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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1251
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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421.  泣き虫ピエロの結婚式 《ネタバレ》 
一般募集による「日本感動大賞」の第4回大賞作品(2014)を小説化したものを原作にした映画である。「実話をもとにしたフィクション」とのことだが、原作を読んでいないのでこの映画独自の脚色部分などはわからない。 内容としては予定通りのラブストーリーであって、全体として驚くほどストレートに進行する。主人公(女性)が迷いなく一途に愛を貫くことが大前提になっているらしく、多少の障害は強行突破していくような展開だが、これが女性の観客には支持されるということなのか。新郎側の父母はともかく主人公(新婦)の父母の寛容さが並はずれた印象があったが、これはこういうお話だと思うしかないらしい。自分の立場としては新郎の思いや迷いには共感できるものがあったはずだが、序盤の少女マンガ風のところでこの男に対する好意が思い切り失われてしまったため、結局最後まで冷たい目で眺めていた。 また見る側の問題かも知れないが、All for you…とか一人か二人かといった登場人物の人生観に関わる部分が形式論に終わったようで物足りない(北原白秋の詩は難しすぎる)。劇中唯一笑ったのはYouTubeの話で、ここでは”you”がちゃんと複数形で捉えられている。ほかに読めない字とか駐車場の車といった細かい仕掛けはあったようである。 ちなみに出演女優の発言によれば、「一番キュンとしたのはおんぶのシーン」(志田未来)、結婚式の場面は「キュンの集大成」(新木優子)だそうである。また初日舞台挨拶で監督から、“自分のことを棚に上げて他人の揚げ足を取る意地悪な言葉が世間にあふれている”という発言があったのはその通りと思うが、そのせいでここでの悪口も書きにくくなった(以上の文章にも若干反映されている)。
[DVD(邦画)] 4点(2017-04-10 00:03:30)
422.  THE3名様 スピンオフ 人生のピンチを救うパフェおやじの7つの名言<OV> 《ネタバレ》 
一応説明しておくと、本来「THE3名様」とは2000年代から発表されてきているマンガ作品で、これを福田雄一監督が実写とアニメで映像化しているが、その実写版のスピンオフとして、脇役レギュラーの「パフェおやじ」に焦点を当てたのがこれである。 今回の趣向は「パフェおやじ」がたまたま近くにいた他の客の会話を聞いた上で名言を放つというもので、エピソード7つのオムニバスのようになっている。しかしその名言自体は単なる感想レベルの表層的なものでしかなく、そこに解説を付けて名言のように見せているが、それもこじつけにしか思えないものが多い。ネタバレ的に一つだけ書くと、脚本があって役者が演じているからには当方としても見た目そのままとは思っておらず、このやりとりの裏に何があるのかと思っていたところで「他に何かある」では、まるきりそのままではないかと呆れる。人生を変えるほどの発言があるとは思っていなかったが、せめてもう少し気の利いたものがあればよかったがと思う。 制作側としては主に「パフェおやじ」の動きで笑わせようとしていたらしいが、個人的にはこの監督の作る笑いに素直に乗れないことが多く、今回もそれは同様だった。ただ各エピソードに出る役者(の顔など)を見ているのは面白い。ちなみに第2話「夫婦喧嘩」に出た姉弟のうち姉役(伊藤沙莉)が、年若いのになぜか声がハスキーで迫力があると思ったら、「幕が上がる」(2015)でオヤジ声を出す部員(たかだ/高田梨奈)役と同じ人なのだった。子役時代からTVドラマなどに出ていてキャリアの長い人で、昔からこれが特徴だったということらしい。
[DVD(邦画)] 3点(2017-04-10 00:03:27)
423.  正しく忘れる 《ネタバレ》 
近親者の死による悲しみそのものでなく、そこから派生するいわば二次的な感情が問題にされていたようだが正直よくわからなかった。適切に忘れるというのは皆が普通にやっていることで、自ずとそうなるのなら別に問題ないだろうが、あえて抵抗しようとするのは自分がそうされたくないことの裏返しということか。また最後に主人公は故人の遺志を継ぐと決意した感じだったが、それだととりあえず現段階での凌ぎ方でしかない気がする。これが確定結果ということなのかどうか。 ほか全体的に台詞の文章量が多い上に話が難しいので登場人物が理屈っぽく見える。主人公に関しては、どうするのがいいか頭ではわかっていながらわざわざ逆方向に感情を掻き立てているようで、必死の思いで何かにすがるような切実さが感じられるわけでもなく、見る側を否応なしに同調させる作りにはなっていない。 そのようなことで、よくわからないが自分としては共感できない映画だった。心の底から共感できたのは、よく目にするが目的地にはならない「中央林間」という場所に行ってみるところだった(たまたま通過したことはある)。  ちなみに出演者のうち、主人公の弟役は素人目にも心許ない感じで(これが監督本人?)、タイトル直後の夕食場面でこの人物の顔が映ったところでいきなり映画自体が安っぽく見えた。自覚した上でやっているのだろうから言っても仕方ないわけだが。また主演女優は好印象だが、サークル仲間の少年は演技がくどい。
