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プロフィール
コメント数 2403
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  アメリカン・ハッスル 《ネタバレ》 
この映画を観た人は誰しもが納得するところだと思いますが、ワン・シーンだけなんですがデ・ニーロが登場してから緊張感が高まりテンポがすごく良くなるんです。そこまではどちらかと言うとモタモタした展開だっただけに、これは監督が狙ったのか映画の神に愛されているデ・ニーロだからこそ成し得る御業なのか、面白いところです。そしてクリスチャン・ベイル、あそこまで醜く肉体破壊してまで役作りに励む役者魂は、彼こそデ・ニーロの後継者たり得る人物なのかもしれません。良く観察してみると、この映画での彼の演技はなんか若いころのデ・ニーロを彷彿させるものがありました。 終わってみれば主要キャラはみなルーザー(負け)でカタルシスのかけらもないし、映画の登場人物に感情移入出来ることを求める人には耐えられないお話しでしょうね。でも俳優の演技を愉しむという観点からは、主要キャラ四人が全員オスカー・ノミネートというのも納得の逸品だと思います。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 23:45:10)(良:2票)
2.  アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル 《ネタバレ》 
トーニャと彼女を取り巻く主要キャラたち、こいつらが揃いもそろってバカばっかりという壮絶さ。この実在のバカたちの、本人たちは大まじめなのにその生きざまを淡々と並べただけでコメディになってしまうというのがある意味凄いところです。トーニャやその母親を始めとする連中の劇中の会話にロジックに基づいた要素が皆無なのには、もう呆れます。だけどインタビューを再現したパートでは、実際に言ったのかどうかは詮索しませんけどトーニャがけっこう含蓄のある発言をしているのは興味深い。どっちにしろこの映画で特に強烈なのは、アリソン・ジャネイの毒母ぶりであることは間違いない。もちろん常人には理解できないこの母親なりの計算があったのは確かだろうが、ホワイト・トラッシュなのに稼ぎをトーニャのスケート費用につぎ込んできたのは、彼女なりの愛なのかもしれない。そうやって何となく彼女を理解できたつもりでいたら、オリンピック騒動が始まってからトーニャを訪ねてきた時の行動をみせられて自分の甘さを思い知らされました。やはりこの女は怪物です。 この映画はとにかく編集が超絶技巧、オスカー編集賞にノミネートされたのは当然の結果です、ぜひ受賞して欲しかった。ボクサーに転向したトーニャがノックアウトされるスローモーションに、トリプルアクセルを決める栄光の瞬間をカットバックで被せるセンスには素直に脱帽です。80~90年代の聞き覚えのあるヒットソングをひっきりなしに流す撮り方も、ストーリーテリングに独特のリズム感を与えてくれています。 これは観て決して損はない佳作だと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-08-15 00:03:17)(良:1票)
3.  アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 《ネタバレ》 
邪道だと判ってますけど、100分程度の映画なのにあまりの緊張感に圧倒され時間をかけて三回にわけて観ることになってしまいました。これを映画館で観ていたら、最後まで席に座っていられる自信は私にはありません。ここまで緊張感で圧倒された映画は今まで『未知への飛行』しかありませんでしたが、よく考えるとこの映画は『未知への飛行』とストーリーテリングに共通しているところがあります。第三次世界大戦勃発の危機を会議室と作戦室だけを舞台にして描いているのが『未知への飛行』ですから、誰からも攻撃を受ける危険のない英米の三か所から軍事作戦を遂行する本作の製作意図が影響を受けていることは間違いないでしょう。さらにこの映画ではハラハラドキドキ要素が強烈なので、緊迫感が半端ない水準にまで強くなっています。そのハラハラ要因は言うまでもなくパン売りの少女の運命ですが、あの結末はハリウッド映画では絶対にありえないでしょう。 「誰もが真面目に職務遂行しているのに、その結果はとてつもなく後味が悪い」というのが両作のエッセンスですが、本作の場合はそこに官僚的な責任転嫁という人間的な弱さも登場キャラの言動に加味されているので、よりリアルです。