21. パピヨン(1973)
もう30年も前になるのですねぇ・・でもかなり鮮明な記憶があり、それだけ強烈なインパクトがあったのですね。パピヨンとドガの友情、脱獄への不屈の精神、劇悪な環境に耐えて生きぬき、最後の死ぬかもしれない賭けにも等しい脱獄をよくぞやってのけたと思う。海原で漂いながら自由をかみしめるラストも忘れられない。パピヨンのテーマ音楽も美しく哀切。脚本がダルトン・トランボだから、パピヨンがドガの名前を言わずに耐えた友情がことさら印象深い。もう一度みたい、、というので久々に再見。あんな劣悪な独房で生き抜くという一心で耐える描写がすさまじい。同じ彼の脱走ものでも大脱走とは異質で、偏執的なまでに「懲りない」脱走劇をマックイーンが鬼気迫る演技で見せ圧巻。人間がここまで強く生きることができるのかと信じられない思いがする。 9点(2004-05-07 20:48:02)(良:3票) |
22. バティニョールおじさん
聖人ではないいわゆる俗っぽい肉屋のおじさんが、成り行きからユダヤの子供を助けることになる。ごくごくありそうな普通っぽさだが、ユーモアと緊張感が混ざって見た後は爽やかな気持ちになる。この肉屋の娘の婚約者というのが唯一の悪役で、関わりたくない本心のおじさんも良心との葛藤がある。結局は善意が優りおじさんを勇気ある行動に駆り立てるのだが、人間の良心をさりげなく見せてくれるのが気持ちいい。 7点(2004-04-21 17:46:15) |
23. 巴里の女性
《ネタバレ》 長年の共演者エドナのために作ったメロドラマ。すれ違いで悲恋に終わるんだけど、この女性は恋人の母と共に孤児を育てるという生き方をする。波乱の人生の末、笑顔で新たな人生を選択した一人の女性がすがすがしい。ボディアクションなしのコメディでもないシリアスドラマのうえ、わずかな字幕のサイレントでここまで微妙な心理描写ができているのに気がつくと、やはりその演出手腕はすごいことだと感心する。 8点(2004-04-21 17:39:12) |
24. 母の眠り
重い癌を患っていた母親が死んだだけなのになぜ娘が取調べを受けているのか、なぜ娘はああも母に反感を持っているのか、などの疑問は展開と共に明らかになっていく。ドロシーに扮したメリルがかなりのボリュームに見えるのに、病にやつれてからはかなり頬がこけているように見える。(さすがに裸の骨が浮いてるのは吹き替えかもしれない)完璧な主婦というだけの母に反感を抱きキャリアウーマンとして仕事にこだわる娘。でも自分がいざ主婦をやってみるとそれがいかに大変でしんどいことかと思い知る。夫や子供達が何不自由なく自由にそれぞれの好きなことができるのも、彼らの生活基盤を支える地味で退屈な家事を担当する母がいればこそ。父はやはり仕事を口実に現実から逃げていただけなのか。あまりのしんどさに娘は切れてしまうが残り少ない命の母が娘に諭すシーンのメリルがいい。 7点(2004-04-21 17:28:32) |
25. ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
次々起こる危機の連続でも必ず切り抜けてしまうという展開、そこかしこに古今の冒険活劇映画で見たようなシーン、目一杯なCGとサービス一杯・盛りだくさんな割にはなんだかワクワク感がない。レイチェルは死んだと思ったら呪文で簡単に生き返ってるし、何千年の恋は冷たくて何だかあっけないし、、あんまり都合よすぎるのもしらけちゃう感じ。 5点(2004-04-13 23:54:51) |
26. 波止場(1954)
港の労働者たちの組合のボスがまるでマフィアのような悪辣さで描かれている。そんなボスに搾取され牛耳られていても誰も彼に異を唱えることができないでいる。ボクサーくずれのブランドもそんな彼に利用されても反抗できない。不正の暴露に立ち上がるようにアジテーションを飛ばすのは神父のみ、彼の一貫した励ましで兄を殺されたブランドもとうとう証言台に立つ。組合の幹部の不正とか告発など社会派の地味な題材だが、出演者が舞台出身の演技巧者だし緊迫感のある展開で見ごたえがある。ここでは不正に敢然と立ち向かう勇気が描かれているが、監督が赤狩りで裏切り者とされるカザンだからちょっと複雑な感じもする。若いM・ブランドの横顔はP・ニューマンにそっくり。 7点(2004-03-21 21:41:28) |
27. ハワーズ・エンド
