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プロフィール
コメント数 2452
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  スイング・ステート 《ネタバレ》 
“スイング・ステート”とは、米国の大統領選挙において共和党と民主党の支持勢力が拮抗していて、選挙の度に勝利する政党が変動する州のことだそうです。報道機関によって定義の差異はあるけど、アリゾナ州やフロリダ州など12から15州がスイング・ステートだと認識されていて、本作の舞台となる中西部ウィスコンシン州は代表的なスイング・ステートだとされているみたいです。 2016年の大統領選挙後から話は始まり、予想外の敗北だった民主党ヒラリー・クリントン陣営の選挙参謀だったスティーヴ・カレルは大ダメージを喰らう。ディアラーケンというウィスコンシン州の片田舎で住民僅か5,000人の町で、住民の前で共和党的な政策に異議を唱える退役海兵隊員クリス・クーパーの動画が失意のどん底状態の彼の眼に止まる。この人物を民主党から選挙に立候補させて町長にすれば、スイング・ステートであるウィスコンシン州に次回の大統領選での民主党勝利のくさびを打ち込めるというアイデアを思いつく。クリス・クーパーを口説きに現地に赴くが、選挙戦の実務は部下に任せるつもりだったのに自身が選挙参謀になる羽目になってしまう。民主党の大物選挙参謀が片田舎の町長選を仕切るということがマスコミに取り上げられると、現職を助けるために共和党も大物選挙参謀を送り込んできた。 この女性選挙参謀がローズ・バーンなのですが、因縁の男女の選挙コンサルタントがかち合うというプロットは、17年製作のサンドラ・ブロック主演の『選挙の勝ち方教えます』と同じだけど主人公が男女入れ替わっていますね。スティーヴ・カレルのキャラは“(ワシントン)DC・ゲイリー”と町民からあだ名がつけられる様な、内心では田舎をバカにしている都会風を吹かす嫌な感じの男です。ローズ・バーンもあの手この手を繰り出して選挙戦は過熱してゆき、両党ともに巨額の資金を投入してゆきます。スティーヴ・カレル主演の割には意外とコメディ要素は少なめ、ちょっと退屈な映画だと思って観ていたら、ラストではまったく予想外のどんでん返しを喰らって「これはやられた!」と嬉しい反応をしてしまいました。ネタばれになるからこれ以上詳しくは言えませんが、ぜひとも観て確かめてください。とにかく米国選挙制度で動かされる巨額のカネと、民主・共和両党とマスコミのいい加減さというかアホさぶりを強烈に皮肉った結末になっています。この映画に出てくるセリフですが、まさに米国には“選挙経済”というものが存在するみたいです。あと「選挙は数字!」、これもなかなかの名セリフでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-10-10 22:09:21)
2.  スカイエース 《ネタバレ》 
原作は第一次世界大戦西部戦線での英軍の塹壕戦をテーマにした戯曲で、いわば『西部戦線異状なし』の英国版みたいな感じだそうです。それを航空隊の物語に変更して、志願したパブリックスクール生の若者が、部隊配属から戦死するまでの7日のストーリーとして脚色されています。この若者が配属された第76飛行中隊の指揮官は実はパブリックスクールの先輩で姉の婚約者、つまりもうすぐ義兄になる人で演じているのがマルコム・マクドウェル、すでに23歳で少佐のベテラン・エース戦闘機乗りで同窓の英雄というわけです。製作されたのが76年でマクドウェルにはまだ『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスのイメージが残っている頃ですが、そんなパブリック・イメージにはそぐわない有能で老獪な戦闘機乗りです。設定は1917年の10月ですけど、史実としては西部戦線の航空戦は激しさを増していて、少数のエースパイロットが奮闘しているけど新人として配属されてくるパイロットはバタバタと撃ち落されてゆき、7日で戦死というのは実情に近かったんじゃないでしょうか。そんなわけでパイロットたちは酒に女と戦闘後はひたすら快楽を求めますが、中には精神が破綻して離脱する者も出てくる始末です。 空戦シークエンスにはレプリカの複葉機が使われていますが、英軍機はけっこう再現度が高かったと思います。それに反して独軍機の方はイマイチどころかイマサンぐらいの代物で、一次大戦の独軍戦闘機は赤く塗装しておけばそれらしく見える、というのは大間違いですぜ。とはいえ空戦シーンはそれなりのものでしたが、英軍機のパイロットが撃墜されたときに全身が燃えながらパラシュートなしで空中に投げ出され、地面に激突するまでをワンカットで見せるところは強烈でした。 『レッドバロン』や『ブルー・マックス』の様な派手な空戦映画を期待すると肩透かしを喰いますけど、塹壕戦と同じように消耗品として消費されてゆく戦闘機乗りにスポットを当てた地味ながらも英国映画らしい佳作でした。ジョン・ギールグッドやクリストファー・プラマーなどの渋い大物俳優たちも脇を固めています。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-09-18 22:14:46)