ここにはヘンリー・フォンダが演じる大統領の様に、途轍もなく過酷な決断を下してその責任を背負い込むような人物は存在しないのですけど、それこそが現実というものでしょう。 現代のハイテク戦争の一端がうかがえるのは興味深かったです。中でも“偵察用ロボ昆虫”には驚きました、本当にこんなメカが存在するんでしょうかね。そして考えさせられたのは、また昔に戻るかもしれないけれど、現在進行中の対テロ戦争はもはや古い戦争という概念が通用しない警察活動に近い代物なんだということです。“非対称戦争”という概念がありますが、敵には殺意いがいは大した武器を持たず低速で飛ぶドローンを撃墜することすらできない。地上兵力を投入して徹底的にやれば必勝ですが、大国は人的損害というリスクがとれないので指揮官だけじゃなく兵士までもが安全な職場から攻撃するわけです。これでは人命になんの価値も持っていない集団と戦っても勝利できるのか疑問です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-03-14 23:20:00)(良:1票)
4.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 
北野武の映画がなんで世間では高評価なのかがイマイチ解せない自分ですが、やくざモノを撮らせたら目が覚めるような秀作を撮ることは認めざるを得ません。この映画の優れているところは、ストーリーテリングというか脚本の構成です。会長の池元への叱責がきっかけでまずは大友組の嫌がらせから始まり次は村瀬組の反撃、このテニスのラリーのようなターン交代が徐々にエスカレートしながら上映40分過ぎまで続く。途中カジノ開業のハーフタイムショーがあり、試合再開したらたけしの怒涛の攻撃で村瀬組組長のタマを捕る。しかしこれでワナに落ちることになって、窮地に立たされた大友は池元を葬ってしまい、旧池元組と山王会の連合軍の猛反撃であえなく大友組は全滅。これぞまさしくヤクザ抗争におけるバタフライエフェクトと呼ぶにふさわしいエスカレーション劇、まことに見事な脚本です。この映画で面白いのは、北村総一朗が三浦友和を、椎名桔平が加瀬亮を、そしてたけしが小日向文世をと上位者や先輩が目下の者に恥をかかせたり殴ったりするのですが、三人とも逆襲されて無残な最期を迎えます。アウトレイジな世界でも、行き過ぎたパワハラは禁物ということなんでしょう。 とは言え、「やっぱたけし映画だなあ」と嘆息させられたのも確かです。それは大友が山王会会長に「池本を殺っちゃえ」と唆されるところで、大友が会長の甘言を疑わずに信じていたところです。たけしが自身の映画で演じるヤクザは、どれもお人よしだったり過剰にカッコつけたりなど悪人に徹しきれていないのは彼個人のナルシスト気質が濃厚すぎるからで、これが鼻につくんです。あんだけ無法の限りを尽くした大友が、あんな見え見えの策略に引っかかるようなアホでしたってのは、私には耐えがたいところです。半面、池元演じる國村隼の人間の卑しい面をこれでもかと強調した演技は、もう絶賛しかないです。これは『仁義なき戦い』シリーズの金子信雄を超えちゃったかもしれません。できたら二作目以降も出てほしかったけど、さすがのたけしも死人を蘇らせる(自分が復活するだけで精一杯)わけにはいかないでしょう(笑)。まあこの映画の前日譚を撮るという手もありますけどね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-01-23 20:45:01)
5.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
率直に言って楽しめたんですけど、いろいろと恐ろしいことも見せられた気がします。それはアメリカの鉄道会社の実態と職員のいい加減さです。いくら田園地帯といっても70万も人口がある都市を通る路線が単線だなんて日本じゃ考えられない、それも電化されてないんですから。職員もダレきっているとしか言いようがなく、勤務中でも携帯電話に平気で出るし緊張感は皆無です。詳しいことはわかりませんが、工業原料や穀物を輸送するのにこの鉄道は特化しているようなので多少乱暴なのはしょうがないという弁護も成り立つかもしれません、でもその結果がこれですからねえ。 と、悲憤慷慨してますけど、映画自体はトニー・スコットらしいスピーディで息もつかせぬ演出がさえ渡り、この職人芸がもう見ることが叶わないと思うと悲しくなってしまいます。