[DVD(邦画)] 4点(2017-04-05 20:36:21)
424.  正しく生きる 《ネタバレ》 
予告編を見ていると、まずは「正しく生きる人間にしか生きる資格はない」という発言が強い印象を残すが、本編を見ればこれをまともに受け取るのは間違っていることがわかる(要は年長者に席を譲れというだけ)。 これに続いて予告編では、「正しく生きる」ことについて出演者がそれぞれの見解を語っていたように聞こえる。「みんなが正しく生きると戦争が起こる」というあたりは世代特有の正義を背負った感じだが、ほかにも「正しい」こと自体を否定しようとする発言があり、こういう業界の人々はよほど他人からの押し付けを嫌うということらしい。まあ自由な社会なので何をやろうが大抵のことは咎められないわけだが、最低限、社会の共通認識としてのルールを受け入れなければ誰も生きていけないことになる。 一方で“謙虚であれということ”とか、“自分で考えるということ”といった発言もあったのには救われる。生きる上での正しさを考える場合、“社会と自分の関係をどうするか”と、“自分の進む方向をどうするか”の二面があるように思われるが、いずれも自分で考えながら模索していく種類のものと思われる。ただ個人的には、「正しく生きる」などということを全員が考える必要はないとも思う(そういうことを自分の頭で考えない人々は常に人口の一定割合を占めているので求めても無理)。  予告編に関しては以上として、本編を見ても何が言いたいのかは結局わからないが、これを見て「正しく生きる」とは何かをそれぞれ考えよう、と呼びかけているのなら存在意義のない映画でもない。しかし自分としては、今どき社会の転覆を企てるセカイ系オヤジに同調しろとか、誰のルールにも従わないのが正しいといった俺様ルールを押し付けようとしているのかと疑ってしまって素直に見ていられない。またそれとは別に、登場人物の鬱屈や苛立ちを観客に見せつける方に重点が置かれたようでもあり、この題名自体をまともに受け取るのが間違っているのかとも思われる。どうもこの手のものは信用できる気がせず、最後はもう勝手にやっていろと突き放して終わりにしたくなる映画だった。 ちなみに震災をネタにすることの必然性は感じなかった。震災があってもなくてもこの連中はこの通りだろう。
[DVD(邦画)] 4点(2017-04-05 20:36:17)
425.  生きる 《ネタバレ》 
学生時代に一度見たが、その時はなるほどこれが名画というものかと思った程度だった。 今回見ると、まずハッピーバースデーまでがとにかく長く、その間主人公がジタバタするのが非常に見苦しい。自業自得だろうと突き放したくなる一方、息子のためにこうしてきたというならそれでいいだろうがとも思う。生きる意味などそれぞれ気の持ちようなのでどうにでも納得できるはずで、特にこの時代なら、とりあえずここまで生き延びて子孫が残るだけでもいいではないかと思うが、それをあえて否定して、個人の生きる意味を求めたのがこの映画ということなのか。しかし現代ではその個人の部分だけが重視される一方で少子化が進んでいくのは皮肉ともいえる。  その後の通夜の場面では、一転して他者の視点から主人公の行動を明らかにし、印象操作や誤解を排した全体像を皆が共有していくのが面白い。警官の述懐は、いわゆる最後のピースがはまったようにすっきり感じられた。 またこの部分で語られる役所の組織体質は興味深い(笑う)。何もしない決まりがあるというよりは、行動様式として目の前に来た案件を捌くのが基本だから主体的に動く発想がないのだろうし、そういうのは江戸時代のままではないかという気もするが、わずかな体面のために自分の領分への干渉を許さないとか、執拗な相対化で個人の功績を薄めようとするなどは小役人というより日本人の気質ではないのか。記者の言う「プロモーター」はいかにも新しい言葉に聞こえたが、当時などほとんど理解されていなかったのではと想像する。 そこで何かしようとした場合、主人公に関してはたまたま本当に役に立つ仕事がその辺に転がっていたからよかったが、動機が不純だと自己満足だけで愚にもつかないことをやらかす恐れもある。そもそも自分のために仕事をするなど公僕のやることかと言いたいところだが、ただし工事現場で倒れた主人公を、周辺住民が寄ってたかって助けた場面は少し泣けるものがあった。要は実のある仕事かどうかかが真の問題であって、それが同時に当人の生きた意味にもつながりうることは示されていたように思う。今さら他人に言われる筋合いはないと反発を覚えながらも、人生悔いのないようにという思いは否応なしに残る映画だった。  ちなみに劇中の小田切とよは、近場に本当にこういう人物がいるので妙に親近感を覚えた。どうでもいいことだが。
[DVD(邦画)] 7点(2017-04-05 20:36:14)
426.  レッドタートル ある島の物語 《ネタバレ》 
