181. 女子高生に殺されたい
《ネタバレ》 殺したい(わからんけどわかる)死にたい(まあわかる)自分で死ぬのは怖いから殺されたい(なんとなくわかる)。殺されることに悦びを感じる(きゅうにまったくわからない)。 殺される快楽?相当ハイブローな性癖ですが、オートアサシノフィリアなる呼び名があるそうで。勿論普通はイメージするだけでしょうが、本作の主人公はリアルに女子高生に殺されようと計画しました。しかもJKなら誰でも良かった訳ではなく、お目当ての少女が育つのをじっと待ち、JKになった彼女に近づく為に教員免許まで取得し、希望ポストの前任教師を失脚させ、その娘の担任に納まるという大掛かりな下準備を成し遂げます。足掛け9年の壮大な企み。その熱量と実行力たるや変態を通り越して感動さえ覚えるロマンシング・サガでありました。設定こそアブノーマルかつトリッキーなれど、サスペンス趣向は本格的で、ケイ田中の計画の全体像や背景が判明していくにつれ、戦慄しました。伏線やミスリードも上々でミステリーとしても見応えがありました。最後こそグダグダでしたが、そこに至る過程の用意周到ぶりは見事なもので、先生はリアルに優秀な人なのだと思います。あるいは、性癖の為になら頑張れる人だったのかな。『哀愁しんでれら』といい本作といい、もはやサイコパス役の第一人者と言っていい田中圭さん。ただのイケメン俳優ではなく、良いポジションを得たものです。圭さん以外の役者さんでは、生徒役の若手女優の皆さんが充実。見事に美女揃い。中でも柔道少女の茅島みずきさんの存在感が抜群でした。やっぱり長身美女はいいですな。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-07-08 00:55:54) |
182. プラットフォーム
《ネタバレ》 設定だけみると典型的なソリッドシチュエーションスリラーですが、内容的には『社会の縮図』あるいは『地獄』のメタファーなのは明らかです。言い換えるなら、この世はまさに地獄ということ。辛いっすねえ。そんな地獄の中で主人公は革命を目指します。みんなが思いやりを持って痛みを分け合えば、全員が救われると。その理念は崇高ですが、意に従わぬ者は容赦なく殺しました。要するに確信犯のテロリストです。正義の御旗を掲げている分、むしろタチが悪い気がします。しかし、ろくでもない神様に従うのも癪な話。おそらくメッセージ程度では無視されて終わり。聞く耳を持った神ならば最初からもう少し世界はマシなはずですから。いろいろ考えてみましたが、世界を変える手立ては思い当たりませんでした。システムに組み込まれた時点で打つ手無し。そもそも、そんな神様を創らないように民は注意深く生きなくてはならないのでしょう。 [インターネット(吹替)] 6点(2022-07-06 20:28:21)(良:1票) |
183. ドロステのはてで僕ら
《ネタバレ》 『サマータイムマシン・ブルース』や『曲がれ!スプーン』など、壮大なSF設定(サイエンスフィクション又は少し不思議)を平凡な日常に落とし込むのが滅法得意なヨーロッパ企画・上田誠主宰の脚本作品。着想の素晴らしさや展開の巧みさは折り紙付きですが、上田作品の魅力の本質は氏の人間観(人生観)にあると考えます。人々の行動、判断は決して正しい(論理的あるいは倫理的)とは言えません。でも時に馬鹿をしてみたくなるのが人間です。それが世の理に反する行為だとしても。愚かで、滑稽で、でも愛おしい人々の姿に共感するのだと思います。二人の小気味よい蛮行に拍手しました。キムタクも、綾瀬はるかも、ガッキーも出てこないけれど、だからこそドロステの果ての僕らは、私たちでありました。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-06-25 14:19:33) |
184. パージ:エクスペリメント
《ネタバレ》 原題はThe First Purge。シリーズ映画でよくみられるエピソードゼロ(前日譚)的性格の作品ですが、日本公開時には『エクスペリメント』なる邦題が付されました。確かに邦題の方が内容を類推し易いかもしれませんが、正直余計なお世話だったと思います。映画をご覧になれば分かるように最初に実施されたパージは、実験とは名ばかりの捏造で、それはもう酷い有り様でした。不正に対する憤りは本来アメリカ政府に向くのが筋ですが、それ以前に観客は邦題に騙されたと感じてしまうのです。そんなタイトルは付けるだけ損でしょう。配給会社が下手な邦題で足を引っ張ったパターンと考えます。もっとも、原題のままなら楽しめたかと問われると話は別で、可もなく不可もない一般的なクライムアクションでありました。本シリーズは設定にツッコんだら負けなのは承知していますが、一体何をもって実験は成功したと宣言していたのか謎であります。 [インターネット(吹替)] 5点(2022-06-23 20:23:19) |
