Menu
 > レビュワー
 > ころりさん さんの口コミ一覧
ころりさんさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 629
性別

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 
ウルトラマンって怖いよね。っていうか、あらゆるヒーローは「異形の存在」であり、その不気味さを見事に映像化した序盤、とくに最初のウルトラマン登場シーンは秀逸でした。さっと延ばされた左腕・・・のへんな姿勢からのスペシウム光線の恐ろしさ。もうこれ見ただけで満足。ただ、そこからは徐々に失速。ザラブやメフィラスとの頭脳戦は面白いが、やっぱりラスト、ウルトラマンがなぜそこまでして地球を守ろうと思ったのか、何を何から「学んだのか」がまったくわからないので、カタルシスもない。美女を巨人化してる暇があったら、そっちをちゃんと描けよって、制作陣もわかっているとは思うし野暮だとも思うが、やっぱり思ってしまう。自分も幼少期に夢中になった1人なので「わかる」ことも多かったけれど、結局のところ、制作陣の「思い入れ」を観客がある意味読み取りながら見なきゃいけないのって、なんだかんだいって苦痛なんですよね。「さすが○○、わかってるー」っていうのにあふれてる現在、そろそろそういうの抜きで楽しめるカイジュー映画も見てみたいかなあ。
[映画館(邦画)] 5点(2022-09-08 14:42:32)(良:4票)
2.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 
旧三部作から順番に見直して、番外編の『レガシー』はダメだったけど「本編」のこっちは大丈夫だろうと思ったけど、こっちもダメだった。監督もポール・グリーングラスに戻り、『レガシー』ほどは酷くはなかったものの、どこか見所を見誤った感じが続く。まず、父親をめぐる過去に関するミステリーだけれど、この手の謎はどうでもよかった・・というのが正直なところ。実はこれは旧三部作からそうで、『アイデンティティ』以外はこの手の過去話は物語を動かすための装置ではあっても、ここに物語的なオチやカタルシスは感じなかった。あとは作戦室のCIA対現場のエージェント対決という、このシリーズ定番の場面が続くけれど、ギリシャやラスベガスの仕掛けが豪華になっただけで、この点でのアップデート感は弱い。ボーンが見せるプロらしい機転や「え、そっちにいたの?」という観客の目も欺く仕掛けのアイデアこそが本シリーズの魅力だったのだと思うのに、その不足を物量と力業で補っているように見えたのも残念。とくに一番の目玉と思われるラスベガスの無茶なカーチェイスは、ワイスピやM:Iシリーズのようなバカっぽさもあり、スパイのプロフェッショナリズム路線だったはずの本作のアイデンティティ危機みたいなものを感じさせました。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-06-01 08:30:38)(良:2票)
3.  JSA 《ネタバレ》 
そういえば、まだ見てなかった韓国映画の話題作。俳優陣はソン・ガンホにイ・ビョンホン、そして美しすぎるイ・ヨンエ。テーマは南北分断。ということで、アクション、エンタメの王道娯楽大作を期待して見始めてみたら、思ってたのと少し違う。淡々と、なんなら少しオフビート感ある、つかみ所のないキャラクターたち。そういえば、監督は今や巨匠のパク・チャヌク、一筋縄ではいかないらしい。でも物語が見えてくると、等身大を絵に描いたような4人の兵士みんなが好きになってしまう。南北対峙する国境地帯という政治的にも微妙なテーマを、ユーモアとサスペンスまぜこぜに包みこみ、そしてラスト30分では突然の緊張感MAXからの一大悲劇。この、全部盛りなのに見事な切り替えで1本の映画にしてしまう力業こそ、韓国映画の魅力でしょう。美しすぎるイ・ヨンエも南北分断後のもう一つの戦後史を背負うキャラということで、物語的な着地点はあったものの、やっぱり全体としては浮いてしまっていたのは残念。それだけ4人のアンサンブルが見事だったということかもしれない。そして、何よりも見事過ぎるラストのショット。うまい。恐れ入りました。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-01-20 16:38:26)