いわゆる異類婚姻譚というものらしい。鶴女房ならぬ亀女房ということになるが、あるいは浦島太郎の話だとすればこの島自体が竜宮城のようなものということになる。 竜宮城といっても現世から隔絶した異世界ではなく、文明世界の産物が流れつくとか、はるか彼方の大地震による津波が大洋を渡って来るからにはこの地球のどこかであって、何者か(カメ?)がやっている邪魔だけが外界との間を隔てていたらしい。浦島太郎は元の世界に帰って一気に加齢してしまったが、この映画の主人公は帰ることなくそのまま過ごしたことになる。 また亀女房として見た場合、女房の方から押しかけて来た理由の説明はなかったようで、ここは“彼女が彼に恋をした”という解釈でいいのかも知れないが、あるいは旅人に妻や娘を差し出して子種をもらう風習のようなものかとも思う。「おおかみこども」とは男女が逆になるが、実際に主人公の一人息子はカメの世界(海の世界?)に引き取られて行ったように見えた。 悪くいえば主人公は絶海の孤島に幽閉され、死ぬまで牢獄で過ごすよう強いられたともいえる。ただ、もしかすると本来は遭難して死んでいたはずのところをこういう形で生かされたのかも知れず、それで結果的にでも心の充足を得られたのなら幸福な一生だったということか。自然の中で生かされて自然の中に子孫を送り出し、最後は型どおり自然に還って終わる(死体はカニが食う)という物語として個人的には納得した。 なお基本的にはファンタジーだが、生物としてのウミガメの寿命が実際に長いことがこの話に真実味を加えていたともいえる。  そのほか視覚的には、天候や時刻によって変わる景観の彩度を抑えた色彩感が好ましい。月に照らされたほとんど無彩色の夜はかえって世界の広がりを感じさせた。また各種生物がそこら中に生息していて、多様性の面ではそれほどでもなかったようだが、カニの動きが終始ユーモラスだったあたりはジブリアニメっぽいといえなくもない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-03-25 22:54:41)
427.  鷹の爪8 ~吉田くんのX(バッテン)ファイル~ 《ネタバレ》 
「秘密結社鷹の爪」の劇場版第8弾ということのようである。このシリーズは初めて見たので事情がよくわかっていないが、今回は主に20世紀の島根県吉田村を舞台として、「吉田くん」が世界征服を志すに至った動機とその結末(予定?)を描いた形になっており、いわゆる「鷹の爪団」はほとんど出ない。 今回のネタ元は題名に出ているとおりTVドラマ「X-ファイル」(1993~2002アメリカ)で、エイリアンとかオーパーツとかUMAとかオカルト色が濃厚だが、そのほかどうしようもないギャグネタ満載のせいで失笑の連続である。個人的には「ジョン&パンチ」などというものを日本国民の一体何割が憶えているものかと呆れた(TVドラマ「白バイ野郎ジョン&パンチ」1977~1983アメリカ)。 ちなみに20世紀の吉田村にいた同級生の里美役は、声優ではなく女優の森川葵という人で、何でこの人でなければならないと思ったのかよくわからないが、外見はかわいいのに性格がきついキャラクターを当てたのは悪くない(声優としての力量については何ともいえない)。こんなアニメを自分が見たのはこの人が出ていたからだが、そうでなくとも本編のバカらしさだけで結構面白いと思わされる映画だった。ちなみに少し切ないところもある。  なお余談として、映画の中にも島根県の自虐カレンダー(2017年版)が出ていたが、旧国名とか個々の場所は知られているのに県単位で存在感のない例は他にもあるわけで(例えば×重県)、自虐してまで無理に売り込む必然性はない気もする。出雲大社とか石見銀山とかの有名どころ以外にも、映画関係でいえば錦織良成監督の「島根3部作」や、少女時代の夏帆が出演した「天然コケッコー」「砂時計」があり、さらに「砂の器」に出ていた「亀嵩」(仁多郡奥出雲町)も吉田村からそれほど離れていない場所にある。そのほか個人的には、著名な都市伝説「〇とりばこ」が旧松江藩領内の話だったことも覚えており、ちゃんと知っている人は知っているということである。まあ知らなくても困らないとはいえるが。
[DVD(邦画)] 6点(2017-03-25 22:54:38)
428.  魔法少女を忘れない 《ネタバレ》 
ライトノベルを原作とした青春映画で、福岡市に拠点を置く「テレビ西日本」が中心になって製作し、撮影は福岡県内で行われたとのことである。結果的にはさまざまな面で見る側にかなりの寛容さを求める映画になってしまっているが、それでもあえて自分としては褒めることにした。こういうものを大真面目に作ったTV局はえらい。  まず「元魔法少女は忘れ去られる運命にある」というのが基本設定になっており、これが終盤ではかなり衝撃的な形で描写されていたが、しかしそのように“忘れられる”ことだけでなく、“忘れる”ことの悲しみも強く表現されていたようである。人は何かが好きだと思ったとき、同時に自分のその気持ちがいつか失われることを予期して悲しく思うことがあるが、そのような主人公の思いが切なく感じられる映画だった。 また「元魔法少女」とはそもそも何のことなのか、説明がないまま終わらせるという突き放した態度も嫌いでない。劇中歌の歌詞で、“恋をしたら呪文を忘れる”というようなことを言っていたのをまともに取れば、実際に(発端の時点から?)恋をしていたので魔法が使えなかったのかとも思われる。終盤の荒唐無稽かつ都合良すぎの展開は、2人の強い思いが魔法に負けないほどの奇跡を生んだとでも思っておくしかないか。  登場人物に関しては、劇中の魔法少女はほとんどの場面で可愛らしい美少女に見えたが、鋭角的な顔立ちのせいもあって単純にカワイイで終わりにならない複雑な印象があり、これがいかにも魔法少女らしいといえなくもない。 一方の幼馴染はマンガっぽい可愛さを出しており、序盤で眼鏡がずれたところなどは秀逸だったが、中盤での告白場面はあまりにも痛々しいので正直泣かされた。ここまで延々と語らせておいて何で早く受け止めてやらないのか、と男の側に言いたくなったが、結果的に受け止めてやらなかったのは非常に意外だった。結局、誰かのハッピーエンドは別の誰かの不幸を前提にするものだったようで、これが魔法少女の魔性ということかと思わなくもない。 ただ彼女は忘れられたとしても、逆に彼女の方が忘れることもできるという意味ではお互い様である。大人ならそう思って納得するところだが、しかしその場の当人にとってはそうもいかないのであって、ここは自分としても大昔の記憶がよみがえる気がして若干切ないものがあった。
