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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1880
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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21.  サベージ・キラー 《ネタバレ》 
地獄で彷徨え――。ニューメキシコに拡がる広大な砂漠を年代物の古い車が疾走している。運転するのは、ゾーイという名の耳が不自由な若い女性ただ一人。近々結婚を控え、順風満帆な人生を約束されていた彼女だったが、ハイウェイで偶然出会った荒くれ男たちによってその運命は一変する。彼らに捕まり小屋に監禁されたゾーイは、有刺鉄線によってベッドに縛り付けられ何度も何度も輪姦されるのだった。隙をみて逃げ出そうとするものの、無情にも男どものナイフによってその命まで奪われてしまう――。だが、神はそんな彼女を見捨てたりはしなかった。砂漠に放置されたゾーイの遺体を発見したのは、なんと魔術を使いこなすアパッチ族の呪術師だったのだ。彼女を殺した男がアパッチ族伝来の地に住み、同胞たちをも惨殺してきた殺人鬼であることを知った呪術師は、古代の秘術を駆使して彼女を復活させる。伝説の英雄マンガス・コロラダスの魂と共に復活したゾーイは、その冷酷非情な野生の血を滴らせながら復讐の鉄槌を下してゆくのだった……。超荒唐無稽な設定ながら勢いとセンスだけを武器に最後まで突っ走るB級ジェットコースター・バトルホラー・ムービー。序盤からそのお話の無茶苦茶ぶりにけっこう面喰らってしまったのですが(だってほとんどゾンビと化した主人公が、バーで男の腸を笑いながら引きずり出すんですもん!)、意外と細部がしっかりしていたり脚本がなかなかよく出来ていたりで、中盤からぐいぐい見入っている自分がいました。いやー、けっこうな掘り出し物ですよ、これ。何が面白いって、なんといっても主人公のゾーイ!復活した彼女が屈強な男どもを血祭りにあげていくわけだけど、ほとんどゾンビと化しているせいで、腕はもげるわ、内臓は飛び出るわ、傷口に蛆虫は湧くわで大変なことになりながら頑張るんですよ。で、途中から彼女の婚約者がやってくるのだけど、そんな醜い姿になってしまった自分を婚約者に見せたくない、でも彼には会いたいから鏡越しに一瞬だけ会ってみたりと、こんなグロ切ないヒロイン初めて見ました(笑)。そして、さんざん血みどろグッチャグチャバトルを繰り広げながらも、最後はめちゃ切ない感じで幕を引く監督のこのセンス!素晴らしいと思います!ヒロインの耳が聞こえない設定は正直なくてもよかった気がしなくもないけど、うん、面白かった!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2016-09-21 22:12:09)(良:1票)
22.  サード・パーソン 《ネタバレ》 
パリ、ニューヨーク、ローマ。時代の先端をゆくそんな人種の坩堝のような3つの国際都市には、今日も様々な事情を抱えた男女が集い出会いと別れを繰り返してゆく。ある男女には新たな愛が芽生え、またある男女は疑念と嫉妬によって心をぼろぼろにされ、そしてまたある男女は辛い別れを経験してゆく……。本作は、そんな3つの国際都市を自在に行き交いながら、そこに生きる様々な男女の出会いと別れを静謐な雰囲気の中に描き出してゆく群像劇。自分の不注意から最愛の子供を失ってしまった作家は若い女性との不倫に溺れ、ストレスから自らの子供を虐待してしまった母親は引き離された息子との面会を果たすため必死になって生活を立て直そうとし、街のカフェで移民の女性と偶然知り合った男は彼女の奪われた子供を取り戻そうと金策に駆けずり回る。一見無関係に見えるそんな3つのストーリーが、物語の進行とともにまるで縺れた糸のように絡み合い複雑に交錯していく――。同じく群像劇の秀作『クラッシュ』でアカデミー賞の栄誉に輝くポール・ハギス監督の最新作は、そんないかにも彼らしいミステリアスで魅惑的なヒューマン・ドラマだった。登場人物の数も多く、各々のストーリーもかなり複雑なのに、この監督の演出力は相変わらず冴えわたっている。極めて分かりやすいストーリーテリング、それぞれに個性豊かな登場人物たち、詩的で美しく時には官能的ですらある映像、そして観る者を深い迷宮へと誘うように魅惑する壮麗な音楽……。挙げていけばきりがないほど、画面の端々にまで才気が漲っている。親子間であれ男女であれ深く愛するがゆえに憎み傷つき、それでも愛されることを求めてもがき苦しみながらも必死になって生きていこうとする主人公たちに最後まで釘付けだった。特に、ミラ・クニス演じる若いシングル・マザーが直面する苦悩には深く胸打たれた(ホテルの一室で他人の幸せの象徴である白い百合の花を無茶苦茶にするシーンは、最近観た中では息を呑むほど印象的で美しいものだった)。