3.  Smile スマイル(2022) 《ネタバレ》 
これは完全に『ファイナル・ディスティネーション』や『イット・フォローズ』と同系列のホラーですね。思えばこの系列の始祖とも言えるのが『リング』ですから、Jホラーがハリウッドに与えた影響の強さを再確認させられます。 ヒロインである精神科医のローラが怪異現象に悩まされるようになってからの言動、それを見たり彼女の話しを聞かされる人間にとっては、「この女は完全に狂った…」としか思えないのはほんと無理ないかなと思います。その言動で実姉・婚約者・セラピストとの人間関係を壊したり絶縁されたり、あんなことされたり言われたりしたら誰だった怒りますよね。ここまで魅力的じゃなく不快にさせてくれるヒロインも珍しいけど、演じているソシー・ベーコンはケヴィン・ベーコンとキーラ・セジウイックの娘なんですね。“娘は父親に似た顔になる”とは言いますが、たしかに彼女の顔立ちにはケヴィン・ベーコンのDNAが感じられます。観る者をこれだけ不快に出来るということは、彼女の演技力がやっぱ高いレベルにあるとも言えるでしょう、これもやはり父親譲りなのかな。 本作は典型的な出落ち映画と分類できる感じで、類似作品と違って派手なスプラッター描写もほとんどなく、低予算だったんだなと思います。監督はこれが初の長編映画で、自作の短編映画をブローアップさせた企画らしい。前半のシメントリーに拘った室内シーンや、所々で挿入される天地が逆転してる風景ショットなどにはセンスを感じます。『イット…』や『ファイナル…』シリーズと同じくいわゆる“悪霊の謎ルール”がネタなんだけど、それら元ネタ群と違ってそこまで妙な理屈をこね回すまで至っていないのは好感が持てました。ホラーとしての怖さはさほどではないけど、偽セラピストがヒロインの自宅に来るシークエンスにはゾワッとさせられました。 最近つくづく思うのは、ホラー映画で舞台となる住宅は、なんで間接照明しか着けず室内があんなに薄暗いのかね?まあ雰囲気づくりを重視しているのは判るけど、あれじゃあまりにも不自然だと思いますがね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-07-15 20:44:36)
4.  スケアクロウ 《ネタバレ》 
やたらと重ね着をしたがるムショ帰りの粗暴な大男=ジーン・ハックマンと、妻子を捨てて5年も船員として放浪していた気はイイんだがちょっとおつむがたりなさそうな小男=アル・パチーノ、この若かりし頃の二大名優が最初で最後の共演をしたロードムービー。クレジットの人名をすべて小文字にするという、典型的なアメリカン・ニューシネマの一編です。この当時のアメリカ国内は見るも無残な状態にまで堕ちていましたから、ロケで見せられる風景もわざと荒んだ場所を選んでるんじゃないかと思わせるような感じです。はっきり言って中盤まではダラダラした展開なんだけど、ハックマン&パチーノの組み合わせが妙な化学反応を起こしているような感じで、やっぱ引き付けられるものがあります。刑務農場での体験を経てからは二人のキャラが入れ替わっちゃうのが面白い、とくにハックマンのストリップは強烈でした。デトロイトにパチーノの妻子に会いに行ってからラスト三十分には、観ていて胸が締め付けられる感がありました。亭主が生死不明の失踪ということにして他の男と再婚した妻の心境は判らんでもないが、息子は八ヶ月で流産したなんて大嘘をつくところはいくら何でも…って思いますよ。これでパチーノのメンタルは完全に崩壊してしまうんですから、なんちゅう残酷なことをしてくれたんだ、と思います。思うにアメリカン・ニューシネマに登場する女性キャラにはロクでもない女が多い様な気がします、まあ女性が主人公というニューシネマ自体がパッと思いつかないぐらいですからねえ。まだアメリカですらそういう時代だったのかな。
[DVD(字幕)] 7点(2024-06-28 22:52:30)
5.  300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ 《ネタバレ》 
