161. ちょっと今から仕事やめてくる
《ネタバレ》 ほとんど予想通りの展開なのに、うるっときてしまった。 仕事が辛ければ辞めればいい、自分の命を捨てて周りの人を悲しませてまで仕事を続けなくていい。今どきはよく聞くようなメッセージを持った映画ですが、青山(=工藤阿須加さん)の追い詰められる描写をひたすら見せられた後だと、「あー、よく聞く話だよね」と一般論のように見ることはできなくなってしまう。それくらい青山の追い詰められ感、会社のブラック感が鬼気迫るものでした。あんな社訓や部長のパワハラなど、それこそ今どきならSNSで労基にでもすぐ訴え出られそうなものとも思うんですが、日本には何百万もの会社があって、ああいう社風がまかり通るようなところもきっとゼロではないんだろうなという気持ちで見ていました。最後、「ちょっと仕事をやめた」青山くんの同僚たちは、きっと「次の標的は自分になるんじゃないか」と戦々恐々としながら仕事をすることになるんでしょうね。部長はきっと次の怒られ役を作るんだろう。個人的にはあの会社のその後がどうなったのかがとても気になります。 ひとつのことがうまくいかず、連鎖するように他のことも回らなくなり、いつしか自分のことを心配してくれる誰かの声を聞くことも億劫になり、そんな自分を嫌悪してまた悪い方に考えて…というマイナスのスパイラルに陥る気持ちがとてもよくわかって、痛かった。そういう時は、この映画のタイトルのように「ちょっとやめてくるわ」なんて考えには至れないし、至ったとしても踏み出すエネルギーも無い。そのエネルギーを与えてくれたのが「ヤマモト」であるのだが、実際にはこんな風に「ヤマモト」が現れてくれるわけではない。青山はまだ独身で決断がしやすかったと思うが、これが妻帯者や子持ちだったらと思うとまた難しくなってくる。この映画が「ヤマモト」のように同じような立場の人にエネルギーを与えてくれるものになってくれれば嬉しいが。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-07-25 14:05:31) |
162. ひとよ
《ネタバレ》 まず、DVで子どもの腕を折り、顔にアザが残るまで殴る。そんな父親が母親に故意に車で轢き殺されるところから始まる。暴力を振るう父から解放され、「これで自由よ。何にでもなりたいものになれる」と言う母。そこから殺人者の母を持つ子どもたちの人生が始まる、、、というストーリー。 それほど大きくない町で一つの場所で暮らす家族にとっては、母が殺人罪で捕まった、というのは実際すごいハンデになったんだろうと推測します。母の立場、子どもたちの立場、職場の人たちの立場、新たに家族になる人の立場、それぞれによってこのことをどう受け止めてどう反応するかは違うと思う。ただ私自身の個人的立場から言わせてもらうなら、殺す必要がある人はやはりいると思う。東野圭吾著の「さまよう刃」で娘をレイプした男たちや、今作のようなDV男、それもかなり悪質な。法の裁きでは不十分、任せられないと思った時点でそれも仕方ないと個人的には思う。特に前述のような目にあった娘の父親の立場なら、殺意しかないだろう。そういう意味で、この母親の行動は納得がいく。自分でもそうするという思いがある。その一方で、それをしてしまったら残った家族はどうなるかということも気になる。結局何もできないのかもしれない。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-07-13 18:15:14) |
163. 夜明けまで離さない
《ネタバレ》 映画ではこういう謎めいた男、出てきますよね。ただ、現実にはこんな男いないわけですが。そういうお店に来ておいてそういうことしないとか、逆に怪しまれて本当の目的も果たせなくなりますし。店に来た変な男が、たまたま自分の息子が万引きするところに居合わせて仲良くなるってのも、まあ映画ですよね。少し、ご都合的かなとも感じました。時に、現実にもそういう時があるということも分かってはいるつもりですが。 結局宮地真緒さん演じる美咲も、謎の男も、美咲に想いを寄せる刑事(=甲本雅裕さん)も誰も幸せにならない話でしたね。「何年でもあなたを待つ」という美咲の淡い願いくらい叶えさせて欲しかった。 終盤、美咲が夜の街に入った理由が語られますが、どんな事情があれ夜の街に入った人たちは幸せになれないんでしょうか。願っても抜けられないんでしょうか。そんな解釈をすることは極端かもしれませんが、なんだか救われない話を見てしまった後だとそんなふうに感じてしまう。せっかく息子も認めてくれて、あとは刑務所で刑期を終えるのを待つだけだったのに、、、切ないな。 社会では、女として生きようとする母や、母として生きようとする女のことを批判的に語る雰囲気がありますが、どちらも両立させようとした美咲は清々しくていいなあと思いました。こういう女性像は好きです。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-07-05 20:37:22) |
