21. ゲド戦記
私は宮崎アニメの大ファンなので、過去最低点をあえて付けさせて頂きます。 1口に言えば見たくなかった映画でした。 先日この作品を見て、未だに不快感が残っています。 友人からも見ないほうが良いと、言われていた映画でしたが コクリコ坂などと、また性懲りも無く、この息子さんが新作を作っているので 今回あえて見る事にしました。 はっきり言いましょう。 この監督にはアニメ映画監督としての才能は1カケラも有りません。 内容ウンヌン以前の話です。 父親である宮崎駿監督の映画初監督作品は あの「カリオストロの城」です。 それを考えればこの作品がどれだけ酷く そしてまた、父親が身を削って築いてきたジブリと言うブランドに どれだけ泥を塗ったのか分かるはずです。 貴方はそれすら分からないのでしょうか? 父親の地位の継承や金が目当てですか??つまりは世襲したいだけの話???? 普通の神経の人間なら世間にここまで酷評されれば、恥ずかしくて身を引くのが普通です。 才能を試すのは1度で十分のはずだ。 別のプロダクションに移って1から、下積みから修行して また監督業を始めるというなら兎も角 こんな酷い作品を作っておいて またすぐに新作を作って売り飛ばそうという暴挙をやっているのは 一体何故なのでしょう? あと、父親である駿氏がコクリコ坂の脚本を手がけたというのは本当の話でしょうか? ジブリのスタッフはそれで納得しているのでしょうか? 私は憤りを抑え切れません。 もし、吾郎氏のやっている事を駿氏が容認しているとすればもうジブリは終わりです。 もう私は2度とジブリの作品は見たくありません。 [地上波(邦画)] 0点(2011-07-17 23:24:36)(良:2票) |
22. ハッピーフライト(2008)
《ネタバレ》 いや、私は見た直後にレビューするのをモットーにしてまして いまテレビでこの映画がやってたものでレビューします。(笑) 中々面白かったです。 フジ主催の映画は海猿とか、毎度おなじみの何とか捜査線とか ドッチらけるのが多いんですが この映画は当たりですね。ドラマの延長ではなく、キチンと映画として撮られています。 ともかく、皆さん言ってる様にテンポが良い。 それでいて航空業務における技術的なギミックなども ふんだんに盛り込まれていて飽きさせない。 そしてその裏側もまあ、極端なんでしょうけれども 赤裸々にコミカルに描かれている。 何より力まずサラリと撮っている所が非常に良いです。 あと、秀逸なのは配役ですね。 この人をココにというのがキッチリと詰められていて 全然違和感が無い。 私的に好きなのは管制塔で双眼鏡握ってる、クールなお姉さん役の宮田早苗さんです。 あと、凸凹コンビのグランドスタッフ田畑さん。 この人も良い俳優さんに成りましたね。 一見温厚そうなサラリーマンで 実は短気な菅原大吉さんもいい味出してます。 なんていうのかな、出来の良い舞台劇を見ている様で 主役級を喰ってしまっている脇役陣というのでしょうか。 はっきり言ってこの映画 時任さん以外は主役級が全部脇役に喰われていたと思います(笑) 欲を言えば現場に口を出す無能な上役見たいなのが居ると 筋立てにアクセントが出来て、もっと面白かったのかも知れませんが 最後までスリリングでコミカルな風合いを保ちつつ、一気に観れた辺りは 最近2,3年の日本映画の中で1番面白かった作品です。 今回はオマケの8点にします。 [地上波(邦画)] 8点(2011-02-05 23:37:58) |
23. ザ・コーポレーション
先ほど観終わりました。良い作品だと思います。 しかし、基本的に社会ドキュメンタリーというよりは 特定のイデオロギーに元付く教化映画の様に思えて成りません。 昨今の企業、特に大企業は確かに傲慢です。酷いです。 しかし、それはこの映画で描かれている細かい具体的な事柄は兎も角 すでに世界中の多くの国民は認識していると思います。 この映画で描かれる主題を端的に言えば 「もはや市場原理、資本主義は腐り切って、人間に恩恵よりも、大きな害を及ぼす存在と成り果てている」 と、言う事です。 それは分っています。分っていてもどうする事も出来ないで居るのが今の社会なんです。 「明日から極悪な米メジャーの石油元売企業は全て解散せよ!!終わりだ!!」 