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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1249
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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441.  火垂るの墓(2008) 《ネタバレ》 
2008年は戦後63年のため周年記念にはなっていないが、夏の公開であるから戦争回顧月間の催しという扱いかとは思う。撮影場所は海が淡路島、陸地も主に兵庫県内(どちらかというと播磨の方)のようである。 この物語に関して、要は戦争が全部悪いのだ、という単純な感想が得られにくいのは原作もアニメも同じだが、この映画ではわりと簡単に西宮の未亡人が悪いといって終わりにしたくなる。いきなり最初から人格低劣で厚顔無恥なところを見せつけるが、その後の行動を通じて印象が好転するわけでもなく、最後まで単に賤しい人物にしか思えない。この映画ほどあからさまに出て行けと言われてしまっては出て行かない方が変であり、アニメ版に関してよく言われるように、清太がもう少し我慢すべきだったとは言わせない作りになっている。  この映画の特徴点の一つは原作にない人物を出していることで、うち2階の男に関しては、厭戦気分の背徳的な人間が排除されて虐殺される姿を見せたかったらしい。また校長一家はいわゆる天皇制の犠牲者ということだろうが、あるいは物語的に、兄妹がこの一家を頼っていれば助かったかも知れないと思わせておいて、結局その道も閉ざされていたという失望感を出す意図があったようでもある。全体的にあまり戦争が前面に出ていないので、こういったエピソードで反戦色を増すことを考えたのかも知れないが、特に未亡人を含めて、国家というより民衆主体の排除と弾圧で犠牲になった人々を描こうとしたと思われる。 またこの映画で最大の特徴点は、題名の「火垂るの墓」について、失われた多くの生命の名を刻むものという意味づけをしたことと思われる。兄妹がやった連日のホタル祭りのせいでホタルの墓が大量にできていたが、わざわざ全部に名前を付けていたのは、その一つひとつがかけがえのない生命だったことの示唆になっている。特攻機の灯火をホタルに喩えたのは乗員が虫けらのように死んだことを思わせ、また空襲で死んだ少年の名札を読んでいたのはその生命を尊んで記憶しようとしたように見える。最後に節子の名前が墓標に記されたところで実質的にこの物語は終わり、そのため清太のその後は捨象されたのだと解される。当然ながら誠実に作られた映画であり、エンディングの音楽も心に残った。  キャストに関しては、子役は別として名の知れた役者も出ているが、当時実質的に目を引いていたのは松田聖子だったようで、舞台挨拶でこの人が登壇すると歓声が上がっていたのはさすがである。また校長一家の長女役の谷内里早という人は俳優の国広富之の娘ということで、顔はよく見えないが歌声は印象的だった。
[DVD(邦画)] 5点(2019-08-10 09:55:41)
442.  火垂るの墓(2005)<TVM> 《ネタバレ》 
この物語に関して、要は戦争が全部悪いのだ、という単純な感想が得られにくいのは原作もアニメも同じだが、最も戦争との関連付けをはっきりさせているのがこのドラマと思われる。ただし前面に出ているのは西宮の未亡人である。 自己の保全が優先で他人は見えても見えないふりというのは当時も今も普通にあるだろうが、このドラマでは自分の子を守るため、準身内のはずの親戚の子どもと義弟をあえて切り捨てたことで非情さが際立つ結果になっている。その行動を否定することはできないが、しかし子ども相手にあからさまに追い出すでもなく嫌がらせをして出て行くように仕向けておいて「私が追い出したわけじゃありません」とうそぶく神経は自分にはなく、さすが鬼は違うと思わせるものがある。終戦直後に兄妹を探し回っていたのは、戦争が終わったとたんに人の心を取り戻したという甘っちょろい演出かと思ったが、その後は泣き言も言わず最後まで筋を通したらしいのは立派である。結果としては戦地で男が敵を殺し、内地で女が子どもを殺したのが戦争だったという主張らしい。 嫌がらせの動機に関しては、夫の戦死で軍隊への反感を抑える気がなくなり、それで軍人の子である兄妹を切り捨てる決心をした形になっている。軍人の子には人権がないかのような理不尽さを感じるが(出身成分による差別?)、しかし少年の方も社会活動には積極的に参加しておいた方が無難だったとはいえる。父親も妹だけ見ていればいいとは言わなかったはずで、ここは少年の思い込みが過ぎたということだろうが、そもそもこのドラマでは父親をなぜか原作より格上にしており(海軍大佐、戦艦「長門」艦長?)、それだけ少年の思いも強かったのかも知れない。なお火事場泥棒のような行動は戦災でも震災でも憎まれて当然である。  そのようなことで、しっかり作られたドラマだとは思うが、しっかりし過ぎて見る側の精神的ストレスが大きくなりすぎて皮肉ばかり言いたくなる。未亡人役の女優は前から別に好きではなかったが、今回はっきり嫌いになった。母親たるもの地獄に堕ちても本望だという顔を好演している(褒めてはいない、単純に顔が嫌いだ)。ちなみに長女の60年後は変にニヤついた顔が前から嫌いだ。 なお皮肉ついでに失言と思われることを指摘しておくと、親戚の子どもと義弟だけでなく、長女も切り捨てれば残った者は楽になる、と言っていたのは言い過ぎだ。次女も三女もいなくなればもっと楽になり、要は長男だけ残ればいいということか、と言いたくなる。
[DVD(邦画)] 5点(2019-08-10 09:55:39)
443.  文福茶釜 《ネタバレ》 