164. ユリゴコロ
《ネタバレ》 自分の出自を知るってそこまでショックを受けてしまうものなのかな。動揺のしかたが少し極端かなと感じた。さすがに親が人殺しだったわけではないですが、いやたぶんね笑、でも成人してそこそこ歳食っていれば清濁合わせ飲むではないがそんなにみんな清廉潔白なわけ無いってうまく処理できそうなもんですが。 自分なら出自なんかより、自分やその周りの人の「今」のほうがよほど大事です。自分が生まれる前の親の過去なんて知ったところで別にそこまで考えない。過去の親の犯罪のせいで付き合ってる女性と別れることになってしまったとかならまだ理解できる。しかしそんなことも起こらず、五体満足ですくすく成長し、自分の店が持てるまでになれたならそれで充分では。殺人鬼の血をひいていたから車の運転が乱暴とでも言いたげな描写も少し引いた。それこそ安直だわ。 「ユリゴコロ」=「揺り心」ってことなのかな。なぜあんな精神科のようなところに行かなければいけなかったのかは定かではありませんが、あのくらいの子があまり喋らないとかまあ普通にあるんではないだろうか。穴に色々生き物を入れてしまうような行動も、描き方が暗すぎて不気味な気がするだけで、普通では。昆虫の標本とか、蟻の巣にイタズラする子どもに似たような演出付ければそれなりに不気味になるでしょう。それよりもそのあと人を殺してしまったことで彼女の運命はもう方向づけられてしまった。そう感じました。 設定では木村多江さんは主役の松坂桃李さんの「親くらい歳が離れてる」と自分で言ってましたが、どう見てもそこまで歳が離れてるようには見えない。なんだったら婚約者の千絵さんと同世代でも通じるくらい。母親役にはちょっと若すぎて違和感でした。 はじめは「ユリゴコロ」を持たなかった美紗子も、洋介と出会って徐々に良い意味でのユリゴコロを持てるようになっていったことが見ていてわかりました。人を好きになって、その人からも愛され必要とされて、人は変わるんだなと思いました。愛する人や子どもの大切さを確認できた映画でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-28 21:16:39) |
165. 望み
《ネタバレ》 平穏無事に暮らしていた四人家族が、長男が怪我でサッカーを辞めてしまったことをきっかけに悪い友達と付き合い始め、そして事件に巻き込まれ、その家族の運命も狂ってしまうというストーリー。 行方不明になった息子が、殺人に関わって犯罪者として見つかるか、それとも殺されて被害者として見つかるかで、家族の心情も揺れ動く。 最終的に息子は遺体となって見つかります。しかしそこに至るまでの家族の動揺、マスコミや周囲の好奇の目と衆人環視、そして周りの人の態度の変化はなんとも息苦しく、見ていて辛い思いしかありません。 息子が被害者となって遺体で見つかったことでそんな歪んだ状況が一変します。被害者であったことで誤解は解け家族も平穏な生活に戻ることができましたが、結局「犯罪者でも生きていて欲しい」という思いと「被害者として死んでいて欲しい」という思いはどちらが正しいんでしょうか。母親が最後、週刊誌記者に自分の考えを語っていましたが、私も考えてしまいました。実際は世の中は「加害者だから生きてる」とか「被害者だから死んでる」なんて単純なことでは無いだろうし、ここまで綺麗に話が落ち着くことなんて稀でしょう。死んでいて加害者だったということもあるだろうし、生きていて被害者だったということもあると思いますが、それだとまだ周りの好奇の目は残り、ここまで綺麗な終わり方は出来なかったかもしれません。 結局答えは出ないな。 あと、やはり私はマスコミが嫌いなようです。映画なので少し極端に描写してるとはいえ、個人宅に毎日のように押しかけ、落書きや卵を投げつけられるなどの嫌がらせをされている家を目の前にしてなおも取材攻勢をかけるそのやり方。大嫌いだ。 ただの勝手な推測ですが、息子の容疑が晴れた後も、あのマスコミたちは後で謝罪など一切しないのでしょうね。週刊誌記者も、生きていても死んでいてもインタビューする、などと言っていたくせに、ワイドショー的に扱えなくなるや否やインタビューをキャンセルするという。どこかの誰かのセリフでは無いですが、マスコミや記者なんて結局物事を「面白おかしく」したいだけなんですかね。自分のとこの雑誌や新聞の売り上げ、TVなら視聴率が大事なことは分かりますが、そのために偏向的な報道をするというスタンスはやはり理解できない。ジャーナリズムについて、久しぶりに考えさせられた作品です。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-17 00:37:05) |
