361. 手紙は憶えている
《ネタバレ》 「オットー・ヴァリッシュは君だ」まさに青天の霹靂でありました。マックスの深謀遠慮は憎悪が生きる糧となっていたようで胸の詰まる結末でした。痴呆症のヨタヨタの老人を演ずる矍鑠としたクリストファー・プラマーの衰えぬ役者魂に喝采を送ります。 [DVD(字幕)] 8点(2017-05-30 00:55:59) |
362. 愛、アムール
冒頭に示される結末に至る過程。じりじりと衰えて行く誇り高いアンヌ、じわじわと追い詰められて行く慈愛深いジョルジュと演ずるすっかり老いてしまったジャン・ルイ・トランティニャン。直視が辛く苦しい思いに耐えに耐えながらの鑑賞でした。この夫婦にしてこの結末に「介護は他人に、愛情は家族が」を痛感させられる作品。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-28 01:38:17) |
363. リスボンに誘われて
身投げを救った女性のコートにあった本とリスボン行きの乗車券。女医との出会いのもととなった自転車事故。「まるで映画のような話」を地で行く展開。1冊の本が繋ぐ瑞々しい過去とほろ苦さを噛み締める現在の模様が丹念に描かれている。仕事を放り出しての探索で彼我の差に落胆を抱えたまま帰郷しようとするプラットホーム。ラストシーンが深い余韻を残す。 [DVD(字幕)] 8点(2017-05-22 10:42:47)(良:1票) |
364. 人生はビギナーズ
トラップ大佐を演じた45年後、82歳にしてオスカー初受賞のクリストファー・プラマーが邦題を示しています。息子とその彼女のお話は退屈でした。 [DVD(字幕)] 5点(2017-05-17 14:32:00) |
365. 涙するまで、生きる
《ネタバレ》 舞台は1954年、独立戦争のアルジェリア。西部劇と「さらば冬のかもめ」が思い浮かんだ不思議な作品。部族の因習を甘んじて受けようとするモハメドに「生きろ!」と励ますダリュ。自身もアルジェリア生まれのスペイン人移民としての諦念を振り払おうと教師を辞める。授かった命は事切れるまで諦念に押し潰されず全力を尽くして生きるのだと認識させられる。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-12 01:20:47) |
366. アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方
《ネタバレ》 現実逃避の男女のロードムービー。何に嫌気がさしたのか解らん男と身の上話が何の言い訳にもならない単に手癖の悪い女の行く先々での下衆な行いはコメディタッチのようでそうでもなく、コリン・ファースでなければ鑑賞リタイアだった。ラストでどのツラ下げて息子に会いに行ったのだろうか。安易な邦題にアホらしさが募る。 [DVD(字幕)] 3点(2017-05-06 22:44:11) |
367. ある天文学者の恋文
《ネタバレ》 齢68歳にして両手から色気が滲み出るファーストショットのジェレミー・アイアンズに見惚れただけの作品。早々に亡くなった以降、都合よく届くメール等に喪失感でいっぱいのエイミーのクローズアップの繰り返し。くど過ぎてウンザリする。そもそもが老教授と学生の不倫話なのでロマンティックに飾り立てたところで白けるばかり。「EDED・・・」「AMYAMY・・・」に「馬鹿馬鹿・・・」を投げつけてやりたい。 [DVD(字幕)] 3点(2017-04-29 18:23:21) |
368. ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
《ネタバレ》 「奇蹟がくれた数式」を彷彿させる内容で、カリスマ編集者マックス・パーキンズと夭折の天才作家トマス・ウルフの交流が描かれています。ベストセラーが世に送り出される過程で編集者の役割が如何に大きなものかを認識させられます。奔放な作家と冷静沈着な編集者の言葉を削るせめぎ合いは実に見応えがありました。また、仕事に没頭する二人が片や妻に寂しい思いをさせ、片や愛人に嫉妬させているのに現実味を感じます。息子の様に思って接していたという年齢差は感じられなかったものの、紳士のニューヨーカーを演ずる英国紳士コリン・ファースは安定感抜群でまさにはまり役、絶品でありました。対するジュード・ロウは迸る情熱と未熟さを好演しており劣らぬ存在感でした。曲折を経た末のラストシーンで帽子を脱いで涙するパーキンズに、本作のキャッチコピー「傷一つ残らないなら真の友情とは言えない」が重なります。 [DVD(字幕)] 8点(2017-04-28 00:36:30)(良:1票) |
369. 奇蹟がくれた数式
《ネタバレ》 夭折は数学界にとって計り知れない損失だった天才数学者ラマヌジャン。インドに残した妻との通信を妨げられ、第一次大戦下の英国でヴェジタリアンが栄養を摂れず病に侵される過程はやるせない。一方、敬虔なヒンドゥー教徒としての信仰心が発想の根底をなしていたのは天才らしい。彼を見出し支え友情を育んだハーディ教授は彼とは対照的な妻を娶らず学問一筋で無神論者の偏屈者。ジェレミー・アイアンズの貫録の演技が作品の品格を高めている。 [DVD(字幕)] 7点(2017-04-16 20:39:40)(良:1票) |
370. マラヴィータ
《ネタバレ》 マーティン・スコセッシ、リュック・ベッソン、デニーロの組み合わせでのお決まりの暴力シーンが満載なのはまだしも、嫁・娘・息子までもが暴れて鬱憤晴らしをしているのに嫌気がさす。ラストのドンパチではトミー・リー・ジョーンズの見せ場が無いわ、敵方がアッサリとやられてしまうわ、ご近所さんを始め多くの人が巻き添えになるわで後味の悪さこの上ない。去り行く車を「お前等だけ幸せに暮らせると思うなよ」と思いながら眺めてた。こんな犬畜生にも劣る一家を保護するFBIジョーンズさんの心中お察し致します。 [DVD(字幕)] 3点(2017-04-16 15:01:35) |
371. 殿、利息でござる!
