401. アンナ・マデリーナ
大好きなケリー・チャンと金城武の二人が共演する、香港を舞台にしたラブストーリー。 二人が共演している作品は、本作を含めて3作品のみ。 そのうち、『世界の涯てに』と『ラベンダー』は既に鑑賞済だったので、まだ観ぬ二人の共演作は、本作で最後となってしまった。 『世界の涯てに』『ラベンダー』共々、どちからと言えば主演二人の魅力を引き出すことをメインに作られていた感があり、作品としてみるといまひとつの感が否めなかった。 だけど、二人のファンである私にとっては、それで十分楽しむことができた。 ケリー・チャンはいつの時代の作品を観ても、そんなに極端には変わらない(全然歳を取らない!現在も尚美しい!)が、金城武は歳を重ねるに従い、雰囲気がかなり変わってきたように思う。 本作では、まだかなりの若々しさが残っており、まだヒゲもそんなに青くはない。 本作での二人は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』と比べると、それほど綺麗に、又はかっこよくは撮られていないように感じた。 その代わり、作品自体の出来は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』より良かった。 何より、普通に楽しめたのが良かった。 ただ、細かい面を言えば、少し作りが雑かなぁ、と思えるシーンも多く、洗練度という点ではイマイチかもしれない。 後半で、金城武演ずる主人公の書いた“小説”の再現シーンが流れるのだが、これが作品全体のバランスとリズムを崩すくらい冗長だった。 でも、そういった荒削りな面はあるにせよ、最後は最後でなかなか感動させてくれるし、観た後の気分もなかなか良い。 これで『世界の涯てに』や『ラベンダー』の様に、二人の魅力がうまく撮られていれば完璧だったのだが・・・ 2000年以降、ケリー・チャンと金城武の共演作は一つも撮られていない。 ケリー・チャンはまだまだ大丈夫そうだが、金城武が“おじさん”っぽくならないうちに、もう一作品くらい共演作を観てみたい。 二人のファンである私は、それを強く望んでいる。 ちなみに同じく大好きな俳優であるレスリー・チャン(故人)も本作ではチョイ役ながら出演している。 そういう意味でも、本作はかなりのお気に入り作品となった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2021-05-31 22:45:51) |
402. 砂の女
安部公房という作家が原作・脚本を担当、そこにあの『切腹』でも音楽を担当した武満徹が効果的な音楽を提供している。 岡田英次はアラン・レネ監督の『二十四時間の情事(ヒロシマモナムール)(1959)』を観た時に初めて知った俳優だが、アラン・レネの作品自体が趣味に合わなかったということも手伝って、あまり良い印象は持っていなかった。 しかし、本作『砂の女』においてはかなりの個性を発揮しており、その印象は“なかなか味のある俳優だなぁ”というものへと変わった。 そこに対するのは、私の年代の人達にとっても比較的著名な岸田今日子である。 もちろん、私が知っている彼女は“おばあちゃん”な岸田今日子。 こんなに若くて妖艶な彼女に出会ったのは、今回が初めてである。 まずオープニング・タイトル(キャストとスタッフ等の表示)からしてインパクト大。 この時点で、本作に対しただならぬものを感じてしまった。 それは、強いて言葉で表現するならば、 “オープニングでキャスティング等が表示される度に、ハンコ(印鑑)がガツンガツンと表示され、そこに独特の効果音が重なる・・・” というものなのだが、なかなか言葉では伝えにくい類いの演出なので、興味を持たれた方は一見して頂きたい。 かなりサスペンス的要素が強い作品であり、その点だけでも十分楽しめるのだが、最終的には人生哲学的なテーマにまで話が及んでいくという、広範な守備範囲を持つバランスのとれた逸品である。 [ビデオ(邦画)] 7点(2021-05-31 15:47:45) |