[DVD(邦画)] 6点(2017-02-16 23:14:01)
429.  魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's 《ネタバレ》 
TVアニメ「魔法少女リリカルなのは」シリーズの劇場版である。TVシリーズ第1期(2004年)の劇場版は「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」として2010年に公開されているが、この映画は第2期「魔法少女リリカルなのはA's」(2005年、全13話)の劇場版として2012年に公開されている。前回からあまり経っていない時期のようで主人公は依然として小学生女児だが、激しいアクションを伴う戦闘少女アニメであり、せめてもう少し大人になってから戦ってはどうかと言いたくなる。 物語としては、前回は母と子の問題が大きく扱われ、形の上では一般社会に問題を投げかけたとも取れる作りになっていたが、そのせいで話が大げさすぎて不自然に見えた。その点今回はこのアニメ内部で閉じた話のため違和感はないが、ますます現実から隔絶した架空世界に閉じこもったようでもある。前回に続いて“話せばわかる”というようなコンセプトが出ており、また最初は敵でも最後は友達になるという展開が基本構造のようにも見えるので、ここから無理にメッセージのようなものを読み取るとすれば“心を開いて仲間をつくるのが大事”というような話だろうが、しかしまあ現実にはキャラクター同士の個別の関係性を超えた一般化など求められていないのだろうという気はする。 なおreinforceというあからさまな英単語はファンにどう受け取られているのかわからないが、自分としてはreinforced concrete (RC)の印象が強いため人名に使うのは抵抗感がある。ほか個別の場面としては終盤で、ここは号泣するところだ!!!と明瞭に指定した感じの演出が印象に残った。  ところで前回はDVDをただでもらったという理由で見たが、今回は明らかに自分の意思で見た形であり、アニメファンでも何でもない一般人としての良識が問われることになる。日本アニメは少女嗜好と切り離せないところがあるにしても、変身シークエンスのフルバージョン?(かなり執拗)など見ていると、これはもう本当に限られた人々向けの特殊な創作物ではないかと思わされるが、それでもこういうものが日本のアニメを支えてきたからこそ「魔法少女まどか☆マギカ」のような、より一般向けに開かれたもの(間口は狭いが)も生まれて来たわけだと前向きに捉えておく。 ちなみに2017年夏には劇場版3作目が予定されているとのことで、なかなか息の長いコンテンツであるらしい。
[DVD(邦画)] 5点(2017-02-16 23:13:59)
430.  天然コケッコー 《ネタバレ》 
夏帆の主演映画ということと、自分としては一生行かずに終わりそうな石見地方(飛行機の上から見たことはある)が舞台ということで見た。実在の風景を使って、今となってはファンタジックにも見える中山間地の景観が作られており、山に囲まれたようでいて少し歩けばいきなり海に出るという土地柄も生かされている。「山の音」の場面では、人物がいる手前の明るさと、背景の山のくすんだ感じの対比がよかった。また季節の変化もきれいに映像化されている。 生活圏内には小都市があり、結構な人出のある祭りもあったようで普通の一地方なのだろうが、主人公の住む場所はまるで隠れ里のように見える。交通幹線から外れていて、少し離れた鉄道駅だけが外界に接する出入口というイメージが持たれたが、その割に遠方に自動車道路が見えていた場面などはかえってボロが出たような印象もあった。全員が知り合いの小社会で、毎日朝昼晩と同じ顔ぶれの人々と付き合うのでは息が詰まる気がするが、そこはまあ創作の世界でもあり、また実際にこういう場所で生まれ育てばそれが普通になるのだろうと納得することにする。  物語としては連載マンガのエピソードをつないだ形で、最近見たものでは「この世界の片隅に」(2016)と同様ということになるが、それと比べても起伏が少なくひたすら地味なため121分が正直つらい。個別エピソードとしては学校を休んだ児童を見舞ったところとか、大失言してしまってから泣き出すまでの経過はよかったが、全体としてもう少し大きいドラマがないのかという気にはさせられる。 そういう面では、中学生から高校へ上がる年代の微妙な心境変化自体が一つのドラマだったと取るべきなのか。恋愛に関しては本格的な性愛感情などはなく、初めて親しくなった異性らしい異性への愛着という程度にも見える。それ以上に9年間通った学校への思いが強かったということなら、要は身辺や自分自身がいずれ変わっていくことへの哀惜が主題だったと思えばいいのかも知れない。 まあそのように理屈で考えなくとも、登場人物の心情に直接同調できるとか、劇中世界にそのまま入り込めるなら大絶賛かも知れないが、個人的にはそうもならなかった。劇中に共感できる人物が誰もいないのは困るが(中学生男子は論外、父親も除外、無理にいえば郵便局員の男か)、恐らく原作段階からして自分には合わないのだと思われる。ベタ褒めできなくて残念でした。
[DVD(邦画)] 5点(2017-02-02 19:29:34)
431.  ナイスの森 The First Contact 《ネタバレ》 