4.  シャイニング(1980) 《ネタバレ》 
久々にこの映画を見ようと思ったのは、2020年に世界中に広がった新型コロナウィルスの感染拡大のため緊急事態宣言が発令され、外出自粛のなか家族でずーっと自宅にいる今見るには「最悪の映画」として、この映画が思い浮かんでしまったからです。後になってから思えば、そんなこともあったね、という出来事かもしれませんが、今の気分を記録する意味でもレビューを書いておきたいと思います。ただし、今回は一人で見ました。家族で見たら、本当にヤバい雰囲気になりそうなので。  さて、この作品、ヒッチコック以降のスリラー映画の文法を変えてしまった1本だと思います。当時流行していたオカルト風味を交えながらも、閉鎖的な環境と仕事に追い詰められ徐々に狂っていく夫と、「あなたの知らない世界」が見えてしまう息子、そして目玉を見開いて疑念をどんどん募らせていく奥さんという、閉鎖的な空間で誰も信用できない世界を見事に作り上げているところが素晴らしい。そして、なんてことはない日常のシーンにこそおどろおどろしいBGMを重ねる手法も、序盤〜中盤の(最近の忙しいホラーサスペンスを見慣れている人には退屈とも思える)遅いテンポの会話シーンを重ねて、最後に一気にサスペンスが炸裂する見事な切り替えも、今となってはあちこちに見られますが、当時はやっぱり「新鮮」でした。キューブリックの創造性には本当に驚かされます。身近な人がもっとも信用ならない閉鎖的空間の恐ろしさは、最近のDVやハラスメントの問題などを考えれば、ものすごい批評性を持っていたこともわかります。そして、まさに閉鎖的な空間にとどまらなくてはならない「今」だからこそ、その恐怖は何倍にもふくれあがり、いままでとは別種の「リアルさ」として体感できます。  とくに印象的だったのは、もはや最初から狂っているように見えるジャック・ニコルソン。最初にホテルの歴史を聞いたときの「私は大丈夫」という表情からして問題ありあり。でも彼はたぶんそのことを一番認めたくないから、「大丈夫」と言い切ってしまい、家族まで連れてきてしまう。その後も徐々におかしくなっているのに気づいているのに、それをなんとか抑え込もうとする。あの手この手で彼を狂気を巻き込もうとするホテルのお化け?たちも、彼の内的な葛藤の象徴なんだろう。そして、息子を抱き、大丈夫だと言いながらも、息子すら自分を信じていないことに気づいたあとの「絶対に傷つけない」という空虚な言葉。そうすると、ラストのあの出来損ないの蝋人形のような姿も、その葛藤から解放された姿にも見えてきます。  怖いものを見ても見ぬふりをしながら、徐々に最悪の方向にハマっていってしまう・・・40年前の映画ですから当然それを意図していたわけではないと思いますが、今、世界のあちこちで起きているであろう危機の一つの本質に迫っているのは、何よりも名作の証明なんだと思います。「パンデミック」映画が配信サイトなどでも人気のようですが、2020年の春、いま一番怖い、見たくない部分を見せられる映画として、そんな部分を見つめて自分を取り戻すための映画として、おすすめです。
[インターネット(字幕)] 9点(2020-04-15 18:05:46)(良:2票)
5.  新聞記者 《ネタバレ》 