403. 他人の顔
《ネタバレ》 こちらの作品、久しぶりに観ていて思わずニヤリとしてしまう程の面白さ。 サスペンス的な展開とも相まって、終始画面に釘付けの状態となった。 何といっても最も素晴らしかったのは、入江美樹という女優さん。 とにかく美しい!! メインストーリーとは直接関係ないサイドストーリーの中で、精神病院で働く女性を演じているのだが、何故だか顔はまるでお岩さん状態なのだ。 左半分から見るととても美しいのだが、顔の右半分は見るも無惨な状態。 道でナンパされるのだが、そのシーンが印象的だった。 また、勤務している精神病院内では、痴呆らしき老人に後ろから抱きつかれるなど、散々な目に遭う。 最終的には兄と肉体関係を持ち、お兄さんへは「ごめんなさい。」の一言。 その直後、白装束で海へと入り、自殺してしまう。 こういったサイドストーリーまでもが全て印象的。 そして淫靡で残酷で怪しい雰囲気を醸しだしているのだ。 話をメインストーリーに戻すと・・・ 主人公の男性は精神科医にくってかかり、その挑発に精神科医も見事“応える”。 どういった形で“応えた”かというと、精巧なマスクを造り上げ、それを主人公に被らせ、別人として生活させていくというものだった。 これはいわば医者としての研究的な好奇心によるものであったのだ。 最初は抵抗していたものの、マスクのあまりの出来のよさに、心躍る主人公。 全くの別人になれる素晴らしき“他人の顔”を手に入れた主人公は、そこであることを思いつく。 それは、マスクを被り全くの別人になりすまして、妻を口説くというおそろしいものだった・・・ この作品を観ようと思われる人はそうはいないと思うが、一応これから先の部分は伏せておくことにする。 いずれにしても本作品は、私にとって久しぶりの“超お気に入り作品”となった。 [ビデオ(邦画)] 9点(2021-05-31 15:46:24) |
404. おかあさん(1952)
『浮雲』では、高峰秀子と森雅之が繰り広げる皮肉の応酬に多少なりともゲンナリしてしまったが、本作は全くの正反対な作品だった。 観た後は何とも言えない、ほのぼのとした気分に浸ることができた。 ラストシーンの、香川京子が魅せる“ウィンク”に脱帽。 岡田英次の演ずる劇中の青年が羨ましい。 そして観ている私も、まるで自分が“ウィンク”されたかの様にポッとなってしまった。 自分も男として生まれた以上は、本作における香川京子の様な可憐で可愛らしい女性から、一度は“ウィンク”されたいものである。 他にも舌をペロっと出すシーンがあったりと、噂に違わず本作は“香川京子を最も可愛く映し出した作品”であった。 香川京子目的で観た本作であったが、肝心の内容の方も素晴らしかった。 『浮雲』でもそうであったが、成瀬巳喜男の映画に出てくる東京の風景はとてもリアルだ。 どこかの花町を描いているわけでもなく、どこかの豪邸を描いているわけでもない。 むしろその様なものは他の古き日本映画で観ることが可能である。 しかし、成瀬巳喜男の映画に出てくる古き良き東京は、いわば『サザエさん』の実写的様相を呈していて、庶民の生活をそのままリアルに伝えている。 街の風景もそうだし、家の中の景色もそうだ。 自分はこんな昔の東京を見たことがある訳でもないのに、何故だか懐かしい気持ちでいっぱいになってしまった。 香川京子の存在といい、こういった懐かしすぎる東京の風景といい、茶の間の景色といい、全てが感動的なまでに懐かしきベールに包まれていた。 そしてそれを観ているこっちの方も、心洗われるのだ。 『浮雲』で成瀬巳喜男に対してゲンナリしてしまった諸氏に、是非ともオススメしたい作品である。 『浮雲』も日本映画史に残る傑作だが、こちらも対極に位置する形で、成瀬巳喜男の誇る傑作中の傑作だと言って間違いないであろう。 [ビデオ(邦画)] 8点(2021-05-31 15:42:54)(良:1票) |
405. ある殺し屋