製作から10年以上経った現在の感覚でいえば、常識外れとかシュールとかいう点に関してはそれほどでもないというしかない。こんなものはこの映画で初めて見た、という驚きも特にない。それより作り手が自分勝手に作りたいという意思が前面に出ていたのかも知れないが、そういうものは自分の短い映画鑑賞歴の中でさえ結構見せられている気がして、一般人の立場でどこまで付き合うのかという問題になる。 結果としてはそれほど面白いとは思わなかったが、個人的には庵野秀明氏が教室の最前列でわめいていたのが最も意味不明で笑った。また自分としてはこういう場合は主に女優を見ているわけだが、その面では豪華キャストの「三人姫」の騒ぎは少し面白かったかも知れない。しかし同じエピソードの福沢諭吉は、まさかこうするつもりではないだろうなと思うことをそのままやってしまうのが興醒めというしかない。また別のエピソードでは元女子高生の態度だけはよかったが、締めの言葉が(題名も)「酒でも飲みますか」というのはあまりに凡庸な発想で、21世紀初頭のわが国の文化水準はこの程度だったのかと呆れ返る。詰めが甘いというのか緊張感に欠けているということなのか。 そういうものでもクリエーターへの敬意として、ここは一応それなりの点を入れておく。
[DVD(邦画)] 3点(2017-02-02 19:29:31)
432.  ハウルの動く城 《ネタバレ》 
最初に見たのはTVだったが、その時は何が何だかわからず単純に面白くなかった。その後は見直す気にならなかったが故あって改めて見たところ、大人になれない若い男と老婆のような若い女が影響し合って最後は幸せな家庭を築いた話に見えた。 男の方は世間の風など関係なくお花畑に身を置いて「人殺しどもめ」と戦争を蔑んでいればいいと思っていたが、具体的に守りたい相手ができたとたんに何人殺しても構わないほど舞い上がってしまい、これはまずいと女の方が抑えにかかって安定状態に至ったように見える。女の方はもう人生終わったかのように思っていたが、私だけの王子様のようなのが突然現れて、駄目な男だけど本当は優しい人だから何とかしてあげたいと思ったり、私のことをずっと待っていてくれたと感激したりしてやっと年齢なりの女子になったということか。それでも基本的に落ち着いた主婦向きの人物なので、男が恋人に母親を求めるような都合のいい話になっていたようである。 劇中で戦争が起こったのは二人を高次の人格に導くための契機ということだろうが、物語を動かすために起こした戦争など「バカげた戦争」というのは当然であり、物語の終了と同時に戦争が終わったのも変ではない。あるいは実際に、王室付きの魔法使いが生涯最高の弟子を表舞台に引っ張り出すためにわざと起こした戦争ということだったのかも知れない。まともに取れば多数の人命が失われたのだろうが、そもそも観念的な戦争のようでどれだけ人が死んだかなど気にしなくていい感じだった。 以上のような感じで大まかな説明はできなくもないが、それで面白いかというと大して面白くはなく、映像面でも風景や事物などに既視感のあるものが多い。宮崎アニメはいわば国民的アニメであるから一度は見なければと昔は思っていたが、別に見なくても問題ないと初めて思ったのがこれだった。 なお端正な美形女子が年を取ると鷲鼻になるのはなぜか不明だが、これならシータが年を取るとドーラになるというのもわかる。
[DVD(邦画)] 4点(2017-01-23 23:42:08)(良:3票)
433.  おもひでぽろぽろ 《ネタバレ》 
最初に見たのは90年代のTV放送だが、そのときは半分程度で挫折した。主に昔の微妙な記憶をほじくられるような感覚が不快だったからだが、いま見れば小学生編もけっこう楽しく、戦前生まれの父母のふるまいもそれらしく見える。なお分数の割り算に関しては、2/3のリンゴから始めるから難しいのであって、3/4のリンゴを1/4で割ることを考えればとっつきやすいと思われる。 大人編に関しては、普通の田舎の風景や事物が丁寧に描かれているのが好印象で、紅花の収穫と加工についての説明は興味深い。婆様の顔や言葉などはけっこうリアルでいいのだが、ただ柳葉敏郎は、劇中の場所とは方言の系統が違う秋田県の出身だからか現地言葉が全く様になっていない。関東でいえば神奈川県人が茨城方言を話すようなもの?で、東北などどうせどこでも全部同じだろうと思われては困る。  物語としては、個人的にはわりと素直に“都会の女性が田舎に定着するきっかけの話”として受け取れる。現地の人々にもそれを望む気持ちは当然あったろうし、駅まで迎えに行かされたのが若い男だったのもそういう素朴な思惑があってのことかも知れないが、しかし本当に実現するとも思わないのが普通の感覚でもある。この点については本家の3人にも温度差があったようだが、その中で婆様の裏表のない直言が結果的に主人公の素直な反応に結びついたということらしい。その後にぶり返した「あべくん」の記憶には偏見に起因する心理的な壁という問題が含まれていたようで、これは主人公が現地に定着する際の葛藤を先取りした形とも取れる。最後に山寺駅で折り返したのは、とりあえず婆様に今の気持ちを見せたかったからで、あとはゆっくり冬の来訪で、ということだったろう(仙台から東北新幹線を使えばその日のうちに帰れる)。ラストでは、主人公を祝福しながらも寂しげな子どもの表情が印象的だった。  当時であれば東京出身の女性が農山村に嫁入りなど正気の沙汰ではなかった気もするが、ちなみに劇中年代から30年以上経った現在の話として、うちの地元にも大学や研究機関があるせいか、関係ない場所(大都市圏など)から来て定着する若手の人々が目につくようになっている。こんなところの何がいいのかと正直思うが、田舎だ都会だということと関係ない人々が出てきているようではあるらしい。地域社会との間合いの取り方もそれぞれであり、必ずしも閉鎖空間に囚われるかのように考える必要はない。 この映画の主人公は現在もう還暦を過ぎていることになるが、仮にこの場所に定着していたとすればIターンのよき先例になって、地域社会に少しずつ変化をもたらしていたかも知れないと考えたい。