「古美術ミステリー」の短編集を原作とした映画で、表題作の「文福茶釜」からマンガという要素を除き、代わりに「山居静観」の水墨画を加えて映画一本にしている。映画の舞台は大阪を中心とした関西である(敦賀は出ない)。 内容的には、騙し騙されというほど逆転続きの意外性はないが原作の雰囲気は表現されている。美術品に内在する普遍的価値どころか愛好者の主観的価値も問題にされず、専ら表面上の取引価格しか存在しないかのような世界観だが(「芸術」という言葉が一回だけ出る)、業界人同士の化かし合いは当然としながらも、素人は騙さないという点で一定の倫理水準を保っているのは原作由来のことである。  映画独自の趣向として、原作では登場人物が男(中高年)ばかりで極めて地味なのに対し、映画では女性の新人社員を加えることで華を添えている。かつこの新人を観客に近い存在として劇中世界との接点にしたらしく、顔だけで人を信用してはならないという初歩的な教訓を込めたオチを最後に付けている。ほか原作にはない主人公の生い立ちの話を加えて人情味も出しており、エンドロール後の場面は特に共感できるわけでもなかったが、その場面自体はあとに余韻を残すので悪くない。 少し困ったと思うのは、主人公の勤務先が美術雑誌の出版社という説明はあったが本業の場面がほとんどなく(冒頭の神戸は広告取り)、何で美大出の新卒がこんな会社に就職したのかよくわからなくなることである。この新人はとりあえず修羅場で真贋を見極める力を磨いてから、もっとまともな職場に移った方がいい。  演者については吉本興業の製作らしく関西芸人を揃えたようだが、それはいいとして根本的なところで問題なのは、大阪出身の小芝風花さん(むくれた顔がかわいい)を出しておいて東京言葉をしゃべらせるのはどういう了見なのかということである。自分としてはこの人が大阪弁で本領発揮というのを期待していたので多少の落胆はあったわけだが、それにしても素直で騙されやすい人物をわざわざ東京出身の設定にするのはいわば地域差別(逆差別?)のようなものではないか。真面目で正直な女性は大阪にもいるだろうが(多分いなくはない)。 そういうことで特に好みでもないが基本的には堅実な映画であり、原作ファンと小芝風花さんを見たい人々には見る価値があると思われる。
[インターネット(邦画)] 5点(2019-07-27 12:59:22)
444.  カミングアウト 《ネタバレ》 
“LGBT”のうちのGayの青年が周囲の人々にカミングアウトしようとする話で、特に過激に思われる場面もなく穏やかな雰囲気で推移する。見たところ一般向け啓発ビデオのような印象があり、宣伝文では「きっと、あなたの価値観変わります」と書いているが、見ても特に変わった気がしないのは5年も前の映画だからかも知れない。 映画の作りとしてはどうも素人っぽいというか手際が悪く見えるところがあり、特に大学のサークルの場面は間が悪いようで笑える台詞も笑えなくなっているが、これはキャストというよりスタッフの問題ではないかという気がする。後半になるとそれほど違和感もなく、夜の静かな場面での虫の声などは効果的に思った。  物語としては、まず前半で主人公が人間関係に悩みながら覚悟を固めていき、後半でごく近しい人々に対し順次カミングアウトを敢行することになる。なおいわゆるアウティングに関する問題は捨象されているらしい。 相手の反応のうち、特に母親の嘆き(孫の関係)は単に無知とか偏見では済まされないことなので心が痛むものがあるが、これは他の劇中人物が言っていたように「人生にはままならないことがある」と思え、ということか。どうしようもないのはお互い様だということもあり、またLGBTだけが原因になるわけではないということもある。 今回は親しい人間に限定して実行していたわけだが、主人公としては今後も対象を拡大していくつもりだったらしい。一体どこまでやらなければならないのかと部外者としては正直思うが、ここはこの映画の持つ啓発ビデオの役割を主人公に負わせていたということか。社会の受容度が高くなれば当事者があえてハードルを越えようとすること自体が不要になるのは間違いない。 ちなみに親友に対しては告白が2段階になっており、2つ目はあえて言わなくてもと思わなくはなかったが、この映画として淡い恋物語の結末が必要だったということかも知れない。  なお監督・脚本は犬童一利という人物だが、著名な犬童一心監督との関係はわからない(年齢は約26歳差)。知っている役者はあまり出ていないが、高山侑子という人が主人公の後輩で普通に可愛い女子大生をやっている。ほか「協賛」としてNPO法人の名前と「Alfa Romeo」「TENGA」という企業名が出ていたが、後の2つは実際にLGBTに関わる社会活動をしている会社のようで、劇中でもそれぞれの製品を見せていた。
[インターネット(邦画)] 5点(2019-06-07 19:56:18)
445.  女の子ものがたり 《ネタバレ》 
どういう背景設定で何をやっているのかわからないままとりあえず見ていたが、壁画の前で喧嘩をしたあたりからやっとこの映画としての方向性が見えて来た。喧嘩相手の友人が、自分らはともかく主人公には道があるはずだと信じて押し出してくれたことが、得がたい友人だったという後日の感慨につながったということらしく、これまで女の子だった経験のない人間にとってもそれなりに泣かされる話ができている。 それにしても生まれ育ちに縛られて荒んだ暮らしを事実上強いられるなど、実際ないともいえないが、いつの時代のどこの話なのかと一応は思う(同級生男子に理不尽な迫害を受けても無抵抗?)。時代としては1970~80~90年代頃だろうが、場所については撮影が愛媛県であるのに言葉は関西弁のようで、いいとこのお嬢ちゃんは東京言葉というのは大阪出身の監督の感覚なのか。あえて場所は特定していないのだろうが、少なくとも友人の娘が顔を見せていた時代には、母親の代のような状況はなくなっていたものと思いたい。 