1. アンダーワールド/エボリューション
《ネタバレ》 ありがちな後付け設定で無理やり話を拡大しているのが見え見えな上に、脚本構成が杜撰なので、前作を見ていても各キャラの関係やストーリー展開が分かりにくい。 映画と漫画を同列に語る事は出来ないが、やはり日本のレベルの高い漫画やアニメを見慣れた目からすると、この手の映画のアクション演出のセンスの未熟さや、キャラ描写の稚拙さが目について仕方が無い。 とにかく前作同様、致命的なのは吸血鬼や人狼といった設定を使っているのに、キャラのアクションなどから「人外の者の凄み」がまったく感じられない事。 相変わらずヒロインは銃火器中心の戦いだし、使っている武器もただの銃やナイフ。銃火器ばかり使って、自分たちの持つ超常能力を活用した戦いを演出しないなら、登場人物が「人外の者」である必要が無いだろ(ちなみに「ナルニア国物語」で氷の女王が魔法を使わず肉弾戦で戦っていたのも同様の「演出の間違い」)。 現代を舞台にしてるのに、紫外線弾以外、特にハイテクな武器も出てこないし、かと言って頭脳戦や心理戦を取り入れた知的な戦いでもなく、単純なドンパチかドツキ合いが続くだけ。こんな大味な戦いのどこがスタイリッシュなの? おまけにヒロインは自分にとって致命的な弱点の日光対策すらしていない始末。紫外線カット繊維で作ったコートや、抗UV薬みたいなギミックくらいどうして出せない? アクション演出が下手だから、ラスボスであるマーカスや閉じ込められてた弟にもたいして「凄み」や「迫力」が感じられない。ザコ人狼も撃たれたり目を刺されたくらいで死ぬし、両種族とも人外としてのパワーやスピードが感じられない。 肝心の「混血種」もほとんど活躍してないし、戦闘シーンにおいても「人狼と混血したメリット」がまったく見られず、オリジナルと比べて何がどう変わったのか、どこが凄いのかがまったく伝わってこない。結局、ラストで「日光に強くなったよ」というだけのオチで、「種族間を超えた愛」や「混血の苦悩」といった基本的なテーマがほとんど何も追求されていない。 PS.やはり漫画では「クレイモア」「寄生獣」「ベルセルク」、小説では「吸血鬼ハンターD」といった傑作を見ているとまったく物足りない。各作品に出てくる使途や覚醒者の恐ろしさ、強さ、戦闘シーンの凄絶さなど、どれも圧倒的に上。 [DVD(字幕)] 2点(2007-02-09 12:08:01) |
2. 悪魔の棲む家(2005)
《ネタバレ》 最近のリメイクブームに乗っかって安易にリメイクされただけの凡作ホラー。 どこまで実話をベースにしたかは知らないが、オリジナルが古典というだけあって、今となってはさすがに基本となるストーリーが余りにも普通すぎる。 もちろん映像面での進化はあるが、肝心の恐怖演出に関しては、この手のホラーにありがちな突然の音でバーンと驚かせる安直なパターンの繰り返し。幽霊も姿を見せすぎだし、出現タイミングなどにも工夫が無い。 ストーリー展開も最初から最後まで予想通りで意外性は皆無。ラストも家族が力を合わせて悪霊を退治するわけでもなく、必死に逃げ出して終了。義父の精神が正常に戻っても失った信頼はもう絶対に取り戻せないだろうw。 当時のテイストのままリメイクするのも良いが、特に競争の激しいホラーやサスペンスというジャンルには、既に似たような作品どころか、アイデアや演出の面ではるかに進化している作品が沢山あるんだから、シナリオや演出面で相当の工夫をしないと現代では通用しないし、わざわざリメイクする必然性も無いでしょ。 [DVD(字幕)] 3点(2006-09-02 20:14:37) |
3. アサシン(1993)
無難に出来ている作品ではあるけど、「存在を抹消された人間が、裏の世界で殺し屋としての第二の人生を歩む」とか、「その任務の過程で恋に落ちる」とか、「愛する人と任務のどちらを選択するのか」とか、どこかで一度は見たような、よくある設定。良くも悪くも、始まりから終わりまで、すべてがお約束と予定調和の集合作品。 それが悪いとは言わないけど、全体的にやっている事が生温く、表沙汰に出来ない危険な任務に携わっているという緊張感や、組織の非情さが描かれていないので、普通の女性としての束の間の幸せと、それを失わなければならなくなった時の辛さや悲しみがイマイチ伝わって来ない。 恋人役の男にも何か秘密があるのかと思えば、本当にただの一般人で、ラストなんて完全にほったらかし。別れた後も、「何だったんだよ、あの女。トラブルに巻き込まれなかったから、まあいいか」みたいなノリで淡白すぎる。 お目付け役の男のラストシーンも、組織の掟と愛の狭間で、去っていく彼女を殺すかどうかの苦悩や葛藤をもっと描いて欲しい。一度は背中に銃口を向けるが、やはり撃てずに銃を収めた上で「彼女は死にました」と報告させないと。 もう少しキャラ描写とストーリー展開に深みが欲しい。 [地上波(字幕)] 4点(2005-09-07 20:17:26) |