《ネタバレ》 桂福団治さんに演じてもらいたい人情話。父と息子、兄と弟、それぞれの確執が解ける件にホロリとさせられる。傲岸不遜な萱場が殿さんに叱られるところを見てみたかった。 [DVD(邦画)] 7点(2017-04-15 20:40:03) |
372. ムーンライト
《ネタバレ》 悲しい時に見る景色は綺麗に見えるもので、月明かりの浜辺はその通りの美しさ。ヒョロヒョロの少年シャロンは父の様に慕うクスリの売人(母にも売っていた事を知り彼のもとを去る)に「自分の人生は自分で決めろ」と教えられる。ヤク中の淫売婦の母の育児放棄とゲイを標的にされるイジメに遭う過酷な少年期を経て自らも屈強な(ちょっと信じ難い程の)売人のチンピラとなる。初恋の友人ケビンとの再会で恋心を告白したところで終わりとなる物語に、「だから? 何が言いたい? これで作品賞?」呆然自失状態。更生施設らしき所で面会した母の涙の懺悔と更生して真っ当に働くケビンに接したシャロンが今後の人生をどのように決めるのだろうか。考えさせられたところに3点。 [映画館(字幕)] 3点(2017-04-02 00:07:08) |
373. アメリカン・ハッスル
《ネタバレ》 絵に描いたような善人の市長を騙す事に心痛めるアーヴィンの詐欺師らしからぬ葛藤が興味深い。詫びを入れに行った際の修羅場は「裏切るくらいなら裏切られるほうがマシだよなぁ」と言った人の事が思い浮かび、司法取引の一端である他人を売って自身の罪をチャラにしてもらう制度の胸糞悪さが際立っていた。特筆すべきはデ・ニーロでワンシーンのみの登場ながら、小賢しい詐欺師どもを瞬時に抜き差しならぬ状況に追い込んだ存在感は流石。 [DVD(字幕)] 8点(2017-03-26 01:12:34) |
374. グランド・ブダペスト・ホテル
ホテルの外観、内装の幻想的な美しさに「こんな所でゆったりとした時間を過ごしている」自分を妄想しました。苦手なレイフ・ファインズが登場した時に「しまった」と後悔したものの、グスタヴはドンピシャのはまり役で初めて魅力的だと感じました。びっくりするほど多数の名優達と織りなす物語を飽きることなく楽しめた絵本のような作品でした。ハーヴェイ・カイテルに気づかず観直して確認したのは不覚でありました。 [DVD(字幕)] 8点(2017-03-23 01:55:17) |
375. ミッション:8ミニッツ
アフガンの戦場で肉塊となったスティーヴンスを道具として使用する事しか頭にない博士と人格を尊重するグッドウィンの対比が見応え十分でした。存在する魂の世界観の描かれ方が見事な作品。 [DVD(字幕)] 7点(2017-03-19 23:29:33)(良:1票) |
376. ラ・ラ・ランド
ミュージカル苦手な私でも冒頭のシーンは魅入り期待が膨らみましたが。すぐにしぼんでしまいました。歌もダンスも以降はパッとせず、物語はありがちな青春モノ。過大評価の感が否めません。 [映画館(字幕)] 4点(2017-03-06 13:51:36) |
377. キャプテン・フィリップス
マースクのコンテナ船がいとも容易く占拠されるのが信じられない。大した護衛策を持たずに危険個所を航行するのは時間とコストが優先される為なのか。たらい舟のような救命艇と大層な艦船、顔は骸骨体は洗濯板の海賊と大胸筋ムキムキの隊員。天と地ほどの差がありながら制圧まで時間がかかり過ぎで、ひたすらに喚き散らす救命艇の模様がいたたまれない。「もう、限界だ!」と泣きわめく船長に同情する。返り血を浴びたままの船長に対する女医の診察には心情の欠片も察するものがなく、豊かな漁場を壊滅させられて働く場所がない海賊への対応と共通していた。トム・ハンクスお疲れ様の作品。 [DVD(字幕)] 7点(2017-02-19 23:18:01) |
378. クーパー家の晩餐会
《ネタバレ》 なかなか豪華な顔ぶれによるこなれた感じでハッピーエンドへと向かって行く4世代ホームドラマ。気楽に鑑賞した中この人たちの生甲斐は何なのだろうかと度々考えさせられました。 [DVD(字幕)] 5点(2017-02-02 16:48:06)(良:1票) |
379. 独裁者と小さな孫
《ネタバレ》 舞台である国を特定せず寓話を装っているが、これまでも今もこれからも地球上で起きている話。独裁者と孫の逃亡劇。無垢な孫が最後に「こんなゲームはもうしたくない」と涙する姿に、力だけが正しい統治の虚しさを観る。独裁者を擁護する者の台詞は蛇足だった。 [DVD(字幕)] 6点(2017-01-31 23:59:16) |
380. ゼロ・ダーク・サーティ
《ネタバレ》 無辜の人をテロで闇討ちにする輩に対する拷問(新大統領が復活させたがっている水責めもありました)は仕方ないと思います。マヤが同僚を爆殺された後私怨に走ったのも仕方ないと思います。ラストで独り涙する彼女が将来、両親を目の前で殺された子供達の報復に怯えて生きてゆかなければならないのも仕方ないと思います。力だけが正しい憎悪の連鎖が終わらないのも仕方ないと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2017-01-29 15:10:22)(良:1票) |