1. ムーンプリンセス 秘密の館とまぼろしの白馬
《ネタバレ》 単に少女が館でいろいろ冒険するファミリー系アドベンチャーかと思っていたら、予想以上にヘヴィな内容でした。いろいろ不気味な事象が発生していく序盤の過程はなかなかミステリアスですし、そこに古の発端の伝説も絡んできます。いい人なのかそうでないのかよく分からない叔父さんも印象的です。その辺の盛り上げ方に比べると、収束はあっさりというよりむしろ雑然とした感じで、せっかくの種々のキャラの登場がもったいないのですが、まあ、あまりシリアスに振るべき作品でもないということでしょう。 [DVD(字幕)] 5点(2024-11-25 23:07:22) |
2. 不完全なふたり
中年の夫婦がああだこうだ語り合う数日間。というコンセプトのようなのですが、中心の2人は本当にただ喋っているだけです。どうもこれ、完成した脚本はなくて、その場でいろいろ作ったみたいなのですけど、それであればその手法はまったく成功していませんし、制作側の自己満足だけになっています。カメラのほとんどが固定で、しかも長回しがやたら多いのも、そうしてみたかったからそうした、という以上の意味が見いだせません。役者の即興性を重視しました、とかいえば聞こえはよいのかもしれませんが、これはただ単に創作の大部分を怠っているだけなのでは? [DVD(字幕)] 2点(2024-10-05 23:55:11) |
3. ミルドレッド
《ネタバレ》 これが監督デビュー作とは思えないくらい、堂々とした安定感ある撮り方。画面も色合いも、そして進行も落ち着きに満ちている。母親ジーナ・ローランズを美しく撮ろうという愛情すら感じられるし(実際、他のジーナ出演作よりも綺麗に映っていると思う)、またジーナの側も、作中で子供に接するのと同様、作品そのものも暖かく包み込んでいる。●しかし、そのような作品外の親子関係に依存することなく、ドラマはじわじわと展開していく。突飛な事件も起こらない。その中で徐々に、しかし着実に変化していく関係性。それは必然的に、余韻にあふれたラストにつながっていきます。また、オスカー受賞済とはいえまだ若手だったマリサ・トメイが、ジーナすら食いかねないほどの存在感を発しており、作品にもう一本の芯を確保しています。●一方で、ドパルデューの役については、せっかくこの人まで起用に成功したんだったら、もう少し何とかならなかったかな、という気はします。あれなら単に「バーで出会ってちょっと口説きかけただけ」に近いんですよね。まあ、それはそれで慎みがあって良いともいえますけど。 [DVD(字幕)] 7点(2024-08-13 02:16:13) |
4. プロヴァンスの休日
《ネタバレ》 三兄妹が田舎に行って、ひねくれた爺さんと一夏を過ごす。というだけでもう想像できるとおりの内容です。筋としても芝居としても、特に面白みはありません。フランス語でまくしたてまくるジャン・レノがちょっと新鮮だったのと、脇役に無意味に美女が多いところが見所でしょうか。●と見せかけて、この作品の最大の価値は、「髪結いの亭主」のマチルドことアンナ・ガリエナの24年後のお姿を収めてくださったことです。出番も多めです。相応に老けてはおられますが、あの美しさは健在です(そして変わらずのグラマーぶり!)。この方の登場を探して追い続けるだけで、終わりまであっという間でした。それだけで見た意味はありました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-08-01 00:49:03) |
5. ジェラシー(2013)
三角関係的なラブロマンスみたいなのがやりたかったんでしょうが・・・内容的には、それっぽい映像の断片が積み重ねられているだけで、発展もなければ脈絡もなし。尺の割に長く感じました。モノクロの映像はどれも美しいので、映画というよりもイメージ映像集として捉えれば、それなりに鑑賞できるのではと思います。 [DVD(字幕)] 4点(2024-07-01 01:08:07) |
6. 甘い罠