出演者は豪華でそれなりに見ごたえはあるしイギリスの上品な香りは好ましい。しかし話はまとまりなくやたら暗転する映像も気になる。エマとホプキンスがいきなり婚約したりレッドグレーブはエマに家をくれてしまうし、貧しい夫婦の夫はともかく、妻はどうなったのか、あんなに肩入れしてたのにヘレナはどうしたのかなど分からないことが多かった。 5点(2004-03-08 23:12:18) |
28. ハンナとその姉妹
3姉妹とその関係者などの登場人物たちは皆個性的で、常識的でまともなのは長女のハンナだけのように見える。アレン演じる心配性で病気恐怖症の男のセリフはおかしくて笑える。短い話をつないでいくような作りだが、それぞれの性格や人間模様が浮き上がってきて面白い。ダイアン・ウィーストやマイケル・ケインなど達者な人たちが意外な変わり者を演じてて楽しめる。 7点(2004-02-26 22:30:16)(良:1票) |
29. ハッド
40年前のこの作品で今に重なって見える事件がある。父親が長年丹精こめた牧場で口蹄疫が発生する。どんなに辛くても全ての牛を賭殺処分しなくてはならない。ブルドーザーで大きな穴を掘って牛を追い込み、牛たちは一気に銃殺されて埋められていく。 仕方ないこととはいえこの牛のアウシュビッツには胸が詰まる。今も牛や鳥などがこうして処分されているのだろうと思うとかわいそうになる。15年ぶりに帰ってきたハッドは、この感染牛を知られる前に売ってしまおうと言うような酒飲みのやくざな男。家を出る前にも飲酒運転で兄を死なせていて、牧場は老いた父と兄の息子が経営している。謹厳実直な父はこの息子を快く思っていないが、甥は快活で豪放なハッドに好意を持つ。父と息子の対立、牧場を襲った悲劇、崩壊など暗い話が描かれる。父のメルヴィン・ダグラス、ハッドのポール・ニューマン、甥のブランドン・デ・ワイルドの3人がいいのでこうした人間模様に見ごたえがある。メルヴィンは30年代の若くて軽妙なのしか知らなかったが、渋くてシリアスな演技が見事だった。ブランドンはシェーンから10年、面影を残して成長し立派な若者になった姿が見られる。 8点(2004-02-25 22:40:04)(良:3票) |
30. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
これはキューブリックの傑作シニカル、ブラックコメディ。60年代当時、米ソの核開発競争が有り、62年にはソ連がキューバにミサイルを配備、アメリカは海上封鎖で対抗という、核戦争勃発寸前のいわゆるキューバ危機があった。(この裏話が13デイズ)核の恐怖は今よりもっと深刻だっただろう。それをあえてコメディにして見せたセンスが素晴らしい。皆さんが言われるようにP・セラーズの怪演、化けっぷりにはすっかりだまされた。3役でもすごいことだが実は彼は当初4役を打診されたらしい。でも断って完成後作品を見てそれを後悔したという。私も4役是非見たかった、残念! 9点(2004-02-04 11:26:52) |
31. バス停留所
これはモンローが演技開眼!とか言われて彼女はがんばってると思うんですが、モンロー好きの私には今ひとつの作品です。ドン・マレーのカーボーイがかなり自己チューで、ノーテンキなのがうっとおしく思えたのが最大の原因ですかね。私はあんな男はごめんですわ。。。マリリンに「やめときなよ~」と警告したくなりました。 6点(2004-01-08 16:27:16)(良:1票) |
32. 花いちもんめ
この映画はボケ老人だけじゃなく、老人問題の抱えるいろんな要素が含まれている。老親二人の田舎暮らし、離れた子供たちとの関係、嫁姑・小姑と嫁の感情問題、ボケ老人を病院に入院させ拘束するしかない状況などなど、、85年というとまだゴールドプラン10ヵ年計画の影もない時、介護は当然のように嫁の義務とされ、こういうボケ老人を抱えた家族を助ける社会的状況もなかった。そういう時代にこの嫁の桂子さんのとった介護法はお手本ともなるべきもので、ここまでできる人が果たしてどれほどいるだろう。映画以上に家庭は混乱し、壮絶でヘトヘトになるだろう。千秋さんのボケっぷりは皆さんが言われてるのでこれ以上言うまでもない。このリアルさと脚本に現実性があることで、現実に直面している人もそうでない人にも、老人問題について教えられ、考えさせられる作品になっている。千秋さん、十朱さんはじめ俳優のキャスティングもよかった。 8点(2003-12-21 16:15:51) |
33. 晩春