と、言えばどうなるでしょうか?その翌日からライフライン(電気、水道、ガス)の全てが止まり、物流もストップし あっと言う間に世界は100年前に戻る事に成るでしょう。それを甘受出来ますか? この映画に出演している人々も、特定の企業の牛乳や洗剤なりは、或いは買わないのかも知れませんが 企業の作為や偽善で生み出した文明の果実を、全く齧らずに生活している訳ではないはずです。 つまり、もうそこで矛盾が生まれているし、極悪な特定の大企業を叩いたとしても、社会の本質は変わらないのです。 我々は文明の果実と言う甘い果物を、際限もなくばら撒いている列車に乗っている様なものです。 このままではいけないと思いつつも、100年前に暮らす人々から見れば 安楽で怠惰な甘い文明の果実をもはや、手放せないでいる。そのままで走っている。 つまり、この作品ではそういう部分の結論が出ていないのです。 「現代の資本主義が酷いのは分ったが、では資本主義に変わる新しい社会秩序とは何か?」 その新しい社会秩序なる物も現在の資本主義より もっと人々に大きな利益をもたらす存在に成り得ない限り、大多数を動かす事は難しいでしょう。 「人は利によって動く」何処の偉人も言わない言葉ですが、これが人間の本質を端的に表しています。 ですが、私はムーア氏(多分におこがましいですが)と同じく 無駄と分っていたとしても、自分の出来る範囲で 自分の信じる主義主張で、立ち上がろうと思っています。 それがいま必要な事だ、という事はこの映画を見て良く分かりました。 [DVD(字幕)] 7点(2010-11-20 18:48:06) |
24. ザ・ビッグ・ワン
《ネタバレ》 こういう映画はセンスが必要で センスの無い人間が、単にシニカルなドキュメンタリー風に撮っただけなら こんなに面白くは成らないと思います。 彼独特のブラックジョーク、そして自分の立ち位置を見切ったが故の突撃嫌がらせ取材 そういう諸々でバラバラな事柄を、効果的に1本の映画として成立させている映像センス。 これがムーア氏を有名たらしめたファクターでしょう。 アポ無し取材にしても、相手がどういう対応に出るかで自分自身の出方も素早く変えながら それを映画のネタにしてしまう、こんな芸当は常人には出来ない事です。 最後の方でノコノコと出て来たナイキの社長などはまさにその良い例で 余裕コイて、「会う」などと言った馬鹿社長をとことんコキ降ろしてやろうと 僅かな時間でその対応を考え、友好的に接しながら、言質を引き出そうとする所などはまさに圧巻です。 案の定、この馬鹿社長は完全に晒し者に成りました。 ムーア氏の提案にも満足に答えられないばかりか 自分の隠して置きたい恥部(14歳発言や、フリント工場建設拒否、守銭奴ぶり)まで曝け出す破目に成った。 ムーア氏の映画はいつも同じです。 「大企業や金持ちは金を儲けるならその分を恵まれない人間(つまり貧乏人)に再分配しろ」 「政府や政治家は真実(本当の意図)を隠して世論を誘導するな」 「マイノリティー、社会的弱者を圧殺するな」 大まかに言えばこの3点の為に戦っている。 しかし、逆に言うとムーア氏の取材姿勢や映画が 大企業や米政府の民衆に対する、体の良いガス抜きに使われてしまっている事も事実です。 映画を見て感化され、人々が一大政治勢力を作ったという話はまだ聞きません。 逆に最終的にはそこまで行き着かなければ、彼の目的は成就しないでしょう。 民主党もダメ、共和党もダメ、アメリカの状況は今の日本にも良く似ています。 ココから先は「散々暴いてきたアメリカのダメダメな過去を未来に向け、どう正すのか?」 そこまで踏み込んだ形にしないといけないのかも知れません。 「この映画の収益の半分をフリントの恵まれない子供達に贈る」 これを本編では宣伝がましい事を一切せず、映画の最後の最後にサラリと言ってのける辺りに 彼のマイノリティー、とりわけ、社会的弱者に対する暖かさや信条が垣間見えています。 [DVD(字幕)] 8点(2010-10-29 20:29:20) |
25. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 先ほど観終わりました。結構面白かったです。 ただ、ちょっとカタに嵌り過ぎているというか、原作が原作なので余り脱線も出来ないのでしょうけど 特に宇宙人の姿形などは、スピルバーグならではの もっと独特のギミックが有っても良かった様な気がします。 あと、主人公と家族は運が良過ぎると言うかなー 結局、家族全部が助かった辺りも(元妻の家族も含め) んー。。。。私はちょっと好きに成れませんでしたね。 今回は笑い無しの全編シリアスな展開で、そういう所もなんというか もっとあの宇宙人達がポカやらかすとか、地球人から見てアホ見たいな振る舞いをするとか そういう息を抜ける場所が欲しかったです。 モーとにかく、最初から最後まで悲惨で陰々滅々としていて、1つも良い事が無く 最後はエイリアンに仕返しするでも無く(まあ、ちょっとはしましたけどね)、微生物に勝手にやられて全滅してしまう。 なにもインデペンデンスデイ見たいに軽薄にしろと言っている訳ではなく もう少し、起承転結に含みを持たせた展開と結末が欲しかった気がします。 ただ、全体的な完成度はさすがに高い。なので7点にします。 [DVD(字幕)] 7点(2010-10-11 16:55:30) |
26. ターミナル
《ネタバレ》 先ほど観終わりました。 異邦人が突然祖国の内戦勃発で、パスポートを無慈悲に取り上げられ、空港内に放り出される。 言葉は通じず、寝る場所も無い、貰ったなけなしの食券は風で飛ばされ、捨てられる(笑) そこで凹まずに主人公が空港サバイバルを開始する様は非常に滑稽 小ネタ、くすぐり満載に作られいて、この辺りはさすがに巧いです。 確かに空港警備の杓子定規さや傲慢さには腹が立ちますが ビクター自身も、空港の椅子をぶっ壊して寝床にするわ 自販機からはジュースをガメるわ、壁は勝手に造作変えちまうわで かなり好き勝手やっていたのも事実です。 ハゲの責任者も小才子然とした嫌な野郎ですが 従業員の行状や過去を知っていても、それとなく見逃していたりと 有る一面では柔軟性も持ち合わせている。 まあ、それを取引条件に使う所などは非常に官僚的でも有りますが 結局の所、仲間の協力などの無理押しで、ビクターが空港から出られてしまうくだりは いかにも強引で、取って付けた様な感じが拭えませんでした。 また、ヒロインとのラブロマンスも極めて中途半端で、どうにも消化不良ですね。 見終わって思った事は、非常にスピルバーグらしからぬ作品だという事です。 彼の過去の作品はどれも一貫した方向性があり、それを追求して行く形で、物語が進行するのですが この作品はアメリカにおける不法移民などの、マイノリティー迫害を描こうとしているのか? それとも単に空港行政における傲慢さや、いい加減さ、弱者に対する軽視を描こうとしているのか? はたまた、主人公の徒手空拳からの成り上がり物語と ヒロインとのラブロマンスなのか??? 実はそのどれもを主題として盛り込みつつも結局、1つも結論に至っていない気がするのです。 また、空港内(フードコートの店員、荷物仕分け、掃除夫)で働く人々が 実は過去アメリカにやって来た元移民であり、アメリカ社会における最下層に近い人々である事 それが為にビクターの行い(ヤギの薬の件)などに拍手喝采を送った事 この辺りが全然説明されてない、説明が成されて無いから方向性が希薄に成る。 だから作品自体も煮え切らないというか、ドッチ付かずに終っている様な気がします。 でも、空港の実態やサバイバルなどは珍しく、最後まで飽きずに観れました。 今回はちょっと甘めの7点にします(笑) [DVD(吹替)] 7点(2010-10-11 15:19:16) |
27. 西部戦線異状なし(1930)
《ネタバレ》 先ほど見終わりました。 実は1979年版と間違えて借りてしまいました(笑) ですがこちらを見て良かったです。非常に良く出来た作品でした。 とても1930年に撮られた映画だとは思えません。 戦闘と砲爆、機関銃座のシーンで、次第に横に流れて行く長回しの映像表現は 今見ても非常に斬新で、まるで自分がその場で撃たれているかの様な錯覚を感じました。 特に砲弾が横に連爆して行くシーンなどは鳥肌が立ちました。 その他、敵兵が塹壕へ飛び込んで来たり タコツボを飛び越えて行くシーンなどは、下からのアングルが非常にリアルで 最後は銃剣でも間尺に合わず、シャベルを振り回して叩き合う白兵戦も圧巻です。 