1. コンタクト
人物描写はかなりステレオタイプです。その一方、ちょっとレムっぽい展開はまあまあかなという気もします。しかしなんといってもアメリカらしいのは、科学と宗教との折り合いをどうつけるかのが最大の問題だ、という点にあります。宗教を信じる人の割合が非常に高いアメリカならではの展開で、他の国の映画でこういう筋書きになる可能性はほとんどないでしょうね。そういう意味ではアメリカ社会を理解する上でのよい教材でもあります。 [DVD(字幕)] 5点(2009-09-04 06:03:31) |
2. 未来世紀ブラジル
薄っぺらいセルロイドの膜を通して世界を見ているようなギリアムの世界。あるいは現実に向けて立ち上がらなくてはならないけれどもどうしても立てない明け方の悪夢の世界。 [DVD(字幕)] 8点(2009-08-31 05:41:12) |
3. メンフィス・ベル(1990)
この作品に出てくるイェーツの詩は、いまも大好きな詩のひとつです。 An Irish Airman Foresees His Death I know that I shall meet my fate Somewhere among the clouds above; Those that I fight, I do not hate, Those that I guard I do not love; My country is Kiltartan Cross, My countrymen Kiltartan's poor, No likely end could bring them loss Or leave them happier than before. Nor law, nor duty bade me fight, Nor public men, nor cheering crowds, A lonely impulse of delight Drove to this tumult in the clouds; I balanced all, brought all to mind, The years to come seemed waste of breath, A waste of breath the years behind In balance with this life, this death. [DVD(字幕)] 6点(2009-08-29 07:37:54) |
4. グラン・トリノ
《ネタバレ》 死ぬことが禁じられ、死ぬことが不自然なことであるとまで考えられ、死に場所さえ取り上げられてしまった中で、現代日本人は老いていかなくてはなりません。でも、自分の死を最後の大舞台の演出に使うことだってできるんです。それこそ人生最後の晴れの舞台なんじゃないでしょうか。よーく考えてみるだけの価値はあると思いますね。 [映画館(邦画)] 9点(2009-08-25 06:00:04) |
5. 普通の人々
何と言ってもお母さんのキッチュぶりが燦然と輝く異色の作品です。この家族にとって離婚は悲劇ではなく、大いなる解放への出発点です。そこへたどりつくまでの人間の苦悩を描き、レッドフォードの監督第一作として、忘れることのできない映画となりました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-17 06:21:40) |
6. トロイ(2004)
いやぁ、大昔の隣町戦争がかなり壮大なスケールで登場します。人間が伝説を作り出し、その伝説が人間社会の中で自己肥大していくさまをまざまざと感じないではいられませんでした。 [DVD(字幕)] 2点(2009-06-15 08:03:57) |
7. タイタニック(1997)
大ヒットしましたね。今日の日本のような冒険もない安心・安全社会で閉塞的に生きていると、こういう歴史的大悲劇に遭遇するということは、ある意味うらやましいと思わずにはいられません。 [DVD(字幕)] 3点(2009-06-07 05:19:21) |
8. ターミナル
移民によって成立した国アメリカも、時がたつにつれ外国人を排斥するようになりました。これは国家の成熟によって生じる避けがたい事態であり、それだけアメリカ人というブランドが形成されてきたということでもあります。正義の国、開かれた国を表明してきたアメリカがたどりついた苦労の一端をうかがい知ることができます。でも本作は一応、ファミリーで楽しめる娯楽映画に仕上がっています。 [DVD(字幕)] 4点(2009-06-06 05:47:45) |
9. さらば冬のかもめ
世の中にはいろんな人間がいますが、それをたった一つの規律しか持たない集団の中に押し込めるといろんな不都合が生じてきます。軍隊などその見本のような場所です。馬鹿野郎は馬鹿野郎なりにそれと折り合いをつけ、彼らなりに仲間を助けようとするのですが、結局はどうにもなりません。寒々とした冬の景色を背景に、馬鹿騒ぎでしか生きることを表現できない男の悲しみが、観る者の心に染み込んでいきます。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-04 05:46:49) |
10. ダージリン急行