ほぼ実話通りの展開なんだそうですけど、劇中のセリフにあるように「クライスラー・ビルほどの長さがあるミサイルが線路上を暴走している」という比喩がピッタリの恐怖の暴走列車です。ミサイルだって本体のほとんどは推進ロケットでヤバいのは弾頭だけなのに、この列車はその真逆で延々とつながっている貨車に爆発物がぎっしり積み込まれているんですから、まさに恐怖の“線路上を爆走するバンカーバスター”です。CGも使っていますが踏切で立ち往生した車を吹っ飛ばしてゆくシーンはどう見ても実写で、もの凄い迫力です。この暴走にはなんの関りもなかったデンゼル・ワシントンたちが機関車で追っかけるようになるまでのストーリーテリングも秀逸でよかったです。TVで旦那の奮闘を見た途端に現場に駆け付けるクリス・パインの別居中の女房には、ちょっとムッとさせられましたけどね(笑)。 しかしよく考えてみると電化された路線なら送電を止めてしまえば機関車は当然ストップするはずで、やはり日本では起こりえない事故なんです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-07-13 22:49:02)(良:1票)
6.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
やっぱり日本映画界はできる子だったんですよ、でもこれだけグロかったら地上波放送は絶対に無理ですね。と思ってよくクレジットを眺めたら、この映画にはTV局が製作委員会に加わってないんですよ。日本映画界をここまでダメにしちゃったのは、製作委員会に大手TV局が名を連ねていることなんだなと、確信した次第です。 主人公とJKが山に迷い込むまでのこの世の終わり感は半端なくて、ここだけでもハリウッドのゾンビ映画と真っ向勝負ができるでしょう。「テレ東が通常放送をやめたら日本は終わり」というネットギャグを盛り込んでいるところなんか苦笑ですが、これも製作にTV局が絡んでないから可能な脚本だったのかも。半面、モールにたどり着いてからのモタモタ感は残念です。確かに立て籠もり軍団の構成には違和感があります。男女とも平均年齢が若すぎるし、とくに男は徳井優を除くとヤカラみたいなのがほとんど。その中でニートみたいな吉沢悠がリーダーとして采配を振るえたというのは、なんか説得力がないんですよね。大泉洋のヘタレぶりは観ていてイライラさせられるほど上手いです、銃刀法違反を極端に気にする訳の分からない小心さも笑えました。まあなんでこんな漫画アシスタントがクレー射撃用ライフルを持っているのかは謎ですけど(笑)。 これは原作ありきなんでしょうけど、有村架純の身に何が起こっていたのかは、すごく気になるところです。続編製作を希望です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-15 20:04:14)
7.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 
ブラッドリー・クーパーの役作りのレベルが凄いですね。肩幅や胸板なんて今までの倍ぐらいの様な気がするぐらいです。しかもそれが脂肪太りじゃなくてしっかり筋肉つけているわけで、まさかCG使ってるわけじゃないんでしょうけど骨格まで変えてしまったかのように見える凄まじい肉体改造です。 『許されざる者』ですっかり悟りの境地に達したイーストウッド、この映画で訴えたかったのはただひとつ「人殺しは地獄だ」ということです。どう考えてみてもアメリカには「殺人には善い人殺しと悪い人殺しがある」という深層心理的な価値観が西部開拓時代から存在している様に思えてなりません。国の為だろうが正当防衛だろうが人の生命を奪うことには変わりはなく、人はその現実と折り合いをつけないとやっていけないものなんだと思います。戦争の勝者や強者に属する軍人は得てしてその折り合いに無頓着なことが多く、とくにアメリカにはその傾向が強い様な気がします。その辺りにも本作ではイーストウッドは鋭く切り込んでいて、スクリーン上で数え切れないほど人を殺めてきた彼らしい感じがします。 いくら伝説の男と言っても実在のクリス・カイルという人は娑婆にいたときはごく平凡な人間だったわけで、戦場以外では大したエピソードもない淡々とした描かれ方です。彼が軍に志願するに至る経緯も日本人にはピンと来ないところがありますが、まあアメリカ人には理解できるんでしょうね、あまりに単純すぎると自分は感じてしまいますけど。しかし子供にまで武器を持たせて戦わせて死に追いやってしまうという現実、世界は決して平和じゃないし綺麗ごとが通用しないということは思い知らされました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-22 23:41:12)