志は買う。国内大手メディアの萎縮が指摘されるなかで、現実世界の政治問題に果敢に突っ込む思い切りの良さは、映画というメディアの可能性をあらためて見せてくれたと思う。ただ、そうだったとしても同時に感じてしまうのは、その映画としての手法や脚本の残念さだ。使い古された手持ちカメラ風映像、現実に起きた事件をなぞりすぎていてヒネりがない脚本、松坂桃李夫婦の描き方に見えるあまりに古くさい男女像、陰謀論スレスレの内調の描写など、たとえば日刊ゲン○イやネットニュースのリ○ラあたりに感じる「リベラル親父」感そのままの描写は、ちょっと痛い。そのくせ「真相」部分では突然「政府が生物兵器開発のために大学を新設」という荒唐無稽な陰謀論が姿を現し、それまでの(オヤジメディアが生きる)リアリティ路線の壁を突然ぶちやぶってしまう。あの事件は(最近の桜の件同様)、あまりにもセコい動機のために(公文書の扱いなど)国家制度のしくみ自体を腐らせたことが問題だと思うのだけれど、この映画では必要以上の「巨悪」に仕立て上げてしまう。この「真相」をリアリティの延長線におけると制作側が考えていたとしたらそれも痛いし、そうではないのであればなぜ最後だけファンタジーにして物語のバランスを自ら崩してしまったのか、よくわからない(そして、この点は原案となっている記者さんにとっても大きなマイナスのような・・・)。結局見終わった後に感じたのは、「リベラル親父メディア」をもとにした(出来がよくないタイプの)池井戸潤ドラマ、という残念な感覚だった。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2020-03-11 06:56:19)
6.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
タランティーノ節満載の歴史娯楽作ということで少し期待したのだけれど、タランティーノの作風は僕の好みとはあわない(「いい」「悪い」の問題ではなく)。近年は、合わないことはわかっているのに、魅力的な場面が必ずあって見過ごすことができないという、不思議な位置づけの監督だ。今作のよかったところ。まず冒頭のシーン。歯医者の馬車と怪しげな外国人の登場。タランティーノ映画の冒頭としては最高レベルだと思う。そこから、ジャンゴとシュルツのバディ・ムービーとしても素晴らしい。とくに、個人的に好きなのは、シュルツが語るドイツの昔話をジャンゴが聞くシーン。子どものように目を輝かせるジャンゴ。冒頭は絶望と憎しみだけしか感じなかった「奴隷」ジャンゴが、少しずつ「人間」になっていく過程が本当に素晴らしい。こうゆうヒューマンな絵をタランティーノの独特の節回しで語られると、なんだか妙にグッときてしまう。ところがどうも自分の好みから離れていくのは、ディカプリオ登場後のシュルツ&ジャンゴ対キャンディ一家の対決になってから。一つ一つのシーンが長く、台詞が長く、へんな緊張感だけで引っ張られる。好きな人は好きなんだろうなと思いつつ、だんだんうんざりしてくる。それから、これは個人的な事情だけど、このあたりから、膨大な台詞量を英語で聞いて処理する限界量を超えてしまったようで、まったく頭に入ってこなくなってしまった。とくに、最後の「黒幕」のサミュエル・L・ジャクソンの黒人英語の台詞は何言ってるか、本当にわからず・・・。物語は単純なので、どういう話かは十分理解できたけれど、細かい台詞の内容を味わうことはかなわなかった。このあたりは日本語字幕版で見直したいけれど、たぶん何言ってるか理解できても評価はあまり変わらないと思う。タランティーノの映画は、台詞の内容よりも、台詞のやりとりが生む緊迫感とそれと一体化したバイオレンスが、やっぱり真骨頂だと思うし、それこそが、自分が「合わない」と感じてる部分なので。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 6点(2020-02-08 23:57:52)
7.  ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル 《ネタバレ》 