結果的には「女の子の数だけ、シアワセの道がある」というキャッチコピーが劇中世界を表現したものには思えなかったが、しかし友人の娘を含むこれからの世代には、この言葉がそのまま通用する世の中であってもらいたいという願いを込めたとすればわからなくはない。  なお監督の方針としては子役や若手女優をかわいく見せる方に重点を置いたということなのか、登場人物の様子からは底辺の生活ということが全く窺われず、これが映画のわかりにくさにつながっている。特に小学校時代の子役のうち、ひときわ長身で美形に見える三吉彩花という人が、風呂に入らず汚い児童の役というのはかなり意外感がある。 また①森迫永依-②大後寿々花-③深津絵里(-④西原理恵子)という主人公の系列のうち、①②はいいとして(④はともかくとして)どうも③にはかなり違和感があり、この人物よりも個人的には②の人がこの映画の主役だったと思いたい。若手女優の皆さんはそれぞれ好印象だったが、特に泥にまみれた波瑠の表情が印象的だった。
[DVD(邦画)] 5点(2019-06-07 19:56:16)
446.  ココダケノハナシ ~短篇.jpルーキーズ第3弾~ 《ネタバレ》 
一応説明しておくと(第1、2弾のところでも書いたが)、「短篇.jp」という動画コンテンツの配信サイト(現在は停止中)が運営されていた時期に、新人監督育成の目的で製作されたのが「短篇.jpルーキーズ」である。第1弾からこの第3弾までが製作されており、それぞれDVD化もされている。 内容としては監督の違う全6話のオムニバスになっている。以下それぞれにコメント。  【ポイズンラジオ】 現実味も意外感もなく面白味もない。高山侑子という人は、この少し前の「空へ-救いの翼 RESCUE WINGS-」(2008)では23歳の3等空尉役だったが、今回は険悪な顔つきの女子高生をやっている。まだ若いのだから(当時16歳くらい)もっと普通に可愛い役をやればいいだろうと思ったがもう10年も前の話だ。 【春のシオンで】 オチが一瞬わからなかったので何十秒か考えたが、要は夢見る女子の話だったらしい。高山侑子さんは夢の中で遊ぶ天使。 【架空の恋人】 初期設定がよくわからなかったが、最終的にオチも破局感もなく混乱状態で打ち切りになったのは悪くない。主人公(演・山田キヌヲ)の哀れっぽい顔は可愛らしい。また男の彼女(黒沢美香という人らしいが舞踊家とは別人)は、顔も見えるが脚の方が印象に残る。 【美味しいコーヒー】 最後の人物がよくわからなかったが本当の住人か同類が来ただけか。勝手に話を作る男は面白かったが、このテーマを語る上での必然性があったのかはわからない。 【キッスがしたい】 高校生がバカっぽいので呆れていたら最後は切ない青春物語。というかいきなり青春期の終わり(浦島太郎か)。役者の高校生演技は良好。元女子高生はお姉さんすぎるが、これはそもそも役者の段階で年齢差がある。 【ゴメンナサイが言えなくて】 男女の考え方/感じ方の違いということだろうがあまり深みはない。こんなのに執着する男の方が感情を理性で制御できていない。  以上、よくわからないところが多いが全体的にはそれほど悪くない。がそれほど感動的でもない。一番心を動かされたのはバカ高校生の話だった。また夢見る女子にはしあわせになってもらいたい。
[DVD(邦画)] 5点(2019-05-25 11:27:12)
447.  恋とオンチの方程式 《ネタバレ》 
香川県さぬき市のご当地映画である。2002年に5町が合併してできた比較的新しい市だが、その中でも旧津田町の海辺にある「津田の松原」が重要ポイント扱いになっている。また「讃岐うどんバーガー」というのも最寄りのサービスエリアで提供されているものらしい。それ以外の場所としては「志度音楽ホール」(旧志度町)というのも使っていた。 監督は香川県の銀行に勤務しながら映画を撮っている香西志帆という人で、この映画は監督第2作ということになると思うが、今回は本広克行氏(香川県丸亀市出身)が関わっているせいか、第1作よりキャストに名の知れた人が多くなっている。また前回は「脚本と監督と撮影と編集」を一人でやっていたが、今回は撮影を別人が担当している。  内容的には「コミカルでキュートなほんわかラブコメ」だそうで、少女マンガ的というかドジな主人公と男2人の三角関係の構図の中に、主人公が生来のオンチ(の前にリズムンチ)を克服する成長ドラマを加えている。男女の物理的なからみが全くない清純派ラブコメなので子どもに見せても全く支障ない。またコメディ色も強いがアホすぎて大笑いというより失笑レベルだが、失笑続きだったので全体的には結構笑ったかも知れない(音響会社の高橋という男が目立っている)。 最終的にどうなるかはほとんど想像がつくわけだが、それまでの途中経過は尋常でない。バスガイドの話かと思うと突然ご当地アイドルの話に移行するので世界観が覆ったような印象があり、また登場人物に関係するサプライズ要素が2つもあって、それで素直に驚かされるというより呆れてしまう。特に終盤は何か食い違ったような展開で、ここは大物歌手の登場をうまく取り込めていないのではという気もしたが、そのせいで最後まで予断を許さない映画だったとはいえる。ただラストの締め方だけは正直呆れた(この顔を見せて終わりなのか)。個人的には「中学三年生」(1973)というのを聞きたかったが。  そういうことで変な映画を見てしまったという思いは残ったが、娯楽と割り切ればそれほど問題ない。見どころかが何かは何とも言えないが、「キュートな」部分といえば40代(1)、30代(1)、20代(2)の女子4人によるアイドルステージということになる。吉田羊さんかわいい!とか言ってみたくなるが、本心では大塚千弘という人が一番可愛いと思った。
[DVD(邦画)] 5点(2019-05-11 11:16:16)
448.  未来のミライ 《ネタバレ》 