《ネタバレ》 さて、オープニングのシーン。 暗いトーンの映像の中で、市川雷蔵の無言の演技が続く。 ここで既に釘付け。 最初の5分で見事、この作品にハマることができた! これほど幸せなことはない。 その後、大ハズレが無いことを確信できる感じがしたからだ。 映画の最初の5分で、自分との相性が分かると、どこかで耳にしたことがあるが、まさにそうだと私も思う。 この独特の暗いトーンの映像は、溝口作品でお馴染みの国宝級カメラマン、宮川一夫が撮ったモノ。 さすがという感じ。 そしてオープニングの舞台となっているのが、劇中「晴海町」となっている埋立地。 晴海だから、あの晴海か。 空には轟音と共に飛行機が飛んでいるし。 市川雷蔵は、埋立地の中にポツンと位置する汚いアパートに入っていく。 なんと周りには、お墓が! ま、埋立地でこのシチュエーションは、当時でもあり得ないが。 あり得ないけど、こんなシチュエーションがあったら最高だと思える程の、サビシ~い場所。 フィルム・ノワールに“黒い華”を添える、素晴らしいロケーションである。 そして程なくして、野川由美子や成田三樹夫が登場。 野川由美子と言えば、そう、あなたでもきっと知っている、あの野川由美子です。 テレビで数年前に放映された『白い巨塔』。 あの中で、鵜飼教授の夫人を演じていた、あの醜いおばさんです。 ま、本作では当然若い頃の野川由美子なんだけど、「別に。」って感じ。 個人的には、若い頃もあんま好きじゃないっす。 この後の展開は、観てからのお楽しみ。 ところで、肝心の成田三樹夫だが。 本作では、凄まじいまでのカッコよさ。 さすが成田三樹夫の代表作の一つと言われるだけのことはあった。 特にラストシーンでの、市川雷蔵のセリフをパクって野川由美子にそのまま吐き捨てるシーン。 コミカルさも相まって、ゾクゾクするほどのカッコよさ。 やっぱり成田三樹夫は最高にかっこよい! [DVD(邦画)] 9点(2021-05-31 15:41:47) |
406. 赤い殺意(1964)
主演は春川ますみ。 かなりのグラマラスなボディ、というかやや肥満気味。 劇中でも、「おまえ程太った奴はそうはいないだろ」みたいな形で、公然とデブ呼ばわりされている。 裸のシーンが何度も出てくるが、まったく興奮せず。 だけどそれがかえって良いのだ。 春川ますみ演じる主人公の女性は、“たくましき女性”もしくは“母性の象徴”として描かれている。 そういった意味では適役といえよう。 150分という長い尺ながら、それ程の長さを感じさせないところは、さすがキネ旬日本映画部門の7位といったところ。 しかし、最初から最後まで重苦しいモノクロ画像。 シャープなモノクロ画像とは対極に位置する重苦しい感じのモノクロ画像なのだ。 これはこれで本作の独特の世界観をうまく創り出しているといえなくもないのだが、さすがに陰鬱な気分になってくる。 しかも激中、何度となく“方言混じりのおばあちゃんのささやき声”が流れ、これがまた不気味。 というか、耳障り。 そして濡れ場シーンの多さもかえってマイナス。 全然色気を感じない、見ていてもさして興奮しない濡れ場シーンの連続に飽食気味になってしまった。 この辺りが、今村昌平を好きになりきれない理由の一つだ。 最後はうまくまとめてくれるので、鑑賞後はそれなりの満足感を得られるが、不快感も多少残るので、いま一歩といったところ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2021-05-31 15:39:42) |
407. 恋の渦
《ネタバレ》 男と女、それぞれの性質を的確に描いているところ、そこに脱帽。 いるよね、こういう男と女って感じ。 いろんなパターンの男女の形が描かれているのも面白い。 決して愉快な気持ちになれる映画ではないけれど、どこか納得させられてしまう内容の数々。 男は立場が変わると急に弱くなったり、逆に女は立場が変わるとしたたかだったり。 でもね、こんな男と女ばかりではないですよ! こんな男や女にひっかからないようにしましょう的な意味では、教則本みたいな側面もあったりする。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-31 15:35:19)(良:1票) |