初期設定からすればスリリングな展開が期待できるし、また映像の雰囲気も落ち着いている。しかし、役者の芝居が騒がしくないのは良いとしても、逆に跳ねてないというか、何が起こっても淡々と処理しているだけのように見えてしまう。そうすると、そもそも何か危機が起こっているのか、という気になるわけです。終盤のシークエンスで、何がしたかったのかは何となく分かりましたが、それに至るまでが平坦でした。 [DVD(字幕)] 4点(2024-06-15 23:24:29) |
7. やさしい女
《ネタバレ》 冒頭、若き妻の死が示され、以後は中年の夫の回想で延々とそれまでが語られるという構成。しかも、何でその人に対して語っているのかもよく分からない。回想の中身も、くっつきたいんだか離れたいんだかもよく分からない。と、分からない尽くしながら、落ち着いた画面の色彩感覚はどのシーンでも極上であり、ドミニク・サンダの無表情美人ぶりも手伝って、全体としては何か良い作品を見たような気になってしまうという、困った作品。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-06-06 01:02:35)(良:1票) |
8. NOVO/ノボ
《ネタバレ》 5分間しか記憶が保たない男と、その男に迫ってくるお姉さんの恋愛沙汰物語。すぐ気づくのは、その記憶が5分間だけという設定が、全然生かされていないというか、ディテールに反映されていないということ(結局、指のケガをめぐるくだりだけだったのでは?)。もっといえば、その設定がなかったとしてもそれほど差し障りがないようなやりとりしか行われていない。後半では、その陰には実は的な展開があるのですが、整理しきれていないため、裏返しインパクトもあまり感じさせない。そのため、前半にはまだあった独特の重々しさも、どこかに行ってしまいました。ムグラリスの魅力的な肢体(露出はそれほどありませんが)がもったいない。 [DVD(字幕)] 4点(2024-06-03 02:27:42) |
9. ニューヨーク、アイラブユー
《ネタバレ》 各短編は上品にまとまってはいるし、切れ味を感じさせる作品もある。しかし、技巧に優れてはいても、「えっそれだけ?」で終わってしまうものがほとんどなので、後には残らない。ところどころでシーンの順番をシャッフルしたり登場人物を絡ませたりしているのも、単調さを避けようとしたんだろうけど、それほど効果的に機能しているわけではない。最後のウォラック&リーチマンは、一言の中に背景と意味を込められる演出と演技が展開されていて、ここで初めてドラマを感じました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-05-14 02:07:28) |
10. 昨日・今日・明日
《ネタバレ》 1話目はですね、私はてっきり、恩赦が出ていい気になって意気揚々とローレンが帰ってきたら、マスロトヤンニは「もう君とはやっていけん」みたいな書き置きを残していなくなっている、ローレン呆然、みたいなオチになると思っていたのです。すみません、私の心は汚れているようです(でも、面会のシーンなんて、普通に見ればそっち方向に振っていますよね)。●2話目はほんのりジム・ジャームッシュ風というかヴィム・ヴェンダース風というか、いずれにしても、このトリオっぽくはないです。●そしてメインはやっぱり3話目ですね。あの憎たらしい隣のババア(表情も怖い)をあっさり招き入れて相互理解してしまうという、衝撃的でトリッキーな展開。そこから動き出す関係者の心理の綾。最後に「誓い」まで巧妙にオチに取り入れてしまいますが、ここでさっき喧嘩したばかりのマストロヤンニを受け入れるところも含めて、この作品でのローレンはまさに「聖女」です。しかも脚本上なくてもよいはずのストリップシーンまで入れ込んでしまう(それも結構上手い)という素晴らしいサービスオプション付でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-04-30 00:43:51) |
11. 恋するパリのランデヴー