185. ラン・ハイド・ファイト
《ネタバレ》 フォーマットは傑作サスペンスアクション『ダイ・ハード』と同じ。学校を占拠したテロリストに女子高生が立ち向かいます。兎に角要素が盛り沢山でした。サバイバルアクションの中に精神疾患と家族愛。胸糞&鬱な犯罪動機に容赦ないバイオレンス。許される反撃の範囲は何処までか?これら全てを「エンタメ」という大きな枠に無理矢理押し込めた感じ。不快と爽快が入り交じる形容し難い感情に困惑しました。混乱している時は、わかり易い要素から整理するのが得策かと。個人的に親子愛に滅法弱い体質なので、娘の窮地を救った父の活躍に痺れました。かなりご都合主義ではあるのですが、娘のピンチに行動しない父親なんてこの世に存在しないでしょう。木の上に立って黙って見ているだけなんて出来ません。それにあのお父さんは『ミスト』のお父さんですよね。転生後に前世での無念を晴らしたように見えなくもなく。お父さん、グッジョブでした。 武装集団のリーダーは同情の余地が無いただのクズでしたが、仲間の方は少し違いました。主人公に捕まった男は、所謂陰キャ。日頃の恨みを晴らすために加担した模様です。ゾーイに説教されて後悔するあたり、性根は腐っていません。未熟な故に道を踏み外してしまったことが窺えます。刑に服して反省すれば更生が期待できるでしょうが、そんなキャラに限って無惨に殺されるのがお約束。殺人犯なので、因果応報的には妥当ではあるのですが遣りきれません。学校内での銃乱射事件は現実に起きている事件であり、結末のやり過ぎ感も含めて、エンタメだからいいじゃんで纏めるには少し重い題材でした。 [インターネット(吹替)] 7点(2022-06-23 19:24:55) |
186. よこがお
《ネタバレ》 正面の顔に対してのよこがお。別の側面の意。本物語においては、正面が「少女連れ去り事件」であり、よこがおが「市子の復讐」と考えます。まず正面の顔、本筋の連れ去り事件の方から整理しましょう。連れ去り事件を市子の立場で捉えた場合、殆ど何もやれる事が無い事に気づきます。後悔は尽きないでしょうが、だからと言って事件を未然に防ぐことは出来なかったでしょう。事後対応についても最善とは言えないまでも悪手でもありません。彼女は常識範囲の損得勘定と倫理観をもって対応をしていたと思います。ただキーパーソンだった基子の心情を読み違えただけ。でもそれに気づけというのも酷な話。市子にとっては失ったものが多い辛い結末でしたが、事件の発端をつくった道義的責任を考えればある程度の罰は受けざるを得ず、その程度が過大だとしても甘んずるより他ないと考えます。正面の顔=連れ去り事件〜報道被害はショッキングでしたが、(主人公にとって)不可抗力な要素が大半を占めていたように思います。 一方「よこがお」=「市子の復讐」はどうでしょうか。彼女が能動的に行動しているため検証しがいがあります。市子が試みた復讐は、基子の彼氏寝取り作戦でした。メンタル的にもフィジカル的にもアラカン女性が選択できる報復手段とは思えませんが、何故か成立してしまう奇跡。豪快に空振りしたかと思いきやスッポ抜けたバットが基子に直撃するという部分まで含めてミラクルでしょう。でも残念ながら狙ったダメージではないのでカタルシスはありません。復讐の第2ステージは偶然の産物でした。まさに鴨ネギ。実に簡単に復讐相手に致命傷を与えられる大チャンス到来です。偶然であるが故に必然性を感じさせます。しかし彼女は復讐を思いとどまりました。冷静になれば当然の判断ですが、追い詰められた人間は間違うのが常。彼女はよく自制したと感心します。そんな彼女に、福本伸行先生の漫画『賭博覇王伝ゼロギャン鬼』の喜十郎さんの名言を捧げたい。『最悪さえ避ければ人は結構幸せだ』。少女連れ去り事件も、市子の自殺未遂(自殺願望)も、復讐劇さえも、全て最悪の結末だけは免れています。これは幸運なこと。やり直しが効くのですから。復讐の誘惑から逃れた市子に明るい未来が訪れますように。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2022-06-15 20:12:44) |