最初主人公の紀子は知り合いの年配者が結婚すると「汚い!」と潔癖性のように見えるが、実は親離れしてないファザコン。いつも笑顔で美しいのに、父が嘘をついてまでの再婚話には相手の女性に嫉妬して父に冷淡になる。京都の旅館で子供のように親離れしない娘に、父の言う言葉は優しい。父親の笠智衆が式の夜、一人になってりんごの皮をむいてるところなどしみじみと父親の心情を見せて笠さんが圧巻。戦後24年作、検閲中止直後とはいえまだ配慮したのかお茶、能舞台、京都(清水寺)など日本情緒もいっぱい。 7点(2003-12-12 16:42:59) |
34. パリで一緒に
オードリーの作品は彼女だけでかろうじて許せるのも多いが、これはいくら何でもいただけない。まず脚本が酷すぎる。それでも何とか見られたのはオードリーが素晴らしく美しいし、ファッションが素敵なことだけ。締め切り間際なのに全く書けてない脚本家に雇われたタイピストがオードリー。この脚本家が「エッフェル塔を盗んだ娘」というタイトルで、映画の脚本を行き当たりバッタリの思いつきで話す内容を、この二人が劇中の登場人物になって演じる、と言う筋なんだけどこの話がまるでメチャクチャで面白くない。どんな魅力ある名優でも脚本が悪いとどうしようもないというのがはっきり分かる、ある意味で貴重品。やたら映画関連の作品名、俳優、映画製作のことなど映画関連事項が出てくる。仮装パーティだかでチャップリンまで出して、しかも隅っこで小さくなっている。これでさらに印象悪化。それでも魅力的なオードリーに免じて2点。 2点(2003-11-21 17:52:15)(良:1票) |
35. ハンニバル(2001)
レクター博士がスーパーマンのように鮮やかに殺人をやってのけるが、それが非常に気持ち悪い。クラリスへの愛を際だたせるためとはいえ、脳みそシーンはやりすぎ。懲りまくりの演出はいいけれど、レクターとクラリスとの関係を思うより先に、首吊り、人食いブタなど残酷シーンに対する拒否感が強かった。 5点(2003-11-16 21:28:56) |
36. ハリー・ポッターと秘密の部屋
ポッタちゃんの(主に本)大ファンなので楽しく見せてくれただけでOK。盛りだくさんのエピソードが満載の原作から見れば、限られた時間の映画はストーリーをなぞるのが精一杯という感じになってしまった。 7点(2003-11-14 16:33:32) |
37. バック・トゥ・ザ・フューチャー
何度見てもそのたびに夢中になって見てしまう。これぞ名作の第一の条件。夢がある、笑いがある、スリルがある、娯楽作品に必要な要素が全て完璧にそろい、脚本もいいし役者もいい、話のテンポも軽快である。分かりやすくて大人から子供までみんなで安心して楽しめる。 10点(2003-11-01 13:48:44) |
38. 8月のメモワール
これ、大好きです。ケビンは役得もあってとてもいい。I・ウッドや女の子の子供達が、戦争で心から傷ついた父から「人生で大切なこと:争わない、戦わない」を教えてもらい、自分たちの日常(けんか、差別など)からそれを理解し学んでいく。父の教えを最後に作文にして読むその文章は、私にはチャップリンの独裁者の演説に並ぶ名文で感動した。他にも名文句があって、ビデオは永久保存版になっている。アメリカでは弱腰だと多分受けなかったのではないか。かつてのアメリカンヒューマニズムを思わせる、近年のアメリカ映画では希有の作り方がされている。 9点(2003-10-30 14:26:22)(良:1票) |
39. 裸足の1500マイル
今の観光立国、オーストラリアからは想像もつきませんが、つい近年までこの国は白人至上主義で白人以外の移民を認めていませんでした。この原住民迫害の歴史もアメリカの原住民迫害同様に悲惨なものだっただろうと思われます。これを反省し保護政策に転じた現在、この自己告発と言うべき映画がこの国で作られ、この非人間的な事実を広く世界に知らしめたのはまことに意義深いものがあると思います。一方的な価値観で人間を選別し、動物のように扱う愚かしさ・恐ろしさ・傲慢さをまざまざと見せつけてくれました。ショッキングな話の中でも少女達の勇気と知恵、力強さに救われる思いでした。 7点(2003-10-24 17:20:07) |
40. 八甲田山
見ててホントに寒くなった。これを実際にロケで撮ってるからそれだけでもすごいことです。俳優やカメラ、スタッフの苦労はどんなだったでしょうか。こんな軽装備で極寒の雪山訓練なんてのがだいたい人命軽視もはなはだしい。明治の陸軍のアホさかげんが分かります。寒さと疲労で次々死んでいく兵隊たちが可哀想で恐ろしい描写だった。寒さで精神状態がおかしくなるとホントに服を脱ぎ出すらしい。上官が誤った判断をするとひどいことになるというの生々しく見せてくれた。新田次郎の原作も読むとなおいい。 8点(2003-10-16 15:18:31) |