テルモピュライの戦いの後日談だと思いきや、ほぼ同時進行していたアケメネス朝ペルシャのギリシャ侵攻がモチーフになっているんですね。今回はアテナイのテミストクレスがヒーローとなるわけですが、前作のレオニダス以上に筋肉バカぶりが凄まじい。史実に寄ればテミストクレスは戦略家というよりも権謀術数に長けた政治家と言うタイプで、後日にはアテナイから追放されてなんとアケメネス朝に亡命して晩節を汚した人物。ただひたすらにギリシャと自由を守らんと奮闘する姿は、あまりに歴史上の人物を聖人化していてドン引きします。製作者がなんと言い繕うとしても、この二作は文明の衝突をスプラッター系エンタメとしているに過ぎません。「ギリシャ文明ってそこまで神聖視して崇めるものなのか?」ていうのが、自分の率直な感想です。まるでエイリアンの様な描かれ方ですけど、アケメネス朝ペルシャだって高度なオリエント文明の一つだし、ギリシャの都市国家群だって、ギリシャ以外の土地をバルバロイと蔑み過酷な奴隷制度にあぐらをかいた挙句にポリス同士で殺し合いを繰り返して滅びちゃったじゃないですか。こういう欧米人の歴史感には、どうにもついてゆけないところがあります。 筋肉バカ・テミストクレスのお株を奪ってしまったのは、エヴァ・グリーン=アルテシミアの強烈なキャラであることは間違いないでしょう。あの視線の凄みには圧倒されます。キャラは盛っているんでしょうが、実際にサラミスで指揮をとったカリアのアルテシミア一世がモデルなんでしょうね。首を狩りまくるしテミストクレスとは乳出しでHしちゃう、もう唖然・呆然でございました。最後にはレオニダスの王妃=レナ・へディまで参戦して来て斬りまくるし、なんかいい所をこの二大猛女が持って行ってしまった感はあります。しかしこの海戦のシークエンスのスプラッター度はかなりのものでした。まあスパルタ船の参戦が雌雄を決したというのは、他のサラミス海戦の描写を含めてこれまたモリモリですけどね。
[CS・衛星(吹替)] 5点(2024-03-20 23:06:07)
6.  すてきな片想い 《ネタバレ》 
80年代青春映画の巨匠であるジョン・ヒューズのデビュー作。本作で彼の作品の常連となるモリー・リングウォルドとアンソニー・マイケル・ホールが初めて起用されるが、やはりリングウォルドの発掘は大功績だったと言えるでしょう。たしかに彼女ほど同世代女性ファンから支持された女優は稀有で、ほぼ社会現象と言えるレベルでしたからね。この時彼女は15歳、まあ子役とは言えない年齢ながらも若くして脚光を浴びた俳優は伸び悩むというジンクス通りになってしまったのは、残念ではあります。 この映画は数あるヒューズ作品の中でももっとも下ネタがキツいという指摘は的確だと思います。現在のコンプラやポリティカル・コネクトネスの基準からすると、炎上必至と思われる内容があるのも事実です。一人だけ登場するアジア人キャラの扱いや、パーティでのジェイクの言動がいわゆるデートレイプを容認しているようなところなどです。まあ他愛もないコメディなんで目くじら立てるなとも言えるのですが、確かに中国人留学生の描き方はちょっと度が過ぎているって感じます。だいたいからして、全部観たとは言わないけど、黒人がキャスティングされたりストーリーに絡んだジョン・ヒューズの映画が記憶にないんですよね。アジア系とはいえ有色人種が登場するだけでも珍しいとも言えますかな。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-12-20 21:39:02)
7.  スパイダー パニック! 《ネタバレ》 
ノリはもう『トレマーズ』という感じのB級モンスター映画の王道です。細かい理屈はともかくとして、巨大化した蜘蛛たちが田舎の町を群れとなって襲撃!というシンプルな構成ながらもスピーディな展開で飽きさせない面白さがあります。アサイラムあたりのZ級とは違って人物設定などもきちんと造りこまれているのも良し。巨大化したと言ってもタランチュラ以外はせいぜいセントバーナード犬ぐらいで、蜘蛛としての分別は守ってすぐ殺せるのも好感(?)がもてます。でも群れとなって追っかけてくるところなんかは蜘蛛嫌いには卒倒ものだろうし、集合体恐怖症の方も要注意です。オスがメスに贈り物をして気を引くというコガネグモの習性を上手くストーリーに取り入れたりして、この監督きっと蜘蛛好きなんだろうな(笑)。ティーンのころのスカヨハが出ているところも得点が高い、今じゃ彼女がB級やインデペンデント映画に出演するなんてとうてい考えられなくなりました。所々に仕掛けている映画ネタや陰謀論ネタも、センスの良さが感じられます。けっこう死人が出ているのになんか笑えちゃう、ってところも『トレマーズ』風味がありました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-18 23:32:17)
8.  スプライス 《ネタバレ》 