この辺りはまだ実戦経験者が多数居たはずですから、演技指導などをしていたのでしょうか。 この映画がハリウッド最初の戦争巨編であり、その後のアメリカにおける 戦争映画のバイブルと成っているというのもうなずけますね。 特に戦闘シーンの映像手法の全ての原点が この映画に詰まっていると言っても過言じゃないかと思います。 しかし、戦闘シーン以外の場面設定で有ったり 台詞回しや演出などには、所々やはり時代を感じさせるものが有り 誰が誰だかはっきり区別出来なかったり、いま1つシックリ来ない所が有ります。 ただ、古参兵のカチンスキーを初め、まわりの配役は中々良い味を出していて コミカルなシーンも有ったりと、ある程度感情移入出来る設定で それが為にカチンスキーの呆気ない死は 現実の戦争の悲惨さ、儚さを如実に表していると思います。 ただ、もう1つ物足りないと感じてしまうのは 撃たれて血飛沫が飛び散ったり、モ切れた手足が宙を飛んだり、ハラワタがはみ出てたりの リアルな現代風戦争映画のギミックに慣れてしまっているからかも知れません。 そういう部分を期待している人は見ない方が良いでしょう。 しかし、実際の戦争、時代的背景やその現実、という物を当て嵌めてみると 実際の第1次世界大戦から12年しか経っていないこの映画のほうが ある意味で相当リアルであるのかも知れません。 [DVD(字幕)] 8点(2010-10-02 00:20:08) |
28. サロゲート
《ネタバレ》 みんなさん点数低いですねー^^; 確かに世界観が過去のSF映画に似てたりは有りますが 私はこの難しい題材を意欲的に、よくここまで作ったと感心しました。 遠隔操作で自分専用のロボットを操る社会。操る自分は自宅で寝て暮らし そのロボットが仕事をこなし、報酬を得て暮らす社会。 って、イヤーそれ、私の理想世界ですよ、いやホントに! そう出来たらと何度思ったか知れません(笑) 五感など、感覚器官の乏しいロボットを操るのは疲れる作業かも知れませんが この作品に出て来るロボットは人間と同じか、それ以上の感覚で操れるらしく みんながドップリとこの横着システムに嵌って生きている(いいなぁ。。。) つまり、この作品の主題というのは 「人間がロボット操る事で、その操っているはずの人間の方がロボット化してしまう」 これが全編、骨太なプロットに繋がっていると思いました。 あと、主演のブルースウィリス。 この人が主演だと妙に明るくって オラオラ感やドヤドヤ感が満載のストーリーに成るのが定番なのですが 今回はかなり陰影苦渋に満ちた、渋い役回りに徹していて アクション主体というよりも、謎解きに重き置く展開に成っています。 サロゲートという遠隔ロボットシステムは、人間に表面を小奇麗に繕える自由を与えたとも言えます。 しかし、逆に言えば、人間自体が家に閉じ篭り、サロゲートと自らの姿(実体)の違いを否応無く見せ付けられる。 そして、益々家に閉じ篭り、サロゲート(建前)を益々美化してゆく。 それが人々の至上の喜びとなる。 まあ、何でも度が過ぎると醜くなる物ですが この作品はそういう「醜さや、いかがわしさ」までしっかりと描いています。 そして、最後のカタストロフとその後の再生は 全く、壮観の一言に尽きます。 かなり面白かったです。 [DVD(字幕)] 8点(2010-09-18 13:42:45)(良:1票) |
29. 第9地区
《ネタバレ》 中々面白かったです。 ただ、この作品には大きな矛盾が有るのでは有りませんか? 自分で作った1発でビルに大穴を開けられるビームガン(?)を1個のキャットフードと交換したがるエビ 高度なアームスーツ(強化外骨格)を作りながら、それをキャットフード100個と交換してしまうエビ これは何故でしょうか? 私が異星人なら、それ等を利用して人間と戦いを挑み、エビの独立を勝ち取ろうとするでしょう。 しかし、エビ達は物乞いの様に人間へ食物をねだり 不潔で、ゴミを漁り、牛や豚を盗み、僅かな食物を巡って仲間同士で争う。 そして気に入らない事が有れば、すぐに殴ったり殺したりする、当然人間も殺される。 これは言わば、理性感覚の薄い原始人(もしかして黒人だと???)や動物の所業に他ならない。 