4. アレックス
《ネタバレ》 色々な意味で不快な映画。 悲劇をそのまま描写すれば、平凡なドラマも自動的にリアルで素晴らしいテーマ性を備えると思っている監督の安易な発想。そして、その脚本の弱さをカバーするためと、「幸せであった時期を強調するため」だけに採用されているであろう、必然性の薄い時間軸の逆転。手持ちカメラで撮ったり、グルグル回転させてりゃ、その場の臨場感や酩酊感を誘うと勘違いしている鬱陶しいだけのカメラワーク。 すべてが安易な方法論ありきで作られた映画で、本当の意味でのリアルな物語を撮ろうとする動機や衝動が感じられない。 [ビデオ(字幕)] 0点(2005-07-05 22:17:48) |
5. アイズ ワイド シャット
《ネタバレ》 いくらでも否定的にも肯定的にも語れる作品。 色々な世間の風評から、「マルホランドドライブ」並に難解な内容かと覚悟して見たけど、個人的にはそれほど複雑だとも思わなかった。むしろ、テーマ自体はシンプルな作品なのでは。 要するに、この作品のテーマって「Shall We ダンス?」みたいなもので(え、違う?)、夫婦生活の危機に陥るものの、紆余曲折を経て最終的には「平凡である事の大切さ」を見出すというだけの作品なんじゃないのかな? 途中の娼婦との浮気や怪しげな秘密クラブの存在なども、結局は「非日常への憧れ」や「現実逃避」の象徴であって、日常の大切さを気付かせるための「材料」という事でしょう。どれだけ肉体的な快楽を味わい尽くしたとしても、そんな心を伴わない刹那的な逃避では、家族とクリスマスに買い物に出掛けられる何気ない日常の中にある本当の幸福には敵わない。 ラストの奥さんの「Fuck!」というセリフや、事実関係が不明瞭な事から、無理矢理に捻くって見る事もできるけど、そのままストレートな意味として受け取る方がテーマとしてもシンプルに纏まると思う。 まあ、リンチのような謎めいたストーリー展開は面白いから3点以下を付けるほどの駄作ではないが、不可知的な演出も合理的な解釈も中途半端なゆえに8点以上の傑作とも言い難い。まさにここの平均辺りが妥当なとこ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-07-05 02:39:10) |
6. アナコンダ
これ、以前にビデオで見てたのすっかり忘れてて、テレビ放送もしっかり見てしまった(w。つまり二回も見ている訳です、オレは。 まあ、この手のB級映画としては割と丁寧に作ってあって、見ている間はそれなりに楽しめる。アニマルパニック映画(?)の系譜としては及第点。 ただ、さすがにストーリー展開もオチも何もかもが、あまりにも予想通りで、笑っちゃうほど。はっきり言って、時間つぶし以上の価値は無いです。二回も見ている訳ですが、オレは。 [地上波(吹替)] 4点(2005-05-21 22:02:40) |
7. APPLESEED アップルシード
《ネタバレ》 一応、原作は当時リアルタイムで読んだ事があるけど、個人的に「美少女+銃+ロボット」みたいなシチュエーションが嫌いで、二巻目辺りで途中挫折したまま。 作品に対してはそんな程度の知識しか無く、またフルCGという事もあって、まったく期待せず見たけど、思った以上の完成度にビックリ。 「イノセンス」や「キャシャーン」のように「CG鑑賞映画」ではあるものの、上記の作品とは違い、CGに振り回されること無く、あくまで表現手段として正当に使いこなしているセンスの良さがある。 確かに今見ると、原作が20年も前という事もあり、ストーリーや世界観に目新しさは無いが、逆に変な哲学問答のような小難しさも無く、良い意味でシンプルにまとまっている。SFやアニメに慣れていない一般の人にも薦められる分かりやすさ。 