公開時から悪評ばかりで全く見る気がしなかったが、米アカデミー賞ノミネートということで試しに見た。見ればそれほど真に最悪な映画でもなく、主人公の声も変だが慣れた(上白石萌歌さんの今後に期待する)。登場人物がやかましいとか気に障るとか言動が4歳児でないとか顔のデフォルメが極端なのは嫌いだとかいろいろあるが、どんな映画でも(特にアニメは)我慢を強いられる場面というのはあるものだ。主人公の家はそのうち高齢者用にエスカレーターでも設置しなければならなくなるだろうがそれは後の話だ。 物語に関しては、それまで主人公にとって自分が世界の中心だった状態から、周囲の空間的・時間的な広がりの中で自分の位置を捉えるに至った最初の体験という、いわば世界認識の転換(コペルニクス的転回のようなもの)が描かれているのかと思ったが、最後の庭の木の話からすると生命の連鎖のようなものがテーマだったということか。しかしどういう意味にしても、それを誰に見せようとしているのかはわからない。幼児が当事者意識をもってこれを見るはずはないので、要は親も子に育てられる面がある、といったようなことなどを含めて子育て世代そのほか思い当たる人々の共感を得たいという話なのか。何にせよ自分としては対象層から外れているので特に愛着を覚えるようなものではなかった。  なお主人公の行き先で少し注目したのは戦後すぐの横浜市磯子区(※)で、考証的にはどうかわからないがこういう景観だったのだろうなとは思った。世間の評判通り曽祖父は格好よすぎだ(「おら」というのが微妙な方言だ)。ちなみに復員輸送艦になっていた第九号輸送艦と航空母艦鳳翔が映っており、その鳳翔の解体が始まった昭和21年8月末までの間のことだったと思われる。 また未来の東京駅は結構好きだ。外国語表示の言語数が増えている(北東アジアばかりでない)のは好ましいことだが、ただし繁体字が見えなかったのは不穏なものを感じる。遺失物係は劇団イヌカレーかと思った。ケモノ新幹線に関しては、外皮の手触りを確かめてみる場面がなかったのが残念だ(モフモフかゴワゴワか)。 ※東京駅のアナウンスでは「いそいそ区」とか言っていた。
[インターネット(邦画)] 5点(2019-04-20 14:58:41)(良:1票)
449.  ギョ<OV> 《ネタバレ》 
伊藤潤二の同名のホラーマンガを原作としたアニメで、腐敗臭のする無数の歩行魚が沖縄に上陸、次いで東京にも襲来して大混乱に陥り、やがて世界全体が滅亡に向かうという話である。怖いというより気色悪さを前面に出しており(反則気味)、全体的にはパニック物という印象がある。 ストーリーはわりと原作に忠実で、主要エピソードは何らかの形で拾っており、原作で脱線に見えたところも入れてある。大きく違うのは登場人物で、原作の中心人物だった男女の役割を交換して女の方を主人公にし、原作に出ない男とともに最後まで生き残る形にしたのはアニメ向きの趣向かも知れない。なお膨れてガスを噴出する女は別のキャラクターを用意してある。またラストは原作と変えてあり、悲壮感と同時に強さも感じさせる終幕になっている。  アニメーションに関しては特に目を見張るようなものはないが、そこら中に漂う臭気を映像化しようとしてゴッホの絵のようになっているのが目につくところはある。 一方でどうも登場人物の設定とか言動とか安易な展開など安手のアニメ臭が鼻につく。特に主人公が公的に禁止されたことをやろうとして制止されると、止めた側を悪人にして駄々をこねて同情を誘うといったことをいつまでやっているつもりかと思う。また“世界全体”ということを表現するために、香港?の街はまだしも凱旋門・タージマハール寺院・赤の広場・エンパイアステートビルを次々見せるというのはわざと昭和ステレオタイプにしたのか何も考えていないだけか。 アニメ独自のテーマとしては、「目で見たものだけが真実」ということかも知れないがあまり納得しない。自分の目で見なければ信じないと言い張るのは、自分周辺の狭い世界でしか生きて来なかったアナログ時代の高齢者かと思ったが、膨大な情報が流通する現代ではかえって原点回帰が必要だと言いたいのか。それにしても事実関係はどうでも信じ込みさえすればそれが真実だというのでは情報源がどうかは関係ないではないか。ほかにも最後に何か微妙に言いたいことがあったようだがはっきり言わないので無視する。 そういうことで気に入らないところもあって特に褒める気にはならないが、原作マンガのアニメ化ということでは悪くない。若干の独創性を評価するかどうかは人による。
[ブルーレイ(邦画)] 5点(2019-04-13 13:30:45)
450.  伊藤潤二恐怖コレクション/長い夢<TVM> 《ネタバレ》 
伊藤潤二の同名のホラーマンガを原作とした実写ドラマで、人間の夢の中の世界と現実世界に乖離が生じて拡大していく話である。「伊藤潤二恐怖コレクション」というシリーズの一つとして、2000年7月にテレビ朝日で放送されたらしい。 内容としてはかなり原作に忠実で、基本的に原作の出来事はちゃんと拾っている。患者の外見なども原作に倣ったようで、特殊メイクは一見失笑モノ(ピンポン玉)だが結構気色悪い。両手の指を伸ばす場面は原作にもあるがドラマの方が印象的に映像化されており(意味不明だが)、次第に言葉が変になっていく様子も表現されている。別に怖くはなく派手さもないが、背景音楽の雰囲気を含めてミステリー調のドラマを真面目に作っており、同じ監督の映画「うずまき」(2000)のようなふざけたところは基本的にない。 全体構成としては、原作が短編だったのをオリジナルの登場人物も加えて1時間程度に拡張している。自分の感覚としては、原作はどうも尻切れ状態で終わってしまう印象があったが、このドラマでは違和感なく延長してオチまで付けた形になっており、ここは未完成だった原作を補完して完全版を作ったようにも見える。ラストの展開は若干無理があるようでもあるが、全体的な印象としては悪くなかった。  人物に関して、キャスト配列順の2番目のつぐみという人は知っている人は知っているだろうが、今回は病人役のためあまり可愛く見えるところはない(ラストの一瞬のナース姿もこの人か)。また上記「うずまき」にも出ていた初音映莉子という人は友情出演ながら実質的なヒロインで、今回は少し落ち着いた感じで古風なラブストーリーの恋人役をやっている。50がらみのオヤジとのキスシーンが直前で回避されたのは幸いだった。