“むかし放射能、いま遺伝子操作”がSF・ホラー系映画でモンスターを産み出す理屈の定番ですけど、けっきょく健康被害は別としても短期的に生物を変異させるような影響が無いことが認識されている放射線と違い、DNA操作は意図せずにトンデモナイものが誕生してしまう危険性が多々あるのが怖いところです。この映画はあの『スピーシーズ/種の起源』と発想は同じくするものの、あんな無茶苦茶なお話しとは違ってじわじわ来る恐怖というか嫌悪感を追及してゆくストーリーなのは評価しておきたい。 門外漢のわたくしには新規のたんぱく質を生成するためになんであんな怪物を創造しないといけないのかは?なんですが、最初に登場する“ジンジャーとフレッド”からして気持ち悪いことこの上ない。でもほんと生理的にしんどかったのが幼年期までの“ドラン”の方で、あのドレスを着た姿なんて思わず眼をそむけたくなります。“ドラン”はサラ・ポーリーの卵細胞が使われたいわば子供のような存在だってことはバレますけど、成長するにしたがって文字を駆使したり絵を描いたりするようになるのはちょっとやり過ぎだったんじゃないかな。サラ・ポーリーの母親の精神的な問題が暗示するように、“ドラン”にもポーリーを通じて異常性が遺伝してしまったという解釈が妥当のようです。このストーリーのトンデモナイところは、エイドリアン・ブロディが“ドラン”と、サラ・ポーリーが性別転換後の“ドラン”と性交しちゃうところで、これはホントにおぞましい。まあブロディはともかくとしてもポーリーの方はもう近親相姦としか言いようがないわけですからねえ。 ラストの展開ですけど、明らかにありふれたモンスター映画に寄せてしまったのは失敗でしょう。“ドラン”に羽根のようなものが生えてくるのも意味が不明、沼地のシークエンスもほんと暗くて何が起こているのかさっぱり判らずストレスが溜まりました。けっきょくほぼ皆死んでサラ・ポーリーだけが生き残る後味の悪いバッドエンドで、とにかく禍々しさだけが印象に残りました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-10-18 21:47:34)
9.  すくってごらん 《ネタバレ》 
奈良の大和郡山や橿原でロケしたそうですが、こんな風情のある街並みが残っているとはさすが奈良県です。また主要キャストの名字が奈良の地名になっているところにも、原作者の奈良県愛が感じられます。ダンスがないのでハーフミュージカルというそうですが、それを補って余りある出演者たちの歌唱力の高さよ!ももクロの百田夏菜子が上手いのは周知の事実ですけど主演の尾上松也の歌唱力の高さよ、この人は歌舞伎役者だと遅まきながら知りましたが並みのポップスシンガーを凌駕するスキルの持ち主、やっぱ歌舞伎役者は技量が半端ないですね。セリフがラップ調になったり心情を二字単語でオーヴァーラップさせたりといった演出も、洒落ていて良かったです。彼はエリート銀行員という設定ですけど、栄転と銀行員生活を捨ててこのハートフルで不思議な町に残る選択をするというありふれた結末にしなかったところも、夢の世界と現実世界との境界をきっちりと線引きしているところがイイ感じでした。百田夏菜子はももクロメンバーで唯一NHKオーディションに合格した演技力の持ち主、これからもっと映画出演が増えるといいですね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-05-25 22:05:57)(良:1票)
10.  スノーピアサー 《ネタバレ》 
永久機関(?)で走り続ける列車内という円筒形の空間だけで展開する『マッドマックス』だと思えば、間違いない。いわゆるディストピアものではありますが、すべてをノアの箱舟みたいな列車内だけでストーリー展開させるアイデアは、なかなかユニーク。だけどお話し自体が『マッドマックス』の持っていたようなヒャッハー要素が無いので、ただ暗いだけのSFという印象は否めませんね。唯一ヒャッハー感があったのは相変わらずの怪演を見せるティルダ・スウィントンぐらいですかね、でも最後まで残れなかったのは残念至極です。導入部から暫くはモタモタした展開なので「ババを引いたかな?」と思いましたけど、反乱が始まってからの展開でかなり持ち直してきました。なんでここにソン・ガンホが顔を出しているの?と思ったら、監督はポン・ジュノだったんですね、そりゃ出ますわ。ラスボスがエド・ハリスでなんか『トゥルーマン・ショー』を思い出してしまいました。もうちょっと拘って欲しかったのはSF的なディティールで、列車が永久機関を動力にしていることはまあ理解しますけど、その部品として小児が手動でなんかしないといけないというところは、まったく意味不明でした。ラストで生き残った二人が見るシロクマは、果たして希望と絶望のどちらの象徴だったんでしょうか、こういう一見投げ出したような幕の閉じ方は好きです。 この映画の中ではやたら片腕を失う話が出てきますが、切り落とした腕を喰わせる老人の話しなんかもあり、これはキリスト教的な寓意があるんでしょうかね?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-09-12 22:26:36)(良:1票)