ただ、ほとんど謎を残したままで終わる本作のラストはやはり賛否の分かれるところだろう。こういうメタ・フィクション構造は夢オチと同じでよほど丁寧に扱わないと何でもアリとなってしまうので、多くの場合観客を興醒めさせてしまうもの。本作もその例に漏れず、やっぱりそんな〝興醒め〟感から逃れられていない。こんな奇を衒った構造などせず、直球の群像劇として終わらせていれば『クラッシュ』を超える傑作になりえたかも知れないと思うと、つくづく惜しいと言わざるを得ない。とはいえ、静謐な空気に満ちた上質のヒューマンドラマとして最後まで惹き込まれたことは確か。充分鑑賞に耐えうる良質の作品と言っていいだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-08 19:05:13)
23.  SOMEWHERE 《ネタバレ》 
酒と女を生き甲斐に自堕落な毎日をおくっているハリウッドの人気俳優ジョニー。彼の娘で、今は離婚した母親と共に過ごす11歳の多感な女の子クレオ。ふとしたきっかけで、一緒にイタリアへと旅することになった彼らの、特になーーーーーんにも起こらない静かな日々をただ淡々と描いた、いかにもソフィア・コッポラ監督らしいヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作。いやー、なんなんですかね、ソフィア・コッポラって。相変わらず、退屈紙一重のともすれば睡眠誘発剤になりかねないかなり地味な内容(正直、クレオが出てくるまでの最初の10分は撃沈しそうになっちゃいました)なのに、普通に最後まで観ていられるのは彼女の溢れんばかりの瑞々しいセンスによるところなのでしょう。終始のんびりとした雰囲気で描き出される、女癖の悪い父親とのほほんとした娘とのユーモラスな遣り取りには素直に心が癒されました。そして、そんな2人を彩る周りの個性豊かな女たち…。女性の美しさを上品に撮らせたら、もうソフィア・コッポラの右に出る者は居ないだろうね。だって、ポールダンスを踊るストリッパーまでもがキュートなんですもん。そして特筆すべきは、やっぱりクレオを演じたエル・ファニングちゃんのびっくりするぐらいの美少女っぷりっしょ。そのニンフェットな魅力が爆裂している彼女の可憐な姿に、自他共に認めるロリコンの僕としては、完全にノックアウトされちゃいました。特に、レオタード姿でアイススケートを踊る時のその超プリティなちっちゃなお尻なんて、見ていて危うく悶絶死しそうになったっす(笑)。それに、スティーブン・ドーフのいつだって二日酔いって感じの駄目パパっぷりもなかなか良かったですね。うん、総じて思春期少女のその大人でも子供でもない一瞬のきらめきをリリカルに切り取った、詩情溢れる美しい作品であったと思います。 取り敢えず、今作をビデオ屋さんに返しに行く前に、あのスケートリンクで妖精のように舞うエル・ファニングちゃんの可憐な姿(お尻?笑)をもう一度観てこの目に焼き付けておこうと思います。って、こんなアホなことばっか言ってっから、いつまで経っても僕には彼女が出来ないんだよな~。まあ、当たり前か(笑)。求む、明るくて可愛くてちょっぴり童顔の(もちろん大人のッ笑)女の子!
[DVD(字幕)] 7点(2014-10-21 00:43:29)
24.  360 《ネタバレ》 
芸術の都、ウィーン。大金を得るため、高級売春クラブで働くことを決めたブランカ。最初についた客に会いにホテルのバーへと向かうと、そこには妻のいる身でありながら初めて女を買おうとするエリートサラリーマンのマイケルが待っていた。一方、ロンドンで働くマイケルの妻は若い写真家との不倫に苦しんでいた。物語の語り手は、そこからその若い写真家と別れてブラジルへと帰ることを決めた恋人へとバトンタッチし、さらには飛行機で彼女と偶然隣り合わせた遠い過去に失踪した自分の娘を捜す老人、自分のなかに蠢く歪んだ欲望に苦しむ出所したばかりの元性犯罪者、同僚で人妻でもある女性への恋に苦悩する歯科医、ボスから犬のような扱いを受けているチンピラマフィア、と次々と移行していく。それにつれて舞台も、ウィーンから、ロンドン、パリ、ロシア、アメリカの各都市、ブラジルのビーチへとまるで奔流する大河のように世界を駆け巡り、最後は広大な大海原へと還元するかの如くウィーンの売春婦へと360度の円環を閉じてゆく。「シティオブゴット」で鮮烈なデビューを飾ったメイレレス監督が、豪華な俳優陣を起用しこれまでに培ってきた技巧を駆使して描き出した群像劇。と、聞くととても壮大でドラマティックな作品を思い浮かべるけど、今作は意表を突くほど地味な展開が最後まで淡々と続きます。それなのに相変わらずの見事なストーリーテリングで、最後まで観客を飽きさせないところはさすがでした。うまくいかない男と女、親と子、上司と部下、それでも人生は一度きりと幸せになるチャンスを必死に手に入れようとする人々の姿が、観終わったあとも良い余韻となって心に残ります。豪華俳優陣のわりに、あまりにも地味すぎて世間ではいまいち評判にならなかった作品みたいだけど、僕にはなかなかの良品に思えました。