休みの日に子どもが退屈だというので、一緒に見ようということでNetflixからチョイス。普段はまったく違う「グループ」に属する高校生4人がひょんなことから入り込んでしまったビデオゲームの世界で、普段の自分と全く違うキャラとして冒険を繰り広げる・・・という設定を見ただけだと、複雑で「ヒネりすぎ」と思えるのに、見てみれば子どもでも簡単に理解できるエンターテインメントになっていて、素直に感心した。下手くそな人がやれば支離滅裂のストーリーになりかねないところを、それぞれのキャラの面白みやお約束をちゃんと発揮しながら、物語としては『ブレックファスト・クラブ』風の高校青春ものとしてしっかり成立しているのがすごい。とくに、ジャック・ブラックは途中から女子高生にしか見えなくなってくるし(とくに、アレックス登場後)、ロック様のセルフパロディも見事。ケヴィン・ハートは、ちょっとケヴィン・ハート成分が多すぎた気もするが、ジャック・ブラックと2人でコメディ部分を上手に背負っていたと思う。難点は、ストーリーというか冒険そのものの引力が弱い・・・ので、あの『ジュマンジ』の続編としては、やっぱり全く違う映画になってしまったなあ、という部分か。前作にあったダークな深みは消えたけれども、家族向けとはいえ、3つのライフという設定を活かした不謹慎な死に方ギャグ(捕食、落下、爆発など盛りだくさん!)や下ネタがちりばめられているあたりが、現代的なのかもしれない。アレックスにぎゅっと抱きしめられたジャック・ブラック(中身は女子高生)が「反応」してしまうという下ネタは、子どもに意味を聞かれてしまい、苦笑しつつ適当にごかましてしまった(笑)。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-01-26 09:14:33)
8.  ジョジョ・ラビット 《ネタバレ》 
この設定を思いついて自分で映画にしちゃうというだけで、タイカ・ワイティティ監督はただ者ではない。主人公のジョジョ君は、冴えないヒトラー・ユーゲントのメンバー。いつもユニフォーム姿で熱烈なナチスの信奉者でありながらも、キャンプでいじめられたり、大けがをしたりパッとしない。そんな彼のイマジナリー・フレンドがあのアドルフ・ヒトラーという時点で、ジョジョ君がかわいらしい外見とは裏腹に分裂症的な<何か>を抱えてしまっているのが見えてくる。やがて、実はレジスタンスのメンバーでもある母親との関係やら、ユーゲントのなかに自分の居場所を見いだせていないことやら、彼の家で暮らしていたユダヤ人少女との出会いとか、どんどん悪化する戦況とか、10歳の子どもが背負うにはあまりにも過酷で複雑な現実が少しずつ見えてきて、それらと健気に葛藤する姿が、優しくユーモアあふれるタッチで描かれる。戦争のなかの日常生活を、明るくカラフルなタッチで描いているところにワイティティ監督のオリジナリティが垣間見える。ただ、どうも腑に落ちないこともあれこれ。一番の難点は、イマジナリー・フレンドがヒトラーである必然性が最後までよくわからなかったこと。ラストのあの一撃のためなのかなとは思ったけれど、ジョジョ君がナチスへの信奉と傍らにいる「総統」との折り合いをどうつけていたのかが、いまいちわからない。また、物語上の登場人物や出来事が、母親の身に起きること以外は、ブラックな小ネタはあっても終始ハートウォーミング過ぎるのも気になった。とくにサム・ロックウェルのキャラは出来すぎ。SNSでは絶賛されているようだけど、彼の役でもっと戦争の毒を表現できただろうに、「いい人」で終わってしまったのは残念。歴史や現実はあまりにも残酷で悲惨だからということなのかもしれないけれど、そのせいでファンタジー色が濃くなってしまい、ラスト・シーンのカタルシスが弱くなってしまったように思える。そして、ラストに流れるあの曲。大好きな曲だけに大感動が押し寄せるのだけれど、それは映画に対してなのか、曲に対してなのか、よくわからなくなってしまった。ここ数年、デビッド・ボウイの名曲に頼る映画が多すぎるような気が・・・。有名過ぎる曲なだけに、クレジットを見ながらだんだん違和感が大きくなってしまった。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2020-01-25 12:06:30)(良:1票)