[DVD(邦画)] 5点(2019-04-13 13:30:40)
451.  うずまき 《ネタバレ》 
伊藤潤二の同名のホラーマンガを原作とした実写映画で、地方の小さい町が渦巻きに呪われてみんな渦巻きになっていく話である。同時上映が「富江 replay」とのことで、邦画ホラーの隆盛に乗ってこの原作者を売り出すつもりだったのかも知れないが、怖さというより荒唐無稽な不気味さを売りにした怪奇映画といったものである。  まず序盤で、主人公が「あ、また負けちゃう」「きゃっ」と言ったあたりで大根役者ぶりが印象づけられてしまうが、しかし続いて映る町並みが昭和レトロ風なところをみると、役者が大根に見えることを含めて「時をかける少女」(1983)を真似たもので、失笑演技はそういう演出だったからとも取れる。主演の初音映莉子という人は今もちゃんと役者をやっているが、この時点では80年代の原田知世に続く新世紀の国民的アイドル女優というつもりだったとすれば意味はわかる(実際に可愛い)。 それにしても相手役の男は一体どういうキャスティングだったのかと呆れる。この男が棒演技でも構わないよう時かけ風にしたのかと勘繰りたくなるようなもので、当時はモデルだったらしいが明らかに不快要因になっていた。女優まで付き合わされていい迷惑ということではなかったか。  内容としては原作の全部を再現するつもりはなく、とりあえず劇中世界はこんなところ、というのを見せておいて、あとは原作本を読んでくれという形で投げたようでもある(同時期に単行本が発売されている)。終盤で新たな町が形成されるところまでは行かず、前半部分のエピソードをつないで適当に切り上げた形だが、かろうじて“繰り返す”ことだけは最後に説明されていた(よくわからないだろうが)。 半端で笑えないコミカル演出や、原作者や出演者関連のおふざけなどは全く気にいらないが、廊下で俯いて並んでいる生徒やエレベータの看護師などは意味不明だが悪いともいえない。映像的にも、運転席を内側と外側から撮ってクロスフェードするとか、ピンク電話のダイヤルを回すごとにズームするといった趣向は効果的なのかわからないが特に否定するものでもない。ちなみに雨の日しか来ない男の顔は非常にいい感じを出していた(不快だが)。 ほかキャストに関しては見たとおりだが(男連中が鬱陶しい)、同年の「呪怨」(OV)、「ブギーポップは笑わない」にも出ていた三輪明日美という人は、この映画でも脇役ながらかなり存在感を出していた。
[DVD(邦画)] 5点(2019-04-13 13:30:38)
452.  誘拐少女<OV> 《ネタバレ》 
まず、見るからに低予算な上に娯楽性が全くなく、またDV男(妹尾青洸という役者)の顔を見たくないにもかかわらず最後まで出て来るのが不快なので、そういうのに耐えられない人は見ない方がいい。  内容としては極めて真面目な物語で、「大誘拐」のような痛快要素も全くない。要は父親のDVのせいで離婚した母親の娘2人(中高生)が、現状を打破するためにとんでもない行動を起こしたが、結果的には何とかなったという話である。 そもそもの動機は妹の復讐だったようだが、これはこの面で一歩先んじていた姉が収めたらしい。また学費は母親も納得の上で父親に出させることにしたと想像される。妹が自分は父親似ではないかと気にしていたらしいのは気の毒だが、しかしそこは姉が言ったように、自分で何とかしていくしかないという現実的な対処が見通されていたようである。少し困ったのはラストの一瞬で、姉妹の前面(カメラ位置)に誰かがいたかのような表情に見えたのが意味不明だったが、しかし適宜に解釈すれば、朝に意を決して出て行った姉妹が夜になって凱旋し、その時点ではもう父親からも母親からも距離をおいた一人の人間としての顔を見せていたと思えばいいか。 一方で、当のDV男も本来悪い人でないことが一応アピールされてはいたようだが、しかし本性の善悪がどうあれ威圧的・暴力的な言動が許されないのは当然のことである。こういう人間は一生治らないだろうから最後は孤独に寂しく死んでいくのが正しい結末だろうが、その前に学費を出させる必要があるので今すぐ死んでもらっても困るわけである。  ところで姉妹2人とその幼少時の2人がスターダストプロモーションの所属で、製作がSDPなので自社タレントのPR映画と思うが、その割に主演2人を可愛く見せることが優先されていないのはドラマ重視ということらしい。姉役の高橋春織という人は困ったような情けない表情が多く、美少女ともいいにくいが愛嬌があるとはいえる。また妹役の浅見姫香という人はとにかくきつい顔で、可愛いともいいにくいが美少女といえなくもない。とりあえずこの2人は印象に残ったので若手女優紹介の役目は果たしていたかも知れない。 ちなみにこの後に同じ監督の「恐喝少女」(2015)、「強盗少女」(2015)というのが制作されていて、「少女犯罪シリーズ」といわれているようだが特に見る予定はない(今回のがあまりに地味)。
[インターネット(邦画)] 5点(2019-02-08 23:21:46)
453.  天国への応援歌 チアーズ ~チアリーディングに懸けた青春~<TVM> 《ネタバレ》 