[DVD(字幕)] 7点(2014-01-27 00:14:33)
25.  サミュエル・L・ジャクソン in ザ・チャンプ 伝説のファイター 《ネタバレ》 
スランプに陥り、ロクな記事が書けなくなってしまった新聞記者エリック(ジョシュ・ハートネット)は、ある日の帰宅途中、若者たちの悪質な嫌がらせに遭っていたホームレスのボブ(サミュエル・L・ジャクソン)と出会う。「俺は昔、ボクシングで世界王者寸前まで昇り詰めたチャンプなんだ!」と豪語する彼に半信半疑ながら次第に興味を惹かれていくエリック。しかし、彼のことを書いた記事が編集長の目に留まったことから、息詰まっていた二人の人生は大きな転機を迎えてゆく。常にぼさぼさの小汚いドレッドヘアとむさ苦しい髭面、そして終始甲高い掠れ声で大言壮語するサミュエルの相変わらずの怪演でみせる、そんなオーソドックスな人生再生の感動物語だと思いきや、中盤からそんな物語はあっと驚く展開を見せていきます。人間、特に父親としての弱さを大きくクローズアップしていくその考え抜かれた設定には見事に惹き込まれました。最後は確かにベタと言えばベタですけど、子供を持つ父親なら誰もが共感できる普遍的なテーマを扱ったなかなかの良作だと思います。仕事で心が折れそうになっている、全ての世の中のお父さんにお薦め。
[DVD(字幕)] 7点(2014-01-06 22:06:19)
26.  サイレントヒル 《ネタバレ》 
夜な夜な何かに引き寄せられるかのようにベッドから抜け出す少女シャロン。「サイレントヒル…」そう呟く娘の謎の言葉を手がかりに、母ローズは過去に起きた炭鉱事故によって廃墟と化した街へと辿り着く。だが、そこは人智を越えた存在が支配する恐ろしい街だった。すぐに姿を消してしまったシャロンを捜して、ローズは男勝りの婦人警官と共に灰燼渦巻くサイレントヒルのそんな怪しい世界へと踏み込んでゆく――。すみません、元ネタとなったゲームのことはほとんど知りません。確かにゲームを原作にしただけあって、このダークでおどろおどろしい世界観はなかなか秀逸でした。プレイヤーとしてこんなゾクゾクするような気持ち悪~い世界へと入っていったら楽しいだろーなー。ただ、映画としてみたらどうなんですかね。後半になるにしたがって、見事なまでに破綻する設定の数々にはさすがに苦笑しちゃいました。謎の宗教集団もいったい何がしたいのか意味不明だし。そして「で、結局、どういうこっちゃねん!」という観客の疑問に一切応えないまま、かなり投げやりなラストを迎えてしまいました。うーん、なんという薄っぺらいストーリー(笑)。それでも、常に白い灰が雪のように舞う幻想的で美しい街サイレントヒルに、突然重厚なサイレンが鳴り響いたかと思うと瞬く間に悪夢のような世界へと変貌を遂げ、そうして現れた淫靡でグロテスクな怪物たちが容赦なく襲ってくるという、「ひえぇぇ~」な映像はなかなか見応えがありました。こりゃ、こえーよ!!
[DVD(字幕)] 7点(2013-12-19 08:53:05)(良:1票)
27.  THE GREY 凍える太陽 《ネタバレ》 
極寒の雪山に飛行機が墜落、生き残った男たちが、襲いくる狼の群れから逃れ決死の脱出を図るお話。以上、終わり。という、超シンプルイズベストな映画でした。場面の98%が雪山と森で、可愛いおねーちゃんどころか女性は一人も出てこず、放送禁止用語を連発し下ネタばっかり話すむさ苦しい髭モジャの中年男ばかりが出演(もう画面から加齢臭が臭い立ちそう笑)という、それだけ聞くととてもつまらない映画のように思えるけれど、やっぱり映画って優れた脚本と演出力さえあればいくらでも面白くなるという見本のような作品でした。極限状況に置かれ、時には反発しあいながらも力を合わせて必死に困難を突破しようとするのだけど、人間は常に弱い生き物で周りの困難ばかりか己の弱さによって身を滅ぼしてゆく男たち。美しい自然がもたらす脅威、人が生きる理由、そして神の不在。エンタメ映画として充分な水準を保ちながら、そんな深淵なテーマをも内包したなかなかの秀作だと僕は思います。
[DVD(字幕)] 7点(2013-10-04 22:40:31)
28.  猿の惑星:創世記(ジェネシス) 《ネタバレ》 
猿の惑星シリーズをあまり観ていなかったからか、まったく先入観抜きに鑑賞したら意外に面白かった。あの有名な名作に負けないくらいに面白い映画を作ってやるという監督の熱意が、冒頭の畳み掛けるような演出(主人公とヒロインとの馴れ初めは少々やりすぎな感もあったけど)からビシバシ伝わってくる。猿に感情移入させるというのも面白い設定。ただ、あらかじめラストが決まっているせいか最後にもう一捻りあればもっと良かったのにとも思う。それでも充分に面白かった。