9.  ジョーカー 《ネタバレ》 
見終わった後、しばらく呆然と立ち上がれなかった。社会のどん底で苦しむ男アーサーが、どんどん追い詰められて狂気に達する話・・として見れば、実は映画としてはよくあるモチーフだと思う。それでも、この映画で描かれる悲劇は、貧しさや病気を抱える困難だけではない。むしろ、一度は自分も「何者か」なのかもしれないと期待したところから突き落とされるアイデンティティの危機が、危険な一線を超えるきっかけになっているところが、現代のジョーカー像に説得力を与えている(だから彼が「墜ちる」境界線を超える行為は、病院でのあの行動になるのだろう)。それも、アーサーの内面にまで入り込むくらい近接するカメラワークと、肉体全体で狂気への道のりを表現したホアキン・フェニックスのどうかしている演技あってのこと。どうやったって比較されてしまうのは『ダークナイト』のジョーカー像だろうけれど、ホアキン・フェニックスの濃密な内面をさらすジョーカーへのアプローチは、ヒース・レジャーの恐ろしく空虚なジョーカー像とは対照的で、全く異なったジョーカーを描くことに成功した。個人的には、ラストのゴッサム・シティの「暴動」の表現には、ある種の嫌悪感すら抱いたけれど、それも監督の狙いなんだと思います。それにしても、ファレリー兄弟といい、アダム・マッケイといい、おバカコメディ映画を撮ってきた監督のシリアス路線の切れ味はすさまじい。きっと「コメディ」のなかに、映画の何たるか、というのが詰まっているのでしょう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2019-10-05 22:47:27)(良:3票)
10.  シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 《ネタバレ》 
実は何度か飛行機で見ようとしたのですが、MCUの真面目な観客ではない私は、そのたびに寝落ちして結局よく覚えていないので、『アベンジャーズ』シリーズ完結に向けた復習の流れで再見。ちゃんと見たら面白かった! 『エイジ・オブ・ウルトロン』で誰もが思った「やりすぎじゃね?」というツッコミは、今作への壮大な伏線だったというのに感心。っていうか真面目そうにやってるけど、昔ウルトラマン見たあとの小学生のツッコミ「ビル壊しすぎじゃね?」を、これだけ哲学っぽく話広げて、大真面目に語るところが好きだ。キャプテン・アメリカの行動だって、少年漫画的な「友情」第一主義で考えればよくわかるし、みんな難しい顔してるけど、言ってることややってることは小学生でもわかる。でも面白いのは、それがちゃんと大人にも大人の物語として受け止められるところだ。キャップはこれまでの経験から国家や組織というものを信じていない。これは天才社長にはわからない感覚だろう。この「生き方」の違いが、ちゃんと二人の対立のベースにあるから、小学生みたいな仲違いをしててもちゃんと深みが生まれるのだ。ただ、そこを(たとえばノーランのように)掘り下げる方向にはいかず、基本的にはバカバカしいアクションで語らせる、というルッソ兄弟の哲学もよい。二人の対立は、陳腐な言葉を積み重ねるよりも、殴り合いでその思いは十分に伝わる(それはやっぱり少年漫画だ)。この物語の主軸部分だけだったら満点の出来だった。ただ、どうしようもないことだけれども、これはヒーロー大集合祭りでもあるので、その対立にいろんなキャラを絡ませなくちゃいけない。当然、話も長くなる。ただ、もう私の頭はルッソ兄弟のような情報処理能力を備えてはいないようで、正直なところ、ブラックパンサーもスパイダーマンもアントマンも「そこにいなければいない理由」を見出すことができず、ただただバタバタとめまぐるしく展開する絵の洪水に身を委ねるだけでした。まあ、それがマーベルだ、と言われてしまえばそれまでなんだけど、個人的にはそこを「惜しい」と思ってしまう。もっと上質な体験が出来たはずなのに、と思ってしまう。なんともやりきれない一作でした。その意味では極個人的には『ウィンターソルジャー』のほうが完成度は高かったなあと思ってしまいます。
[ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2019-08-18 09:53:56)(良:2票)
11.  シェイプ・オブ・ウォーター 《ネタバレ》 
評判どおりの怪(快)作でした。60年代初頭という舞台設定が効いていて、序盤は、挿入されるタップダンスやミュージカルの音楽などウェルメイドな往年のハリウッド娯楽映画風なのに、徐々に、冷戦・人種・家族をめぐる社会問題が絡んできて、でも最後はしっかり「愛」の物語として昇華されてました。印象的だったのは、悪役ストリックランドの家庭は、まさに50年代のファミリードラマが描いてきた「理想の家族」そのものであり、彼に対峙して「怪物」を守ろうとする主人公たちは、障害、人種、同性愛、イデオロギーといった点で、その「理想」の家族像から最も遠いところにいる人たちだったこと。でも、その遠い世界にいる人たちこそが、もっとも「人間らしく」生きているという逆説を描ききった、美しいラストシーンでした。そこにスパイスとして絡んでくるエロやグロも、人が生きるということにつきまとうものに目を背けず、それと共に生きるからこその美しさを描くんだという監督の信念を感じました。あと、主人公が突然歌い出すミュージカルのシーンは、伝統的なハリウッド映画の手法を使って「古きよき」映画を支えてきた固定観念みたいなものをひっくり返す名シーンだったと思います。だって、歌い出すのは言葉が話せない質素な掃除婦の女性で、そのお相手は卵を食べるのに夢中な半魚人ですよ。でも、そのシーンの美しさたるや。1年前にオスカーを賑わした美男・美女のミュージカル映画との対比も面白いです。ギレルモ・デル・トロ監督はハリウッドでは異色の職人監督というイメージでしたが、その彼がいつのまにかハリウッドのど真ん中で、もっとも現代のハリウッドらしい映画を撮っているということにも、ちょっと胸が熱くなります。それにしても、キュアロン、イリャニトゥに続いて、今のハリウッドはメキシコ出身監督なしには成立しない場所になりましたね。いろんな意味で現代を象徴する一作品だと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2018-03-12 10:55:37)(良:3票)
12.  新感染 ファイナル・エクスプレス 《ネタバレ》 
父娘ものとゾンビ映画の組み合わせというのは、個人的には最悪で最高だ。しかも、ハリウッド映画だったらなんだかんだで娘は大丈夫だろうと思えても、韓国映画なだけに全く予断を許さず、最後の最後までサスペンスは続く。秀逸なのは、そこに織り交ぜるドラマのバランス。過剰にベタつかないけれど、泣かせるところはとことん泣かせる。娘が最後まで歌を歌わない理由からラストへの流れは、もう父娘ものとしても完璧だ。キャラのそれぞれの顛末もよく考えられている。ある意味、最期に初めて「カップル」になれた高校生の2人(この2人の捕食シーンだけはなぜか美しく見えた)とか、葉加瀬太郎みたいなのに男気の塊のおっちゃん、ゲスなのに憎めない社長、最初から最後まで職務に忠実な車掌さん、そして何よりも主人公の父親の最期まで、それぞれにドラマと見所が用意されている。サスペンス・アクション映画としても、序盤の不穏な状況の見せ方、列車を舞台にしたバリエーション、そして駅という場所の描き方まで、たぶん予算は抑え気味でも、アクションやゾンビ描写自体にまったく不足はない。意外とバイオレンスや残虐描写が控えめなのも個人的にはよかった。万人におすすめできる秀作!