8.  アップグレード 《ネタバレ》 
よく考えたらツッコミどころに事欠きませんが、才人リー・ワネル手にかかるとそんなことは気にならず観る者をグイグイ引き込むお話しになっちゃうんだからさすがです。言ってみれば人間とAIのバディムービーみたいな要素が濃厚なんですね、その主人公がジェラルド・バトラーみたいな髭面の一見マッチョ・キャラですが、意外と真面目な常識人で敵を殺すと激しく動揺するのは捻った設定です。妻を殺されたことに対する割と単純な復讐劇思いきや、ラストは予想を超えるダークな展開、イイ脚本じゃないですか。あの一瞬夢オチかと思わせるバッド・エンドは、『エンジェル・ウォーズ』を思い出してしまいました。そしてまるで『オーメン』を彷彿させるようなラストでもあり、これからは悪魔に代わってAIがオカルト・ホラーの悪役になってくるような予感がします。 考えると、ここ10年は豪州出身の映画人が絡むSFやホラーの秀作が目立ちますね。これからは韓流じゃなくてオージー流なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-04 22:35:31)(良:1票)
9.  赤×ピンク 《ネタバレ》 
ただの百合エロ映画と軽い気持ちで観始めましたが、原作がラノベとは言っても桜庭一樹なので観終わってみれば引き込まれてしまいました。主演の芳賀優里亜と多田あさみはそっち系の女優じゃないのに潔いと言えるほどの脱ぎっぷりとAV並みのエロ絡みは見事です。この映画はR15+指定ですがDC版のR18+指定バージョンもあるそうで、もっとエロいのかと思うとちょっと観てみたい気がします。ガールズ・ブラッドの女闘美ファイターたちのキャラも立ちまくっていて観てて愉しい、モモミーちゃんが私の推しです(笑)。とうぜんスタントも使っているでしょうけど、彼女たちのファイトは素人目には迫力満点で、満足できました。ただ気になるところは、彼女たちが女闘美ファイターになったきっかけが家庭や学校で負ったトラウマだったという設定があまりに定型すぎて、どうなのかなと思います。ガールズ・ファイトの社長とDV空手家が本作での唯一目立つ男性キャラでしたが、これまたキャラが立っていて良かったですね(とくに社長)。でも存亡がかかったラスト・マッチ、空手軍団は負けても実質ダメージがゼロのような気がするけど、ほんとにあれで良かったの?社長(笑)。観ていてふと気づいたのですが、観客エキストラのなかに南海キャンディーズの山里亮太にそっくりの人がいたんです。トレーナー鮫島役で品川祐も出ているし、ひょっとしてなのかもしれません。 桜庭一樹にはまだまだ映画化したら面白そうな作品が多いので、これからも期待しています。とくに『赤朽葉家の伝説』はぜひとも映像化して欲しいな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-05-22 22:42:23)
10.  赤い闇 スターリンの冷たい大地で 《ネタバレ》 
時は1930年代前半、英国元首相ロイド・ジョージの外交顧問であったジャーナリストのガレス・ジョーンズは、ドイツでついに政権を握ったナチ・ドイツに対抗するために第一次五か年計画が成功して飛躍的に国力が増大したと喧伝されているソ連と同盟してヒトラーに対抗するべきだと主張します。しかしソ連の発表した数値に矛盾を見つけたジョーンズは、実態を調査してスターリンにインタビューしたいと熱望して単身ソ連に入国します。「この国はなんかおかしい…」と疑問を感じながらヨーロッパ随一の穀倉地帯であるウクライナに潜入した彼は、そこで恐るべき真実に気づいてしまうのでした。 ソ連74年の歴史でボリシェヴィキ=共産党が犯したもっとも犯罪的な政策であるホロドモール=ウクライナ大飢饉を真正面から描いています。これは簡単に言うと、スターリンがウクライナで収穫される穀物・家畜を五か年計画達成に必要な外貨を稼ぐためにすべて輸出に回し、その結果一説には1000万人以上のウクライナ人が餓死したという史実です。 ウクライナと並んでスターリンにはひどい目に遭わされたポーランド人の監督ですから、その告発の視点には鋭いところがあります。主人公のジョーンズを演じるのは、次期ジェームズ・ボンド候補とも噂されるジェームズ・ノートン。彼がウクライナに潜入して見る地獄絵図が本作のテーマのはずなんですが、そのシークエンスの尺が意外と短いのがちょっと解せないところです。実はベルリン国際映画祭で上映されたバージョンはランタイムが20分以上長く、カットされたところはウクライナでのストーリーが多かったんじゃないかと推測いたします。