[DVD(邦画)] 8点(2017-01-23 23:42:06)
434.  湯を沸かすほどの熱い愛 《ネタバレ》 
栃木県足利市というところには個人営業の銭湯がまだあるようだが、うちの地元ではもうなくなった(最後の1軒が映画撮影に使われた)。 自分としては同じ監督の「チチを撮りに」を見たことがあるが、あまりに私的で濃密な家族像が描写されていて辟易するものがあった。今回も実は全く期待していなかったが、さすがに商業映画ということで万人向けの娯楽を意識した感じで、全体としてこのくらい一般人に寄せて作ってあると、多少のことは監督の個性とか“映画とはこういうもの”的に納得しやすくなる。ちなみに互いに尻を蹴り合っていたのは「チチ…」にもあった姉妹のじゃれ合いの表現である。  劇中では母の愛に欠けた事例がこれでもかこれでもかと提示され、かなり極端な設定のようだがまあ一応の許容範囲である。最後はいわば母の愛を熱エネルギーに変換して家族に分与したということのようで、現実問題としては非常識でも物語上の表現としては受け取れる(多少グロテスクな印象はあった)。 時間がない中、主人公が各種課題を次々解決していくのは都合が良すぎるともいえるが痛快ともいえる。主人公の娘の捨て身の勝負は思い切ったところが個人的に好きだ(あのデザインの下着でよかったのかは別)。また「鮎子ここにあり」というのも気が利いている。 そのほか手話とかピラミッド関連とか個別のエピソードはいいのだが、問題は総まとめとして、主人公がどういう人物だったか台詞で説明していたのは口で言うほど説得力がない。これはその後の展開の言い訳にしか聞こえないところもあり、むしろ言わずに済ませられなかったかという気がした。  ところで世評によれば物語中には観客の気に障る場面が結構あったようだが、自分としては(今回は)それほど気にならなかった。ただし子ども(小学生)相手に平気で性的な話をする人物が否定的に扱われていないのは映画の品位に関わることであり、こういうものまで観客に受け入れさせようとするのは無理がある。 また最後の件については登場人物も違法性は認識していたようで、これは映画と現実世界との最低限の擦り合わせを意図したもののようでもあり、“映画のためなら何でも許される”といったような独りよがりは少なくとも感じなかった。煙突からの煙は非現実的でわざとらしかったが、映画のラストを強く印象づけるものにはなっていた。
[映画館(邦画)] 7点(2017-01-13 23:28:29)
435.  霊界の扉 ストリートビュー 《ネタバレ》 
ストリートビュー愛好者なので見た。仕事にも使えて便利だが、趣味的には映画のロケ地探しにも使ったりする。ちなみにこの映画で怪異の発端になった家は東京都練馬区の西武池袋線大泉学園駅近く、怪異が波及した先の喫茶店は石神井公園駅近くにあり、両方ともストリートビューで特に障りなく見られる。 基本的な発想としては題名のとおり「ストリートビュー」が「霊界の扉」ということで、ありきたりな心霊ホラーではなく、また安易なヒトコワ系でもない独自路線という点は評価できる。ただ自分が知る限りでも似たような前例はあり、この映画が完全オリジナルの発想かどうかは何ともいえない。また実は心霊現象を前提にしなくても成り立つ話であって、題名の方で余計なことを書いてしまっている。 ストーリー上の問題点と思うのは、主人公の心境変化がどうも不明瞭なことである。自分の立場としては、はじめ主人公は失踪者を連れ戻したいとだけ考えていたが、実は自分も失踪したかったのだと気づかされ、そのまま向こうの世界へ行ってしまって後悔した、という流れであれば理解できるが、必ずしも素直にそう取れるようにはできていない。加えて各種の怖がらせエピソードも本筋とほとんど無関係のように見える。 しかしそれよりこの映画の最大の問題は、登場人物が同じ服を数日続けて昼夜なく着ているように見えることである。制作事情は知らないが、可能であれば役者の普段着でも着てきてもらった方がまだましではなかったか。これは女優が少し気の毒になった。 そのほか主人公のシャワー場面は特にストーリー上の意味がなかったように見えるが、これは別に有害なものではない(それほど有益でもない)。またラスト近くでTVに不気味な生物が映っていたのは異世界感を出していてよかった。ここは好きだ。 以上だが、点数はグーグル社に+1としておく。
[DVD(邦画)] 4点(2017-01-10 19:49:16)
436.  この世界の片隅に(2011)<TVM> 《ネタバレ》 