ただ、さすがに今後、こういう「CGメイン」のアニメ作品が増えると、作品の「個性」が埋没してしまう危険性が高い。CG独特の連続した滑らか過ぎるモーションの不自然さや質感など、どうしても表現が画一化してしまいかねない。CG作品としての質が高いだけに、アニメ業界の将来に不安を感じる。 実質的には8点くらいが妥当だが、これまたずいぶん酷評が多いのでこの点数で。 PS.この作品はともかくとしても、今やハリウッド映画やディズニーアニメのスタッフにも、日本の漫画やアニメの影響を受けていない人間はほとんど皆無という時代に、未だにアニメや漫画に対して偏見を持っている日本人がいるというのがねえ…。残念なことです。 [DVD(邦画)] 9点(2005-03-24 15:18:59) |
8. アビス/完全版
《ネタバレ》 深海版「エイリアン」かと思えば、深海版「風の谷のナウシカ」でしたね。 「自然愛」というあまりにもストレートで単純なテーマが幼稚だし、今どき、「人類こそが地球にとっての寄生虫」で、それを「人類以外の存在」が滅ぼすというストーリー展開も陳腐。 ラストで巨大な宇宙船(?)が海中から上がってくるシーンでは、「♪らんらんらららんらんらん~」というBGMが聞こえてきそうでした。 あと、完全版を見たから当然かも知れませんが、無駄に長すぎです。 4点(2005-03-07 17:45:20) |
9. アメリカン・ゴシック
《ネタバレ》 館の住人の異常性は演技の巧さもあって、鬼気迫るものがあり、生理的な嫌悪感を見る者に与える。ただ、基本的にやっている事は、よくある「殺人鬼ホラー」のパターンと何も変わりは無く、全体的に展開がスローなのでイマイチ退屈。 あんな孤島に住んでいる地点で普通じゃないと分かるのに、この手の映画のお約束として、襲われる男女が不用心過ぎる。 ラスト間際のダークな展開もちょっと狙いすぎな感じ。あの女性が狂うのが唐突過ぎじゃない?それまでの伏線(赤ちゃんを死なせてしまったトラウマ)も露骨だし、設定のための設定という印象が強い。 PS.ところで、飛行機って何で無くなってたんでしたっけ?近くで留守番してた人も。あの住人に殺された? 4点(2005-02-26 21:36:45) |
10. 悪魔のいけにえ
《ネタバレ》 「殺人鬼ホラー」としての元祖的存在でありながら、既にこの地点で完成されてしまっている。時々、映画でも何でも、「緻密な計算」と「偶然」の相乗効果によって生まれた奇跡的な傑作があるが、この作品もそのひとつと言える。当時の撮影環境のおかげもあるが、この独特な「不気味さ」「薄汚さ」は狙って撮れるものじゃない。 あっと言う間も無く、ハンマーで頭を潰され、薄汚れた鉄扉の向こうへ引きずり込まれるというシーンに始まり、常識や道徳のまったく通じない家族の異常ぶりにただ翻弄される恐怖を味わい、そして夕闇のような不吉な色に染められた朝日のなかでレザーフェイスがチェーンソーを高々と振りかざすという、爽快感すら感じる狂気のラストシーンに至るまで、すべてが問答無用の衝撃に満ちている。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-01-22 00:05:40)(良:1票) |
11. 悪魔の赤ちゃん
《ネタバレ》 なるほど、一見、B級ホラーではあるものの、見ようによっては、家族としての絆とか、子供に対する愛情、さらには奇形を生む「薬害問題」なんて重々しいテーマが根底にあるのが分かる。 ただ、さすがに今見ると全体の作りがB級テイスト過ぎるね。ホラーにとっての「古き良き時代」の香りはあるものの、着ぐるみの赤ちゃんを始め、ストーリー展開もやたらダラダラとしてるし、今まともに見るには全体的にレベルが低く過ぎる。 [ビデオ(字幕)] 3点(2005-01-18 16:59:46) |
12. 穴/HOLES
空から靴が降ってきたり、主人公の家族が「靴の匂い消し」の発明に躍起になっていたり、無数の穴を掘らせる矯正施設に入れられたりと、最初はそのシュールな展開から、単なる不条理コメディかと思っていたが、少年達に穴を掘らせる行為にはちゃんと理由があるし、登場人物の繋がりや伏線も考えられていて、それなりに楽しめるものになっている。あまり感動という側面に押し付けがましさを感じない点が好印象。 ただ、どの作品にも言える事だけど、この程度の内容なら、もう少し時間を短めにして欲しいところ(90分前後)。テンポが悪くなっている場面が多々見受けられ、無駄に間延びしてしまっている。 5点(2005-01-04 00:28:17) |