《ネタバレ》 適当に出会った男女が、都合良くあっという間に恋に落ちてしまう。さすがはフランスのラブコメ。ちょっと特徴的なのは、ヒロインに3人の子がいるというのと、実は富豪の妻で、まだ離婚していなかったという点です。ストーリーはラブコメの王道そのままで、ちょっと喧嘩もあって、すれ違いもあって、でも子供たちには心慰められて、といったものです。しかしどうやっても食い足りないのは、主人公両名が何をどうやって生きているのかという日常的生活感がまるでないからでしょう。特に男の方は、何か舞台を作っているっぽいのですが、その制作ディテールはまったく不明ですし、どういう舞台を作り上げようとしているのかも分かりません。よって、それが絡んでくるクライマックスも盛り上がりません。あと、この種の作品では、会話をいかに豊かに展開させるかも重要なのですが、そこもあまり考えられていませんでしたね。まあ、ソフィー・マルソーのオーラのごとく漂う色気は健在でしたので、そこだけでも楽しめはします。 [DVD(字幕)] 5点(2024-03-30 16:10:06) |
12. 南へ行けば
3人の兄ちゃんと1人の姉ちゃんが、車に乗って南を目指す。さぞやこれからエピソードを散りばめたロードムービーが、と思っていたら、そこから全然話が弾まない。沈滞モードが漂いまくっている。一番の問題は、随所で挿入される回想シーンが、現在とつながっていない上にタイミングも不鮮明で、回想として機能していないことです。しかも、3人の兄ちゃんはいずれも似たような芝居しかしていないので、物語も発展しません。結局、すべてがうやむやなままに作品も終わってしまいました。 [DVD(字幕)] 3点(2024-03-25 01:18:32) |
13. イマジン(2012)
《ネタバレ》 視覚障害者施設の教師である男性(自身も視覚障害者)のお話。彼は、音の反響を駆使して、白杖なしで歩き回ることができ、それを生徒にも広めようとしている。そして作品もそこに一点集中している。彼らが外を自由に歩くとはどういうことか、何を「見て」いるのかを、地道に切り取っていく。授業風景の一つ一つの扱い方も丁寧である。と、中盤にかけてじわじわとせり上がり、さてこれがどうやって開花し着地するのか、と期待が高まるのですが、終盤は今ひとつでした。妙に長い港のシークエンスの怠さをはじめ、何か物語も完結せずに放り出されてしまった感があります。立ち上がるヒロインをトラム内から遠景で小さく捉えるファイナルショットの切れ味なんかは、良かったんですけどね。 [DVD(字幕)] 6点(2024-03-09 15:55:07) |
14. コーダ あいのうた
《ネタバレ》 何がいいかって、「両親がアホなところ」。医者にかかることになっても、「セックスができるかどうか」しか考えていない。娘の友人がいるとかお構いなしで(気づいてなかったとはいえ)ベッドでギッタンバッタン。しかもそれをまったく反省していないどころか、完全に堂々としている。まあ、そっちの方面だけでなくて本業の方もそうなんだけど、そういう生身の姿をきちんと作り込んでいるからこそ、聾設定も手話も、手法が目的化することなく正しく機能しています。とりわけ、生活のあれこれの中にも、娘に対する依存(障害サポートだけではない)を表現してみせた母親役の芝居は光ってるなあ、と思っていたら、マーリー・マトリンですか!あのデビューから35年、演技力は健在でした。また、父親と兄貴も、安定した上で相互に巧く絡んでいますし、主演の彼女も、作中の人物の歌同様、テクニックに走ることなく、内面を自然に表出するいい存在感を発揮しています。●その上で、自室で母親と、海辺で兄貴と、トラックで父親と、それぞれの対話を積み重ねて関係を再構築していくプロセスも、きちんと押さえられています。ラストが全部ハッピーで大団円なのはかえって物足りないという向きもあるかもしれませんが、こういうのはそれでいいのです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-01-29 02:44:54) |
15. 天使の宿り木
「飾り窓」の娼婦がある日突然、見知らぬ女から、自分の息子を孤児院から引き取って連れてきてほしいという無理矢理な依頼を受ける、という出だし。しかもそれをつけ狙ってくるマフィア的存在も見え隠れします。そうするとこれは「グロリア」的世界かと思ってしまいますが、あそこまでサスペンス色はないですし、もちろんハードボイルドでもありません。むしろ、あまり物事を深く考えていない主人公と、割と冷静な突っ込みを入れてくる少年(むしろ青年に近いですが)の会話術が楽しいです(ところどころコメディチックですらあります)。ただその中でも、フランスなだけに(?)、少年と娼婦の禁断のラブストーリー風味もほんのりあったりはしますが、そんなに露骨ではないです。全体としては、どこか特定の場所に行こうとしているという体裁で実はどこに行っているのかよく分からないという描写も含めてファンタジックな雰囲気に覆われていますが、それもそれで味わいがあったりもします。 [DVD(字幕)] 6点(2024-01-02 23:47:32) |