[DVD(字幕)] 7点(2012-04-24 13:24:52)
29.  ザリガニの鳴くところ 《ネタバレ》 
彼女の名はカイア・クラーク、通称湿地の娘。ノースカロライナ州、ほとんど人がやってこないような鬱蒼とした湿地帯で、今にも潰れそうな一軒家に住む若い女性だ。彼女が幼い頃、アル中の父親の暴力が原因で母親は家出、3人の兄や姉もみな彼女を残してこの地を去ってしまった。そのうち父も酒に溺れた挙句、カイアを残して失踪。誰のことも信じられなくなったカイアは、以来この地でたった独りで生きてきた。自分の殻に閉じこもり、近所の雑貨店の老夫婦ぐらいとしか会話を交わさないカイアはいつしか町の人たちから、「湿地の娘」と呼ばれ、ずっと奇異の目で見られてきたのだった――。ある日、そんな彼女が住む湿地帯の火の見櫓から、町の裕福な家の一人息子が転落死を遂げる。原因は不明。だが、警察の執念の捜査で逮捕されたのは被害者と付き合いのあった、カイアだった。果たして、彼女が本当に彼を殺したのか?事件の噂を耳にした老弁護士のもと、注目の裁判が始まるのだったが……。生物学者でもある作家が表した世界的ベストセラーを映画化したという本作、なかなか面白そうだったので今回鑑賞してみました。見ているだけで汗が滲んできそうな湿地帯を舞台に繰り広げられる、そんな様々な愛憎渦巻くドラマは見応え充分。社会から孤立し、豊かな自然をまるで母のようにして育ってきたカイアという主人公は、今まで見たことがないような魅力的なキャラクターでした。家族たち全員から裏切られ、社会からも蔑まれてきた彼女がそれでも愛を求めて少しずつ足を踏み出してゆくところは思わす感情移入せずにはいられません。この物語の根底にある、横柄で独善的な男社会への自主的な拒絶とその結果としての孤立化というフェミニズムなテーマもなかなか深い。ただ、純粋にミステリー作品としてみれば、少々残念な点もチラホラ。長編小説を映画化した際の弱点が幾つか散見されるのが惜しいところでした。物語の核となる殺人事件の状況が分かりづらいせいで、肝心の法廷劇がいまいち盛り上がりに欠ける。彼女の生い立ちがかなり特異過ぎて、殺人事件よりもそちらの方が気になって仕方がない。僕は彼女の家庭環境と殺人事件のミステリー部分がなんだか巧く噛み合っていないような印象を受けてしまいました。きっと原作ではそこら辺を丁寧に描写しているのでしょう。でも、映画の方はそのプロットを追うあまり、全体的に駆け足になり過ぎてしまった感が強い。特に最後の数十年に及ぶ夫婦生活をたった5分に纏めるオチは、駆け足過ぎるにも程がある(笑)。おかげで驚愕の真相にも余韻に浸るヒマもなかったです。あと30分長くなっても良かったので、もっと彼女のその後の人生を丁寧に描いてほしかった。久しぶりにこんな魅力的な主人公と出会えただけに残念!
[DVD(字幕)] 6点(2024-02-07 10:05:14)
30.  殺人の追憶 《ネタバレ》 
血も凍るような残虐な方法で殺人を繰り返す連続殺人鬼を追って、執念の捜査を続ける対照的な刑事を描いたサイコ・サスペンス。監督は後に外国語映画で初のアカデミー作品賞を受賞するポン・ジュノ。という訳で今回鑑賞してみたのですが、うーん、正直微妙な出来でしたね、これ。確かにこの陰鬱でダークな世界観はかなり作り込まれていて、爽快感など皆無の絶望的なラストなども充分見応えはあったと思うのですが、いかんせん長すぎますわ。無駄なエピソードが多すぎる上に、ストーリーがあっちへ行ったりこっちに行ったりとちょっと脱線しすぎで途中のダレ具合が半端ないです。なんかこの監督の悪い面が出ちゃったように感じました。デビッド・フィンチャー監督の『セブン』と『ゾディアック』を足して二で割ったような印象ですかね。内容的にもその二作のちょうど中間あたりって感じでした。
[DVD(字幕)] 6点(2020-09-15 03:42:34)
31.  最高に素晴らしいこと 《ネタバレ》 
今年で高校を卒業するティーンエイジャー、バイオレットはその日、哀しみに沈んでいた。何故なら、唯一の理解者で子供のころからの大の親友でもあった姉が本当なら19歳の誕生日を迎える日だったから。そう、大好きだった姉は、自らも乗り合わせていた車で事故を起こし、帰らぬ人になっていたのだ。気付いたら、姉が死んだ場所の近くにある橋の上に立っていたバイオレット。あと一歩踏み出せば、全てを終わらせることが出来る――。そんな彼女を救ってくれたのは、たまたま近くをランニングしていたクラスメートの男の子、フィンチだった。変わり者として有名で、いろいろと噂の絶えない問題児でもある彼。でもその日から、バイオレットはなんとなく彼のことが気になるように。そんな折、授業の一環で地元の名所を二ヶ所以上辿り、二人一組でレポートを作成するという課題が出される。「僕と一緒に色んな所に行ってみないか?」。フィンチからのそんな提案に、最初は戸惑いながらもバイオレットは少しずつ受け入れてゆくのだった。