408. わたしは光をにぎっている
《ネタバレ》 映画的な趣きがあるのは好み。 下町の風情が消えてゆく侘びしさ、それを表現したのも意義がある。 ちなみに舞台になった下町は、東京は葛飾立石(寅さん風)だそうです。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-05-30 01:43:12) |
409. Jam Films2
“CLEAN ROOM”という短篇が圧倒的に気に入った。 劇中で描かれている「クリーン・ルーム」は無菌室という設定なのだが、色彩鮮やかで思わず画面の中に吸い込まれそうなほど。 そのクリーンルームの周りを囲っている透明のカーテン(?)の様なものがあるのだが、これもおそろしく透明感があって、どうやったらあんなに透明になるんだろう・・・って観ていて考えちゃったほど。 麻生久美子本人はさておき、その衣装も素晴らしかった。 (その不自然にとんがったアゴのラインに「?」となり、そこにも目が釘付けになったわけだが) そして・・・ 「何より」自分がこの作品に引き込まれた理由・・・ それは、“エンディング・テーマ曲”だった。 エンドロールと共に流れる、瑞々しい歌声と素敵な楽曲。 チェックしたところ、“Hiroto Otsubo ft. Rie:「BREATHING」”の文字が。 で、“RIE”とは一体、誰?! 知らないぞ? とりあえず、いんたーねっつにて、必死こいて検索した。 しかし、大した情報も入ってこず。 かろうじて見つけたのが、この『CLEAN ROOM』という作品の、サウンド・トラックCDが発売されているという情報。 “Jam Films 2”内の他の作品とは無関係に、『CLEAN ROOM』についてだけのサウンド・トラックがあるらしい。をぉぉ・・・ 迷わずインターネット通販にて購入。 4分という短い曲だが、自分のツボにはまる一曲だった。 そして、おもむろにCDケースについていた「帯」を見ると・・・ あれだけネットで調べても正体不明だったヴォーカルの“RIE”に関する情報がそこに! いやぁ、これにはマジでビビりました。 なんかやられた!って感じと、ちょっとした衝撃感が・・・ 実は、この“RIE”さんというヴォーカルの方、あの『リング』の主題歌を歌っていた女性だったのだ。 なんだぁ、そんな程度で衝撃の事実かよ!って思われるかもしれないけど、私にとっては相当な衝撃。 『CLEAN ROOM』という作品の清清しさ、瑞々しさと相まって、素晴らしい歌声を「BREATHING」という曲で披露し、それに見事、魅せられてしまった私。 しかし、その正体が 「きっとくる~、きっとくる~♪」 の“あの声”と同一人物だったとは。 結構な衝撃だった。 [DVD(邦画)] 6点(2021-05-28 00:23:49) |
410. オーディション(2000)
《ネタバレ》 「怖い映画だと知った上で観ていると、いつ怖いシーンが出てくるのだろうか?とか、そういう警戒心みたいなのを持って観ていると、そういう観客の想像力を膨らませる様な見事な演出が随所に散りばめられていて、ますます怖くなってくる。」 怖い映画という先入観は、上記のう様な現象を巻き起こす。 そういう観ている者の恐怖心を、煽り立てる演出が、誠に素晴らしい! この映画の恐怖は、まさにこの部分に集約されているのだ。 怖かったけど、さすが三池!!って感じで、満足できた。 前半の「恋愛映画のような」部分も楽しめたし、控えめなトーンの映像も素晴らしい。 三池作品の中では、間違いなく傑作の部類に入ると思われる。 個人的に一番、怖かったシーンは、最後のシーンではなく、 「ヒロインの住む、めちゃくちゃ汚なくて古いアパートの一室の映像に突如切り替わり、BGMには風が吹く音の様なゴォーーーーという非常に気味の悪い音が流れ、異常に汚い畳の上に、意味不明な大きな麻の袋が置いてあり、その横でヒロインの女性がうなだれたまま、身動きひとつしない。」 というシーンだった。 三池作品によく出てくる、「異常に汚いアパート」の空間も怖いし、BGMもめちゃくちゃ怖かったっす。。 余談だが、オーディションを行うシーンの中で、 「タルコフスキーの映画は観たことがありますか??」 と、質問をするシーンがあるのだが、妙にツボにハマってしまった。 ちょうど、タルコフスキーの作品を観まくっている最中なもんで。。 [ビデオ(邦画)] 7点(2021-05-28 00:22:36) |