166. 海街diary
《ネタバレ》 15年前に家を出た父親。その葬儀で出会った異母兄弟の少女すず。彼女を妹として迎えた三姉妹の物語。 観る前はもっとドロドロした展開になるのかなと思っていましたが、問題という問題は起きずに三姉妹プラス1の生活が展開されていきます。家族の関係、それぞれの仕事のつながり、それぞれの恋愛…。それこそdiaryのように日々を綴っていった映画、という印象でした。 英題は"Our little sister" 三姉妹の生活にすずが入ったことできっと何かが変わったんでしょうが、元々の三姉妹だけの生活の描写が少なかったのであまり変化がわかりませんでした。でも「小さい子に見られてる」という感覚を大人が持つこと、感情の赴くままにならずに一度ふっ…と立ち止まってみることは大事なこと。なかなか自分でも出来ていないことですが。 三姉妹はなんなら元々すごく仲の良い三姉妹だったようにしか見えない。たまに長女(=綾瀬はるかさん)と次女(=長澤まさみさん)がお互いの価値観の違いでぶつかりますが、いずれも健全なレベルは越えない程度のケンカ。一緒に障子を張り替えてるシーンなどもとても自然で、別にすずがいてもいなくてもあの家族独特の心地良い雰囲気は変わらないんだろうな。 三姉妹がそれぞれに妹を愛し、そして妹がすくすく育っていくのを見るのは、映画だとしてもなんだかほっこりした気持ちになれました。 “Our little sister"、原題より私は好きです。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-15 20:52:16) |
167. そこのみにて光輝く
《ネタバレ》 これくらいの年になるとみんな何かしら抱えながら生活してるんですよね。それが過去に犯した罪だったり、動けない家族だったり、死なせてしまった同僚だったり・・・。そういったものから何とかして抜け出したいが抜け出せず、ただ幸せになりたいと現実に抗いながらも抗いきれない人たちを描いた映画。幸せの基準も人によって違う。幸せのためにお金が欲しい人、女を抱きたい人、家族を作りたい人。人それぞれ、「光り輝く」ために必要なものは違っていて、しかも例外なくその必要なものはなかなか手に入りづらいものばかり。この話が映画だから極端というのではなく、誰しもみんな根っこに持ってる「幸せになりたい」という気持ちは同じなんだろうなあ、という至極当たり前のことを妙に実感した映画でした。 個人的にあまり綾野剛さんや菅田将暉さんは好きなほうではないのですが、この映画・このストーリーにはハマり役だったように思えます。なんか謎めいた寡黙な青年の綾野剛さんも、うっとうしい音量で話す菅田将暉さんも、キャラに合っていました。 中島はまあドン引きするくらいのクズでしたね。刺されてせいせいした。拓児グッジョブと喝采を送りたい。千夏が彼氏を作ったとわかっても「それでもかまわないから」というあたりから、千夏に対して純粋に好きという感情も持っていたはずなのに、殴ったり、千夏のことをほかの人の前で公然と貶めたり、「早く済ませてよ」と言われてほんとにやっちゃうあたり、クズ過ぎてどうしようもない。むしろあれのことをどうしたらそれまで尊敬できていたのか。中島の家族の描写もなかったけど、それも含めて見せてほしかった。 動けない父に縛られ、弟を守るために最低の男にも縛られていた千夏から漏れた、「この町から抜け出したかった」という言葉。弟は自らの意思・自らの責任で動き出し、父とも決別を決心した千夏と達夫がその後新しい幸せをつかめたと信じたいものです。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-06 16:10:48) |
168. きみの鳥はうたえる