美しい大自然の中で、次第に惹かれ合ってゆく二人。だが、フィンチもまた、誰にも言えない秘密を心に抱えていて……。交通事故によって姉を失い失意の中に生きていたティーンエイジャーが、ある一人の男の子との交流を通じて次第に再生してゆく姿を瑞々しく描いた青春ドラマ。率直な感想を述べさせてもらうと、まさに「ザ・王道」。よく言えば、最初から最後まで心地良く観ていられる安定の青春ラブ・ストーリー、悪く言えば、終始既視感満載のよくある感動もの。とはいえアメリカ郊外の豊かな自然の映像やセンス溢れる音楽などはなかなか美しく、主演を務めたエル・ファニングちゃんの魅力とも相俟って最後まで普通に観ていられました。まあさすがに、彼女の過去に主演した幾多の青春ものの二番煎じ感は否めないですけど。もう少しこの作品ならではと言った印象的な部分があっても良かったのでは。そう考えると、やはりソフィア・コッポラは偉大だなぁなんて思ってみたり。ただ、最後にこれだけは言っておきたい。ここでぶっちゃけてネタバレすると、彼女の彼氏となるフィンチ君は、物語の後半でなんと自ら死を選ぶのです。彼女の死を食い止めたはずの彼自身が自殺するという悲劇。きっと、作者は人が自ら死を選ぶということがどういうものか、そしてその行動が周りにどんな影響を及ぼすのかを描きたかったのだと思うのですが、いかんせんテーマへの掘り下げが浅すぎます。彼の自殺をあまりに軽く扱っていて、観る者の心に全く刺さらない。ノンフィクションならまだしも、それが作者の完全なる創作であるなら、人の死にはちゃんと意味を込めて欲しいと僕なんかは思うのです。監督にはもっと、この主題と真摯に向き合う覚悟が欲しかった。映像や音楽などにはなかなかセンスを感じただけに、惜しい。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-06-15 00:01:46)(良:1票)
32.  ザ・テキサス・レンジャーズ(2019) 《ネタバレ》 
アメリカ犯罪史上にその名を残す、全米屈指の凶悪犯カップル、ボニー&クライド。銀行強盗や脱獄など稀に見る凶悪犯罪を次々と繰り返し、邪魔する者は容赦なく殺害した彼らの逃走に終止符を打ったのは、今や引退した元ベテラン刑事コンビだった。本作は、そんな通称・テキサスレンジャーズの知られざる活躍を実話を基に描いたクライム・ドラマだ。監督を務めるのは、実話を基にした幾多の作品群で確実に実績を残してきたジョン・リー・ハンコック。第一線から退き、もはやすっかり体力が衰えてしまったベテラン・コンビを演じるのは、こちらもベテランのケヴィン・コスナー&ウディ・ハレルソン。『俺たちに明日はない』など数々の映画や小説でお馴染みのボニー&クライドの逃走劇を、追跡する側から描いたというのはなかなか新しい視点だったんじゃないでしょうか。全米を股にかけて何年も逃走をつづけたボニー&クライドのドラマをほとんど描かず、しかも彼らの姿はほぼバックショットのみでその表情すら捉えなかったこの演出は正解だったと思います。なので、彼らを地道に追うこの主人公二人の方がどれだけ英雄と呼ぶにふさわしいかと言うこの作品のテーマがより明確に伝わってきました。彼らを演じるK・コスナーとW・ハレルソンもそのいぶし銀の渋さが光っております。特にここ最近のコスナーさんは良い感じに枯れてきて、なかなか格好いいジジイになってきましたね~。彼の「悪人は容赦なく殺してよし!」と言う自らの唯我独尊ぶりと、でもそうしなければこちらが殺されるからというジレンマに苦しむところもばっちり嵌まってました。厚かましいおばさん知事を厭味ったらしく演じたキャシー・ベイツも相変わらずいい仕事してます。ただ、肝心のお話の方は、若干パンチに欠けていたのも事実。あまりにもオーソドックス過ぎて、正直、僕は少し物足りなさも感じてしまいました。もうちょっとこの作品ならではと言う突出した部分が欲しかったですかね。最後、ボニー&クライドの葬儀に何万人ものファンが参列したという実際の映像には驚かされました。SNSなどない時代から、流されやすい世論と言うのはあったのですね。改めて自戒の念を抱いた次第です、はい。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-05-22 14:00:17)
33.  サマー・オブ・84 《ネタバレ》 