411. 新・仁義の墓場
『新・仁義の墓場』という作品は、私が近年観た数多くの「邦画」の中でも、TOP3に入る映画だった。 三池崇史監督作品である。 そして、この作品に心を奪われた私は、1975年の深作欣二監督作品、『仁義の墓場』をも、借りるに到ったのだ。 さすがに30年前のヤクザ映画を借りるのには、かなりの抵抗があった。 はっきり言って、「楽しめない」という確信があった。 だけど、三池監督の“新”の方を好きだと主張するからには、古い方も観ておかないと・・・ ってな感じで、意を決して観たわけだ。 90分程度の短い作品だったが幸いだったのかもしれないが、それなりに楽しむことができた。 これで更に、三池監督の、“新”の方への理解を深めることができた様に思う。 『新・仁義の墓場』は、私が観た三池作品の中で、間違いなく最高傑作だ。 同時に、邦画としてみても、自分が観た中では最高傑作の一つに入る作品である。 [ビデオ(邦画)] 9点(2021-05-28 00:21:51) |
412. 運命じゃない人
渋谷のユーロスペースにて、映画『運命じゃない人』を鑑賞した。 この映画、前知識ほとんど無しで観にいったんだけど、かなり楽しめた。 カテゴリは「ヒューマン」となっていたけど、サスペンスっぽい部分もあり、スリリングな展開も楽しかった。 「一つの場面を複数の視点から繰り返し映し出す」というのがこの作品の最大の魅力である。 そしてエンドロールが流れ・・・ 「え?!これで終り・・・ははは。。むむ??何?え?おいおい!」 という感じに最後はなれるはず。 ネタバレ無しの代わりに、かなり分かりずらい作品紹介となってしまった。 だけど、ネタバレしてしまうと確実に面白さ8割減の映画だ。 久しぶりに観た「しっかりと楽しめる邦画」だった。 最後まで油断させない細かい作りは一見の価値アリ! 中古チケットショップで映画鑑賞券を購入。 価格は1330円だった。 「回数券」をバラ売りしたものらしい。 半額デーとかだと、安かったとしても館内が混雑しているので微妙だが、この1330円は価値のある1330円だった。 [映画館(邦画)] 8点(2021-05-28 00:20:19) |
413. 乱歩地獄
「火星の運河」「鏡地獄」「芋虫」「蟲」の4話からなるオムニバス。 全てが江戸川乱歩原作の作品だ。 4話全てに浅野忠信が出演しており、浅野忠信ファンには贅沢な一本であった。 しかし、「蟲」以外の作品は、浅野忠信の魅力が十分に発揮されていたとは言えず残念だった。 もっと言えば、浅野忠信じゃなくても問題なかったというレベルのものだった。 しかし、最終作品の「蟲」はかなり浅野忠信の個性と魅力が発揮されていた。 私の苦手な“ヒル”も登場しまくりだったし。 満足とまではいかなかったが、“及第点”と言えるレベルの作品であった。 ただ欲を言えば、もっと過激な描写があっても良かったと思う。 なんか中途半端な過激さだった。 そこが残念と言えば、残念である。 [映画館(邦画)] 6点(2021-05-28 00:17:04) |
414. アイデン&ティティ