11.  スタング 《ネタバレ》 
やっぱB級はこうじゃなくっちゃねえ、何も考えさせない・突っ込ませない絶叫マシーン映画です。“なんで巨大蜂モンスターが出現したの?”という問いに“庭に散布する肥料にホルモンを混ぜたからかな”というアンサー、“この映画は50年代モンスター映画のリメイクか?”という疑問が湧くぐらいのいい加減な理屈、もうサイコーです。いわばこのモンスター蜂の産みの親であるボンクラ息子シドニー君、どうしても懐かしの宅八郎にしか見えず気色が悪いことこの上なし。B級モンスター映画と言えばこの人、ランス・ヘンリクセンご老体もしっかり顔を見せていますが、近年では珍しい暴れっぷりです(結局はお約束通りの途中退場でしたがね)。ケータリング屋のカップルのポール君、チャラい奴かと思いきや危機モードになると突然に頼れるファイターに変貌するのが面白い。でも満身創痍になって収容された救急車の中でヒロインとエッチし始めるのは、さすがチャラ男でした(笑)。ヒロイン娘のツンデレぶりも良かったです。モンスター蜂はもちろんCGですけど、造形や動きにはあまり安っぽさは感じませんでした。刺された獲物から成虫が飛び出してくるのは、寄生バチのモンスターというわけなんですね。 期待しないで観ていたからこれぐらい愉しませていただけたら、まあ満足です。屋敷内の攻防あたりの脚本にもたつきが無ければ、もっと加点してあげたのにね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-27 20:50:03)
12.  スウィングガールズ 《ネタバレ》 
オーディションで選んだ楽器未経験の女優たちをしごいてビッグバンド・ジャズの演奏を披露させるというコンセプトありきの映画。出落ちならぬ“ラス落ち”とも言うべきラストの演奏を見せるために書かれた脚本みたいなもので、いかにも広告屋とTV屋が考えそうな企画ですね。 ストーリー展開は『ウォーターボーイズ』とほとんど同じような感じ、竹中直人に至っては同じキャラなんじゃないかと錯覚してしまうほどです。ギャグも大人が観るのは恥ずかしくなるレベルで、それを若手(当時)女優たちのクサい演技で“これでもか”という圧で見せられるのには、正直辟易させられます。楽器指導にかける労力の何分の一かでも演技指導して欲しかったところですが、こういうのが監督の趣味らしいので如何ともし難い。あんなにやる気がなかったJKたちが半年ぐらいであのレベルの演奏が出来るようになる過程が、いくらギャグをまぶしたからといって説得力がなさすぎでしょう。まあ出演女優たちが三カ月ぐらいで実際にあれだけの演奏を披露できたわけだからという言い訳は出来るかもしれませんが、この人たちはたぶん相当な苦労をしたわけで、劇中のキャラ達にも努力の跡を見せる演出をして欲しかったですね。そして地方というか田舎をバカにしたような底意を感じてしまうのは、なんか嫌な気持ちになります、こういうところがフジTVらしいのかもしれません。あと、「人間は二種類に分かれる、○○と○○だ」というセリフが数か所で出てくるのですけど、わたくしこのフレーズが大嫌いなんです。軽々しくこのフレーズを使うってのは、やはりダメな脚本の証です。 などと文句を並べましたが、そうは言ってもラスト十五分の演奏シークエンスは文句なしに素晴らしいのは確かです。演奏が万雷の拍手を浴びて終了したあとJKたちの浮かべる笑顔と表情は、演じた女優たちが「やり遂げた」という満足感が表出した素の表情なんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-05-27 22:18:44)(良:2票)
13.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
いやぁ~、わずか15年前にはこんなトンデモナイ映画がハリウッドで製作できたんですね。スパルタ人が全員白人なのは当然としても、もう“悪の帝国”感丸出しのペルシャは黒人系を始めとする有色人の俳優ばかり、そして中には「こんな奴、おらんやろー」と叫びたくなるような巨人や腕の先っぽがナタみたいになってる奇形人間まで登場、ペルシャはエイリアンの国かよ!9.11後にアメリカ合衆国vsイスラム教という対決図式が定着したので、こういう煽情的な映画がウケると判断した製作陣、まあ貴方たちの読みは外れてなかったんですけどね。あのトンデモ国家・スパルタが民主主義の原点だという史観は「ちょっと違うだろ」と突っ込みたくなりますし、そのうえ最後にディリオスが伝えるレオニダス王のメッセージは、そのまんま当時のブッシュ大統領の演説なんじゃないかと錯覚させられるようなロジック。ペルシャの末裔でもあるイランがこの映画のペルシャ人の描写に猛抗議したそうですが、ハリウッドは当然のように無視。