187. スパイラル:ソウ オールリセット
《ネタバレ》 原題は『from book of saw』。訳すなら『ソウの聖典より』でしょうか。邦題のニュアンスとは大分違います。ただ『オールリセット』なる邦題を付けた配給会社の気持ちは分かる気がします。だって全然ソウと関係ないんですもの。一応模倣犯との体裁ですが、ジグソウの犯罪理念を受け継いでいるとは言い難いですし、サスペンス映画ソウのシリーズ作品としても最低限の脚本レベルを担保しているとは思えません。私はシリーズ途中で脱落した口なのでソウを語る資格はありませんが、もうソウの看板に頼るのは止めませんか。絶対にイチからオリジナルを創り上げた方が良い作品が出来ますって。 [インターネット(吹替)] 5点(2022-06-11 16:29:39) |
188. マリグナント 狂暴な悪夢
《ネタバレ》 典型的なサイコホラーの様式に、グロテスクな人体破壊描写、格闘アクション、ヒューマンドラマまで盛り込んだ豪華お得仕様。こう書くと、とっ散らかった印象を受けますが然に非ず。前半こそ大いに惑わされますが、伏線回収が始まる後半は怒涛の畳み掛けで感心すること頻り。ホラーにも関わらず爽快感や感動まであるという。ただ辛いだけの激辛ではない『旨辛』な映画でありました。それにしてもガブリエルのキャラはかなり魅力的でした。ビシュアル良好、ギミック最高。個人的には、多少能力面にドーピングを施して『ジャスティスリーグ』あたりに加入して欲しいとさえ思いました(メジャー感の強いアベンジャーズより似合いそう)。ワン監督らしいアイデアとサービス精神の詰ったエンタメホラーでありました。 [ブルーレイ(吹替)] 9点(2022-06-05 20:21:00) |
189. モルグ 死霊病棟
「本当に、絶対に、怖い」「心身消耗の81分」本作が配信されていた某サブスクの煽り文句ですが、さすがに誇大広告でしょう。典型的なお化け屋敷型ホラーであり「恐怖」より「びっくり」成分多めです。だからレベルが低いとは言いませんが、映像や演出面で目新しさはありません。類似作品を引き合いに出すのは品がありませんけども『呪怨』の方がまだ怖がれますし、『コンジアム』の方が出来が良いと思います。多分日本人が観て一番カルチャーショックを受けるのは、パラグアイの遺体安置所の運営ではないでしょうか。遺体が安置ではなく放置されているんですもの。拳銃の扱いも雑ですし。ハリウッドでリメイク決定だそうですが、日本で『世にも奇妙な物語』に収録するくらいが程よいお話ではないかと。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-06-01 17:45:09) |
190. ライトハウス
《ネタバレ》 孤島の灯台守として赴任した熟年男性2人。肉体的にも精神的にもハードな仕事であるのは間違いありませんが、期間は4週間のみ。悪天候のためすぐに交代が叶わなかったとしても、精神を病み発狂するほどの状況とは思えません。ウィンズローが狂ったのは、深刻なトラウマを抱えていたからでした。外界と遮断された中で強いられる肉体労働。夜中止むことなく鳴り響くサイレン。上役の理不尽な仕打ち。ストレスフルな状況下においてアルコール摂取量が増えるに連れて、自身が犯した罪と向き合う時間も長くなったことでしょう。辛く苦しいとき人が選ぶのは「現実逃避」と相場が決まっています。セイレーンやオクトパス(クラーケンかな?)が出現し、灯台の灯りに神秘的な力を感じたとしても何ら不思議ではありません。結局は自身が犯した罪の重さに押し潰されて自滅した結末と解します。もちろん劇中2人が口走ったように「そもそもウィンズローは灯台にさえ来ていない」あるいは「トーマス・ウェイクは人形を使って呪いをかけていた」との解釈を採用するのも可能であり、そんな懐の深さが本作の魅力と言えましょう。 今や独自のホラージャンルを築いたA24。本作もブランドの信頼を裏切らぬハイクオリティ&ハイセンスな作品でしたが、一筋縄ではいかぬアク強めな作風で大衆向け映画とは言えなさそうです。人魚の生殖器とかなかなかにグロテスク。初めて見ました。 [インターネット(吹替)] 7点(2022-05-31 22:20:52) |
191. 空白
