181. パピヨン(1973)
脱獄モノといえば、「大脱走」や「アルカトラズ」などのように看守の目をいかに欺き脱獄を成功させるか、という所に映画としての面白さがあるのだと思う。しかし、本作は脱獄の過程に関しては意外なほど時間がかけられていない。 その代わりに、夢に出てきた「人生を無駄に生きてきた罪」と「自由」に対するパピヨンの強い意志が一貫して描かれ続ける。全編にみなぎるパピヨンの衰える事のない強い意志と演じるマックイーンが凄い。さらにダスティン・ホフマンという俳優の凄さも改めて感じさせられました。 ラストは絶海の孤島で平穏だが無駄に生きていく決心をしたかのようなドガの姿とは対照的にパピヨンは荒海の中へ飛び出していく。パピヨンの自由への思いと無駄には生きないという意志が最後まで伝わってくると共に波の彼方に遠ざかるパピヨンを見送るドガの表情が印象に残る。 後半に分かり辛かった所(島民と過ごす時間とその後の展開)もありましたが長尺にも関わらず最後まで惹きつけられました。久々に骨太で力強い映画を観ました。 [DVD(字幕)] 8点(2010-10-10 16:25:13)(良:3票) |
182. スラップ・ショット
《ネタバレ》 田舎町のアイスホッケーチーム。ガラガラの客席に薄汚れたホームの競技場。チームは最下位に沈没、選手が出てくると声援どころかヤジが飛ぶ。町の誇りとは程遠いチームの現状。選手はおかしな田舎者ばかり。そこに追い撃ちをかけるような不況とチームの身売り話。そうか・・・。そこからポール・ニューマンを中心に不況もなんのその、チームが一致団結して強くなっていく話なんだな。これはかなり僕の好きなシチュエーション、と期待が高まる冒頭。少々無理があってもまともに強くなっていく過程が描かれるのを楽しみにして観ていたのですが、期待せずに見たB級スポーツコメディと違って名匠ジョージ・ロイ・ヒルと名優ポール・ニューマンの名コンビの映画だけにその過程が度を越した乱闘の嵐で、最後は優勝できてよかったですが予測不能の決勝戦の結末も残念でした。ですが、それでもやっぱりポール・ニューマンは良かった。引退の2文字がチラつき、身売り寸前のヘボチームで奮闘する選手兼コーチという哀愁漂う役が見事にはまっていました。 [DVD(字幕)] 4点(2010-10-04 21:14:05) |
183. 今のままでいて
《ネタバレ》 妻子ある冴えない中年男が自分の娘と同じ年頃の美しい女と仕事先で出会う。しかしその女は自分の娘かもしれない・・・。確証があるわけではないがその疑いは消えない。けれどその女に惹かれていってしまう。気持ちが揺れ動く冴えない中年男を演じるマストロヤンニの渋い味わいのある演技が素晴らしい。そしてその女を演じるのはナスターシャ・キンスキー。この頃の彼女の美しさは強烈に観る者の印象に残ります。そんな彼女が時にはマストロヤンニを誘う。時には無邪気にはしゃいでみせる。ナスターシャの魅力が全開。何故にこの冴えない男にこれほどにまで惹かれたのか分からないし男の方の行動も疑問を感じるところが多い。結末も映画館に入った時点で全て分かってしまう。物語自体には惹かれるものはあまり感じられませんが主演の二人と、多くの場面に流れているエンニオ・モリコーネの控えめな音楽が素晴らしい。また、温かみのある色調の映像も綺麗な映画でした。 [DVD(字幕)] 6点(2010-10-02 22:39:34)(良:1票) |
184. 愛のメモリー
《ネタバレ》 デ・パルマ版『めまい』として有名な作品。観る前はそれ程期待していた訳ではなかったのですがこれは素晴らしい映画でした。ある事件で妻子を亡くした男の前に妻と瓜二つの女が現れる。確かにその展開は『めまい』です。 主人公の男と結婚することになった瓜二つの女が男の豪華な屋敷にやって来る。時折精神的な不安定さを見せる夫、その屋敷に飾られている亡くなった妻子の肖像画に目を奪われる様や屋敷に残されている妻の日記、装飾品・・・。効果的なこれら小道具の配置のさせ方、この屋敷に今でも残る妻の存在感。『めまい』だけでなく、これは同じくヒッチコックの『レベッカ』のマンダレー屋敷を思い起こさせる。この一連の瓜二つの女の行動とその表情は真相を知った後に見直すと全く違った印象を与えてくれます。 事件の真相を見せて以降後半から終盤の緊迫感のある見事な流れ、その末に訪れる空港での再会のラストシーンも素晴らしい。ミステリアスで重厚さを感じさせる音楽や映像も素晴らしく、僕にとってのデ・パルマの最高傑作となりました。 [DVD(字幕)] 9点(2010-09-23 21:38:40) |