日本テレビの2011年の終戦記念番組として8/15に放送されたものである。 原作の情感などは特になく、普通のTVドラマのように見える。安っぽいところや変なところは当然のようにあり、方言も恐らくアクセントが徹底していない。ただ「東京物語」(1953)以来の「ありがとう」だけは全員がそれらしく言っていたようである。 また原作の顕著な特徴である笑いの要素もそれほど目立たないが、「ミヨセンセーノハゲアタマ」はしっかり再現していた(細かく見ると「ネコ」が可笑しい)ほか、時計の「ボーン」という音をコミカルに使うなどの趣向はあったようで、また軽快な背景音楽が気分を和ませていた面もある。なおこのドラマ独自のユーモラスな場面として、周作とすずが二人でいるのを上官に冷やかされたのは微妙に可笑しかった。海軍さんはスマートで結構だ。 主要人物で省略されたのは「鬼いちゃん」くらいのものと思うが、このドラマで問題なのは、すずさんが原作のイメージと全く違うことである。それをいえば周作も水原も原作の面影がなく、そもそも似せるつもりがないのでこれで納得しろということかと思ったが、それにしても基本的に原作のキャラクターを前提としているため「ちいと足らん」とか「温いのう…」といった台詞に全く説得力がない。これは最終段階の人物イメージがこの女優ということだと思うべきなのか。ちなみに個人的には劇中のリンさんが好きだ。  物語の面では、「居場所」「見つける」「記憶の器」といった話題を2時間でコンパクトにまとめた形に見え、もっと独自性を出さなくてよかったのかと思うほどである。最初に重要事項を提示してしまうとか、回想場面などで原作の素っ気ないところを適宜補足しながらTV向けにわかりやすく作っており、意味的な部分の表現という点では文句をつける気にならない。なお玉音放送のところで天下国家に関わる台詞を義父に言わせていたのは自然で、ここは原作よりもこのドラマの方が好きだ(何を言わせたいにしても劇中人物1人に集約する必要はない)。 原作未読の人や原作ファンの人が見てどう思うかわからないが、個人的感覚としては意外に誠実に作られたドラマに見える(終戦記念番組なので真面目で当然だが)。原作に比べれば簡易版のようなものとはいえ、やはりこの原作者の作品を好き勝手にアレンジすることなど許されない、とこの時点で関係者も思っていたのかも知れない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-03 19:58:16)
437.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
どれだけ話題になっていてもすぐに見られない田舎は不利だと思う。 原作を読んだことがあるので概要はわかっていたつもりだったが、始まってみると原作の世界が実際に動いて、カラーで(当然だが)、背景音楽付きで広がっていくのを見て背筋が少し震える気がした。個人的には特に序盤で、戦前の広島の繁華街(中島本町)や広島県産業奨励館を鳥瞰的に捉えた風景が出ただけで泣ける気分になった(その後の出来事を知っているからだが)。 また劇場予告編にも出ていたが、入港する大和が柔らかな緑を背景にして色鮮やかな信号旗をたなびかせ、艦上で多数の人が動いている情景には、無機質な鉄の兵器というよりも、そこにいる多くの人々に目を向けようとする優しさが感じられる。青葉の甲板で洗濯物を干していたのも乗組員の日常風景だったろう。ほか代用食をカラーにすると変にきれいで料理映画のように見え、すみれの花まで入っていたのはちょっと感動的だった。本来は葉を食うものだろうから、食用というより暮らしに彩りを添える工夫ということだろうが。 ちなみにわざわざ書くまでのこともないが爆撃と銃撃は怖かった。  物語に関しては、基本的に原作準拠のようなので特に言うべきこともないが、驚くのはリンさん関係がほとんど省略されていたことである。本筋との接続部分は残っていたようなので完全版を期待したい。また原作を知らずに見る人には、あまり最初から細かいことにこだわらず、まずは感じることを優先して見るようお勧めしたい。 原作になくて映画で加えられたものとして、細かいことだが周作が反乱の鎮圧に赴く際、法務はどこまでも秩序を守るのが仕事、というような台詞があった。これは夫婦関係に関していえば、水原に引け目を感じていた周作の面目を立てる形になっていたのだろうが、同時に周作が社会を維持する立場という意味も出ていたように思われる。その直後に呉市役所の困り事相談の看板が出ていたりもしたが、すずさんのような家庭の生活者とともに、その生活者が暮らす身近な社会を支える人々も加わってこの世界が続いていくという意味に取れば、家庭の生活者としてはちょっと自信のない自分であってもこの映画での居場所を見つけられる気がした。 この映画から何を受け取るかは人それぞれかと思うが、現代に生きるわれわれがこの世界に関する認識を深めるのに役立つよう、原作を含めたこの物語が広く認知されていくことを自分としても願っている。  なお余談として、自分としては原作にない「掃海特務艇第十六号」というのが微妙にユーモラスに感じられた(晴美さんもご存じなかったろう)が、その後の出来事をあらかじめ知っていたのでここで笑っていいのかどうかわからなかった。これはこういう名の知られていない地味な船に乗って、海軍の片隅で身体を張っていた人にも焦点を当てようとしたと解する。
[映画館(邦画)] 9点(2017-01-03 19:58:12)(良:1票)
438.  野菊の墓(1981) 《ネタバレ》 