《ネタバレ》 ゆっっっっ…たりと流れる、「ぼく」「佐知子」「静雄」の物語。はじめはぼくと静雄が二人でルームシェアしていたところに、ぼくと付き合い始めた佐知子が加わって三人で遊ぶようになる。はじめはただ三人で遊ぶだけだったのが、次第に三人の距離感が変化して…。 BGMらしいBGMはほとんどない、ただ三人の関わりやバイト先での出来事などが淡々と流れていきます。淡々と、しかし確実に何かが変わっていくのが分かります。 「ぼく」は感情の起伏がとても乏しくて、バイト先や普段の生活でも無表情に対応する毎日。楽しそうな表情を出すのは三人の誰かといる時だけ。そんな彼が、佐知子と静雄が付き合うと知った時に「好きだ!別れたくない!」と言ってくれて良かったと、心の底から思いました。あそこのラストで、それまでの生活と同じように淡々と別れを受け入れていたら、これはまったく理解できない映画になるところでした。 好きな人と一緒にいたい、失いたくない、そんなシンプルな感情を確認できた映画でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-04 22:15:44)(良:1票) |
169. 夢売るふたり
《ネタバレ》 映画を観た後、いつもその映画の内容とタイトルのつながりを考えてしまいます。『夢売るふたり』ですが、これは彼らが自分たちの夢を安売りしていたのか、自分たちではない誰かに夢を売っていたのか、どちらなのかなと疑問に思いました。 板前の旦那がいる夫婦が最初のお店を焼いちゃって、再出発(お金)のために夫婦で結婚詐欺を働くというストーリー。このストーリーの入り口のところで、松たか子さん演じる奥さんの葛藤がわかるようなわからないような。旦那がふとした流れで女と関係を持った結果もらった大金を焼いた直後に結婚詐欺を思いつくって、ちょっと理解し難い。旦那に焼いた札束を投げつけた後でそれを拾い集めてるシーンから、少し後悔してそうな雰囲気はあるのですが、だからって結婚詐欺を思いつくかな??映画だから、と言ってしまえばそれまでですが、あんな簡単に同時期に何人もの女性を騙すというのもなかなか、、、。 そもそもお金のために誰かと関係を持つことができるのがよく分からない。あくまで個人的な感覚ですが。むしろ、誰かを好きな時はお金なんかほとんど関係なくなるもんだと思っていました。それはこの映画では騙された側の女性の心理なんですが。詐欺夫婦もその都度詐欺を働くことについて衝突していますが、よくそんな疑問抱いたままそんなことできるなというのが驚きです。自分ならそんなことを思った時点で顔やら言動やら態度に出まくるので、多分詐欺師には向いてません。苦し過ぎるわ。 「都会に隠れた輝くことを忘れた星達に色を塗り、また輝かせる」 詐欺の手口をそのように語っていた里子(=松たか子さん)ですが、結局『夢売るふたり』というのは、自分の求める何か、一度はなりたい何かになりたい人たちに「夢を売る」という意味だったのか。それとも、そんな詐欺行為で稼いだ金で「自分たちの夢を安く売って」いたのか。どっちなのかは分かりませんが、どっちでもくだらないなと思ってしまう映画でした。あ、映画自体は面白かったんですよ?反面教師的に学べた映画だと感じました。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-09 02:30:01) |
170. 私の男(2013)
《ネタバレ》 眼鏡をかけたヒロインが自分の知ってる女性とよく似ていて、映画の雰囲気とも相まって、美しかった。 という完全に個人的な感想から始まる本作のレビューですが、物語で起こっている内容の割に、話自体はとても淡々と進んでいきます。淳悟(=浅野忠信さん)と花(=二階堂ふみさん)が話の中心であり、他のキャストはほんとちょい役程度だったのもその印象を手伝っています。ちょっと二人に深く関わろうもんなら殺されるという。娘として引き取ったつもりが、いつしか一人の女として花を見てしまう淳悟、引き取られてその後溌剌と育っていくも淳悟に対して異様な所有感を持つ花。二人の気持ちと行動が錯綜する映画でした。 お互いへの依存性というか、おそらく依存してるとさえ思っていないくらい「一緒であること」が当たり前の二人はなんだか羨ましくもあります。男女の関係性も垣間見える二人ですが、もしも子供ができたらこの二人の関係はどうなっていくのかな。ふと、そこまで奥を見てみたいとも思いました。これ以上ズブズブで暗い話にしかならないと思いますが。 決してスッキリできる類の映画ではないですが、個人的に思うところの多かった映画でした。『私の男』というか、同時に『俺の女』であり、『互いのもの』だったんだろうなあ。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-04-29 10:08:47) |
171. 家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。