でも最近のハリウッドは中国政府にはクセルクセスに跪いているようにヘイコラしているのが現状、カネがすべてのハリウッドですけど少しは恥を知れ!と言いたい。 手足がそして首がバッサバッサとちぎれ飛ぶチャンバラの迫力は刺激が強すぎですが、よく考えるとこの映画は演技している俳優以外の背景や画はほとんどCGなんですね。スパルタの男たちはみんな腹筋割れまくりマッチョ、製作陣は否定しているけどあのシックスパックも実はCGなんじゃないの(笑)。兜と盾は持っているけどパンツ一丁に赤いマントを羽織ったまるでプロレスラーみたいな戦闘装束、重装歩兵戦術が最盛期なんだからそんな半裸で戦争したわけないでしょ。あとペルシャ兵が手榴弾みたいな爆発物を投擲するけど、火薬が発明されたのはその千年ぐらいあとなんですけど…と、ツッコミどころは満載です。まあ、あのヤバい奴フランク・ミラーのグラフィック・ノヴェルが原作なので、ケチつけてもしょうがないですけどね。B.L.M 運動なんかが盛んな現在では、ぜったいに製作できない内容であることは確かです、ひょっとしたら将来は上映禁止になったりして…
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-02-07 22:03:15)
14.  ストレンジャー・ザン・パラダイス 《ネタバレ》 
“オフ・ビートの貴公子”ジム・ジャームッシュ作品の中でも、ジョン・ルーリーやトム・ウェイツが常連だった初期が自分は大好きです。その中でも本作はオフ・ビート感では最高で、短いシークエンスを繋ぐ暗転の多いことと言ったら、いくら5秒ぐらいでもこれだけあると上映時間の3%ぐらいにはなるんじゃないかな。全編モノクロで撮影されていることから来る印象だけでなく、とてもアメリカが舞台とは思えない風景ばかりが映されるところも狙っていますね。NYはともかくとしてもクリーブランドやフロリダにしてもとてもご当地とは思えない風景、「これがエリー湖だよ」とエヴァが案内するシーンがありますが、ただの白い雪原を見せているだけの感じで、「ほんとにエリー湖なの?」と疑いたくもなります。低予算だし、実はNY周辺の“なんちゃってロケ”で済ましてたりね(笑)。三人の登場キャラの会話は少ないまでは言わないにしても一文が極端に短く、この映画でいちばんしゃべってたのは、ハンガリー語しか話さないクリーブランドのおばさんでしょ(笑)。いちおうこの映画は三部構成、“序・破・急”というか三題噺みたいになっていて、とくにラストはまるで落語のオチですよ。だいたいフロリダの田舎空港からブダペストに直行する航空便なんてあるわけないじゃん(笑)。 とくに何も起こらないけど尺も丁度良い感じで不思議と退屈せずに引き込まれてしまいます。ロード・ムーヴィーならぬ“ロード散文詩”という感じでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-15 23:27:20)(良:1票)
15.  スーパーノヴァ(2000) 《ネタバレ》 
知る人ぞ知るゴタゴタ監督交代劇の果てにやっと公開できたといういわくつきの映画ですが、どう観てもどっかで観たようなありふれた展開の平凡な展開で、『TENET テネット』や『テリー・ギリアムのドン・キ・ホーテ』のような複雑な要素は微塵もありません。『イベント・ホライズン』とよく似たストーリーラインなのにこれほど完成するのに苦労したとは、今となっては謎です。 とはいえ、最後には監督がいなくなったも同然だったとは思えないほど、映画としてはそこそこまとまっています。だけど天体に置き去りにされたはずのジェームズ・スペイダーが突然シャトルを飛ばして宇宙船に戻ってくるところだけはあまりにも唐突で、「そのシャトルどっから調達してきたんだよ!」と叫びたくなりました。でも同じような状況に陥って支離滅裂になってしまったご存知『カジノロワイヤル』とは雲泥の差で、これもプロデューサーの力量というか執念なのかもしれません。六人しか乗っていない宇宙船が舞台で一人がすぐ死んでしまい、残った五人のうち二組のカップルが帰還できるか危ないという状況でSEXしているという展開はちょっと斬新かも。残った一人の乗組員も、AIのスウィーティとプラトニックな恋愛関係みたいなもんで、これじゃまるで“ラブ・ボート”です(笑)。ジェームズ・スペイダーといいルー・ダイヤモンド・フィリップスといいピーター・ファシネリもみんな腹筋が割れまくったガタイを無駄に見せまくっている感じで、二人の女優もきっちり脱ぎますしこれはやはり製作者の趣味ですかね。 ラストの展開は別バージョンもあるそうですが、これは五十年後には地球は滅亡するかもしれないってことですよね?その割にはアンジェラ・バセットのご懐妊を祝福するような幕の閉め方、なんか違和感しかないのは私だけでしょうか?
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-10-07 21:45:01)
16.  スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団 《ネタバレ》 
正直言って観た人の半分は「なんじゃこりゃ?」ってなるだろうけど、才人エドガー・ライトのメジャー二作目としては上出来なんじゃないでしょうか。欧米では興行的にはコケたらしいけど、これでハリウッドで干されることにならなくてよかったですね、ライトさん。設定は日本の格闘ゲームそれもアーケード・ゲームへのゴリゴリのオマージュで、その原作コミックのノリにエドガー・ライトの非凡な音楽センスがミックスされたって感じです。たしかに、ピルグリムのバンドのセックス・ボブオムを始め登場するバンドたちの演奏はグレードが高いし曲も良い。だけど肝心の元カレ軍団とのバトルは、皆さんご指摘の通りトップ・バッターのインド系元カレのインパクトが強すぎてどんどん尻すぼみになる感は否めませんでした。菜食主義・ビーガンの元カレとはピルグリムくんまともに闘ってないじゃん(笑)。元カレ軍団は邪悪なのかもしれないけど、ピルグリムくんも17歳の女子高生とパンク女を二股かけて女子高生を振ったり、この人も結構邪悪です。感情移入できそうなキャラが一人も登場しないこの映画で唯一好感が持てそうだったのがこの中華系娘だったのに、自分の方から身を引かせる結末とはちょっと許せないなあ(怒)。 元カレ軍団のラスボスがおタク感丸出しのジェイソン・シュワルツマンというのがまた微妙なんですが、ラストの対決シークエンスあたりからは完全に『ファントム・オブ・パラダイス』のパロディになっているみたいです。つまり、ギデオン=スワンというわけです。 まあ確かに、もう三十分ぐらい尺が短かかった方が良かったみたいですね、でも原作が前提としてあるので難しいのかな。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-09-25 21:09:08)
17.  スリー・ビルボード 《ネタバレ》 
アメリカ映画のジャンルの中で、私がもっとも怖いと思っているのは田舎町を舞台としたいわゆるスモールタウンものと呼ばれるカテゴリーでして、とくに南部が舞台となるとまたひとしおです。生まれた町や地域から一歩も外へ出てゆかず生涯を終えるような人がざらにいるお国ですから、みんな顔見知りで濃厚な人間関係でドロドロな生活なんて絶対に経験したくないもんです。 「娘を殺されてるのに捜査は行き詰まり、それでも執念で犯人を追いかける母親」となると我が国では拉致被害者の親族者たちがどうしてもイメージされますが、フランシス・マクドーマンドが演じる母親はけっこう粗野でがさつで独善的な感情移入できそうもないキャラです。日本と違って監視カメラなんてどこにもなさそうなド田舎で、遺留品も目撃者もいなかったら捜査が難航するのは至極当然。そしてまだ事件から9カ月しかたってないんだから、ウディ・ハレルソン署長があそこまで非難されるのはちょっと可哀そうな感じです。でもこのハレルソンが良いキャラなんですなあ、途中退場しちゃうけど本作で唯一最期まで感情移入できたキャラでした。サム・ロックウェルのキャラは「こんな警官、いるかあ?」と絶句しちゃうほどの凄まじさ、でも最近の米国での騒動からすると割とリアルなのかもしれません。この暴力警官がいい歳してママと二人暮らし、やっぱ彼はゲイだったということなんでしょうね。マクドーマンドが火炎瓶投げ込んだり、ロックウェルが犯人らしき会話をバーで聴くなど後半は思いもよらぬ展開だったかと思います。でも考えてみるとマクドーマンドもロックウェルもハレルソンの手紙を読んでからは、ガラッと迄もいかないにしても明らかに思考に変化が現れてきます。普通の映画ならロックウェルが採取したDNAが犯人逮捕につながるとかのカタルシスが待っているものですが、事件解決が何も見えないラストの展開なのに二人の心情の変化がカタルシスにつながるというのはこの脚本の妙味でしょう。でも実行したかは観客の想像に委ねられていますが、アイダホにDNAが一致しなかった男を殺しに行くラストだけはなんかしっくりこないんですね。実はアイダホの男が真犯人で軍が隠ぺい工作しているという穿った観方もあるようですが、うーん、それはちょっと飛躍気味だと思うしそうなると全く別のお話しになっちゃいませんかね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-09-04 22:31:35)
18.  スカイライン-征服- 《ネタバレ》 
お気づきになられた方は他にもいらっしゃると思いますが、この映画のプロット(エイリアンの出現・人類を餌にするところ・一部メカのデザインや動作)はスピルバーグの『宇宙戦争』の再現というかパクりに他なりません。とはいえB級映画らしさを出して描写のエグさにおいては思いっきり監督のやりたいことを具現化したって感じでしょう。舞台もほぼ高級マンションの敷地内に限定させて登場キャラをミニマムに抑え、その分予算をCGに注ぎ込んだみたいです。『AVP2』の監督ザ・ストラウス・ブラザーズにしては、これは上々の出来と言えるんじゃないでしょうか。 閉幕10分前の主人公カップルがマシーンに吸い込まれてゆくところでは、「こういう『クローバー・フィールド』的な終わり方も最近流行っているし、これはこれでありかな」と思っていたら、その後の5分間が予想もしなかった驚愕の展開でちょっと驚きでした。これはもうジャロッドをダーク・ヒーローにした続編展開するつもりかと身構えましたが、現在に至るまで実現せずというのはちょっと悲しいところです。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2020-03-12 23:42:30)
19.  スターリンの葬送狂騒曲 《ネタバレ》 
“スターリンのヒムラー”の異名を持つ秘密警察長官ラヴレンチ―・ベリヤの処刑については実は様々な異説があり、プーチン大統領はもちろん真実を把握していますが決して彼が(そしてその後のロシアの政体が)真相を明かすことは今後もないでしょう。でも本作で描かれるようにスターリンの葬儀直後に処刑されたというのはフィクション(逮捕直前の細かいディテールは一般的な通説に従っている)ですが、これはまあ許容できる創作の範囲だと思います。 スターリン死の前後のドタバタがこの映画のテーマですが、歴史上稀にみる過酷な独裁政治の終焉ですからその視点がブラックかつシニカルであるのはストーリーテリングとしては正解でしょう。スティーヴ・ブシェミのフルシチョフを始め政治局員の面々は実物と良く似せたふん装で、とくにブルガーニンやカガノヴィッチはそっくりです。この人物たちの権力欲だけは旺盛な小物ぶりは実にコミカルで、実際この人たちはスターリンに気に入れられなかったら一国の統治に関わるような資格さえ持てなかったんじゃないですかね。逆にベリヤが改革を進めようとする善玉のような見せ方になっているのが皮肉です。実際に彼はスターリンの死後いち早く収容所の開放や政治犯の釈放に取り掛かっているのですが、これはストーリーの進行上スターリン時代の悪行をほとんどスルーしてしまったためで、このことを批判する欧米の批評家も存在します。 さほど遠くない過去に起きた醜悪な歴史的人物たちが繰り広げるドタバタ劇、としかわたくしには感想が思いつきませんが、劇中NKVD内の廊下にまるで電話のベルが各部屋で鳴っているかのように響き渡る銃声が悪夢のようでした。その中で、狂言回し的なキャラだったオリガ・キュリレンコが一服の清涼剤でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-09-07 23:23:02)
20.  水爆と深海の怪物 《ネタバレ》 
正体不明の何かに捕まって九死に一生を得る危機にあった原子力潜水艦、つかみはまあOKです。ところがこの原潜艦長が真相究明をほったらかして女性科学者とイチャイチャし始めるから、観てる方とすればもうドン引きです。この女性も、これまた無駄にイケメンの同僚博士ともそれっぽい雰囲気で、開幕10分でもう「なんなん、これはいったい何の映画なの?」と絶叫したくなります。いきなり三角関係を見せられるとは、特撮モンスター映画にしては珍しい展開です。肝心のタコはサンフランシスコ上陸の場面でその全貌が明らかになりますが超巨大タコでしかも六本足、いくら何でもデカすぎだろ。このタコは放射能で巨大化したわけではなく、水爆実験でフィリピン海溝の生活環境が破壊されたので浅海に出現したという不自然な説明(いちおう放射能は帯びた体にはなっている)、「最近はなんでも水爆のせいにしたがる」なんてセリフまであります。これは撮影に協力してくれた軍部というか海軍に忖度した結果だと推測できますが、けっきょく大ダコ退治に活躍したのは海軍だけで陸軍の登場はないも同然という展開には苦笑させられます。ハリーハウゼンは低予算ながらも精一杯頑張った仕事ぶりですが、いっそのこと水爆実験で放射能を浴びて巨大化し六本足に突然変異したという説明の方がすっきりしたと思います。最後は原潜が魚雷を撃ち込んで大爆発というのが大ダコの最期ですが、「JAWS」のサメの最期はスピルバーグのこの映画へのオマージュなのかもしれません。 「タコが主役の怪獣映画は駄作しかない」というのが私の持論ですが、この元祖タコ怪獣映画にも見事にあてはまりました。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2019-03-19 22:38:55)
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