原作では、政夫の家は矢切村(松戸から二里)、民さんの自宅は市川の町場にあるとされており、要は現在の千葉県松戸市~市川市内の話である。この映画では高い山が見えるので場所感がかなり違うが、そこは映画としての見栄え優先ということで構わない。 ヒロインはいま見ても非常に可憐で可愛らしく、こんな時もあったのだと遠い目になる。自分としてはデビュー曲(裸足の季節)以来のファンだったので当然のように劇場に見に行ったが、アイドル映画ということで中身にはほとんど期待していなかった。実際に序盤の雑巾がけのあたりで、ああこれはもう駄目だといったん観念したのだが、そういうファンサービス?はここまでで終わりになったのが意外だった。改めて見れば、演者の初々しさを笑いに転化して導入部のほのぼの感を出していたとも思われる。 物語としては原作と比べても純愛要素が増幅された感じで、互いに花を贈り合う趣向は泣かせるものがある。また特に婚儀と騎馬戦の同時並行から一挙に距離を縮めて花嫁行列へ至る展開が印象的で、生木を裂くとはこういうことかと思わされた。婚家先の場面では、採ったばかりの果実を剣山の上に置いたかのような過酷な環境が痛々しく、ここで姑役の役者(北城真記子という人らしい)は全国のファンの憎悪を集めたはずだが、夫の姿を見せなかったのはせめてものファンへの配慮だったと思えなくもない。  ところで今回この映画を見ていて、うちでオスメス2匹の子ネコをもらって来たときに、近親交配などしないうちに処置しておかなければと考えたことを思い出した。そういう点で劇中の母親の行動は基本的に理解できる。 しかしその母親が、全てが終わってしまってから「そんなに好きだったら一緒にさせてやった」などと泣きごとを言って、少しでも自分が楽になろうとしていたように見えたのには怒った。年上なのも従姉弟なのもどうでもいいことだったというならこれまでのことは一体何だったのか。そもそも自分の甘さが事態を悪化させた面があったはずだが、それでも「不承知」と決断したのなら最後まで「情け知らず」のままで通すか、あるいは自害でもして果てるのが責任の取り方だろうと言いたくなったが、まあ女親にそんなことをいっても仕方ないか。若い二人の悲恋物語であると同時に、親たるこの人物の晩年の悔恨の物語という印象がなくもなかった。 なお個人的な思い入れが大きい映画なので逆に点数は控え目につけておく。
[DVD(邦画)] 7点(2016-12-31 23:06:13)(良:1票)
439.  明烏 あけがらす 《ネタバレ》 
落語の「明烏」を一応予習してから見たが、その割に序盤の展開が「芝浜」のようだと思っていたら落ちがまるきりそのままだった。これのどこが「明烏」かと思うが、中盤で真面目ホストが借金取りを篭絡しようとするあたりは「明烏」の一部を真似ていたようである。題名の方は要はホスト=カラスということだったらしい。 笑える話かどうかに関していえば、これまで自分が見たものでは「女子ーズ」(2014)と同程度である。つまり笑うところがなくもない、というくらいのものだが、ただし自分としては田中邦衛にはどうしようもなく笑ってしまった。いろいろあっても最後は全部が丸く収まるのが心地いい作りで、まあ見てよかったという気にはさせられる。 ほかキャストに関しては、主役を含めて男はどうでもいいとして、吉岡里帆という女優は注目する気がなくても否応なしに思い切り印象に残る。知らない人かと思ったら「幕が上がる」(2015)に2年生役で出ていたようで、見直してみると見事に存在感がなく、こんな人がよくも大勢の中に紛れていたものだと逆に感心した。「明烏」とは直接関係ないが、演劇を目指す人にエールを送る「幕が上がる」とのつながりで、自分としても陰ながらこの女優を応援したくなった。
[DVD(邦画)] 6点(2016-12-30 16:38:33)(良:1票)
440.  灰色の烏 《ネタバレ》 
赤い果実はまあいいとして、天狗は暗喩どころでなく下品である。またTVのぐさっ、ぐさっというのは趣向としては面白いが、ニュース番組の出演者としては不自然だ。ほか同じような動作をしつこく繰り返す場面が二つあったが、これは何らかのこだわりがあったものか(特に二回目は“執拗な抵抗”の表現?)。またDVDを見る限り、最初と最後に真っ暗な画面が何秒か続くのも考えがあってのことかも知れない。 物語の面では、冒頭から刺激的な映像を通じてかなりシビアな状況が提示されていたので問題点はわかったが、その後の展開と結末がわからない。主人公自身が変化したのはともかく、当初はとんでもない人格破綻者に見えた母親までが、最後はおとなしい要介護者のように変わっていたのは納得しかねるものがある。加えて現実世界での決着をどうつけたのかも不明であり、リーダーは失格、保護者から苦情が殺到してキャンプクラブは廃絶ということでは主人公も穏やかな気分ではいられないはずで、これは見ていてかなり気になった。 また中学生も、個別の行動としては理解不能なところが多かったが、これはまあ思春期の少女なのでそういうこともあるかも知れないと思えなくもない(思考放棄)。印刷屋の娘とその友人では外見的な印象に結構な差があったが(友人の方が明らかに女性的)、これは問題の所在をビジュアル面で表現したものと考えておく。 全体として年齢性別を選ぶ映画のようでもあり、理性的に見るより感性的に受け取れるものが多ければ勝ちということかも知れない。自分としては納得できるものがなかったが、映画の雰囲気としては悪くなく、何よりハッピーエンドだったのは安心した。まあ若年者の成長譚であってホラーではないので、最後は全員破滅して終わりなどということは当然ないわけだが。  なおキャスト面では、特にエビ中の人(アイドルグループ「私立恵比寿中学」のメンバー)の演技が心許ないところがあって一か所笑った。ただメイキングで本人が「演技力とかないんですけど…温かい目で見てください!」と言っていたのでこれはそのように対応したい。 ほか個別の場面としては“猫をかぶる”の説明のところが好きだ。この小学生2人は屈託がなくて大変結構だった。
[DVD(邦画)] 4点(2016-12-30 16:38:31)
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