185. ジャスティス(1979)
正義とは何か?パチーノは「有罪者を罰し無罪者を釈放すること」と言った。しかし実際に裁判はどうか。正義や真実の究明は置き去りにされ、時には権力を持つ者の圧力で裁判が左右される。時には検事に弁護士、裁判に関わるそれぞれの立場の者が勝つことのみを最優先する。ある弁護士は世間から見向きもされないような事件はいい加減に扱い、ある者は勝って名を上げることにしか興味が無い。そんな大切な事を忘れてしまった者たちの行動を描きながら、最後にパチーノが法に関わる者として「正義とは何か」を裁判の場で叩きつけてくれるというとても分かりやすくも熱い映画でした。パチーノの映画は今までに色々と観てきました。その中で彼の得意技である大熱演絶叫演説も数多く観てきましたが、本作がその初めての頃になるでしょうか。まだ演説がお馴染みの姿になる前で、涙をこぼしながら演説するまだ若さを感じさせるパチーノの姿が新鮮に感じられました。 [DVD(字幕)] 6点(2010-09-20 16:39:35) |
186. リトル・ロマンス
大人から見ればまだまだ子どもですが、もう僕らは子どもじゃない、なんて思う年頃が誰にでも訪れる。そんな年頃の二人の幼さと時折見せる大人っぽさ、そしてそんな二人の恋がとても上品に微笑ましく描かれた作品です。 そんな二人のリトル・ロマンスと共にローレンス・オリヴィエが素晴らしい。彼の存在とその演技、発する一つ一つの台詞は作品に実に味わい深いユーモアと意味をもたらす。自らの代表作である「明日に向って撃て!」や「スティング」の名シーンが登場するのもジョージ・ロイ・ヒルの映画が好きな者にはたまらなく嬉しい。 これがデビュー作であるダイアン・レインの可憐な魅力や義父の優しさ、美しいジョルジュ・ドルリューの音楽と旅先の風景も心に残る愛すべき映画であるとともにジョージ・ロイ・ヒルの優しさと映画作りの上手さをあらためて感じる作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2010-08-28 20:53:31) |
187. 流されて…
豪華なヨットを借り切って贅沢な休日を過ごすブルジョワの若奥様。話の内容も態度も声も全てが高飛車で鬱陶しく思え、そのヨットで働く顔中ひげだらけでムサ苦しく貧しい男がジャンカルロ・ジャンニーニ。臭いだの料理が不味いだのブルジョワの奥様は彼を召使いのように扱い言いたい放題。遭難前にそんな階級の対比をこれでもかと見せつける。そして遭難し無人島に上陸以降はその階級が逆転してしまう、というよくある状況の変化による階級や立場の逆転モノですが、この二人の演技がなかなかの見応えです。時にはコミカルでもありますが、人間の嫌な部分も含め、ねちっこく二人の姿を捉え描かれています。後の当時のマドンナ夫妻による「スウェプト・アウェイ」にジャンカルロ・ジャンニーニの息子が起用されており、父と息子の見比べも面白いでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-22 14:22:45) |
188. ジョニーは戦場へ行った
二度と見る勇気が無いですが、ラストのジョニーの心の叫びと軍の幹部に対し怒りに満ちた表情で神父が放つ強烈な一言、そして「1914年以来戦死者8千万、戦傷者1億5千万、祖国に命を捧げることは美しく輝かしい」と淡々と数字を並べ数行の字幕で作品を締めくくるところに込められたダルトン・トランボの強烈な反戦のメッセージを忘れることは無いと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-08-11 11:40:25) |