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-11-12 20:29:23)(良:1票)
13.  SING/シング 《ネタバレ》 
子どもが見たいというので、あまり期待しないまま、つきあいで鑑賞。こうゆうときに思わぬ良作にめぐりあったときの幸せ。昔「シュレック2」のおまけで歌唱コンテストもののパロディやってたことがあったけど、なんとなく先が読めるというか、SNSで流れてくる海外番組のシーンの寄せ集めみたいなのを想像してました。しかし、予想に反して、キャラクター設定やシーンの構築が丁寧で、ベタでわかりやすい展開なれど、しっかりはまることができました。そして、なんといっても魅力は音楽! ラストのライブシーンは、テイラー・スウィフトから始まって、エルトン・ジョン、シナトラ、そして最後はスティーヴィー・ワンダー! 歌詞も上手に絡めた選曲は見事だし、その合間に入るアッシュのオリジナル曲もすごくよかった。最初と最後のジェニファー・ハドソンの貫禄もさすが、という感じ。期待値ゼロでこれだけ楽しませてくれれば大満足です。ただ、細かい点では、バスター・ムーンが賞金絡みのウソで失った信頼の取り戻し方が物語のキモになると思ったので、そこがあっさり解決しすぎててやや拍子抜け。個々のキャラの問題も、ちゃんと向きあって乗り越えてるのか微妙なまま、歌の力で押し切ってしまった感がありあり。そもそも動物キャラであることの意味もあまり感じられず、『ズートピア』以後の作品としては物足りなさも。あくまで期待しすぎないのが、この映画を楽しむコツかと思います。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-07-14 14:17:03)
14.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
久々のゴジラは想像以上の迫力で、映画館で見て本当によかった。一番インパクトがあったのは、正体不明生物が上陸して、最初に全体を晒すシーンで現れる、目玉ギョロギョロの珍獣。その前のヒレや尻尾のチラ見せで煽られていただけに、その瞬間は「え・・・これ・・・何?」とこっちも目をまん丸に(あと、石原さとみの初登場シーンもみんな口あんぐりだったかも)。いい意味で期待を裏切られつつも、その後の使徒ばりの変態過程はお見事で、あの珍獣がちゃんとゴジラになって、最後に火を噴くまでの変態過程を見られただけでも満足でした。一方のドラマパートの会議室描写はお見事で、ベテラン俳優のみなさんのとぼけた演技が最高です。ただ、後半のゴジラ凍結作戦は残念ながら乗り切れず・・・。なんというか世界に見捨てられた日本人がその智恵と組織を総動員して反撃っっていつの映画なのかと(しかもアメリカ特使まで「日系人」という設定)。そもそもあれだけ会議シーンがあるのに、それはすべて日本人どうしの会議。21世紀にもなって、もう一つの会議(=国際会議)が全く出てこないという、この閉じた世界観(1984年版にはあったよね)。一方には震災や原発の災厄が明らかに描かれているのに、その先に開かれるのは、細かく描写された自衛隊兵器や新幹線特攻とか在来線爆弾とかも含めたガラパゴスなオタク日本の逆襲。こうゆうストーリーにアガるのは理解できるけれども、これに熱狂していていいのだろうかという不安をどうにもぬぐうことはできませんでした。
[映画館(邦画)] 6点(2016-09-09 15:45:38)(良:3票)
15.  ショート・カッツ
20年近くまえ、映画館で観た。まだ10代の自分には早すぎた気がして、撃沈した。そして、アラフォーの年末、ふと見返してみた。「ショートカッツ」というタイトルのとおり、短いシーンがめまぐるしく移り変わる。それがとにかくスリリング。ある程度まとまった「エピソード」を重ねるオムニバスとは全く違う。最初1時間は話も見えず、やっぱりしんどかったが、途中から突然物語がつながり、登場人物が生き生きと動き始める。そのへんは後発の群像劇『マグノリア』や『クラッシュ』とも似ているけれど、やっぱりぜんぜん違う。何が違うか考えてみたのだけれど、結局、この映画は、徹頭徹尾、登場人物のあいだの「関係」を執拗に描く。関係を欲望し、関係に絶望し、関係を喪失し、関係がうまれる。アルトマンらしい「文明批評」。唯一無二の映画体験だと思う。残念なのはラストかな。『マグノリア』の元ネタではあるといえるが、この映画に限っていえば、もっと別の可能性があったように思える。
[DVD(字幕)] 8点(2013-01-06 18:10:27)
16.  J・エドガー