《ネタバレ》 被害者、加害者、双方ともに非が無い訳ではありません。しかし犯した罪に対する罰が余りに重過ぎました。全くバランスが取れていません。この世は因果応報ではなかったのでしょうか。その理不尽な仕打ちがやり切れなさ、やるせなさの原因と感じます。もしこの世の罪と罰の総量が同じならば、不当に罰を免れている罪人がいるとしか思えません。例えば、この事件を見世物として消費した人々。いやそんな社会の仕組みこそが罪なのかもしれません。一人ひとりの罪は微微たるものだとしても、全部集めたら途方も無い量でしょう。どんなに買っても宝くじは当ててくれないくせに、こんな厳罰だけは容赦なく課してくるなんて。あまりに酷い話。しかしこれがこの世のルールなら、私たちは従うより外に道はありません。 『一寸先は闇』は真実です。どんなに注意深く生きようとも、落とし穴を完全に回避する方法などありません。私たちに出来るのは、平時のうちから「いざ」という時の為に備えることだけ。自然災害の対処法と何ら変わりません。唐突にやって来る「絶望」と対峙した時、私たちは一体どうしたらよいのでしょうか。本件をみると、躱す術や分散させる手立て、盾を装備していた者と、真正面から受け止めた者で明暗を分けたように思えます。誰もが他人事と思わず、自分事として災に備えることを強くお勧めします。「程よく無責任であれ」「なるべく多く楽しみ(生きる意味)を用意しておこう」。これが私の非常用持ち出し袋の中身です。皆さんも是非オリジナルの非常用持ち出し袋をこしらえてください。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-25 00:45:32) |
192. 100日間生きたワニ
《ネタバレ》 原作漫画『100日後に死ぬワニ』のことは、伊集院光氏のラジオ経由で情報を入手しました。伊集院氏も指摘するようにこの漫画がウケたのは偏に「100日後に死ぬ」という枕詞が秀逸な発明であったからと考えます。何気ない台詞や行動のひとつ一つに自動的に深みが与えられました。タイムリミットの設定が絶妙だったのでしょう。先過ぎず、近過ぎず。普段は忘れていられる。でも意識から消えることはない。私たちが漠然と抱いている「死」の姿を100日後というゴールを明確にすることで浮き彫りにしました。映画ではタイトルが『100日間生きたワニ』に変更されています。『100日後に死ぬ』と『100日間生きた』では日本語的に意味が異なりますが、『死』という言葉が殊更センシティブに捉えられていたコロナ時世を考慮した苦肉の策だったと思われます。 前置きが長くなりました。感想に入ります。まず驚いたのは原作(実はあまり読んでいませんが)に映画オリジナルパートが多く追加されていたこと。その分量実に半分!物語後半は完全オリジナル「ワニ君が死んでから100日後」のエピソードでした。原作のある映画は余計な手直しを嫌うものですが、本作については改変部分に価値があったと考えます。というより、映画オリジナルエピソードは原作の続編であり、この映画のメインパートでした。ワニ君が居なくなっても、世界は続いていく。残された者に焦点を当てた主役不在のドラマには、喪失感を乗り越えることの大切さが描かれていました。タイトルは、死んでなお皆の心の中で『100日間生きたワニ』という意味だったのかもしれません。故人のことはきちんと忘れて今を大切に生きよう。少し寂しい気もしますが、ずっと立ち止まってもいられません。ふとした時に思い出せば、それで充分な供養。またいつの日かワニ君には会えるのですから。 原作終了直後から始まった商業路線が世間から批判を浴び、本作品も興行的に振るわなかったとお聞きしました。しかし原作の『100日後に死ぬワニ』を愛していた方ならば、この映画で描かれた後日談の中に希望を見いだせる気がします。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-19 19:42:21) |
193. ミセス・ノイズィ
《ネタバレ》 元ネタは当時世間を賑わせた通称『騒音おばさん』。「引っ越せ、引っ越せ、さっさと引っ越せ、しばくぞー」とリズミカルかつパワフルに布団を叩く姿はインパクト絶大で、ワイドショーネタに疎かった私のような者でもハッキリと記憶しています。ただ、詳細については承知しておらず、こんな隣人がいたらたまったもんじゃないなと感じた程度の話。言い方は悪いですが、人面魚やアザラシのタマちゃんと大差ない、暇潰しとして消費されるネタキャラの一つに近い感覚だった気がします。 さて、センセーショナルなパッケージとは裏腹に、ドラマとしては実に丁寧に作られており感心しました。加害者、被害者、それぞれの視点で捉える事象。同じ意味の台詞でも言い方一つで印象が大きく変わりました。