189. ラストコンサート
とても落ち着いた雰囲気で、ステラとリチャードを演じる二人の演技にも、音楽にも、風景にも優しさを感じさせてくれる映画でした。特に音楽が素晴らしく、その音楽の使い方も実に上手くてよく計算されています。 時に2人は喜怒哀楽を激しくぶつける場面もありますが、全体を通して意識的に台詞を抑えて、あの優しいテーマ曲にのせて二人の行動や表情を少し離れてカメラが捉える。しかし台詞は無いですがその時の2人の内なる心の声や感情が見事に見る者に伝わります。 豊かな表情を見せるステラを演じた女の子がとても魅力的でした。海辺の風景も、街中の風景も映像の素朴な美しさもとても印象に残る作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-07 17:12:57) |
190. 男はつらいよ 寅次郎子守唄
《ネタバレ》 前半は寅さんが連れて帰ってきた赤ん坊の騒動で笑わせてくれます。しかし子どもが欲しくても子宝に恵まれなかったおばちゃんがわが子のように赤ん坊を可愛がる姿と、自分の子どもをいとも簡単に置いて姿をくらました挙句、気が変わって軽い気持ちで迎えに来る若い親との対比が少し悲しくもあります。 後半は寅さんがしっかり恋愛モードに突入してくれます。ここでいい味を出すのが江戸川合唱団のリーダー、大川弥太郎。中期以降の作品では寅さんは完全に若い二人の恋の指南役に回ることも多くなります。本作でもその傾向はあるものの、寅さん自身も大川と同じ相手にしっかり恋をしており、大川は寅さんのれっきとした恋のライバルでもあるんですね。これは第14作。まだまだ寅さんは若いなあと感じ、嬉しくなるのです。 そしてその恋の相手は十朱幸代演じる看護婦さん。寅さんのマドンナは悩みを抱えていたりどこか影のある女性像が多い中、そんな影を感じさせない十朱さんが演じる庶民的で明るく元気一杯のマドンナ像と寅さん、とらやの人々との絡みは陽気で明るく、シリーズの中のお気に入りの一作です。 [DVD(邦画)] 8点(2010-07-30 22:10:13)(良:2票) |
191. 刑事コロンボ/自縛の紐<TVM>
《ネタバレ》 いつになく警部が怒っています。途中からはマイロに対し完全に敬語も使わなくなった。警部と比べると富も地位も雲の上の犯人ですが、これはいつも通り。ですがマイロに殺された被害者の奥さんを精神的に苦しめる卑劣なマイロが許せなかったのでしょう。 普段は庶民派の人情刑事で殺害に及ぶしかなかった犯人の事情に同情を示すこともある警部ですが、今回は心底マイロが許せなかったのか、正義の人、コロンボがいつになくカッコ良く熱い一作。 エンドロールでマイロの経営するジムの何とも幸せそうなCMソングが流れますが、マイロの実像とのギャップの大きさを感じさせ、テレビのCMに対する皮肉のようでいいですね。 最後に本作の笑いドコロを。捜査のため訪れたとある会社で、かなりウザい受付のお姉さんとかなり面倒くさい警部との絶妙の間とそのやり取りには笑わせてもらいました。そして皆さんご指摘の通り、警部のあの青ジャージ姿はかなりヤバいです。 [DVD(吹替)] 7点(2010-07-29 19:15:52) |
192. がんばれ!ベアーズ
テイタム・オニールは「ペーパームーン」といいい本作といい、ちょっと勝ち気で生意気な女の子の役がいいですねえ。ダメチームだったベアーズの監督になった、飲んだくれで一見だらしなくてひと癖ありそうな中年男のウォルター・マッソーもまたハマリ役でした。試合は負けるより勝ったほうがいいに決まっている。でも勝ち負けだけが全てじゃない。決勝戦の終盤の大切な場面で試合に出してもらった、補欠だった少年が外野フライをキャッチしたシーンなんて本当に素晴らしかった。大人も子どももそれぞれの感動があってそれぞれの楽しみ方ができます。いい映画です。 [DVD(吹替)] 8点(2010-07-25 00:07:48)(良:1票) |