それでも迷い込んだ農家で振舞われたのが実は人肉だったエピソードには、もう戦慄するしかありません。この映画の演出で興味深いところは、登場人物がものを食べるシーンで咀嚼する音が強調されるところで、まさにASMR効果を狙っている感じです。 ソ連側の登場人物は下っ端ばかりでスターリンはおろか外務大臣リトヴィノフぐらいしか大物は登場しませんが、スターリンに媚びへつらう英米の著名人たちの醜悪な姿はこれでもかと見せつけてくれます。中でもピーター・サースガード演じるウォルター・デュランティの邪悪さは強烈です。彼は五か年計画を礼賛したNYタイムズの記事でピュリッツアー賞を獲得しましたが、本質はフェイク・ニュースなので受賞取り消し運動が21世紀になるまで続いたそうです。NYタイムズというメディアは、友好関係にある我が国の某新聞とよく似た体質があるみたいですね。実はこの映画で最初に登場するのはジョージ・オーウェルで、『動物農場』を執筆する姿が所々に挿入されて狂言回し的な役割を果たします。でも彼はソ連に渡航したことはないし、劇中でジョーンズと出会うシーンもありますがこれはフィクションでしょうし、オーウェルをこの映画に登場させる意義はイマイチ理解できませんでした。ジョーンズのデュランティへの反論記事を掲載させたのが、唯一ランドルフ・ハースト系の新聞だったというのは面白いところ、『市民ケーン』じゃないけど映画では怪物的人物で悪役が定番の人ですからねえ。ハーストにとってピュリッツアーはかつての商売敵、彼が創設した賞の受賞者を叩くことに血が騒いだのかもしれません。 観終わっても気分が上がるような要素は一つもないことはご警告させて頂きます。でもこれが史実なんだということは重く受け止めるべき、そして「大義のために人命が犠牲になるのはやむを得ない」というテーゼの恐ろしさを今一度考えてみるべきでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-07 22:17:16)(良:3票)
11.  アトミック・ブロンド 《ネタバレ》 
確かにこれは判りにくいストーリーだ。単純に言えば、西側スパイのリストを取り戻すために女スパイがベルリンに潜入するというまあスパイものではありふれたプロットなんですね。このリストの内容を暗記している東独シュタージの職員も亡命させなければいけなくなって、お話しがややこしくなってくるわけです。でも、西側の諜報員たちも誰が善玉か悪玉かが判らなくなってくるストーリーテリングは、けっこう凝った脚本ですよね、そしてシャリーズ・セロンまでもが… この映画のプロデューサーも兼ねているシャリーズに力が入りまくっているんです。かつてのモニカ・ベルッチと競う“脱ぎたがり屋”の彼女だけに、四十も半ばというお歳なのにきっちり脱ぎは欠かしません。最近はジェニファー・ローレンスというピチピチした若手の脱ぎ女王が幅を利かせているので、「まだまだ私は負けないよ!」という女優魂が伝わってきます。そして彼女のファーストカットの背中の筋肉の盛り上がり方具合の凄いことと言ったら!監督が『ジョン・ウィック』の人だからアクションのキレ味もハイレベルです。たしかに格闘シーンで動き出す前にわずかに間があく感じはありましたが、四十代の女優がここまで動ければ褒めてあげなきゃね。そして『ジョン・ウィック』のキアヌ・リーヴス以上にズタボロになってゆく肉体、痛みがこっちまで伝わってきます。使われている音楽は八十年代のブリティッシュ・パンクとネーナの“ロック・バルーンは99”、オリジナル楽曲は使われてないような感じすらしました。特に私はタイトルバックに流れるデヴィッド・ボウイの“キャット・ピープルのテーマ”には持っていかれました。 ジョン・グッドマンが演じたCIAエージェント役には実はデヴィッド・ボウイが予定されていたけど叶わなかったとのこと。これは惜しいことしました、あのラスト・シーンでボウイのバックに“Under Pressure”が流れるなんて、想像しただけで鳥肌ものですよ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-04-12 23:03:12)(良:1票)
12.  アウトレイジ ビヨンド 《ネタバレ》 