13. Avalon アヴァロン
良くも悪くも押井監督の世界。 結局、「自分って何?」とか「現実とは?」的な問い掛けは、答えが出ないに決まっている訳で、追求しても堂堂巡りをするだけの哲学問答はそろそろ卒業して欲しい。考えないよりはマシだけど、一周しても同じ場所に戻るしかない問いだからねえ…。 ただ、追求するならするで、それなりの「解釈」と「結論」を見せて欲しい。今作は監督の「作りたい物を作った」という満足感は見えるが、その辺のアプローチはかなりおざなりで、娯楽性にも乏しい。 「うる星やつら・ビューティフルドリーマー」が傑作なのは、もともとの「うる星」の非日常性の高い世界観やキャラの魅力が作品のテーマ性と融合し、相乗効果を上げていた事に加え、ちゃんと娯楽性をも保っていたからだろう。最近の押井氏の作品は自己満足が先にあり、商品性や客観性を欠いている。 押井氏にとっての描かざるを得ない永遠のテーマに対する衝動は、「攻殻機動隊」の方で吐き出してもらうとして、客としては、もう少し違うものを食べさせてもらいたい。 [ビデオ(字幕)] 5点(2004-11-30 22:53:58)(良:1票) |
14. アンデッド
《ネタバレ》 期待ハズレ。まさか、おバカ映画とは思わなかった。それにしても皆さん、おバカ映画に理解があるんですね~。個人的にはおバカ路線でも良いんですけど、どんなジャンルでも、やっぱりやってる事が中途半端な作品ってのはダメですね。何でも徹底すべき。 この作品もホラーに対する愛は感じるものの、真面目さとおふざけの味付けが中途半端で、どっちがメインなのか分からなくなっている気がします。おバカで行くなら、とことんおバカに徹してくれれば良いんですが…。 例えば、こんな「宇宙人オチ」をまともに持ってくるなら、最終的にもっと破綻させて欲しいんですよね。地球を救いに来た宇宙人までゾンビになってしまうとか、それを見ていた仲間の宇宙人が「ダメだコリャ」とか言って、地球を丸ごと破壊して去っていくとか。それでもゾンビは死なないので、ゾンビが宇宙全域に散らばっていくという、スペクタクルかつファンタジックな終わり方にするとか(笑)。どうです?より、壮大におバカじゃないですか? 3点(2004-11-13 23:35:32) |
15. アンスピーカブル
《ネタバレ》 また自分で登録しておいて言うのも何ですが、色々な意味で微妙な作品。 犯罪者のデータを収集しようとする女性犯罪研究家と連続殺人鬼の心の交流を描く、ほのぼのサスペンスドラマ(笑)。 「ブレインスキャン」という、人間の脳内の記憶を映像化するというSF並のハイテク装置が出てきますが、これがまったくストーリーとの繋がりに欠ける設定。またサスペンスとしては、「連続殺人鬼の動機」という点が見所のひとつでしょうが、結局、宗教色の強い抽象的な動機へとスライドしていってしまいます。 全体的に作品としての方向性が定まっていないというか、オカルト要素と科学捜査による論理性との整合性が取れていない内容。 PS.ちなみに私が間違えてこの作品をレンタル屋で2回借りてしまったことはアンスピーカブルです。 4点(2004-10-08 02:28:01)(笑:1票) |
16. アレクサンダー戦記 劇場版
自分で登録しておいて何ですが、これまたチン妙な作品(笑)。一時期、テレビでCMもしてたけど、何故か日本以外にアメリカと韓国との共同制作らしく、おかげでストーリーやキャラクターデザインが突拍子もないことになってる。 内容的には史実に沿っている部分はあるものの、紀元前の話なのにエレベーターやら動く歩道やらが出てきたり、空を飛んでヘンな三角のビームを出す暗殺者が出てきたりと、ほとんどトンデモファンタジー。大王と賢者のやりとりなど、見所が無いわけではないものの、その面妖なキャラデザと不可解な世界観のおかげで、歴史ものを見ている気にはなれない。 プラトン立体とかの存在もワケ分からんし、終わり方も尻切れ。さっぱり話題にならなかったのも頷ける。何で日本人だけで作らないのかなあ?資金不足?この辺の製作事情は分からないけど、何にしても、文化(特に漫画やアニメに対する感性)の違う国民同士が合作してまで無理に作っても、中途半端なものにしかならないという見本。他ならぬ、この作品が証明してる。 [ビデオ(字幕)] 3点(2004-09-22 14:57:54) |