16. 2046
もしかしてこれ、「81/2」的なものがやりたかったんでしょうか?であるにしても、すべてが中途半端で表層的で、ただの思いつき映像の羅列にしかなっていませんが。トニー・レオンは、どう見ても誠実そうで、そういう刹那的な生活を送っているようには見えない。女優陣は豪華メンバー勢揃いのはずなのに、全然使いこなされていない。この監督の作品にはもともと自己満足的傾向がありましたが、それが思いっきり加速しています。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-09-26 01:03:15) |
17. 処女
《ネタバレ》 美人の姉と太った妹がいて、処女喪失をどうしようと考えている、という初期設定。姉の方は一線を越えるにはこだわりがあり、一方妹の方は誰でもいいと考えている、ということにはなっています。しかし、実際の描写は、延々と続く姉のベッドシーンか(あそこだけで15分以上あった?)、姉妹のそっけない会話か、あと終盤に母のヒステリーが入ってくるか、というくらいで、特に目新しいところはありません。そもそもこの設定なら、妹がいかに動くかの方が重要なはずなのですが、この妹が、存在自体は強力である反面、それほど意味ある行動をしていないので、設定の意味がないのですね。まあ、姉の長いHが、実は妹と同じ室内で目と鼻の先だった、という小オチは、漫画チックで面白かったのですが、そこくらいでした。ラストもひねってはいますが、単にひねりたくてそうしただけのように見えます。 [DVD(字幕)] 4点(2023-09-05 00:45:24) |
18. ゴーストライター
《ネタバレ》 中盤くらいまでは割といい感じなのです。落ち着いた進行の中にも適度にそれっぽい手がかりが撒かれていて、じわじわとスリルが増していきます。また、若すぎず老けすぎず、善人すぎず悪人すぎないというユアン・マクレガーのキャラクターも、作品に合っています。キム・キャトラル&オリヴィア・ウィリアムズの適度な自己主張ぶりも、スパイスとして効いています。●ただ、終幕に向けて、結局はありがちパターンに収まってしまったというか、広げた風呂敷を畳めなかったというか・・・ひねりたかったからひねった、というだけのオチになってしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-08-20 20:42:41) |
19. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 始まっていきなりの二重構成に何じゃそりゃと思っていたのですが、最後までそのまま自信満々に押し切ってしまったのにはびっくりしました。どこまでも広がる妄想力と、それを何としても作品内に具現化させるという底なしの執念。まさにこの監督ならではです。しかし、一つ一つのシーンはきちんと撮られているだけに、通しで見ていると頭が痛くなってくるのも事実です。最後にヒロインがサンチョ・パンサになるというオチなどは気が利いているだけに、もう少し焦点を絞って尺も縮めたら名作になったのではとも思いますが、そういう理性的なやり方ではこの作品はできないか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-08-03 00:07:14) |
20. 日曜日が待ち遠しい!
邦題から勝手に、ルンルンでハッピーなコメディを想像してしまっていました・・・。やたら怖そうなサスペンスがずっと続くのにびっくりしましたが、しかしそうであっても、全体的に同じようなシークエンスが繰り返されているだけであって、メリハリや解決がありませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-07-30 00:07:17) |