この作品、浅野忠信はいわゆる“カメオ出演”だ。 つまりは、チョイ役。 その作品が自分に合った作品ならば、別にチョイ役でも全然構わない。 純粋にその作品を楽しめばいいからだ。 だけど、チョイ役であるにも関わらず、その作品が自分に合わなかった時は、ちとキビシイ。 最後まで観るのが苦痛になる。 この作品はと言えば、“微妙”なところ。 やや、ハズレかもしれない。 かなり昔に、『イカ天』という深夜番組があった。 “バンドブームの火付け役”と言われた深夜番組だ。 この作品は、その“バンドブーム”を題材に扱っている。 私は年代的に『イカ天』はもちろん知っているし、深夜番組を当時見まくっていたので、この番組も見ていた。(ちなみに、その後にやってた『エビ天』の方が好きだった。) しかし、個人的に音楽をテーマに扱った映画というのが苦手なので、いまいちハマれなかった。 あと、みうらじゅんとか好きじゃないし。 よく知らないけど、主人公の男も好きになれなかった。(目つきが特に) [DVD(邦画)] 2点(2021-05-28 00:14:49) |
415. 御法度
“衆道”というものを題材に撮られた異色の時代劇。 前知識無しでいきなり観て、単なる時代劇だと思っていたところで、このテーマだった為、正直驚いた。 そして、この作品を観て、初めて『ヤオイ』という言葉を正確に理解した。(それまで聞いたことはあったが。) さて、主人公は松田龍平。 あの松田優作の長男だ。 しかし、どうもこの役者が苦手だ。 大体、新撰組の野郎どもに狙われるほど、魅力があるとも思えない。 その辺のリアリティが欠けてるので、いきなり入り込めなかった。 “ヤオイ”モノを観るのは初めてだったが、そんなに抵抗感はなかった。 それよりこの役者のミスマッチぶりの方に抵抗を感じた。 [DVD(邦画)] 4点(2021-05-28 00:14:14) |
416. 直撃!地獄拳
日本映画史に名を残す“鬼才”監督、石井輝男初のアクション作品。 石井輝男作品は、今まで沢山観てきたが、どの作品も熱かった。 しかししかし・・・ この作品の熱さはハンパじゃない!! 千葉真一の「コォォォォォーーーーオオオ」の気合いの入れ方が熱い熱い!(関根勤が千葉真一のマネをする時にやる、アレそのままです。笑) 笑いころげる程の熱さ。 そして千葉真一の顔も濃くて暑い。 こんなに熱くて笑えるアクション映画を観たのは初めてだ。 日本が世界に誇れるアクション映画である! ハァーーーーーアアアアアーーーーアチョーーー!! 劇中の千葉真一は、“甲賀忍法”の使い手なのだが、何故か「ヌンチャク」が登場する。 このヌンチャクさばきが凄い!! 凄すぎる! 速い! とにかく速いのだ。 速すぎて笑えてしまう程に。 何故、速いだけで笑えてしまうのか?? それは石井輝男作品に共通する不可思議な面白さによるものだ。 バカらしいことを、凄い技術と真剣さと真顔で演じることの面白さ。 それが石井輝男作品に共通する独特の面白さであり、その独特の面白さは、本作において特に強く発揮されている。 しかし速ぇなー、あのヌンチャクさばき! さて本作は豪華キャストでもあったりする。 津川雅彦、安岡力也、倉田保昭、室田日出男、真田広之などなど。 若い頃の安岡力也が出演していたが、これがやたらに弱い役で最高。 千葉真一に一方的にやられっぱなし。 あのガタイであんなに弱いとは思えないが・・・ そして“日本のドラゴン”こと倉田保昭。 凄い身のこなしと筋肉。 本場のカンフー映画で活躍したその実力を、まざまざと見せ付けられた。 本作は、石井輝男作品に共通する“シリアスさと笑いの不思議な融合”を分かりやすく堪能できる貴重な作品である。 とにかく熱いこの作品。 DVDも発売されていない模様で、鑑賞することがやや困難な状況なのが惜しい。 埋もれさせておくには惜し過ぎるアクション・ムービーの傑作だ。 追記:2007年にDVDが発売されたようですね!嬉しい! [ビデオ(邦画)] 8点(2021-05-28 00:12:55)(良:1票) |
417. 波影