日本映画史に残るあっけない荒業を使って黄泉の国から現生に帰ってきた大友の親分。「大友が死んだなんて私言ってないですよ、噂があるって言っただけです」、いやはや、こんなセリフだけでプロデューサーからの無茶ぶりを解決させたたけしは、やはり天才なのかもしれません(笑)。 さて二作目として物語をパワーアップさせるために登場してきたのは、お馴染みの関西の大組織。3分に一度は役者の誰かが「コノヤロー!」「バカヤロー!」を口にするのはスコセッシ映画の“FUCK”みたいなものだと思いますが、そこに関西弁が入ってくると迫力が一段ましです。刑務所から出てきても大友のお人よしぶりは相変わらずで、在日のフィクサーのところにいるときは借りてきた猫みたいに大人しいし、なんだかんだと言ってもけっきょく片岡の扇動に乗って木村とともに山王会潰しに奔走するわけです。でも殺しを重ねるうちに、大友の残忍な本性がだんだん目覚めてくる感じはよく出ています。花菱会のリップサービスを真に受けている木村に愛想を尽かして大友が最後に逃げだしちゃうところなんか、要は前作の愚かだった自分の姿を見てるようで嫌になっちゃたんだろうな、学習の効果が少しはあったというわけです。たけしのヤクザ映画にはいわゆる“指ネタ”はお約束ですけど、それにしても歯で自分の指を食いちぎるとは、木村は前作ではカッターナイフで指を詰めようとして悪戦苦闘しただけに、お前の歯はカッターナイフの刃よりも固いんかい、と思わず突っ込みを入れてしまいました(笑)。 この映画での最大のサプライズはやはりラストですが、これは大友がまだ見ぬ第三作ではカッコつけるの止めて鬼に徹することになるのを暗示してるのかな?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-01-26 22:14:09)
13.  アバウト・タイム 愛おしい時間について 《ネタバレ》 
すでに指摘されたレヴュアーもいらっしゃいますが、この主人公はタイムトラベルの能力を徹頭徹尾自分のためにしか使っていない!歴史を変更してはいけないというルールが彼ら一族のあいだには一応あるみたいだけど、自分のことならいくら変えても良いと言ってもその行動が周囲に影響して明らかに違う時間が創られることには変わりないはず。また過去には戻れるけど未来に行くことはできないということは、主人公がしたように何年も前にトラベルしちゃえばその年月をまた過ごさないといけないってのは、ちょっとしんどいでしょう。だから最後に少年時代にまで戻っちゃったら、また人生を何十年も過ごさないといけないし、そもそも身体は少年でも意識は大人という違う意味でもややこしいことになってしまいます。 とまあ突っ込むことはできるんですけど、この映画はそういうSFは単なる設定であって、家族愛を基調にして人生というものを考えさせようというのが主題なんです。だから数あるタイムトラベル映画の中でも飛びぬけて何も起こらないというちょっと不思議な感じの出来になったわけで、私はこれはこれで良かったと思っています。最後の方で出てくる“一日を毎日戻ってやり直す”という秘訣は、“一期一会”というものを大切にする我々の文化とは馴染まない部分もあるけど、素直に「そんな能力が欲しい」と思ってしまいます。 レイチェル・マクアダムスのキュートさが際立ってましたが、彼女来年は四十路に突入というけっこうなお歳だと知ってもうびっくりです。そしてビル・ナイの渋さはもう落涙ものでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-16 22:00:45)
14.  アフターショック 《ネタバレ》 
“アフターショック”とは余震のことを意味しているのですね。地震が起こるまでの前半と、その後の地獄絵図が続く後半とのコントラストはなかなか強烈です。製作者がイーライ・ロスなだけあって凄まじいのかと身構えたら、グロは思ったよりおとなし目じゃないかと思います。ネタばれしちゃうと登場人物は全滅するわけですが、ということは『ファイナル・ディスティネーション』シリーズの変形ヴァージョンと言えなくもない。まああちらは死に方に拘り過ぎてしっちゃかめっちゃかになってしまいましたが、意外と登場キャラが創りこまれているので本作の方が映画としてのレベルは高いと感じます。『ハングオーバー』のアランかと突っ込みたくなる風貌のボンボン息子やチャラい奴かと思わせて実は娘思いのパパだったイーライ・ロス、そして忘れていかんのは何故だかちっとも役に立たない消防士とかです。反面、女優陣が今一つ光るものがない顔ぶれだったのは残念でした。 最後にひとつだけ突っ込んでおきたいのは、津波が到達するのが遅すぎだろ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-10-23 21:12:10)
15.  アデル/ファラオと復活の秘薬 《ネタバレ》 