連続殺人鬼も誰かの隣人だ――。1984年、6月。オレゴン州の小さな田舎町で暮らす15歳のデイビーは、何処にでも居るような平凡な男の子。仲の良いクラスメートとはくだらないエロ話で盛り上がってばかり、ジャーナリストの父との関係も普通、大した夢があるわけでもなく、憧れの幼馴染の女の子には声をかける勇気もない。そんな冴えない日々を過ごしていたある日、彼はとある重要な事実に気付いてしまうのだった。隣人で広い一軒家に一人暮らししている警察官。彼こそ、最近世間を騒がせている幼い少年ばかりを狙った連続殺人事件の真犯人なのではないか――。自分なりに観察すればするほど確信を深めていくデイビー。いてもたってもいられなくなった彼は、いつもつるんでいる仲間たちと本格的に調査を開始するのだった。果たして隣人は本当に連続殺人鬼なのか?デイビーたちの一生忘れられない夏が今、幕を開ける……。80年代を代表する数々の映画作品にオマージュを捧げた、そんなノスタルジックな雰囲気が横溢する青春スリラー。とまあ、ノリはもう完全に『スタンド・バイ・ミー』や『グーニーズ』で、他にも『グレムリン』や『E.T』などと言った有名映画への愛が溢れ出ている昔懐かしい雰囲気の作品でしたね、これ。主人公の仲間となる少年たちも、キザな不良、頭脳派の眼鏡、とろいおデブ、そして憧れの美少女と物凄くベタなんですけど、一周廻って逆に新鮮でした。それに全編を彩るテクノサウンドもホント懐かしい!肝心の隣人の警察官も最初は怪しさ爆発、でも中盤で実際は主人公の勘違いでしたと思わせといて、実は……、と言うのもベタながらアリ。警官宅に忍び込むシーンなど、不穏な音楽で「来るぞ、来るぞ」と観客の不安を煽っといて急に大きな音を出して驚かすという手法も懐かしい(若干腹立つけど!笑)。この古き良き80年代を懐かしむという点ではなかなか良かったと思います。ただちょっと残念だったのは、前半のストーリー展開が若干もたもたしてるうえにいまいち分かりづらいところかな。もう少し丁寧な演出を心掛けて欲しかったですね。そして、最後の驚きの展開は賛否が分かれるところ。でも僕はなんとなくスティーヴン・キングの『IT』っぽくてけっこう好きかも。ま、こういう作品なんで新しい部分は一切ありませんが、僕はぼちぼち楽しめました。
[DVD(字幕)] 6点(2020-02-10 12:32:19)
34.  ザ・アウトロー(2018) 《ネタバレ》 
48分に1回、銀行強盗が発生するという大都市ロサンゼルス――。この危険な街を舞台に、破天荒な生き方で我が道を貫くアウトロー刑事と、常に冷静沈着な頭脳派犯罪者たちの息詰まるような攻防をスリリングに描いたクライム・アクション。犯罪者をどこまでも追い詰める刑事の腕は一級ながら、私生活は破綻している主人公を演じるのはまさに嵌まり役のジェラルド・バトラー。冒頭からいきなり始まる激しい銃撃戦に、「ああ、これはきっと頭空っぽにして観るべき、アクション重視のエンタメ映画なんだな」と思わせるものの、それも最初だけ。それ以降は、この正反対の二人の男の駆け引きがひりひりするような空気の中で描かれていて、これはこれで見応え充分でした。白昼堂々と決行される銀行強盗へと向け、徐々に双方の緊張感を煽ってゆく演出もお見事。特にクライマックス、連邦銀行の中枢部で展開される緊迫感に満ちたやり取りには普通に手に汗握っちゃいました。と、なかなか面白かったのですが、いかんせんストーリーがこのジャンルの名作『ヒート』とあまりにも似すぎているのが本作の評価の分かれるところ。法を守るべき情熱的な刑事が離婚寸前で愛する家族と破綻状態、反対に犯罪者の方が仲間とともに落ち着いた生活を送っているという設定もまんまだし、突発的に始まる白昼の銃撃戦もかなり影響受けちゃってます。オリジナルなのは最後に実は影の黒幕がいたみたいなとこですが、これもちょっと分かりづらくて僕はいまいち納得できませんでした。それに脚本の細部に「?」なところがあるのもマイナスポイント。普通に面白かったですけど、この作品ならではと言うオリジナリティがもう少し欲しかったですね。
[DVD(字幕)] 6点(2019-12-10 22:10:43)
35.  search サーチ 《ネタバレ》 
娘の身にいったい何が起こったのか――。最愛の妻をガンで亡くし、年頃の一人娘とともに父一人子一人の生活を送っているデビッド。だが、ある日突然、その遺された一人娘が失踪してしまうのだった。理由は皆目分からない。当然納得いかないデビッドは、警察の捜査とは別に独自の調査を開始する。娘のPCに残された情報やSNS、ネット上に拡がる様々な情報を駆使し、なんとしても娘の消息を探ろうとするデビッド。浮かび上がってきたのは、自分の知らなかった娘の隠された真実の姿だった……。失踪してしまった娘の消息を追う父親の執念の捜査を、PCの画面上の映像だけで展開させるという独自の手法で描いたサスペンス・ミステリー。この制約を巧く活かし、最後まで緊張感を途切れさせることなく魅せきった監督の手腕は大したものだと思います。絵的に単調になりそうだけど、クローズアップや画面の切り替えをタイミングよく使うことで物語にいいリズム感を与えているので最後まで飽きることなく観ることが出来ました。インターネットが発達し、生活の大半をネット上で完結させることが出来る現代社会の光と闇を風刺するその視線の鋭さもなかなかいい。ただ、そこまで面白かったかと問われたら、正直自分的にはちょっと微妙。やはりPCの画面上の二次元世界だけでしか物語が展開されないので、僕的には世界に奥行きが感じられず少し物足りなく感じてしまいました。でもまあそこらへんは好みの問題でしょうね。今までにない新しいタイプの作品なので、嵌まるかどうかはその人次第。興味のある方は是非ご覧になって自らの感性で判断しちゃってください。