フーバー長官の政治的な暗躍ぶりが見れると期待していたのですが、狭い人間関係(フーバー、母、トルソン、ミス・ガンディー)のなかで展開するドラマが主軸でした。ちょっとがっかり。そのぶん、人間関係のほうはなかなかの濃度で描かれ、俳優陣もなかなかの熱演を見せてくれるのですが、こっちを主題にするのに、わざわざJ・エドガー・フーバーという人物を取りあげる必要があったのかは疑問です。あと、老けメイク怖いです。顔はしわしわなのに眼だけが爛々としているのが不気味すぎ。スターウォーズのクリーチャーみたいでした。「老い」というのはメイクだけでなく、もっと全身のあらゆる器官を用いて表現しないといけないんだということがよくわかります。大統領のそっくりさん演技も何だかなあ。ニクソンなんて、パーティ・マスクかと思いました。というわけで、見せ方やこだわりの方向性が間違っているようにも思うのですが、人間ドラマとしては及第点か。好みは分かれると思いますが。
[映画館(字幕)] 5点(2012-03-05 11:40:24)
17.  幸せのレシピ 《ネタバレ》 
『ターミナル』のときも思ったけど、キャサリン・ゼタ・ジョーンズは、「スター」のオーラがない地味な役のほうが僕は好きみたいです。アーロン・エッカートもベタだけどイタリア帰りのアメリカ人をさわやかに演じてました。ゾーイ役の子もうまい。強がってるなかに見せる子どもらしい強さと弱さがツボでした。序盤の悲劇展開にちょっととまどいますが、基本的に安心して見られる作品でした。3人で店を出すというラストも、素直によかったねと思えたけど、また「子どもを働かせている」と学校から警告されちゃうんじゃないかなあと余計なことを考えてしまいました。
[DVD(字幕)] 6点(2009-07-01 11:09:02)
18.  幸せのちから 《ネタバレ》 
どん底から駆け上がっていくサクセスストーリーかと思いきや、物語の98%はどん底で、最後そこからはい上がるきっかけをつかんだところで映画は終了。ナレーションで「そのあと億万長者になりました」って・・・。物語のどの伏線が「億万長者になる」きっかけになるのかと思って見ていたら、とんだ肩すかしでした。主人公のがんばりはわかるけど、結局なぜ採用されたのかも、そのあと成功できたのかもはよくわからないので、やや消化不良。最後のシーンも成功のカタルシスというよりは、やっと落ち着けてほっとしたという感じ。まあ、父子のどん底生活物語というテーマでは観客集まらないというのはわかるけど、今回は宣伝コピーに見事にだまされてしまいました。原題「幸福の追求」は、合衆国独立宣言のなかの一節(つづりが間違っている点についてはWikipediaなどでも解説されていたので、そちらをどうぞ)で、主人公の成功を「アメリカン・ドリーム」として描こうという思いのあらわれなんだろうけど、その言葉自体、あまり映画のなかでうまく機能していなかったのも残念。そのへんの文脈を見事に外した邦題は論外です。
[地上波(吹替)] 5点(2009-03-07 00:52:54)(良:1票)
19.  シリアナ
映画の内容もよくわからないが、この複雑で不親切な映画を国際線で機内上映するJALもよくわからない。それを1度見て理解できず、2度見てしまった自分も自分だが・・・。あまりに『トラフィック』的な演出のせいで「二番煎じ」感はぬぐえないし、『クラッシュ』も含めて、この手の群像的ドラマ自体、ちょっとした流行なのだろうか。あまりに「現実の複雑さ」と「観客の(能動的な)理解力」に頼りすぎで、監督の実力はよくわからない・・・。もう少し親切な演出を心がけてもいいように思う。
[映画館(字幕)] 5点(2006-05-17 10:56:15)(笑:1票) (良:1票)
20.  下妻物語 《ネタバレ》 
単純に面白かった。実際には、定番でベタベタな友情物語なんだけど、キャラの設定の勝利だなあ。とくに、深田恭子の自己中で孤高のロリータキャラは秀逸だった。ストーリー的には、キャラと舞台設定に助けられたけど、前半がバラエティ番組のコントみたいだったのと、ラストが思ったより盛り上がらなかったことが残念。あれだけデフォルメしたキャラ満載の映画だったんだから、伝説のヤンキーと刺繍屋も、ちゃんと登場して欲しかったなあ。あれが単なるイチゴの作り話だったっていうオチが、映画的には、ぜんぜん効いてなくて拍子抜けしてしまった。
[DVD(字幕)] 7点(2005-08-31 11:11:32)
010.16%
120.32%
260.95%
3345.41%
4457.15%
511117.65%
612319.55%
716025.44%
88914.15%
9426.68%
10162.54%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS