1. タキシード(2002)
駄作と言うほどつまらない訳じゃないけど、コメディとしてもアクションとしてもハジけておらず、中途半端な作品であることは間違い無い。 まず「何かを身に着けると超人になる」という設定がありがちだし、特にタキシードに拘る必然性も無い。またジャッキー演じる主人公・ジミーの掴み所の無い微妙なキャラ設定のせいで、何も分かっていない素人がプロを引っ掻き回す痛快さも、逆に陰謀に巻き込まれて行くハラハラ感も出ていない。相棒の女のとぼけたキャラクターも露骨にウケを狙い過ぎで鼻につく時がある。 肝心のカンフーアクションも暴れっぷりが中途半端でリアリティとコメディのバランスが取れていないし、下ネタで笑わせようとするシーンも寒い。個人的にはCGを使おうがワイヤーアクションに頼ろうが面白ければ何をやってもらっても構わないのだが、それで面白くなってないのが問題。 結局、まったく同じタキシードが二着しか出てこないからアクション面でも娯楽面でも広がりが出ないのだと思う。例えばタキシード以外に「戦闘用ドレス」とか「戦闘用メイド服」なんかを出して、それを相棒の女が着てしまって、「ちょっ、ちょっと、何よコレ~!キャ~!」とか言いながら見事なカンフーアクションを披露したらもっと面白くなったと思う。 基本的に「娯楽アクション映画」なんだから、「タキシードの開発費用とか機密があるから何着も無い」、といったストーリー設定上のリアリティに縛られてつまらなくなるよりも、コメディとして優先すべきものがあるはずなんじゃないかな。 [地上波(吹替)] 4点(2007-03-23 17:01:36) |
2. ターミナル・ベロシティ
《ネタバレ》 まあ、「007」シリーズみたいなスカイアクション(?)を見せるだけの映画ではあるけど、あくまで消費娯楽映画としては王道的な作りなので、過度な期待さえしなければ暇つぶしにはなるレベル。全体的にテンポも悪くないし、地上ではやり尽くされたご都合主義アクションも、空中に舞台を移せば自動的にハラハラ感も増すし、景色も良い(笑)。何より、地上に落下するまでの制限時間があるから、「どうせ助かるんでしょ」と思いつつもドキドキしながら見ていられる。 ただ、中途半端なコメディ要素は良し悪し。軽めのノリは、ちょっと頼りない主人公のキャラクターと合っていて個人的には悪くないと思うけど、やはり作品全体の緊張感が削がれているのも確か。また、ラスボスとの超マヌケな戦いとか、「金メダルを取れなかった」という伏線を、わざわざロシアまで行って表彰されるシーンで消化するラストなどは完全に蛇足。 落下する車から脱出してキスするところで終わってればもう少し点数を上乗せしても良かったけど…。 ご都合主義の助け無くしては成立しない薄っぺらいストーリーゆえに8点以上付けられるような傑作ではないけど、それなりにテンポの良い娯楽性は持っているので3点以下を付けるほどヒドくもない。まさにここの平均点あたりが妥当なところでしょう。 [地上波(吹替)] 5点(2006-10-27 16:43:47) |
3. TAKESHIS’
《ネタバレ》 「座頭市」や「菊次郎の夏」など、割りと一般向けの分かりやすい作品を作ってきただけに、今作も娯楽映画だろうと思って見た人はご愁傷様です(笑)。 アンチミステリーとかメタミステリーなんてジャンルに慣れ親しんでいるようなヒネくれた人でないと、この手の作品を楽しめないのも無理はないし、評価が下がりがちなのも当然かも。 「最初と最後が繋がる円環構造」とか、「見ている者を混乱させる事が目的化しているメタ構成」とか、それゆえ「結論が無い」とか、こうした作品特有の典型的特徴は有しているから、そう言う意味では、むしろ分かりやすい作品とも言える。 そんな構造解析を楽しむべき作品ではあるけど、残念ながら、今作はそこまで徹底して作られているようには見えなかった。監督本人も「好きにやりたい」という気持ちの赴くままに撮ったようだし、変に穿った見方を観客にされる事も望んでいないはず。 ただ、地位も名誉も金も手に入れてしまった監督の虚無感や不安感、厭世感といった色々なモヤモヤが、作品内現実と作品内フィクションの「入れ子構造」を通して強烈に表現されてはいる。 まさに「映画は理解するモノではない 感じるモノだ」って感じ。まあ何にしても、このくらい好き勝手にやらせてもらえる程度に大御所になったというのは羨ましい限り。 賛否、どちらの意見もよく分かるので、間をとって5点献上。 [DVD(邦画)] 5点(2006-10-16 17:34:50) |
4. ダーク・ウォーター
《ネタバレ》 監督の意図的な変更とは思うけど、もともとホラーとしては淡白だった日本のオリジナル版よりも、さらに恐怖演出が抑えてある。ほとんどホラーらしい演出は無いと言っても過言ではない。 しかしその分、「親子愛」というテーマをより分かりやすく前面に押し出した構成により、オリジナルよりも作品としての完成度は高まったと言える。ラストの三つ編みのシーンは素直に感動した。 ただ、良くも悪くも、基本的にストーリーに関わる部分で大きな変更点は無いので、既にオリジナルを見ている人には物足りないのも事実。また、全体的に淡々とし過ぎていて、間延びする場面が多いのもマイナス。これならあと10分は短く出来る。オリジナルの消化不良だった部分を分かりやすく補ったアレンジ版というところ。 [DVD(字幕)] 6点(2006-08-31 11:11:41)(良:1票) |
5. タイムクラッシュ・超時空カタストロフ<TVM>
《ネタバレ》 この手のタイムトラベル系の映画としては、「マイノリティ・リポート」や「ペイチェック 消された記憶」のように変なタイムパラドックスの自家中毒に陥らず、シンプルにまとまっていて見やすい。マイナーなB級作品でも、全体のテンポの良さなど、ちゃんと娯楽映画として観客を意識している作りに好感が持てる。 観客自身がこの映画を通して、違法タイムトラベラーのように歴史上の災害や大事故の傍観者となっていたとするオチも利いている。 やはり唯一の欠点はキャサリン・ベルの巨乳が活かされていない点。これだけは声を大にして訴えたい。 [地上波(吹替)] 7点(2005-08-26 16:52:58)(笑:1票) (良:1票) |
6. ダブル・チーム
やたら上半身裸になる男たちの挽歌。 内容は無い。以上。 唯一学んだ事は、近くで爆発が起こった時はコカ・コーラの自販機を盾にすると助かるかも知れないという事。 [地上波(吹替)] 4点(2005-07-28 01:19:11) |
7. TAXi3
どうせ「タクシーが雪山を走ったら、みんなビックリするぞ~」という発想のみで作られたであろう作品。 その他のストーリー部分はすべて水増し。前作もひどかったけど、今作もほとんどストーリーなんてあって無いようなもの。このシリーズの売りであるはずの、カーアクションも少ない。途中に入るギャグも下らないものばかり。つくづく最近のリュック・ベッソンの手がけた作品は時間の無駄にしかならない。 [地上波(吹替)] 1点(2005-04-17 10:54:31) |
8. 箪笥
《ネタバレ》 普段、サスペンスやホラー、ミステリーと言ったジャンルをまったく見ない人にならインパクトがあるかも知れないけど、多少この手の作品群を見ている人なら、間違いなくオチで拍子抜けする内容。 ひと昔前ならともかく、今どき「トラウマによる多重人格」とか「幻覚オチ」なんて、よくこんな手垢のついた陳腐なネタをまともに使えるなあと感心する。 とにかく目新しい着想や意外性が無く、「リング」系の恐怖演出から「妄想オチ」というパターンに至るまで、既存のホラーやサスペンスのパクリ(「シャイニング」「サイコ「呪怨」等々)。すべてが借り物の域を脱していないパッチワーク。 全体的に思わせぶりなだけのシーンが多く、終始ダラダラとしているくせに、家族構成や状況などの基本的な説明が少ないため、人間ドラマも薄っぺらい。実際「姉妹」とか「継母」という初期設定を見ただけで、だいたいその後の展開が読めてしまう。 そもそも箪笥で圧死なんかするかなあ?しかも空っぽの洋服箪笥じゃなかった?少なくとも声は出せるでしょ。それに何で箪笥の中で首吊りなんかする?こういう突っ込みどころが多く、怖がらせるためのリアリティにも欠けている。 いろいろ全国から募集した怪談話を元に作ったらしいけど、もっと他に目新しい都市伝説やら民間伝承は無かったのか。あまりにも話として凡庸。 また、今作はDVDで見たけど、画面がやたら暗い!暗すぎて夜の室内のシーンは何をやってるかほとんど分からないほど。演出として暗くする事と、客にとって画面が見づらい事は別問題。こういう部分に留意できない点も、監督を始め、製作サイドのセンスの無さを物語っている。 [DVD(吹替)] 2点(2005-03-27 16:00:22) |
9. ダイヤルM
《ネタバレ》 こんな幼稚な計画のどこが「Perfect Murder」なのか? まず妻の愛人に殺人を依頼する感覚が分からん。また、そんな奴にぺらぺら殺人計画を話す神経も分からん。見ていて、「この会話を録音されてたら、逆に脅しに使われるんじゃないの?」と思っていたら案の定。 「何故そんな不用意なマネをしたのだろう」とか、「いったいどう切り抜けるのだろう」と思っていたら、「口封じのために殺す」という、実に直接的かつ安直かつ単細胞な手段に出る夫(笑)。おいおいおい、なんだそりゃ(笑)。要するに、何も考えてなかったってことかい! そのあまりにもサスペンスとして工夫や意外性の無い展開の連続に開いた口が塞がらなかった。 メイン登場人物が三人しかいないのだから、意外性のある展開にするのは難しいかも知れないが、それならばもっと一人ひとりの人間描写を濃密にしてもらいたい。 結局、夫と妻の愛人の対決でしかなく、そこに妻の思惑が深く絡んでくる事もなく、思い切り肩透かしを食らった気分。はっきり言って駄作。 [映画館(字幕)] 1点(2005-01-30 10:28:48) |
10. TAXi2
<前作未見> 見所は「レース中の車をあっさり追い抜いて行く暴走タクシー」という導入シーンのみ。見るのはここだけで十分なほど、その後の大暴落ぶりが著しい。あからさまに取って付けたような、どうしようもなく稚拙なストーリー。娯楽映画という事を言い訳にして日本人をバカにする事を目的にしているような、センスの無いギャグの数々。弾け切れていない主人公の中途半端なキャラクター。グダグダな展開に、盛り下がるだけ盛り下がったまま終わる適当なラスト。駄作。 他国や自国を風刺するも、ギャグを混ぜるも、何事もセンスとポリシーが無ければ、この作品のように、ただ下品になるだけという良い見本。 1点(2005-01-08 06:12:11) |
11. 弾丸ランナー
《ネタバレ》 「ポストマン・ブルース」の原型か? 「アンラッキーモンキー」や「MONDAY」に比べたらシナリオに一貫性があるが、やはり他作品同様、全体的にストーリー展開が行き当たりばったり過ぎる。はっきり言って、最初から最後まで監督が計算しているとは、ちょっと思えない(その荒削りっぷりがこの監督の魅力なのかも知れないけど)。 この作品も、最初は些細な事から始まり、途中から破綻した方向に進むという黄金パターン。後半に行くほど、見ている方もまさに「ランナーズハイ」のような、一種独特なカタルシスを感じられるようになるのは面白い。 しかし、ラストの終息の仕方がいい加減なのが残念。あのカタルシスのまま、みんなで星空を眺めて終わるというような、爽やかなラストが良かった。 今後はこういう勢いだけの脚本ではなく、もう少し落ち着いた作品が見たいところ。 [ビデオ(邦画)] 5点(2004-11-27 11:33:36) |
12. タイムライン
《ネタバレ》 <原作未読・映画版のみの評価> タイムトラベルもの特有の「歴史を変えてはいけない」というタイムパラドックスに対する考察が適当で突っ込み所が満載。その整合性の無さからくるストーリー上の矛盾点、ご都合主義的な展開があまりに多く、娯楽作品として見ようにも作りが粗雑すぎて楽しめない。タイムパラドックスの矛盾を出来る限り調律する気が無いのなら、始めからこの手の題材を扱うべきじゃない。 とにかく露骨な「設定のための設定」が多く(すぐに戻らせないために、持ち込み禁止の爆発物を現代に戻った途端に爆発させて、タイムマシンを破壊したりとか)、始めに「オチありき」の出来レースのような脚本に興醒め。序盤の発掘現場の石棺や壁画のシーンで、その後の展開の見当もついてしまう。 SFアドベンチャーとしてもワクワクするものが無いし、恋愛ドラマとしても中途半端。恋愛要素もお互いが心を通わすようなイベントも無いし、過去に残る際の葛藤もまるで無し。そこまでふたりが惹かれる必然性に欠けるので、感動の押し付けが白々しいだけ。 その他の登場人物も無駄に多く、ただ過去に行ってあたふた逃げ回っているだけで、ストーリー上の存在意義が薄い。 「娯楽作品として楽しませる」ということは「お手軽に作ればいい」という意味ではない。 [ビデオ(字幕)] 3点(2004-10-24 17:43:32) |
13. タクシードライバー(1976)
《ネタバレ》 「ここから飛び出して何かをしたいんだ」。 このトラビスの言葉こそが、現代人に共通している、豊かでありながら何かを渇望している心の叫びを集約したものだろう。作品内で描かれる、早くも70年代において経済大国アメリカが陥った「心の空洞化」という病に冒された姿は、まさに彼の大国に追随して経済発展を遂げた現在の日本の姿でもある。 トラビスの周りには誰もいない。家族も登場せず、友達も恋人もいない。タクシーの中だけが、彼の世界のすべてである。その孤独感は自己の立脚点を見失わせるに十分なものだ。トラビスも、オウム真理教の信者がそうであるように、社会の自分に対する不当な評価を何とかごまかそうと、社会問題などと繋がる事で辛うじてアイデンティティやプライドを保とうとする。自分すら救えない人間が、他人を救うことを「目的化」することで、自分の存在価値を得ようとする虚しさにも気付かないまま。 しかし、「何かを変えたい」とか、「役に立つ人間でありたい」とする気持ちは誰の中にもあるだろう。それを実現できている人や、平凡でいることを受け入れていられる人はいい。だが、自分の存在意義を確立できない人の代替行為を否定することは、その人間の存在をも否定することに繋がってしまう。誰でも漠然とした心の空虚感から逃れることは難しい。トラビスを犯罪者であると安易に断罪することは、社会の病理だけでなく、自らの心の闇から目を逸らす行為でもあるだろう。 ただラストはちょっと疑問。動機はどうあれ、さすがに三人も殺しておいて、数ヵ月後にあっさりと職場復帰しているのは無理があるだろう。自らの罪と共に心の空白にも向き会うという描写が欲しい。 8点(2004-10-07 22:49:06)(良:1票) |
14. ダイ・ハード
「孤軍奮闘」もの(?)のアクション映画としての完成度は高い。 ビルと言う閉鎖空間である分、隠れ潜んでテロリストを1人づつ倒していく展開にあまり無理が無く、多少のご都合主義にも目を瞑れる。 ただ、中盤までの展開が少し悠長すぎる事と、そのため全体的に時間が長めになっているのがマイナス。展開もオチも決まりきってる娯楽アクション映画なんだから、もっと時間を削ってテンポアップして欲しい。 6点(2004-10-02 19:31:19) |
15. ダークマン
《ネタバレ》 元々、あまりこういう「復讐モノ」って好きじゃないんです。「復讐させるための初期設定(暴行・殺人等)」が見ていて痛々しいし、悪党をやっつけていく過程も、それが憎しみの産物である以上、スッキリ感もありません。 また、爆発でほとんど焼失したはずのパソコンやら人工皮膚製造機(?)を、外もまともに歩けず、金も人手も無いであろう彼がどうやって調達したのかといった部分に、かなりご都合主義的な部分が見られます。シリアスな復讐劇な分、そういうディテールには気をつけるべきではないでしょうか。 他にも悪役側が「小悪党」といった印象で、まったく魅力が無いのもマイナス。建設中のビルの上に連れて行くのも意味不明。普通に殺しておけば良いんじゃないの?ラストでも、ワイヤーにぶら下がって来る見え見えのダークマンの蹴りを、避けもせずあっさり喰らうというシーンにも呆れます。 好きな人には申し訳ありませんが、良くも悪くもアメコミの実写版です。「スパイダーマン」もそう感じましたが、やはりストーリーのレベルが低いと言わざるを得ません。 4点(2004-09-08 13:32:21) |
16. ダブル・ジョパディー
《ネタバレ》 「同じ罪では二度と裁かれない」という法律を逆手に取る。その着眼点は良いけど、サスペンスにもミステリーにも成りきれていない中途半端な作品になっているのは残念。 基本的にあまりにも計画が大雑把。あんなに簡単に警察や裁判所を出し抜けるものなんですかねえ。普通、「巨額の保険金にまつわる殺人事件」で、おまけに「死体も出ない」という事になれば、「自殺を装った自作自演」なんて真っ先に疑われるんじゃない?ちょっと調べれば、いくらでも不自然な点や矛盾点なんて出てくると思うんだけど。 まあ、それを言ったら映画にならないんだろうけど、もうちょっと気の効いた計画は無かったものか。さらに別人の戸籍を入手できたとしても、あんなに派手に人前に出まくるなんて、いくらなんでも無茶苦茶でしょ。知人が見てたらどうすんの? と言うか、そもそも、こんな特殊なケースでも本当に裁かれないのか疑問。明らかに状況から言って別の事件として処理されると思うけど。無理があるなあ。 もっとも監督は、「普通の主婦であった主人公が精神的に強くなって息子と再会する」という「感動的なドラマ」を撮りたかったのか、サスペンス部分はそのための「味付け」程度にしか考えていない感じ。 ただドラマとは言っても、肝心の夫や愛人、保護観察官といったメインキャラの人間描写は中途半端で薄っぺらいし、刑務所内での囚人仲間とのやり取りもほとんど無し。おまけに時間経過も唐突なので、感動演出のためにきちんと描くべき「息子に会えない六年間」の重みも感じない。 やはりつまらない作品にたいてい共通しているのは、やる事が「中途半端」という点かな。 [ビデオ(字幕)] 3点(2004-07-30 02:50:59) |
17. ダークシティ
《ネタバレ》 SF+サスペンス+アクション=中途半端、の典型的な作品。「自分達の信じていた世界が作り物かも知れない」という、ありがちな世界観に加え、なんと導入で「異星人が人間の記憶やら何やらを改変している」というオチをバラしてしまうという太っ腹(笑)。そのため「記憶喪失」とか「死体」という、せっかくのミステリアスな伏線が無意味になっている。 そもそもこの異星人は何がやりたいのか分からない。「人間にはそれぞれに魂があるが、我々はひとつの魂を共有している」という、無理やりな心身二元論が当然のように前提になっているのも疑問。 人間を理解するのにあんな大掛かりで手間隙のかかる作業をする必要があるのだろうか。仮に理解したとして、どうするつもりだったのか?ラストで主人公の魂とひとつになる、みたいな部分も、「記憶」と「魂」をごっちゃにしていて実にいい加減(第一、それまでは主人公を殺そうとしてたんじゃなかったっけ?)。 それに突っ込み所として、「記憶」を薬で他者に移植することは原理的に無理。ひとりひとり、脳の神経回路の構造が違うんだから、ある人の記憶を物理的に取り出せたとしても、移植先の人間がまったく同じ構成の脳内神経回路を持たない限り、その記憶はまったく意味を成さない。 超能力の設定も空を飛んだり人を眠らせたり、好きな所に「どこでもドア」を作れたりと、何でもありなので、逆につまらない。この手の設定は、ある程度制約があるからこそ、色々と工夫や駆け引きが生まれて面白くなるもの。何でも出来たら、それはご都合主義ってだけでしょ。 人間達の普段の生活サイクルや、記憶改竄の必然性、宇宙空間との仕切がただのコンクリートの壁一枚だけとか(主人公も飛んでった刑事を超能力で助けてやれよ!)、世界観の細部が練りこまれておらず、突っ込み出したらキリが無い。 ラストの超能力バトルもアクション演出にセンスが無い上に、今までの世界観にまるで合っていないし、この手のバトルは実写にすると途端に安っぽくなる。 全体の作り自体は丁寧で好感が持てるが、とにかく設定が悪い意味でB級で中途半端過ぎる。 [ビデオ(字幕)] 3点(2004-06-19 16:54:40)(良:1票) |
18. タイムトラベラー/きのうから来た恋人
《ネタバレ》 全体の雰囲気が明るく、ノリも軽いので、普通のラブコメと受け取る人が多いが、実際には、かなり深いテーマを根底に据えている映画。つまり人間の人格や性格といった「精神的本質」は、後天的なものか、先天的なものかという問題である。 家庭環境や社会環境が人間の人格形成にどれだけ影響し得るものかという事を強く問い掛けている。作中の主人公は、両親以外の人間関係を知らないがゆえに、他者に傷つけられたり、裏切られたりといった経験が無い。彼の純粋無垢な人格は赤子のそれと同じで、自己存在を否定されるような事例に出会った事がないため、人を疑ったりしないだけであり、まだ本当の意味での人格的成長をしていない段階にある。 すなわち、地下シェルターという楽園から出て、否応なく現実の人間関係の中で生きていかなければならない彼の今後の人生の成り行きが、このままハッピーに続いていく保障はどこにも無いかも知れない訳だ。多用な人間関係の中で、彼の人格形成に今後どんな影響があるのかは想像するしかないが、人格形成における「家庭環境や社会環境の影響」と「個人の資質」との関係を考えさせる作品である事は間違いない。 ただ惜しむらくは、それとは別に普通のラブコメとして見ると、たいしたイベントや笑いがある訳でもなく、かなり淡々としたストーリー展開で退屈。また主人公には中途半端に「知識」や「常識」があるので、現代社会とのギャップに驚いたり、非常識な行動で他人を巻き込む面白さにも欠けている。もう少し、ふたりが心を通わすに足る劇的なイベントも欲しかった。相手の女性が主人公を好きになる動機も薄い。 [ビデオ(字幕)] 6点(2004-06-02 16:13:04) |
19. たそがれ清兵衛
幕末の不安定な時代を、同じく先行き不透明な現代とシンクロさせ、平侍の生き様を通して、平凡な日常と向き合う生き方や本当の幸福とは何かを問い掛ける。ただ、テーマが地味なだけに、どうしても展開も地味にならざるを得ない。「平凡に生きることは悪い事ではない」とする、いわば「癒し系」映画。 6点(2004-03-21 16:47:49) |
20. ターミネーター3
ジョンとケイトがミスキャスト。脚本の問題もあるだろうけど、まったく魅力が感じられない。ジョンはちょっとハンサムな岡村に見えるし、ケイトに至っては、顔も思い出せないほど印象が薄い。これは敵キャラ、T-Xにも言える事で、「何でもアリ」の最新ナノマシーン兵器の割に、やっている事が地味で凄味が伝わってこない。カーチェイスは凄いものの、肝心の戦闘シーンが迫力不足で中途半端。全然しぶとさが無い。ストーリーも、続編製作のために、前作の存在意義を無視するような安直な展開。エンターティメント作品としての作りはそこそこだけど、「ターミネーター」の続編としては駄作。 4点(2004-02-13 12:16:44) |