193. 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく
シリーズを通してマドンナの多くが人生の分岐点(その多くは結婚だったりする)に迷い、最後は寅さんがそっと背中を押してくれる・・・というスト-リーが多く、本作も最後はマドンナが結婚を決意するのですが本作のマドンナの木の実ナナさん、あまりにも情熱的でパワフルな紅奈々子のキャラクターが寅さんのマドンナ像としてはちょっと熱すぎだったかな、という気がしました。しかし、引退を決めた最後の公演で彼女が歌う姿はとても良かったですね。そして最後の舞台を見にいくことが出来ないと言いながら実はそっと一番後ろで気付かれずに彼女が歌う姿を見つめて立ち去る寅さんが男前でしたね。冒頭に熊本の山村で留吉に語った男の美学そのままの姿でした。 [DVD(邦画)] 6点(2010-07-11 16:41:44) |
194. 大統領の陰謀
個人的にはケネディからニクソン、この時代の事件の究明や人物にスポットを当てた映画は好きなのですが、特に本作はこの時代や事件の背景に関する余程の知識が無いと全てを理解する事は難しい映画だと思います。 しかしどんな些細な情報でも関係者の裏を取り、一つ一つの小さな点を突破口に線に結び付けていく地道な取材、妨害や圧力に屈しない姿勢などジャーナリストの現場の最前線を描いたとても熱い映画でした。 名前は出てくるものの、敢えて黒幕や妨害工作を行う者はほとんど登場させず、困難に立ち向かうジャーナリストの姿を伝える事に的を絞った映画でもあるので事件の背景など全て分からなくとも、身の危険を感じながらも重い口を開いていく証言者や事件の究明に挑むジャーナリスト達の熱き人間ドラマとして充分に見応えのある映画となっています。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-09 10:20:55) |
195. ロバと王女
美しい色彩感覚にあふれた画を撮らせたら天下一品のジャック・ドゥミ監督。これまでの作品でも見せてきた色や音楽に対するこだわりが細部にまで感じられるメルヘンの世界。このジャック・ドゥミの創り出す美しい世界にミシェル・ルグランの美しい音楽が流れている。そこに美しいカトリーヌ・ドヌーブがいる。僕にとってはこれだけでもう十分なのです。この3人による「シェルブール」や「ロシュフォール」と比べると特に前半から中盤はミュージカルの要素が控えめになっていますが、挿入される歌がどれも素敵でいいアクセントになっており、これもフレンチ・ミュージカルの傑作をこれまでにも撮ってきたジャック・ドゥミ監督のこだわりだったのでしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-07 22:55:08) |
196. トランザム7000
まあアホな映画なんですが、大好きな映画なんですよ。キャスト良し、テンポ良し、音楽良し、ギャグも良し、気軽に観てただ笑っていればいい。素晴らしきコメディです。 若き日のサリー・フィールドのじゃじゃ馬娘ぶりも、ジャスティス保安官と息子のギャグ親子も(保安官役のジャッキー・グリーソンが素晴らしすぎです)バンディット&スノーマンの痛快さも皆が見事に愛すべきキャラクター揃いです。 広大で陽気で大らかなアメリカがたっぷり味わえる、お気楽でユルいんですがそれでいてスピード感あふれるアメリカ南部の州横断ぶっちぎり愉快痛快ロードムービー! [DVD(字幕)] 9点(2010-07-06 21:50:31) |
197. 幸福の黄色いハンカチ