リュック・ベッソン映画史上、もっとも肉感的なヒロイン登場!女の好みが変わったのかな? ベッソンさんまたまた中坊路線に回帰かと思いましたが、原作がフランスで人気のコミックなんだそうです。最初とラストにちょこっと出てくるマチュー・アマルリックの役柄を観てると、この辺のキャラはフランスでは説明不要なくらいポピュラーなんでしょうね。冒頭から『アメリ』や『インディ・ジョーンズ』を恥ずかしげもなくパクってるのでこの映画どうなっちゃうんだろうと心配しましたが、ヒロイン・アドヴェンチャーものじゃなくコメディだと思えばセンスも良いので楽しめました。 続編、あるかな~。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-29 00:42:41)
16.  アルキメデスの大戦 《ネタバレ》 
これは誰もが認めるところでしょうが、冒頭の大和撃沈のシークエンスはまさに“和製プライベート・ライアン”的な壮絶な映像。攻撃する米軍機もとうぜんCGながらもそのマーキングや機動などは実感あふれています。大和自体や後に登場する長門も含めて緻密な再現は山崎貴の本領発揮、まさに“神は細部に宿る”です。 この大和沈没が鮮烈過ぎて出落ち感すらあるストーリー展開ですが、まあこれはフィクションですから良いでしょう。櫂直などフィクショナルなキャラはともかくとして、実在の人物やモデルにされた人物が明らかに判るキャラにはちょっと?となる部分が無きにしも非ずです。舘ひろしの山本五十六は、自分としては歴代五十六の中でもっともイメージが合った良いキャスティングだったと思います。平山造船中将は平賀譲、藤岡造船少将は藤本喜久雄という有名な造船官がモデルなのは明白です。でも実際の大和建造計画策定時には藤本は死去していたのですが、まあここはフィクションなので五月蠅く言わないことにします。でも違和感がどうしても拭えなかったのは(これを言っちゃうと原作コミック自体の否定に成りかねないですが)、超秘密主義だった帝国海軍にいくら山本五十六の後押しがあったといっても、帝大を中退したばかりの民間人を少佐として迎え入れるという設定自体が絶対あり得ない。あと、天才的な数学才能がどうして一晩で造艦設計図面を書き上げる能力に繋がるのかが、理解しにくい。使用鉄量から造艦経費を導き出す方程式を創出するのは確かに数学的才能ですが、設計自体はデザイン的な能力だと思うんですけどねえ、まったく“数学万能”かよ(笑)。 冒頭で大和が建造されることはいわばネタバレしているのでこの広げた大風呂敷をどういう風に閉じるのかと楽しみにしてましたが、櫂と平山のラストの対決はなかなか見応えがありました。けっきょく櫂は平山造船中将に負けたというか説き伏せられた感じですけど、演じているのが田中泯ですからその結末も納得です。やっぱ本作では彼がいちばん光ってましたね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-13 22:34:19)
17.  悪の教典 《ネタバレ》 
伊藤英明を稀代のサイコキラー・ハスミン役に持ってきたのは、とりあえず正解。彼もいつも演じている偽善が鼻につくヒーローよりも、こういう悪役を選択した方が役者生命を延ばせるというもんです。でもこのハスミンは通常の悪役キャラとは大違いで普段は快活で生徒に信頼されるナイスガイ、まあこのキャラについては普段の演技パターンでこなせるわけですが、鬼畜モードに入ったハスミンを演じるにはちょっと演技力が不足しているようです。それは別に凶暴にふるまう演技を要求しているわけではなく、さりげない所作などに普通じゃないところを盛り込んでほしかったんだけどなんか物足りなかったですね。区別せずに論ずる人が多いけど、いわゆるキチ〇イ(あっちの世界に行っちゃった人)とサイコパスは明確な違いがあるんです。ハスミンは原作者の意図からしてもサイコパス分類のはずで、そうなると彼に話しかける幻聴や幻覚は誤解を招く表現で不要だったとおもいます。 大量に射殺されてゆく高校生たちの阿鼻叫喚はすごい絵面ですが、彼女らに感情移入できなかったのが我ながら不思議でした。これはこの子たちの家庭環境などの個人的な背景がまったく描かれていなかったのが原因かと思いますが、原作から大幅にカットされたのはこの部分らしいです。大部の小説を映画化する場合にはどこを切るかは重要な作業で脚本家の腕の見せどころでもありますが、エピソード自体をばっさりカットして再構築するということも時には必要なはずです、でもこれは原作者との関係もあるので難しい問題かと思います。三池崇史のことですから30分以上にわたる大虐殺シーンには力を入れたかったと思いますし、そうなるとそこに至るまでにあと30分は尺が必要だったんじゃないでしょうか。 “To Be Continued ”がエンドマークでしたが、続編はどうなってるんでしょうか、まあ小説の方がまだ発表されていないので無理ですよね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-06-30 23:16:04)