17. 悪霊喰
「罪喰い」としなかったのは、日本人にはピンと来ないイメージになってしまうからでしょうか。ジャンル的にもホラーとは言えませんね。もう少し、主人公の「罪喰い」として生きていかなければならない葛藤や苦悩を中心に描いて欲しかった。いまひとつ「凄絶さ」に欠けてます。「罪喰い」の作り方(?)や存在理由に関わる部分に、人間の弱さや欲望を肯定するような必然性が弱いです。「人間でありながら人間を超越した者」としての凄味も感じられません。その辺の演出がイマイチ。「ベルセルク」でも読んで勉強しましょう、監督さん。二時間無いのに、それ以上に感じてしまうテンポの悪さと、中途半端な安っぽいCG演出もマイナス。 4点(2004-09-20 09:41:37) |
18. アメリカン・サイコ
《ネタバレ》 物質欲を満たされた現代人に共通する「心の空洞化」。その心の空虚感は何をもってしても補う事が出来ず、しかしその渇望は不快感として心の奥底に淀んでいく。主役の男のようにブランドものや若さという見せ掛けで外見を固めるほど、心の虚無は広がるだけ。そして齎される生の実感の無さと得体の知れない焦燥感が、他者を蹂躙し、征服するという攻撃性に転化されてしまうのだろう。 連続殺人鬼の動機としては「自己存在確認の殺人」という典型的なものに分類されるもので、目新しい視点は見られなかったが、唯一工夫の跡が見られたのは、ラストにおいて、結局それすらも実行出来なかったという、「人間の弱さ」を徹底的に描いた点。 この虚無感、絶望感は自己の内面に向けられているものであり、その辺を理解できないと低評価になりがち。 [ビデオ(字幕)] 7点(2004-09-12 03:37:06) |
19. アンダーワールド(2003)
《ネタバレ》 あまり指摘されないのが意外だけど、この作品はヴァンパイアや人狼にまったく「それらしさ」が無いのが致命的。 リアクションは猫や虎みたいに「フーッ!」とか「シャーッ!」って言ってるだけだし、戦闘力や回復力も普通の人間と変わらないようにしか見えないのはいかがなものか?人狼サイドも変身しても外見が怪物に変わるだけで、能力的にスゴイ変化が無い。普通(?)、人狼って言ったら「スピード」が売りでしょう?変身したら、弾丸すら避ける凄まじいスピードで動いて、相手を屠っていくなんて基本でしょう?それなのに明らかにワイヤーで吊られているのが丸分かりの不自然な挙動で、壁をヘッコヘコ走ってくるだけ。カッコ悪すぎ&スピード感無さすぎ。単に、お互い普通に銃を撃ってるだけだし、「マトリックス」程度のワイヤーアクションもCG演出もほとんど無し。 例えば、吸血鬼サイドにしても、ドレスを纏った清楚な貴婦人が、人狼の爪攻撃をすました顔で受け止めたりすれば面白いでしょ?それだけで吸血鬼の凄さが表現できるじゃん。その貴婦人の腕のひと振りで人狼が壁までふっ飛ばされるとかさあ。さらに、その人狼もそのまま壁に爪をつき立ててぶら下がるとか、いくらでも「人外の者共」の超常能力を演出する事なんて出来るのになあ。 こういう最近のアクション映画における、「演出の下手さ」や「分かって無さ」にはウンザリ。 また、人間と吸血鬼の混血に新たな可能性を見出すという設定が「吸血鬼ハンターD」の中途半端なパクリ。元老院のジジイも偉そうな割にマヌケ過ぎる。Dの「神祖」を見習え。ラストの戦闘シーンもあまりにショボい。満月の夜の貴族なら、身体を真っ二つにされても死なないくらいの不死性を持っているはず。ジョジョの「DIO」を見習え。 何にしても、「吸血鬼」を描く際の美意識が薄い。「凄絶にして凄艶な魅力を持った危険な魔物」という基本だけは外してはいけない。 PS.こういう作品を見ると、つくづく日本の漫画の演出レベルの高さが分かる。 [DVD(字幕)] 2点(2004-08-25 04:20:44)(良:2票) |
20. アンタッチャブル
映画的誇張もあるだろうが、これが実話に基づいているというのが凄い。「私よりも公」、「利より理」という高潔な精神性は「武士道」にも通ずる部分が多い。義に生きた彼らの行いは、ただ生きていることよりも、もっと価値のあるものがあるということを教えてくれる。 8点(2004-07-12 21:17:07) |