《ネタバレ》 70年代初頭のトニー・オーランド&ドーンの「幸せの黄色いリボン」という全米№1の大ヒット曲(これがいい歌!)を聞いた山田監督が本作のアイデアを考え出されたそうですね。 この曲は刑期を終えた男が故郷で待つ女の元へ今でも自分を待っていてくれるなら目印に樫の木に黄色いリボンを結んでおいてほしいと手紙を出す。故郷に戻るバスの車中、目印の黄色いリボンを怖くて自分の目で確かめられずにいたら樫の木に数え切れないほどの黄色いリボンが結ばれており、バスの中が歓喜に包まれたというアメリカで語り継がれる実話に基いた3分ちょっとの歌。 これを山田監督は人生の行くあてをほんの少し見失いかけた若い男女を登場させ見事に日本流のストーリーを創り上げました。国民性や価値観は違っても人の心に響くモノは万国共通なんですね。台詞なんていらない、車中で見守る若い2人と同じ目線で再会する様子を遠くからそっとカメラが捉えるラストも何度観ても感動します。 ムサ苦しくて脚が短くてダサくてカッコ悪い青年を演じた武田鉄矢(武田さんゴメンなさい!)、これもアクが強い人物像を見事に演じた桃井かおりの二人。健さんの存在感に負けていない素晴らしい演技でした。 [映画館(邦画)] 8点(2010-06-22 21:11:13) |
198. M★A★S★H/マッシュ
1970年の作品。ベトナム戦争が泥沼の状態に陥っていた頃に発表された、朝鮮を舞台にしたかなりブラックな戦争コメディ。さすがに1970年当時にベトナムを舞台にこの作品は発表できなかったでしょう。これといったストーリーが無く映画としては一つ一つのエピソードをつなぎ合わせたという印象が強く冗長に感じられましたが、実際の戦場シーンや傷つき死んでいく兵士の姿をリアルに見せるのではなく、国家間の愚かな戦争を笑い飛ばし、戦争なんかウンザリだぜ!という痛快な厭戦メッセージが確かに伝わってくる映画でした。 [DVD(吹替)] 6点(2010-06-16 23:27:40) |
199. 男はつらいよ 寅次郎純情詩集
《ネタバレ》 本作は「人はなぜ死ぬのか」という重いテーマがメインとなっているという点では異色の作品。前半、寅さんがご贔屓の一座の公演の中で、「車センセ!」の台詞でお馴染み、一座の花形大空小百合の「人はなぜ死ぬのでしょうね」という台詞があった。そして後半、複雑な事情を抱えた柳生家のお嬢様を演じた本作のマドンナ、京マチ子も同じ台詞を呟く。 マドンナを迎えてのあたたかいとらやの団欒はどの作品でも僕の大好きなシーンなのですが、本作のそのとらやの団欒のシーンは素晴らしかったと思います。柳生家のお嬢様の仕事は何がいいか平和に語り合う。しかし全ての事情を知っている檀ふみ演じる娘とさくらだけは悲しげな表情を浮かべる。楽しくてあたたかくも、少し悲しさのある本作のとらやの団欒でした。それに続くクリスマスムードの柴又で「花屋がいい」と寅さんが語るさくらとの別れのシーンも悲しいけれど良かった。 マドンナが死んでしまう・・・。作品のテーマ上仕方が無いのかもしれませんが、それ以外はとても好きな作品です。マドンナと寅さんの心のふれ合いの深さが感じられる作品でした。 [DVD(邦画)] 8点(2010-06-03 20:17:11)(良:1票) |
200. 続・激突!/カージャック
《ネタバレ》 警官を人質に取り追われる犯罪者と追う警察。しかしスピルバーグが徹底的にのんびりした描写にして撮った作品ですが、これが良かった。 万引きやコソ泥の前科はあるものの憎めないテキサスの若い田舎夫婦にテキサスの田舎警察にテキサスの田舎風景とこんな映画の雰囲気がよく合っています。さらにここからスピルバーグとの長い関係が始まったジョン・ウィリアムスのほのぼの感漂う音楽も絶妙にこの映画の雰囲気と絡む。 この手の映画に絶対必要な作品のテンポも良く、ハプニングやアクシデントの挿入のタイミングも絶妙。まだ若い(と言うかこの後も全然年をとらない!)ゴールディの演じた憎めない犯罪者像とその演技が見事でベン・ジョンソンの演じた人情刑事の人物像とその演技も本作における重要な役割と存在感があります。 野次馬に囲まれはしゃぐ妻と、思いつめた表情を見せる夫。そんな人や町の描写を通してこの旅の結末はハッピーエンドにはならないであろうことを匂わせながら、そのラストに向かって少しずつ切なさを増す構成や演出も素晴らしいスピルバーグによる人間ドラマでありニューシネマの傑作であると思います。 [DVD(字幕)] 9点(2010-05-12 19:58:49) |