《ネタバレ》 これは、、、こんな良い旦那さんじゃなければ、もっと言えば映画じゃなければ成立しにくいお話だろうなあ。物語はもうタイトルそのまま、家に帰ると妻が死んだフリ、のみならず様々な出落ちトラップを仕掛けて待ち構えています。はじめこそ本気で妻を心配していた旦那さんも、やがて妻が何かのメッセージを送ってるんではないか、オレに何か言いたいことがあってそれを遠回しに伝えたくてこんなことしてるんではないかと疑心暗鬼になりイライラが溜まっていきます。そりゃそうだ(苦笑) 結婚三年目で夫婦生活を再考するという約束をしていた夫婦、その時期から急にこんなことをやりだしたのは、期日が迫ってきて日に日に元気をなくしていく夫の姿が、ちえの母を亡くして元気を失っていた父と重なり、同じように元気付けようとしたのかもしれません。まあ逆効果だったわけですが。 自分はもっとシンプルに感情を伝えるし、伝えて欲しい人なので、「月が綺麗ですね」もそうですがそこまで婉曲に伝えられてあげく自分が気付くまでずっと放置されるのはなかなか耐えられないなあ。これがきっかけでまた離婚することになったらどうするんだろうか。自分だったら、仮に何度か過ぎた悪ふざけや過ちをしてしまったとしても、何が一番大事なのかもう一回振り返って、一番が好きな相手ならそのために行動したいと思います。相手より、自分の死んだフリや「月が綺麗ですね」を優先する気にはならない。そもそもなぜそこまでして旦那にストレートに『愛してる』と言いたくないの?込められた意味はわかりましたが、何故そこまでわかりにくい形に込めなければいけなかったのかがわかりませんでした。 でも世の中にはいろんな夫婦がいますもんね。加賀美夫妻もそうですし、同僚の佐野さん夫婦もそうでした。何か一つの形が正解というわけではなく、「こんな夫婦像もあるんだ」と参考として自分や周りを振り返るきっかけとなる映画だったのではと思います。自分にも、良いきっかけになりました。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-01-28 00:24:16) |
172. 生きてるだけで、愛。
《ネタバレ》 自分の中で、映画『劇場』とかぶりました。主人公が恐ろしく自分勝手で、そしてそのパートナーの器がとても広くて、でも徐々にパートナーも主人公の毒に蝕まれていく。そんな様子が『劇場』とかぶってしまいました。 そんなある意味自由奔放に生きているように見える寧子(=趣里さん)ですが、「あたしはあたしと別れられない。」「津奈木はいいね、あたしと別れられて。」というセリフがとても印象的です。過眠症、鬱、躁などあらゆる適応障害を持ちながら毎日を過ごす寧子。はた目から見ている分にははっきり言って異様に見えるし自分でも基本的にこんな人に近づかないと思うのですが、終盤のセリフで、「分かり合えた瞬間は一瞬だけど、そのほんの一瞬であたしは生きていける」とか、津奈木(=菅田将暉さん)が彼女を美しいと思った瞬間があってそれを理由に一緒にいたいと思ったという感覚は、共感できるしきっと自分にもそんなところがあると強く思いました。 本の原作もあるんですね。鑑賞を終えるまで気づきませんでした。そちらのほうなら津奈木の会社の様子とか、安堂さんのバックグラウンドとかもっと詳しく描写されてるんですかね。ただ、良い、というか興味深い話でしたが、そんなに何度も振り返りたいストーリーでもないので、原作が読みたくなるかどうかは不明です。 躁鬱などの適応障害に理解を深めるための映画というふうにも見えるし、単にこういうヒューマンドラマだと言えばそれっきりなのですが、少なくとも男女の在り方について考えるきっかけにすることはできました。 [インターネット(邦画)] 7点(2020-12-31 03:01:46) |
173. 劇場
《ネタバレ》 書籍の『火花』が面白かったので、続けて同じく書籍の『劇場』も読んでみましたがこちらはイマイチ。劇団員という人たちの生活がイマイチぴんと来なかったのと、半ば(というかかなり)パラサイト的に衣食住を頼りながらダラダラと生きる永田君(=山崎賢人さん)に嫌悪感があったことで、あまり『劇場』という作品そのものをきちんと評価できなかったかもしれない。 さて映画『劇場』はと言うと、やはり本と同じく主役の永田君への嫌悪感は隠し切れない。『劇場』自体も創作品だし、わかりやすく主役のダメっぷりを表現してるんだろうけど。見るに堪えないシーンがいくつもあったなあ。彼女の家に転がり込んでお金も払わず居ついてるくせに食糧送ってくれる彼女の母親のこと悪く言ってみたり、彼女のスクーター奪うように乗って公園の周囲をグルグル。