《ネタバレ》 物語は少女のあどけなさが残る大空真弓演じる女性が、雨の中でお墓参りをする場面から入っていく。 恐ろしく沈鬱なムード。 岡崎宏三のカメラが、その沈鬱なムードを際立たせている。 陰影の効いた、少し暗い感じのするモノクロ映像だったが、悲哀たっぷりに海を臨む墓地を映し出しており、文学的なムードと相まってとても美しい。 画面は一転して、明るめの雰囲気に。 そこで若尾文子が登場。 いやー、美しい。 艶かしい。 実に着物が似合っている。 お尻の線が色っぽ過ぎる。 今まで私が観てきた若尾文子出演作の中で、最も美しい若尾文子がそこにいた。 白状すれば、今までは若尾文子がそんなに好きではなかったし、大して美しいとも感じていなかった。 それが、本作で簡単に覆ってしまった。 本作では、若尾文子の美しさが見事なまでに映し出されている。 “ベスト オブ 若尾文子”な作品。 本作の魅力を一言で表現すればこんな感じだろうか。 若尾文子演じる雛千代は、悲しい過去を持ちながらも、とても明るく、誰に対しても優しい。 どんなに辛くて困難な状況でも、悪態をつかず、常ににこやか。 まるで、自分の幸せを全て分け与えてしまっているかのようだ。 雛千代は、娼館(置屋)で女郎をしているのだが、そこの女将さんの娘と懇意になる。 その娘を演じたのが、上に書いた大空真弓である。 娼館で勤める身なので、年下の娘に対して敬語を使う雛千代。 それに対して、娘はタメ口。 だけど、二人の雰囲気は悪くない。 悪いどころか、とても仲むつまじいのだ。 冒頭で雛千代が亡くなるという悲劇的結末を先入観として観ているこちらとしては、明るすぎるこの二人のやり取りが、むしろとても哀しいものに見えてくる。 この哀しき二人のやりとりを「美しい」とみるか、「陰鬱で辛い」とみるかは人それぞれであろう。 しかし、少なくとも私は、あまりにも哀れに感じてしまい、観ていて辛さばかりが先にたってしまった。 もしかすると、私と同じ様に感じていた人もいたのではないだろうか。 ここにDVD化されていない理由の一端があるんじゃなかろうか。 そんな気がした、あまりに哀しすぎる二人の仲むつまじきシーンであった。 [映画館(邦画)] 5点(2021-05-28 00:11:45) |
418. 幕末太陽傳
満を持して、川島雄三監督の代表作にして、日本映画を代表する傑作『幕末太陽傳』を鑑賞することができた。 川島監督の作品はいくつか観てきたが、やはり本作のパワーとスピード感は別格だった。 日本映画史に名を残し、「日本映画ベスト10」といった企画等で常連である本作。 その実力を目の当たりにすることができた。 川島監督にハマりつつあるが、それと同時にフランキー堺にもハマりつつある。 フランキー堺の丸っこい体に似つかわしくない、その軽やかな動きに脱帽。 あの動きは確かに“芸術”の域にまで達している。 そして、とぼけた表情に、スピーディな軽い語り口。 外見的には決して二枚目ではないのに、劇中の女性に惚れられる役回りが多いが、確かにそれを納得させる人間的魅力を感じる。 ちなみに本作には、石原裕次郎も出演している。 主演はあくまでフランキー堺だが、石原裕次郎もさすがの存在感。 その他のキャストも実に豪華。 南田洋子、金子信雄、山岡久乃、岡田真澄、菅井きん、西村晃、二谷英明、小林旭・・・などなど。 特に岡田真澄のインパクトが大。 「若い頃は痩せていて、晩年とは全く違う感じだった」と誰かに聞かされた記憶があるが、確かにその通りであった。 本作は、幕末の品川遊郭を舞台にしているので、沢山の女性が登場する。 その中でも中心的役割を演じた女性が南田洋子。 ご存知、長門裕之の奥さん。 これがとても美しくてビックリ! 南田陽子って、こんなに綺麗だったんだぁ・・・と感心してしまった。 これなら長門裕之も惚れるハズ。 フランキー堺の魅力あふれる演技と、豪華な脇役陣、美しい女性たち、そして「古典落語」を題材にした数々の面白いエピソードなど、見所を挙げればキリがない。 劇中の騒々しさとラストの静けさとの対比や、味わいのあるラストシーンも素晴らしく、“日本映画を代表する1本”という肩書きに偽りはなかった。 [DVD(邦画)] 9点(2021-05-28 00:10:32) |
419. 宗方姉妹
