運転員をはじめ、ビルを建造した作業者たちが連行される彼を拍手で讃える。 このようなシーンがあるゆえに、ラストに映し出される二棟のビルのロングショットの感動が増す。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-01-27 21:26:23)
119.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 
画面手前に小道具類を大きく配置した構図がやたらに多いのは3Dを意識したのだろう事はわかるが、2Dでみるとかなり煩わしい。 時代を再現した折角の美術や小道具なのだろうからもう少しじっくり見せて欲しいところなのだが、ショットは短く忙しない為、それらを味わう暇もない。  そして、例によって多すぎるアップショット。流れを幾度も遮る時制の往還。回想ドラマの難しいところだ。  ロケ・バニョスのスコアは漁のシーンを美しく盛り上げもするが、 ヘムズワースが全神経を集中して白鯨を察知するシーンに音楽はどう考えても不要だろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2016-01-17 22:24:21)
120.  ブリッジ・オブ・スパイ 《ネタバレ》 
マーク・ライランスの自画像、鏡像、本人の三身が一画面内に映し出される冒頭のショット。 それは二対一の交換のドラマ、国を跨ぐスパイのアイデンティティのメタファーでもあろうか。 鏡への反射の演出は随所にみられ、様々に考察の余地がある。  裁判劇を含む饒舌な脚本でありながら、冒頭で示されるそのスパイ活動の描写は尾行劇とレンズを凝視する事という視覚の駆使であり、 そこに画面で語るスピルバーグの本領が発揮されている。  ヤヌス・カミンスキーは、凍てつくヨーロッパと、温かみのあるニューヨークのルックのコントラストをよく際立たせ、 クライマックスの橋は越境という決定的局面を光と共に象徴的に浮かび上がらせている。  本作での光は、米国パイロットを幾度も苛み、銃弾の撃ち込まれたトム・ハンクス家族を晒し、橋の向こう側に輝くライトも 必ずしも希望を象徴していない。蒼白い光芒の下、シルエットと化して消えゆくそれぞれのスパイと、立ち尽くすトム・ハンクスの 暗示的なロングショットが切なくも美しい。  マーク・ライランスの寡黙な芝居が素晴らしい一方、眉間に皺を寄せるばかりのトム・ハンクスの表情は少々単調か。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-11 21:54:58)
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