彼女が「ばあー!」と出てきても無視してそのまま走り、かと言って彼女があきらめて帰ると自分も「あれ?」ってなって寂しくなるという、なんとも自分勝手な・・・。終始そういうシーンが続き、見ていて辛かった。 彼女(=松岡茉優さん)はどんなことでも明るく大きな声で笑ってくれて、どんなバカなこと言っても屈託のない笑顔で返してくれて、これ以上の女性はいないのではと思うくらい天使のような女性だった。彼氏を甘やかしすぎだろってところはたくさんあるけど、徐々にその彼女も人並みの要望をしてみたり彼と一緒の状況に憔悴してきたり、「天使のような」彼女もだんだんと「ただの人」になっていきます。ほんとうに、彼女はとても魅力的だしいてくれたらありがたい存在なんだろうけど、男は、自分も含め、ほんとバカで、失ったり失いそうになるまでそのことに心から気づけないんだろうな。 劇のことや自分の願望以外ほとんどしゃべらなかった永田君が、いざ沙希ちゃんがいなくなるというときになって彼女を引き留めるためにたくさん話しかけるようになってくる展開は何とも言えない。 永田という劇団員とその傍らにいた女性を描いた『劇場』。主役が劇団員だったから『劇場』なのか、こういった生き方そのものが『劇場』なのか。はたまたそれを眺めるオーディエンスであるこちらまで含めて『劇場』なのか。ラスト、永田君と沙希ちゃんの最後のやり取りが劇として演じられるシーンを見て、『劇場』という言葉の広がりについて考えさせられた。 [インターネット(邦画)] 7点(2020-12-09 02:02:00) |
174. 藁の楯
《ネタバレ》 ディティールが粗い。これは鑑賞した人ほぼ全てが感じる事だろうと思います。そもそも冒頭で一番最初に清丸(=藤原竜也さん)を殺そうとした人からして、雑の一言にすぎる。なんでわざわざ凶器を本人に見せてから襲うのか。不意打ちでいいじゃんね。あの時点ではずいぶん信用されてたみたいだし、食い物に毒でも睡眠薬でも盛ればいい。本気で殺そうとしたんならもっと違うんじゃないかと、結局最後までそういうリアルさに弱い映画だという印象は変わりませんでしたね。 しかし内容は興味深いテーマを扱い、深く考えさせられました。 本当に人間の屑と言っていいような男に対して、そんな人間を守るべきなのか、守る価値はあるのか、殺してもいいんじゃないか、もし自分の家族が同じ目に遭ったら・・・など次々と思考が止まりません。そういう意味では『さまよう刃』と通ずるところがあるかもしれません。 ただやはり、銘苅さん(=大沢たかおさん)も言っていましたが、上記のような理屈は全て、次ぐ言葉にカネが絡んでしまうと途端に弱くなりますね。清丸の屑さは確かに筋金入りの酷いものですが、それが動機だから殺すんですっって言うならじゃあ懸賞金とかの話が出る前に実行しろよ、と。10億って言われてから動き出す人間に大義名分を掲げられても説得力はない。そういう意味では、 「チッ、懸賞金なんてなければここで撃ってやったのに」という白岩さん(=松島菜々子さん)のセリフはグッときますね。 本当に清丸が最低のキャラなので、良い映画ですが後味は最悪の映画の部類に入ります。個人的にこの映画を総評するなら、 『SWAT』+『さまよう刃』+『ファニーゲーム』ってところでしょうか。 あ、あと資産家の蜷川が作った「清丸サイト」の中身が、いいおっさんが何だか中二病みたいなサイトでメッセージ発信してるのが何だか嫌でした。 [DVD(邦画)] 7点(2013-12-26 15:32:17) |
175. ドラゴンボールZ 激突!!100億パワーの戦士たち
《ネタバレ》 すんごい懐かしい・・・。小学生の時以来だなー。ゲオで見つけてついつい借りてしまった。昔映画館で観たときはもっと長い映画だと思ってましたが、実質40分ちょっとしかなかったんですね。TV版アニメ2本分ってところか。 昔の記憶がほとんど残ってなかったので、ほぼ初見の状態で観れました。 「メタルクウラ」とくるだけあって硬そうなイメージを持ちましたが、その通りでしたね。部下の雑魚ロボットたちも軒並みガチガチの固さという。でも個人的には「バキッ!!」「ドカッッ!!」という効果音の入りまくる『ドラゴンボール』が好きなので、今作のはスカッと観れる作品ではなかった気がします。 しかし終盤にあのメタルクウラが大量に出現するシーンは圧巻ですね。子供心に「もうダメだ・・・」と諦めた覚えがある。でも大量に出しちゃうとやられ方も雑になるんですよねー。ラスト、あの宇宙の帝王フリーザ様の兄ともあろう者があんなにあっさり爆破されてしまう様はある意味見るに耐えません。 あ、劇場版お決まりのクリリンの名台詞「なんでオレだけ・・・」はもう定番ですね(笑) 40分と時間も短いし、観易くてとても良い映画だと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2013-03-24 23:58:25) |