まさに『ミステリと言う勿れ』の整くんの持論「事実は一つでも真実はその人の数だけある」のとおり。改めて「一方を聞いて沙汰するな」を肝に銘じた次第です。結末は些か綺麗にまとめ過ぎかもしれませんが、心から反省した者へのセカンドチャンスは大歓迎であります。また元ネタの当事者が存命ゆえ双方に配慮する必要があったかもしれません。 最後にひとつだけ。これは実際にあった事件に着想を得た完全フィクションであるということ。実際の『騒音おばさん』事件の真相とは無関係です。ネット上では嘘やデマを含む様々な情報が散乱しており、その中から事実のみを抽出するのは不可能です。極論すれば裁判結果でさえも「事実らしきもの」でしかありません。数多くの情報を得やすくなった現代、私たちは以前より事実に近づけるようになったのでしょうか。結局は自分次第かと。信じられる自分でいられるように、でも自分を信じすぎないように。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-05-14 16:46:16) |
194. 佐々木、イン、マイマイン
タイトルは『思うに佐々木って奴は』。極めて個人的な感想です。この機微を他人が量るのは至難の業と考えます。精一杯共感したつもりでも「お前に何が分かる」と言われそうで。だから私はこの映画の感想をあまり語りたくありません。佐々木を語る事ができるのは、佐々木に関わった者だけに許された特権であります。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-12 19:47:45) |
195. 死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
《ネタバレ》 第1作目も2作目も採点は7点。感想もほぼ同じで、王道オカルトホラーとして良く出来ていると思うが「実話もの」の触れ込みはプラスにならない。本作も基本的に同じですが、やはり「実話」と言い切ってしまうところが気になります。背骨が300度曲がったり、死体が歩いたりしていますけど大丈夫ですか。「実話に着想を得たフィクション」じゃ駄目なのですかね。まるで「カニ風味カマボコを蟹として提供されている」みたいな不信感があるのですが。それに本事件の実際の加害者はまだ存命のようで、DVD特典で体験談を語っちゃってるんですよね。まあ、彼ら目線ならそれが真実なんでしょうけど、遺族の気持ちを慮るとやるせない気持ちになります。本シリーズの「実話」とは「週刊実話」みたいな使い方の「実話」だということをちゃんと周知しないと駄目なんじゃないかなあ。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-05-06 22:49:20)(良:2票) |
196. メン・イン・ブラック3
《ネタバレ》 『2』が個人的にイマイチだったので本作『3』は長らくスルーしていたのですが、最新作『インターナショナル』鑑賞を機に遅れ馳せながら観てみることに。いやはや、こんなに面白いとは全くもって予想しておりませんでした。某三谷幸喜監督は新作が出る度に『最高傑作!』なる誇大広告が出されますが(失礼)、本作こそ掛け値なしのシリーズ最高傑作で間違いないでしょう。『タイムトラベルもの』としても相当に優秀です。そうくるか、こんな使い方があるのか、ここに繋がるのかと感心することしきり。切なくも心温まる納得感ある結末こそタイムトラベル映画の大正義と考えます。MIBテクノロジー進化の過程をみるのも面白かったなあ。それにしても若き日のエージェントKを演じたジョシュ・ブローリンのキャスティングは神業レベルでした。こんなハマり役見たことないです。もっともエージェントOの方は脳内補正が必要な並業キャスティングであり「歳月は女性を大いに変える」というメッセージが込められているのだとしたら、誰かに少し怒られたらよいでしょう。それが真実だとしても。 [インターネット(吹替)] 9点(2022-05-04 21:28:20) |
197. ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