読売テレビのドキュメンタリーをもとにして日本テレビが製作した高校チアリーディング部のドラマである。ちなみに映画・TVドラマの「チア☆ダン」のチアダンスとは違うもので、映画の台詞で「誰かを放り投げたり」と言われていた方の競技ということになる。もとのドキュメンタリーは大阪府豊中市の高校の出来事だが、このドラマで見えた海や船溜まりのある風景は神奈川県三浦市だったらしい。 物語としては、前年に全国大会で優勝した際の部長が突然死去し、一度は意気消沈していた部員が奮起して、次の全国大会でまた優勝を果たす話である。「スポ根」ではなく「チア根」(苦しいことを楽しむ)だそうだが基本的には根性物で、当然ながら存在する選抜漏れの部員も含めて最後はそれぞれ得るものがあったという話になっている。劇中使われる「でーきーる」という掛け声はよかったかも知れない。  苦情としては、まず当初時点の低迷と最後の高揚の差を大きくしたいのだろうが最初の方を落ち込ませ過ぎで、本当にこんな悲惨な状態から全国大会優勝まで持って行けるのか怪しいものだという気がして来る。まあこういうドラマはだいたいそういうことになっている気はするわけだが。 またコーチを狂言回し的な役割にしていたらしいが成功しているとは思えない。いたる所でコーチの声でナレーションが入るが、まるきり当事者意識の感じられない観察とか論評ばかりでコーチの人格が疑われる。登場人物としても、自主性を重んじる建前らしいが部長や部員が苦しむのを眺めて放置するだけで、コーチの役割というものをどう考えているのかわからない。口を開けば皮肉か叱責か説教で、「練習の雰囲気が暗すぎる」とはお前のせいではないのかと言いたくなる。どうも「チア☆ダン」とあまりに開きのある人物像で呆れてしまった。  キャストについては当時注目の若手を揃えて人目を引く形になっており、3年生役は実際に全員が17~18歳くらいだったようで可愛らしい(今より)。撮影前には訓練でいろいろさせられていたようでご苦労様だが、どうせ若いから多少きついのは何でもなかろうと思ったりもする。個人的に人物+外見で一番いい役だと思ったのは主人公の親友(演・市川由衣)だった。ほか部長に指名されなかった瞬間の沢尻エリカの表情が好きだ。
[DVD(邦画)] 5点(2019-01-22 20:59:46)
454.  海すずめ 《ネタバレ》 
愛媛県宇和島市の映画である。公式サイトによれば、宇和島藩主だった伊達家の第十三代ご当主が企画段階から関わったようなことが書いてあり、劇中でも本人役の出演者になっているが、これほど殿様が前面に出るのはご当地映画の新しいパターンかも知れない(蔵を訪ねた場面の演出には笑ってしまった)。主人公の名前(及び題名)の由来になったのも伊達家の家紋「竹に雀」だが、これは基本的に仙台の伊達家と同様でデザインを若干変えているらしい。 映画宣伝には「今でもお殿様が存在する珍しい街」と書いてあるが、ただし仙台の伊達家のご当主も現在は仙台市在住と思うのでそれほど珍しくない。ちなみにうちの地元の殿様は一貫して地元在住で地元貢献も多大なので宇和島伊達家には全く負けていない(石高も多い)。  内容としてはかなりいろんなものを詰め込んだ印象があり、そもそも主人公に自転車乗りと作家志望という2つの性格付けがなされているのでイメージが統一できない。ストーリーとしても「宇和島伊達400年祭」関連の文献探し(+島の高齢者)、主人公の作家としての成功と、図書館の自転車部門の存廃(+同僚の今後の生き方)の3つの話が並行しているように見える。主人公の台詞で「全てはつながる」と言っていたが、一応つないだようでいて個別に決着つけただけのようでもある。 この中で特に自転車の話を出す必然性がどこにあったのかと思うが、これは宇和島というより愛媛県として自転車関連施策を推進しているからではないかと想像される。宇和島市の図書館に自転車課はないだろうが、県庁には「自転車新文化推進課」というのがあるようで、そのように各方面の思惑がからんだ映画に見えた。  キャストに関しては、主演の武田梨奈さんは自転車をこいでいる健康的な姿と作家志望のキレイなお姉さんの二様が見られるほか、物憂げな顔でその辺を眺めているとか、眼差しに優しさを出しているあたりは女優の顔をしていて結構だ(アクションは全くない)。また上野優華さん(徳島県出身)は近年悪役が多い印象があるので、この映画で普通に可愛い(すごく可愛い)役だったのは安心した。岡田奈々さんはおっ母さん役だが今もかわいく見える。そのほか図書館の変人娘(演・佐生雪)にも少し注目したが、終盤に出たお姫様には結構驚いた(さすが宝塚/ちなみに愛媛県出身)。そもそも役柄の割に脚がきれいすぎると思っていた。
[DVD(邦画)] 5点(2019-01-06 18:59:40)(良:1票)
455.  シムソンズ 《ネタバレ》 
「本当にあった最高の青春ストーリー」と書いてあるが、かなりウソくさい映画である。チームのメンバーにはそれぞれモデルになった実在の人物がいるとのことだが、いくら何でも本物の選手がこんなバカだったはずはない、とか思ってしまうと劇中の人物像が素直に受け入れられなくなる。また実際にオリンピックに出たチームだと思うからこそ大会で勝ち上がる展開が正当化されるものの、実際見ていると、こんないい加減な急造チーム(大会まで何カ月だったのか?)に負かされる対戦相手が可哀想になる。全体的に実話から補強されていながらも、その実話(現実)との間の違和感が足を引っ張る感じの映画になっている。  しかしそういう点を完全度外視すれば普通に楽しく普通に感動的なドラマである。当初の「楽しんでやれ、そして勝て」という方針は明快だったが、どうやら本当に最後までその通りにしようとしていたらしい。公開当時は「ウォーターボーイズ」(2001)や「スウィングガールズ」(2004)と比較されることも多かったようだが、この映画は最後に盛り上げるだけで終わりでなく、未来につながる形に作ってあるので物語としてまともといえる。あえて勝利者が賞賛されるラストにしなかったのも悪くない。 チームの4人がそれぞれ美形または可愛いのは出来すぎのようでもあるが、今年のオリンピック日本代表がまた別種のかわいさで評判になっていたこともあり、この点はそれほど非現実的ともいえない。キャストの中で個人的には、以前に「妖怪大戦争」(2005)を見た関係で高橋真唯(当時)という人に目を引かれてしまう(それほど可愛くもないが嫌いでない)。ちなみに決勝の対戦相手は、女優の派谷恵美さん以外は本物の選手だったとのことである。  余談として、この映画が撮影されたのは2005年の11~12月、公開は2006年2月18日だが、映画制作に協力した常呂町は公開直後の2006年3月5日に周辺3市町と合併して新・北見市の一部になり、この映画が町として最後の大きなプロジェクトだったとのことである。映画で披露された北海道方言は「…べ」「したっけ」程度だったようだが、今年の流行語大賞になった「そだねー」も当時から言っている人はいたかも知れない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-12-22 18:54:23)