18.  悪の法則 《ネタバレ》 
原作が『ノー・カントリー』のコーマック・マッカーシー、脚色して製作総指揮まで買って出ているので、どうりで雰囲気が似ているわけです、登場人物が妙に哲学的な語りをするとか、ハビエル・バルデムも出てますしね。単純に言うとよくある悪女ものピカレスクなんですが、その悪女キャメロン・ディアスが脱ぎこそないが彼女史上最強のエロっぷりを見せてくれます。ハビエル・バルデムがその魔性にメロメロにされるわけですが、彼の「アレはナマズだった…」は迷セリフでございます。 原作者自身が脚色した映画は迷走するケースが多いものですが、本作もその傾向が濃厚な気がします。進行している事件が判りにくいというのがこのお話しの欠点かもしれません。繰り返される殺しは麻薬カルテルとキャメロン・ディアスが手配した殺し屋が下手人なわけですが、カルテルがなぜマイケル・ファスベンダーを殺さなかったのか理解できないところです。彼はあの絶望のラストの後で殺される運命で、映画ではあえてそこまで描かなかったという解釈もできなくはないですけどね。このような撮り方は今までのリドリー・スコット流とはちょっと逸脱している感じで、これもコーマック・マッカーシーの影響力なのかもしれません。 しかしあの“首チョンパ・ライダー殺し”は観ていてビビりました、バイク乗りの人にはトラウマになるでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-05-21 22:48:28)
19.  あさひなぐ 《ネタバレ》 
アイドル映画としてはかなり上質な出来ではないでしょうか。乃木坂のメンバーは西野七瀬と白石麻衣ぐらいしか顔認識ができない私ですが、調べると主要キャストはほとんど乃木坂のメンバーなんですね。二年生の部長を演じる伊藤万理華って女優がけっこう個性があって上手いなあと思ったら、彼女も撮影当時は在籍していた元メンバーだったんですね(すいません知識がなさ過ぎて)。かなりコメディ色が強い撮り方ですが、演出のテンポが良いので愉しめました。演技力に難があるアイドルを起用する場合は、それをカヴァーするためにカット割りを短くするのがコツですが、こういうアイドルばかり出演する作品になるとそれがストーリーテリングのテンポをよくしてくれる効果があるわけです、これも怪我の功名ですかね。 面白いのは二ツ坂高校という校名で、私はてっきり乃木坂・欅坂の二つのグループ名をもじったシャレなのかと思っていたら、原作コミックの連載開始の方が乃木坂46結成より早かったんですね。現在の坂道グループの隆盛を予言しているみたいで面白いと思います。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-09-30 21:39:32)
20.  アイアン・スカイ 《ネタバレ》 
フィンランドのオタクがクラウド・ファンディングも使って製作した低予算映画にしては、よく出来ているんじゃないですか。とても750万ユーロ(円換算では10億にもならない)が全予算とは思えない映像、やはりCGの力は偉大です。ナチの宇宙船やメカに漂うレトロ感はよく感じが出てましたが、ナチの逆襲というプロットも含めて既視感が濃厚で目新しさはないです。だけどギャグネタはかなり強烈なインパクトがあったんじゃないでしょうか。黒人を薬品で白人化させる、これは今のハリウッドじゃ絶対に使えないネタです。サラ・ペイリンにクリソツな合衆国大統領、まあこれは笑ってもいいでしょう。でもいちばんインパクトがあったのはこれでもかとカリカチュアライズされた国連の様相で、ヘリウム3なる鉱物を巡って巻き起こる壮絶な乱闘プロレスには爆笑させられました、サラ・ペイリンのピンヒールで殴られたらそりゃ血を見ますよ。そして北朝鮮とフィンランドのネタもね(笑)。 そういや、「続編製作中!」というインフォメーションもあったけど、どうなったんでしょうか?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-06-26 22:59:04)(良:1票)
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