176. 探偵はBARにいる
《ネタバレ》 「おっ、大泉さんついに全国区の映画に」と思って観てみたらやはりロケーションは北海道オンリーでした(笑)ある意味さすがだ。 キャストで印象に残ったのは松田龍平さん。『剱岳』や『誰も守ってくれない』などでの私の彼への印象は良くありませんでした。そういう演技をしてただけなのかもしれませんが、「ガキ」とか「チンピラ」という雰囲気がぴったりの人だなって印象でした。で、今回再び登場。「あー、出てきちゃった。」と思ってたらこれがもうハマり役!!あまりベラベラ喋らない寡黙な役のほうがとても松田さんの雰囲気に合っていると思いました。しかも強い。魅力満点ですね☆ さて肝心の映画の内容ですが、一言でいえばとても小説的ミステリー。ただミステリーとはいえ電話の主や大方の展開は大体読めてきます。原作があるのかどうかは知りませんが、あるとしたらとても原作に忠実な作りにしたんだろうなという印象です。そのくらい典型的と言ってもいい小説造り。内容はまた異なりますが、情景やノスタルジーを感じるという意味では『砂の器』を観てるような気持ちで観ていました。あくまで私個人の感覚ですが。 BARの雰囲気も良かったです。エントランスから地下に下りていく造りのカウンターBARで、中には年季を重ねた年嵩のバーテンが一名。とても粛々とした店内で指定席のカウンターの上にはオセロが1セット。指定席の大泉さんに電話が入ればそっと電話(黒!)ごと受話器を持ってきてくれる。それくらい店員との阿吽の呼吸になっているBARなら居心地良いだろうなあと羨ましくなる。タイトルに「BAR」とあるだけあって、その雰囲気にはこだわりを感じました。良!!です。 [DVD(邦画)] 7点(2012-11-16 22:34:18)(良:1票) |
177. 岳-ガク-
《ネタバレ》 9月にTVでやっていたのを録画。先日鑑賞しました。私は基本的に洋画ばっかり観ていて邦画はほんとにたまにしか観ませんが、いやあ面白かったですね!私個人は登山はやってませんしこれからもたぶんやらないと思いますが、それでも「山登り」というものにとても魅力を感じる映画でした。内容もどっちかというと救助隊の話ばっかりなのに何ででしょうね?三歩(=小栗旬さん)の明るい人柄のおかげなのか、峰々の鮮烈なまでに透き通るような情景のせいなのか、山登りにかける人々それぞれのドラマのせいなのか、深く心に残る映画でした。ちなみにコミックは未見です。 私事ですが、最近TVでやっているロードショーなどの映画を録画し観ることが多いのですが、この映画に限らずやはりTV版ですと相当なシーンをカットされてるように感じました。特にこの映画などはTV版だとシーンとシーンの間がもうメチャメチャ。「え、いつのまにそんな展開になったの!?」ということがCMまたぐたびに起こります。ちゃんと映画館やDVDで観たらその辺どうなってるのかはわかりませんが、ロードショーで(特に元々上映時間の長い映画)映画を観る際の一つの弊害を思い知った気がします。 かなり大々的に宣伝してる映画でしたし、もっと大衆受けする商業的な内容になっていると思いましたが、思ったよりもシビアな内容になっていたので良かったです。その人がどんな悪人だろうがどんな善人だろうが、山は無慈悲なまでに平等に人を魅せ、楽しませ、命を奪う。コミックスからのストーリーですし、多少美談めいているかもしれませんが、それでも充分「山」と向き合える内容だったと思います。良作です。 ※追記(鑑賞済みだったことも忘れてまた見てしまったため、以下2回目の鑑賞のレビューです) わかりやすいドラマ仕立ての映画です。王道の日本のドラマという感じですが、小栗旬さん演じる主役の三歩さんがとにかく明るくて良いキャラをしている。底抜けに明るく芯のある山男を小栗旬さんが見事に演じている。小栗旬さんのキャラとも合っていると感じた。 逆に、長澤まさみさんの椎名久美は、見事に道化キャラだったなという印象。女扱いしてほしくないと話していながら、違う場面では女だからデリカシーを、、、みたいなことを言うし、明らかに力量的に力不足な現場に無理やり出ようとする。作中で椎名が指示や命令に従ったシーンなんてほとんどなかったのでは。実際問題あんな隊員がいたら他は迷惑するだろうなぁ。当て馬キャラとはいえ、何だか複雑な心境になりました。 