まず“宗方姉妹”の妹の方を演じた高峰秀子。 高峰秀子の出演作は『浮雲』をはじめ、意外と沢山観てきているが、本作での高峰秀子は最強のインパクトであった。 「本作における彼女は、彼女らしくない」と、批判の声も聞こえるようだが、いやいやかなり良かった。 特に、「~であった。」と、寅さんばりの独り語りをみせるところが秀逸。 ここに、彼女の特異な才能を見出すことができた。 次に姉の方を演じた田中絹代。 溝口作品で沢山観てきた女優だが、今まではどうも魅力を感じなかった。 特に、“女性として”の魅力を。 ところが、本作では不思議と、その“女性として”の魅力を感じることができたのだ。 あの慎ましやかな女性像。 現代の男にとっては憧れですね。 そして、その姉妹二人から想いを寄せられる色男役に上原謙。 終始、ニヤついた演技を見せている。 ずっと、いつでもニヤついているのだ。 ニヤつき頻度は、私が今まで観てきた映画の中でもナンバー1。 しかも、そのニヤつきが板についているから凄い。 さすがは上原謙。 ニヤつき上原謙。 上にも書いたように、高峰秀子が独り語りで、様々な魅力あふれる小話を披露する。 その中でも、最も私が心奪われた小話を、ここに引用してみよう。 ある寒い日、二人は皇居のお堀端を歩いていた。 男は手をつなぎたかった。 だけどつなげなかった。 二人は若かったのだ。 いつまでも歩いていたい二人であった。 しばらくして男は女に訊いた。 男「ねぇ、寒くないかい?」 女「いいえ。」 そして女はショールを肩に上げながら言った。 女「あなたは寒くないですか?」 最近、これに似た淡い経験をしたばかりなので、妙に心に沁みた。 人は自己の経験とオーバーラップするシーンを、映画の中に見出したりすると、妙に感動するもんですね。 誰もが経験する自分の中の青春の1ページ。 それと似たようなシーンが、映像として刻まれている作品。 そんな作品を観た時、自分ならではのオリジナルな感動を味わえるのだ。 そして、それが映画の持つ固有の魅力なのだろうと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2021-05-28 00:09:09) |
420. (ハル)(1996)
森田芳光の監督作品を観るのはこれで3本目。 『家族ゲーム』は最高に面白かったが、『の・ようなもの』はそれほどでもなかった。 果てして、本作『(ハル)』はいかがなものか?! 本作の評価によって、私の森田芳光に対する評価が固まる気がする・・・ そんな予感あり。 主演は深津絵里と内野聖陽。 深津絵里は今とそれほど変わらない感じ。 それとも、ファンでないからその違いに気付かないだけなのか?! それに対し、内野聖陽は若い!の一言。 内野聖陽と言えば、フジテレビのいわゆる“月9”ドラマ『不機嫌なジーン』が印象的。 竹内結子と共演し、独特でいて不自然な演技をみせた、あの内野聖陽だ。 本作『(ハル)』における内野聖陽は、髪も短く、セリフ回しもごく自然。 自然すぎて、面白味に欠けてしまったほどだ。 でも、待てよ? そもそも彼に面白味を要求するのは間違っているのかな? 彼は一応、二枚目俳優なんだし。 だけど、『不機嫌なジーン』の彼の印象が強過ぎるので、それはある意味仕方ないのかも。 ということで、内野ファンの方、どうかお許し下さい。 深津絵里の妹役で登場した戸田菜穂。 深津絵里の方が若く見え、彼女の妹役というのが何とも不自然に感じた。 というか違和感ありまくり。 というか姉妹にしては似てない。 でも、この頃の戸田菜穂より、今の戸田菜穂の方が綺麗だな。 本作は、いわゆる“ネット恋愛モノ”のハシリで、当時の時代背景を考えれば、その独創性は高く評価すべき。 しかし、時代背景そのものを、決して洗練されているとは言い難い映像と音楽で見せるばかりに、今観るとあまりに古臭くなってしまっている。 “1980年代から90年代にかけての邦画の古臭さ”が異常に臭うのだ。 だが白眉なシーンもあるにはある。 それはラストシーン。 カラーからセピア色に変わるあのシーン。 あれは意外と好き。 [ビデオ(邦画)] 6点(2021-05-28 00:08:25) |