[DVD(字幕)] 6点(2019-10-01 23:07:17)(良:1票)
36.  ザ・シークレットマン 《ネタバレ》 
アメリカ史上初めて、大統領を辞任に追い込んだニクソン大統領による民主党本部盗聴事件。いわゆるウォーターゲート事件。長年の謎とされていた、この事件の密告者である通称〝ディープスロート〟は最近になって元FBI副長官であったマーク・フェルトであると明らかにされたが、本作はその事実を基に決して権力に屈しなかった男たちの熱いドラマを静かに描いたポリティカル・サスペンスだ。物語の焦点となるマーク・フェルト役を人気俳優リーアム・ニーソンが演じている。何十年にもわたり、この組織のトップに立ち続けてきたフーバー長官の突然の死(そう言えば、過去にクリント・イーストウッド監督作でレオナルド・ディカプリオが彼を演じていた)から、この重厚なドラマは幕を開ける。独立した機関として長い間、絶大な権力を有してきたこの組織に何らかの楔を打ち込みたいとホワイトハウス側が画策し、今度はそれに反発したFBI側が徐々に態度を硬化させて両者の対立が表面化し始めたそんな折にその疑惑が明るみに出るのだった。現役の大統領による重大な不正疑惑――。お互いの権益を守るために、ニクソン大統領(そう言えば、オリバー・ストーン監督作でも名優アンソニー・ホプキンスが彼を演じていた。やはりこの事件は多くのアメリカ人にとって非常に重要な意味を有しているのだろう)との権坊術数渦巻く政治劇が展開される。この徹底的な事実考証に基づいたであろう丁寧な演出は、事実の重みとも相俟ってなかなか見応えがあった。民主主義の正義を建前に、自らの立場やプライドを賭けた男たちの闘いはきっと今も権力中枢で繰り返されているのだろう。そう思うと物語の発端となるフーバー長官の突然の死も本当に病死だったのかと疑いたくなってくる。権力の正体というものを改めて分からせてくれる佳品に仕上がっていたと言っていいだろう。ただ、自分には不満な点も多々。ストーリー展開が事実を追うことに焦点を絞るあまり、少々ドラマ性に欠けているのだ。このマーク・フェルトという人物の人間的な側面をもっと見たかったような気がしなくもない。失踪した彼の娘の存在など、そのための格好の材料となりそうなものなのにその部分は意外にあっさりと流してしまっているのが惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2019-08-30 00:40:43)
37.  ザ・マミー(2017) 《ネタバレ》 
2006年、麻薬戦争が激化し始めたメキシコ。十数万人規模の死者と行方不明者を出し、さらには残されたその子供たちも孤児となって過酷な生活を強いられたのだった。母とともに平凡に暮らしていた11歳の少女エストレアもその一人。ある日突然居なくなってしまった母を捜して街のストリート・チルドレンと行動を共にするようになった彼女は、生きるためにスラムの劣悪な環境で暮らし始める。すると、何処からともなく自分のことを呼ぶ母の声が聞こえるようになり、さらには現実とも幻想ともつかない不可解な現象を垣間見るようになる。だが、子供たちのリーダー格だった少年シャイネが街のギャングからピストルとスマホを盗んだことから、彼女の身に容赦のない現実が襲い掛かってくるのだった…。麻薬戦争で荒廃したメキシコのスラム街を舞台に、そんな過酷な運命に翻弄される少年少女たちを幻想的な映像で描いたダーク・ホラー。第三世界でたくましく生きるストリート・チルドレンたちを主人公にしたホラー作品という珍しい設定に惹かれて今回鑑賞してみました。冒頭、壁に描かれた落書きのトラがいきなり動き出し、夜の街を疾走し始めるという幻想的な映像から摑みはばっちりでした。主人公エストレアの周りで繰り返されるホラー描写もなかなかエッジが効いていて大変グッド。エストレアをはじめとする孤児たちもみな個性豊かで魅力的なのも良かったですね。メキシコの苛烈な麻薬戦争と幻想的なホラーを融合させるというそのアイデアも新しい。ただ、それが巧く行っているかというとそうでもないのが本作の欠点。ところどころその二つが有機的にうまく絡み合ってないように感じてしまいました。あと、失踪前のお母さんの描写がほとんどないため、主人公の哀しみが今一つ伝わってこないのも残念な点の一つ。水溜りに泳ぐカラフルな魚や突然動き出す落書き、主人公を付け狙うように動く血痕など映像的にはけっこうセンスを感じただけに惜しい。この監督の次回作に期待ってことで。
[DVD(字幕)] 6点(2019-07-10 20:01:11)
38.  ザ・ミスト 《ネタバレ》 