西洋の価値観で作られていますから、インドもインド人も単なるエキゾチックな背景にすぎなくなるのは「ロスト・イン・トランスレーション」における日本や日本人と同じです。また、外国を旅することとそこに住むこととはまったく意味が異なります。そこらへんをよくわきまえておけばなかなかにおもしろい映画です。汽車の内部は「マダム・トゥトリ・プトリ」を思い出させます。 [DVD(字幕)] 5点(2009-06-02 06:17:44) |
11. ボーン・アルティメイタム
「絶対死なない+不可能なことはない+迫害されている」っていうところがまさにゲームです。場末の映画館で見たんですが画面が全体的にくすんでいてさらに臨場感に溢れていました。 [映画館(邦画)] 2点(2009-05-15 09:43:55) |
12. グラディエーター
幸福な生涯を送った英雄というのは言語学的に矛盾した存在で、英雄というのはみな悲劇的な死をとげて始めてその名に値します。英雄に憧れる人はこの点を忘れるべきではないでしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-13 05:43:55) |
13. フリーダ
この映画の主人公のような尋常ではないエネルギッシュな人を見ていると自分の情けなさが身に染みて感じられ、つらいです。人の思惑なんか屁とも思わなければ何かを成し遂げることはできないのでしょう。それは無思慮として非難されることが多いのですが(日本などでは特に!)、それこそ嫉妬というものの実態なのかもしれませんね。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-10 05:33:07) |
14. ウォルター少年と、夏の休日
「男にはいい地図が必要だ」という言葉が忘れられません。いまの時代、男たちにはもはや死に場所もありません。働き続けたあげくに年老いて邪魔者扱いされるばかりです。自分の力で自分の生き様を定め、そして打ち上げ花火みたいな最後をつかみ取ったじじいたちに喝采です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-08 06:06:25)(良:1票) |
15. マンダレイ
な~んの予備知識もなく見始め、「へ?」とか思いながら、なおかつちょっと居眠りなんかもしながら見ていたのですが、最終章でやられました。いやあ、めちゃくちゃパンチの効いた映画でした。やるなぁ、監督・・・。カラマーゾフの兄弟の大審問官とも通じるものがありますね。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-05 05:36:15) |
16. スリップストリーム
あいたたたたたた・・・。こういうのってやはり一度は作りたくなるんでしょうね。とくにああせい、こうせい、って注文ばかりつけられている俳優ですとなおさらです。撮影現場の混乱なんかめちゃくちゃリアルです。あのイカれた二人連れの危なさ加減も相当なものでした。映像はとても美しく、乾いたアメリカの風景が素晴らしいです。 [DVD(吹替)] 2点(2009-05-02 05:56:59) |
17. スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師
ロンドンの暗い雰囲気が強烈にデフォルメされています。こういう中で育つアングロサクソンの人々を軽々に見てはなりません。著名な都市だから美しい場所だろうなどと思っていたら、それは半人前どころか1/6人前くらいのところです。ちなみにロンドン全体を覆う石炭の煤煙こそ産業革命の証しであり、当時のイギリスは(極端に言えば)地面を掘れば石炭が出てくるような国でもありました。この石炭掘削に伴う地下層の理解進展によって地球年代史の幕が切って落とされました。地球の年代に出てくるデボン紀など多くの名称はイギリスの地名に由来しています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-04-24 05:21:25) |
18. ターミネーター2
第一作がとてもよかったので期待して見たのですが・・・。もうただのおっかけっこだけ。適当にお涙ちょうだいも入っていて・・・。もちろんお金儲けのためっていうんなら大成功だったんでしょうけど・・・。でも第一作だけはいまだに大好きですよ。 [DVD(字幕)] 2点(2009-02-24 05:50:19) |
19. ガタカ
SFやファンタジーといっても内容は様々で、ただひたすらおとぎ話のような映像を見せつけて「どうです! すばらしいでしょ!」っていうものが多いのですが、ごくまれに、人間をより深く描くためにSFという設定を利用する映画があります。本作はそうした映画のひとつで、その硬質な画面とあいまって人間が持つ運命の苦しみと悲しみが見る人の心に深く染み入っていきます。おとぎ話的映像を期待すると当てが外れますが、数あるSF映画の中の傑作のひとつです。 [DVD(字幕)] 9点(2009-02-21 05:38:25)(良:1票) |
20. 12モンキーズ
テリー・ギリアムらしい悲しみとやさしさとあきらめに満ちた作品です。幸せな人は幸せなりに、そして不幸な人は不幸ななりに「あああ、人生ってそうなんだよ」って、かたまっていたこころがちょっと柔らかくなる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-02-20 05:52:38) |