456.  劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!! 《ネタバレ》 
2017年の特撮TVドラマ「ウルトラマンジード」の劇場版である。ウルトラシリーズというのはここ十数年間ほとんど見ていないのでまるきり部外者の立場になる。 世界観としては、昭和のいわゆる第2期ウルトラシリーズ以降に定着した兄弟設定を基盤にしているようで、「光の国」をあからさまに映像化していたのは個人的には物珍しい。昔の宇宙人が多く出ているのも見ればわかるが、そういう旧作から継承されたものとは別に、キャラクターの多さや軽さなどに何となく東映特撮風の印象があり、昭和も遠くなったものだという感慨がある。 ストーリーの面では本編を見ていないので何とも言えないが、TVシリーズが一通り終わっているはずなのに主人公がまだ「ウルトラマン失格だ」などといじけているのはこれでいいのかという感じで、よほどこれから期待される成長幅が大きい若者なのだろうなと思った(一生こうなのか)。ほかのキャストに関して、沖縄在住の宇宙人役の本仮屋ユイカという人は、これまで年齢なりの可愛い役をやってきていると勝手に思っていたが(全部は見てないが)、今回は主人公が幼く見えることとの対比ということなのか、変にオバサンっぽく見せていたようなのが非常に残念だ。これはまことに心外だ。  なお今回は主に沖縄が舞台で、沖縄風の木造建築物のミニチュアを作って赤瓦が崩れるなど結構細かく作っている。普通の特撮番組なら、どこだかわからない(恐らく首都圏)の街が壊されるのを普通に見ているだけだが、この映画では現地の実景を見せて、「沖縄市街地」(沖縄市の市街地という意味)といった具体的な地名も出しているので、いかにも沖縄の街が大被害を受けている感じが痛々しい。 ちなみに劇中の設定では、太古の昔から「大地を守ってる」怪獣が沖縄にいたことになっていたが、こういう強力な守り神がいたのなら島の平和のために一切の武力行使を許さず、沖縄一円を非武装地域にするくらいの強権発動をしてもらえば、周囲のどこからも自由で平和な沖縄ができたろうにと思った。しかし太古の昔から武力行使が許されないとなると、琉球王国も成立しないことになってしまうといった問題はある。
[DVD(邦画)] 5点(2018-12-04 18:56:26)
457.  GODZILLA 決戦機動増殖都市 《ネタバレ》 
新作が公開されている時点でやっと前作を見ているのは毎度のことだが、どうせそういう周回遅れの人生だと思って納得するしかない。 前回は主人公の心意気に感じたわけだが、今回は序盤からしていきなり意気消沈させられる。2万年経って、それなりのものが出来上がっているところへ来てみなぶち壊しにするのは本当に正しいのかなどと本人が問うのでは見ている側も困ってしまう。また個人的に期待を寄せていたユウコさんについては、「教えてもらった」というところで少しキュンとして、それから夜景デートで胸をアピール(大きすぎだ)していたあたりまではいいとして、その後は私怨ならぬ嫉妬で心が揺れていたのか、ごつい宇宙人に味方した上に最後はあんな感じになってしまったのは大変遺憾である。主人公が最後まで人の情を失わなかったのはいいにしても、もう次は宗教に頼るしかないのかという敗北感が残る。 怪獣映画としてもわりと単調で、前回とのスケール差がわからないので似たようなことをやっているとしか見えず、せっかくのメカゴジラも新作の人型兵器も大して役に立っていなかった。映像面でも、終わってからもう一度見直したくなる場面がなかったのは残念だ。 まだ2作目なので次を待てということだろうが、ここまで気分が落ち込んでしまっては期待感を維持するのも難しい。期待しなければ落胆もないというのが正しいだろうが、とりあえず今回は昭和ゴジラ並みの点数まで落としておく。
[ブルーレイ(邦画)] 5点(2018-11-20 19:37:49)
458.  怪獣総進撃 《ネタバレ》 
子どもだまし化が進んでいる時期の映画ではあるが、見ればそれなりに豪華で極端に退屈させられるものではない。題名が抽象的で無個性なのでいつまでたっても憶えられないが、改めて見れば終盤で、中継アナウンサーの言っていた「大怪獣のキラアク基地への総進撃」というのに由来していることがわかった。 内容としては前作と前々作を飛ばして「怪獣大戦争」(1965)の後を受けた形で、宇宙人の地球侵略に怪獣を絡ませた話になっている。敵の宇宙人は地球への移住を計画していたらしいが、本当に美女ばかりなら人類(男)の一部は歓迎する可能性もあり、これは人類(男)の弱いところを衝いてきたかと思ったら、その実体は台詞によれば「生きている金属」とのことだった。危うく騙されるところだった。 怪獣の出し方は「怪獣大戦争」どころでない超豪華ラインナップだったはずだが、ゴジラ以外はどうも地味な連中ばかりのようで、いざ決戦となっても案外貧弱な印象だった。それでも地球人のコントロールが効かなくなった後は、自分らの意思で宇宙人を攻撃するという主体性は見せていたようである。