突如として発生した謎の霧のせいで大混乱へと陥ってしまったパリ。地下から瞬く間に拡がっていったその霧は有毒で、取り込まれてしまった人々は次々と死んでしまうのだった。生まれつきの免疫疾患によりカプセルの中でしか生活できない11歳の娘を抱えた主人公夫婦は、何とかして生き延びる道を探るのだが…というお話。タイトルも設定も某有名な鬱映画と丸かぶりの本作、完全に出オチの映画なので、ポイントはその後のお話の引き延ばし方にあります。率直な感想を述べさせてもらうと、まあそれなりに頑張っていたんじゃないでしょうか。狭いカプセルの中でしか生きられない女の子が逆に生き延びられたけれど、そのためには定期的にバッテリーを入れ替えに行かなければならないという設定はけっこう秀逸。しかも霧は海のように四階か五階までを満たしているので、上階に避難した両親は娘の命を救うためになんとかして霧の中を進んでいくというのはなかなかサスペンスフルですね。逃げ延びた部屋の住人である老夫婦も見るからに良い人そうで、この設定の絶望感をより際立たせることに成功しています。ただ、こういう大風呂敷系設定勝負の映画の常として突っ込みどころ満載なのが本作の欠点。人間や鳥は死んでるのに、何故か犬だけは生き延びて狂暴化してるというのはいったいどうした訳なんでしょう?致死性の有毒な霧のはずなのに、息を止めただけでその中を行っても大丈夫というのも詰めが甘ーい!とはいえ、ところどころに本家に通ずる驚くような鬱展開があるので最後まで飽きることなく観ることが出来ます。特にあの奥さんが辿る運命は、非常に切ないものがありますね。というわけで、時間も短いからサクッと観られるし、まあ良かったんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 6点(2019-05-21 00:24:16)
39.  さざなみ 《ネタバレ》 
寝る前に一つだけ教えて。あの時、彼女が死ななければあなたは彼女と結婚していた?――。結婚45年目を迎えた老夫婦ケイトとジェフは、人並みにいろんなことを経験しつつも今は仲睦まじく暮らしている。子供には恵まれなかったものの一匹の年老いた犬と共に過ごす静かで満たされた日々。来週の土曜日には親戚や知り合いを集めて記念パーティーを開くことも計画していたそんなある日、スイスの山奥から夫に宛ててある一通の手紙が届く。50年前、まだケイトが彼と知り合う前に付き合っていた女性の遺体が今回発見されたというのだ。氷河に凍ったクレパスに転落死したという彼女は、50年前のそのままの姿で今も氷の中に閉じ込められているという。明らかに動揺し、長年やめていた煙草を喫い始めたり、無謀なスイス行きを計画したりする夫。努めて冷静に振舞おうとするケイトだったが、それでも心の静かな泉に投じられたその小さな石は、次第に大きなさざ波となっていく…。結婚45年目にして破局の危機を迎えてしまった老夫婦の葛藤を終始淡々とした視点で見つめたヒューマン・ドラマ。妻を演じたシャーロット・ランプリングが史上最高齢でアカデミー主演女優賞の候補になったということだったので、今回鑑賞してみた。長年連れ添った夫の秘められた過去を知り、明らかに動揺しながらもそれでも凛とした姿勢を崩そうとしない彼女の気品に満ちた佇まいは確かに素晴らしかった。男と女、愛と嫉妬、そして老いとその先に待っている死……。一組の老夫婦の姿を通して、そんな人生のやるせなさを照射するその眼差しは最後まで優しく、そしてどこまでも心地よい。最後、妻に向けて感謝の言葉を述べて涙する夫と対照的に何処か冷めたままの妻。いつまでも過去の幻想に囚われる夫とどこまでも未来に目を向ける妻。どんなに長く一緒にいようとも永遠に分かり合えない男と女の心のありようをうまく表していて、同じ男として身につまされるものがある。派手さはないものの堅実に作られた良品と言っていいだろう。ただ、もう少し心に残る印象的なエピソードなりシーンがあればもっと良かったと思わなくもないが。
[DVD(字幕)] 6点(2017-05-07 22:56:31)
40.  裁かれるは善人のみ 《ネタバレ》 
ロシアの地方都市で、愛する妻と一人息子と共に平凡な生活を営む自動車修理工と、そんな彼の土地を強制的に収用しようともくろむ悪徳市長との戦いを終始淡々とした視点で見つめたヒューマン・ドラマ。神と人間、善行と悪徳、罪と罰、愛と憎悪、そんな深淵なテーマを平凡な一市民の目線からとらえたところは確かに評価に値すると思います。だけど、いかんせん長い!重い!暗い!最後まで観るのが相当しんどい映画でありました。別に分かりやすい娯楽性だけを映画に求めてるわけじゃないけどさー、もうちょっと面白くしてくれてもいいんじゃないかしら。まあ、これも好みの問題なんでしょうね。アカデミー外国語映画賞の候補になっただけあって完成度はもちろん高いです。面白くはないけど(笑)。
[DVD(字幕)] 6点(2017-03-20 23:10:46)
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