《ネタバレ》 洗練されたアクション。社会風刺あり、メッセージ性ありの骨太映画でありながら、パッケージは完全にオフザケ馬鹿コメディ。グロテスク描写も明らかにやり過ぎです。B級映画の皮を被ったA級作品。外見と中身のミスマッチ感(あるいはツンデレ感?)に痺れました。そして何より素晴らしかったのが、いつ誰が死んでも不思議ではない空気感でした。開始早々大した見せ場も無く次々と死んでいくタスクフォースXのメンバーたち。いやーこういう戦争映画を見たかったのです。これが殺し合いのリアル。まさに『スーサイド・スクワッド』の世界でした。体に良いものから害悪なものまで、美味しいもの全部載せのスペシャルパフェのような娯楽(ご馳走)映画。早期リメイクも大納得の快作でありました。続編期待しておりますね。 [DVD(吹替)] 9点(2022-05-03 23:58:57)(良:3票) |
198. メン・イン・ブラック:インターナショナル
《ネタバレ》 主要キャストを一新した人気シリーズの続編。主役の性別変更は、昨今の世相を反映したものでしょうか。設定や世界観、ストーリーは慣れ親しんだMIBのそれで、続編の制作手法としては何も間違っていないと思います。ただ物足りないとすれば、ひとえに愛すべき彼らが居ないから。燻し銀のエージェントK、お気楽ニキエージェントJ。過去3作に渡りシリーズの顔として活躍してきた主要キャラへの愛着は捨て難く、彼らと比べると本作の主役コンビが見劣りしてしまうのも仕方のないこと。シリーズ映画は「思い入れ」によって成り立っています。新キャラのミニ宇宙人ポーンはいい味を出していましたが、kとJ不在の穴を埋めるほどの存在感はありませんでした。本作単品なら6点、MIBの続編なら5点です。あれ、私そんなにこのシリーズ好きだったかしら? [インターネット(吹替)] 5点(2022-05-02 18:55:17) |
199. サマーフィルムにのって
《ネタバレ》 どこから見ても『時をかける少女』+『映像研には手を出すな』です。かの作品に対するオマージュを隠す気も無さそうです。また、映像研が商業アニメ製作のリアルを体現したシリアスな格闘技だとすれば、本作は真っ当な高校部活動の範疇であり「ものづくり」に対するガチさを物差しとするなら、さしずめ学生プロレスと言ったところでしょうか。だいぶヌルい。しかしプロレスにはプロレスの良さがあります。いいトコ取り、何でもあり。時かけの切なさ、映像研の産みの苦しみをブレンドした物語は注文どおりの面白さでしたし、クライマックスの破天荒ぶりには度肝を抜かれました。映像研の浅草氏なら(プロの映画監督なら)絶対にあんな展開は選びません。「ものづくり」のルールに反するから。しかしプロレスなら出来るのです。「何時だってやり直せる」が綺麗事ではなく現実に起きる奇跡を目の当たりにして涙が溢れました。未来人がタイムマシンでやってくるなら、ホウキくらい日本刀に変わるでしょう。どさくさに紛れて散々ディスってきたラブコメまで肯定してしまう力技もまさにプロレス的であります。消えて無くなるものに全力を尽くし、思いを繋げることで夢を託す。私たちが生きる意味は青春の中に詰まっています。 主演のハダシこと伊藤万理華さんが実に魅力的でした。少年っぽいというか、無垢なラランドサーヤというか、バカリズム的というか。まあめんこいこと。オタク魂が宿った一挙手一投足に釘付けで、ずっとニヤニヤしながら眺めてしまいました(特に曲がった口元がチャーミングで『キック・アス』のヒットガールや『女子―ズ』の桐谷さんのように美人が口を歪める様に個人的に弱いみたいです)。実写の浅草氏も彼女が適任なんじゃないかと。2代目水川あさみ?こと祷キララさんも『ファンファーレが鳴り響く』から更生したようで何より。もう一人の女監督(花鈴さん)も可愛かったなあ。そして忘れてならないのは影の主役・ダディボーイ役の板橋駿谷氏。熱演でした。実年齢30代半ばの老け顔高校生お見事でした。それにしてもブルーハワイとかビート板とか、ニックネームがもはやスパイ映画のコードネームのようです。 [DVD(邦画)] 10点(2022-04-30 11:04:14)(良:1票) |
200. 必殺!恐竜神父
駄目映画(あるいはクソ映画・Z級映画)というジャンルが世間一般で好意的に確立した昨今、本作のような『出来が良い駄目映画』を以前のようには無邪気に楽しめなくなった気がします。「こんなのが好きなんでしょ」と監督に見透かされているようで、何となく素直になれないというか。天邪鬼ですかね。よって本作の場合満点が0点なので、乗り切れなかった分減点しておきます。そういう意味では、本気で傑作をつくるつもりで結果的に0点だった奇跡の映画『シベリア超特急』の偉大さを思い知るばかりです。 [インターネット(字幕)] 3点(2022-04-19 18:58:04) |