ちなみに地球怪獣が寄ってたかってキングギドラを叩きのめした場面は正直笑ってしまった(無慈悲に首を踏んづけたりしている)。これは悲惨だ(笑)。キングギドラが平べったくなってしまった。 なお大怪獣バランは貢献度ゼロだったが、カラーで見られるところに一応の意義があったと思うことにする。  登場人物に関しては、ヒロイン役の小林夕岐子さんは昭和特撮分野では美貌で知られた人である。予告篇では新人と書いてあり、最初に出た場面で明るい表情で話し始めたのは見慣れない感じだったが、しかしその後は宇宙人に操られて、結局はイメージ通りの冷たい美女になってしまっていた。せっかく新人なのでもう少し可愛らしいところが見たかったが、「お話を終いまで聞いたらどう?」という台詞は昔の(東京の)お母様のお小言のようで聞きほれてしまった。砂浜でも構わずヒールの高い靴のまま歩いているのが高踏的で超然とした印象を出している。 一方の主人公は体育会系の無鉄砲な男で、トラブルがあっても現場の工夫で何とかしてしまう行動力は結構だが、かよわい女性のピアスを「聲の形」(2016)のようにむしり取るのは乱暴で野蛮である。終盤で、敵の攻撃に出ていくこの男の名をヒロインが呼んで悲しげな表情だったのを見ると、将来この二人が一緒になっても苦労させられるだけと予感させるものがあったので、早目に別のに乗り換えた方がいい。
[DVD(邦画)] 5点(2018-11-20 19:37:48)
459.  さいはてにて やさしい香りと待ちながら 《ネタバレ》 
題名が日本語としてこなれていない上に、何となく「北の××」のようなのをイメージさせるのが事前の印象を悪くしており、そもそも能登半島の突端(石川県珠洲市)とはいえ「さいはて」は言い過ぎである。またかなり心が騒ぐ場面があるので癒し系映画ともいえず、その意味でもミスリードな題名と思われる。 主演女優はいまだに童顔だが(一生そうだろうが)、今回は化粧っ気がなさすぎのようで老けた子どものようにも見える。性的アピールをする気がないということだろうが、それでも見境なく犯そうとする男の邪悪さを際立たせるためとも思われる。この辺は外国人の監督なので感覚の違いがあるかも知れない。  ところで問題なのは結局何が言いたいのかわからないことで、ラストで???の状態のままエンドロールが始まるので困ってしまう。しかし無理に理屈で考えると、これはもしかして男は不要ということを言いたかったのか。かよわい人々を脅かす男は憎むべき敵であり、シングルマザーは金沢市の男どもに依存する生活をやめてから見違えるほど愛情深い母親になった。また主人公は父親(男)の帰りを待つ必要はなくなったが、ここにいる動機がなくなったわけではないことに改めて気づいたということらしい。 そういう結末が可能なのは主人公にもともと経済力があったからで、相続放棄をしなかったのも負債など何とでもできる見通しがあったからと思われる。こんな場所で店開きして大丈夫なのかに関しては、青森県八戸市尻内町から注文が来ていたように、日本国中どこにいても繁盛する基盤ができているとの自信があったのだろうし、そもそもモデルになった実在のコーヒー店(特別協力 二三味珈琲)が同じ市内にあるわけなので、その点は問題にならないと判断したのかも知れない。  そのようなことで、要は主人公の実力を背景にして男を排除し、女性のための理想郷を作った話ということらしい。年齢に関わらず呼び捨ての友達関係ができており、また小学生2人の間でも、弟には恐れがないが姉には不安がある、と男女で微妙に差をつけていたようでもある。男の居場所はないようで困るわけだが、主に映像面がいい感じだということと、主演女優が嫌いでないこと、また子役も存在感を見せていたので悪い点は付けられない。 ちなみに男は不要でも警察は必要である。あの男がいつか必ず復讐に来る、という危惧を残したまま終わってしまう映画だった。
[インターネット(邦画)] 5点(2018-10-07 20:25:46)
460.  リベンジgirl 《ネタバレ》 
超ハイスペック女子が選挙に出る映画とのことで、そんなものを一体誰が見るのかと思っていたが、実際見れば要はツンデレ女とドS男のラブコメだった。また全体的にはダメ人間が奮起して一躍トップを目指すサクセスストーリー形式になっている。 基本がラブコメなのであまり真面目に見るものではないわけだが、嘘をつかない政治家というのが現実味は別として素朴な期待感を持たせるところもあり、またラブコメ部分も笑わせるので途中までは結構面白く見ていた。この部分で得られる最大の人生訓は、プライドは持っていて見せるものではなく自分が生かして使うものだということである。 しかし終盤に至ってリアリティがゼロにまで落ち込んでしまったのは大変遺憾だった。最終日の街頭演説で、聴衆が意気消沈する話を長々とやらかした上に公衆の面前でキスシーンというのでは、エキストラならニヤニヤしていれば済むが選挙民ならドン引きである。ラストの一言もうまくまとめたというよりは“男次第で女はどうにでも変われる”と言ったのと同じことで、これで観客が喜ぶと思っていたのなら、要は一般向けの映画としては作られていないと思うしかない。 そういうことで、事前の期待を上回ってはいたが最終的には残念な映画に終わった。ちなみに主演女優(腕が細い)以外では佐津川愛美さんと馬場ふみか嬢が目立っている。また主人公の妹役は主演女優と同じ事務所で映画初出演の竹内愛紗という人で、劇中では普通に可愛らしい女子高生だが、主人公の妹であるからにはかなり優秀な人物のはずなのでそのつもりで見ていた。主演女優だけでなくそういうところも見た方がよろしかろうと思う。 追記:斉藤由貴についてコメントするのを忘れてしまったが目立っている。
[インターネット(邦画)] 5点(2018-09-29 18:57:58)(良:1票)
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