自分は登山をしません。あんな険しい山どころかもっと標高の低いハイキング程度の山ですらほとんど登ったことがない山知らずです。そんな自分からしてみたらこの映画は山の過酷さを知れる良い機会でした。フォールの場面などはやはり映画とはいえショッキングでした。 一方でやはりこれも映画であるが故なのでしょうが、氷点下数十度に至るようなブリザードの中、フードなどで顔もろくに覆わずに雪山を進む三歩や椎名には違和感でした。あれこそ、本当の雪山ではNGなのでは。。。?自分山登らないのであれですが、山にお詳しい方いかがですか?俳優の顔を見せたいがためでしょうが、そこは詰めて欲しかったところです。 [地上波(邦画)] 7点(2012-11-16 22:31:14) |
178. ルパン三世VS名探偵コナン<TVM>
《ネタバレ》 普通に面白い作品でした。私はこの二つならどっちかと言うとルパン党になりますが、ゲスト的に扱われての出演に特に疑問も感じませんでした。むしろそんな風に陰でさりげなーく活躍する渋さがルパンの魅力だと思ってますので、この作風は好きですね。 それよりどっちかと言うとコナン側のストーリーに不満が・・・。冒頭のハンティングのシーンなんてあの時点で既に犯人の予想がついている。むしろあからさますぎて製作側のミスリードを疑ったぐらい。でもやっぱりその通りの犯人だったので少々がっかりしました。 それと伯爵役のキースという人の強引さに呆れる。実際あんな風に人ひとりを外国に連れ去ったりするだろうか。理由があるならそれをちゃんと伝えた方が簡単な気がするのだが。まあそれも製作側の意図と思えばそれまでの話なのですがね。 でもやっぱりルパンキャラの登場にはテンションが上がりますね。とっつぁんが出た時はまさに「キターッ!!」でした(笑) コナンとルパン、コナンと不二子、コナンと次元などのやり取りは見ていてとても楽しかったです。よくできたコラボだと思いました。 [DVD(邦画)] 7点(2012-08-22 17:11:27) |
179. 裁判長!ここは懲役4年でどうすか
《ネタバレ》 冒頭のやり取りからこれは裁判員裁判を描いた映画なのかと思いましたが、どっちかというと傍聴人目線がメイン。良くも悪くも裁判所で関わるのは、「所詮他人の人生」という描きかたを最後まで貫きます。 ラストの裁判の結果はとてもしこりを残す形になりましたが、あれが逆にとても現実的な結果で、映画としてドラマチックな展開に固執しない良い形を見せてもらった気がします。 ていうか肉親はともかくとして、周りの人間がああまで盲目的に誰かのことを無罪と思えることがまずすごい。自分なら「もしやっぱりこの人が犯人だったらどうしよう」って疑問を持って、あそこまで熱心に弁護活動を出来ないと思う。彼が犯人で無いという根拠も「彼がそんなことするはず無い」とか「マッチを持ってただけで犯人と決め付けられた」と主観的意見ばかりで客観的証拠がほぼゼロに等しい中で、あそこまで自信満々に彼の擁護をすることは私にはできない。 一方で、「傍聴人の力」というものも少なからずあるんだなと思いました。中盤、やや大げさながらも女子高生がいることで力を発揮する裁判官がいたりしました。あそこまでではないにしても、聴いてる人次第で雰囲気が変わるというのはあると思います。本当に膨張に命かける人ならそれもいいかもしれません。 ただ、個人的には私は人を裁くなんて大仕事に関わりたくないと思ってます。なのでそうやって「傍聴の力」を認めるがゆえに、関わりたくないとこの映画を観て心底思いました。 傍聴なんて親族か関係者がいればそれでいいと思います、基本。縁もゆかりも無い人に傍聴されてもそれは100%興味本位。真面目にやってる人には不愉快だろうな・・・。 [DVD(邦画)] 7点(2011-08-29 09:22:34)(良:1票) |
180. 告白(2010)
《ネタバレ》 原作既読です。わりと本で読んだとおりのイメージで映画も展開されていき、スムーズに鑑賞することが出来ました。 しかしあそこまで計画的に復讐を考える森口先生は「あなた本当に先生ですか!?」って言いたい。子供たちの考えの浅さも、本当に子供だなって感じでリアリスティックで良かったです。 出来れば描いて欲しかったなと思うのは、下村君が引きこもってまで母親にエイズを感染させまいとがんばってる姿でしょうか。作中ではなんで彼があそこまで引きこもったり家族を遠ざけるのかが明確には描かれてなかったので、手段はともかく彼のその気持ちはちょっと汲んであげて欲しかったかな。 [DVD(字幕)] 7点(2011-04-18 20:11:16) |