かと思えば20年以上も母船のエネルギーの原材料を探して、自分たちの星へ帰ろうとしていたエビ達 彼等はエビの指導者だったのでしょうか??? そもそも、あの馬鹿でデカイ宇宙船の中は20年間も調査せずにほったらかし??? まったく、謎だらけです。 つまり、この作品はそういう謎を謎のままにするのが演出の様な所があり 地球へ来るに至った、異星人達の背景や性質について、殆ど明らかにされてません。 そしてそれはついに、最後まで明らかにされませんでした。 これ等を客観的視点による演出としてしまうのは、製作者側のエゴの様な気がしますね。 監督の弁ではこの作品は黒人差別が下敷きに成っているとの事でした。 しかし、作品を見る限り、それには失敗していると思います。 何故なら黒人達は自身が弱い立場だったから、近世に白人の侵略を受け、資源を奪われ、奴隷にされたのです。 彼等にもし、エビの作った機動歩兵が有れば、迷い無く、恨み骨髄の白人達を虐殺して回った事でしょう。 間違ってもキャットフードなどとは取り替えませんよ。 そういうなんと言うか、無理矢理なこじつけっぽいプロットがちょと残念でしたね。 ただ、先駆的なメカアクションや、主人公が受けた理不尽な悲劇、そして陰謀 その後の心変わり、そして秀逸なのが最後の造花作り。。。。 だけど、もうひと塩、味付けが足りなかった。 それがこの作品の惜しい所です。 [DVD(字幕)] 6点(2010-09-17 23:36:40)(良:1票) |
30. U.N.エージェント
1990年以降、このユーゴスラビアを巡る長い長い軍事紛争の悲劇はヨシップ・ブロズ・チトーという ある意味では優秀過ぎる指導者の出現から始まっていると言えます。 彼の功罪は徹底した自主自立に元付いた平等主義(自主管理社会主義)でしょう。 1900年代初頭、民族もバラバラなら宗教も言語もバラバラで 欧州の火薬庫と称されていたバルカン半島を あっと言う間に纏め上げた政治力とカリスマ、そしてその歴史的功績 なによりもスターリンの大粛清の災禍を防いだ英雄として 現代に置いても彼を崇拝する社会学者が多いです。 彼はトータルナショナルディフェンス つまり、コミューンと言う国家における最小の自治組織レベルで総皆兵制を敷き 非常に強固な連邦武装中立体制を作り上げました。 しかし、この体制は国内の民族主義を、徹底排除する事で成り立つシステムであり その為の緻密な軍制組織を有していた事が後々の紛争の種と成る。 また、ユーゴの国家体制と言うのはチトーの影響力(政治的カリスマ)が有ってこその体制で ある意味で独善的な超トップダウン的ヒエラルキーであり 「国益の分配を公平に行う」と言う前提条件が崩れてしまえば 後は上層組織が暴走するのは自明のシステムでした。 その懸念通り、彼が死んだ後はその国家システムが瓦解し、民族、宗教ごとの対立が激化し 国民はめいめいの持つナショナリズムに突き動かされ、雄たけびを上げて備蓄されていた武器を取り 隣近所に住む異民族、異教徒へ銃を向けたという状況が簡単に言えばユーゴ紛争の始まりであり スレブレニツァの虐殺は、ラトコ・ムラディッチという扇動者が 幾つかの自治軍からセルビア人の民族主義者を纏め上げて作った いわば独立愚連隊に等しい組織だった。そういう流れがユーゴ全土で連鎖し 軍閥が入り乱れる封建主義的な群雄割拠状態を作ったのです。 ムラディッチは元々国粋的な民族主義に傾倒していて、しかもヒエラルキーの上層を統べる1人であり それに自治区ごとの軍制が伴う為、ある意味で局地的独裁者でも有った事が災いしました。 酷な言い方かも知れませんが、チトーは自分の亡き後、この国がどうなるかまで見通せなかったのでしょうか。 もしそれが見通せて居たなら、チトーは近代史に燦然と輝く、偉人と成っていた事でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2010-09-06 22:31:50) |
31. サマーウォーズ
《ネタバレ》 え-と、さっきやってたんで書き込みます(笑) 他の人も言ってますが人物描写が甘過ぎますね。 これじゃあとても感情移入出来ない。 少なくとも大人向けでは無い事を理由にする以前に 基本的な部分が煮詰められてないと思いました。 まず、オズについてシステム的なギミックや趣味性が独りよがりというか これで他者の共感を得られると思ってしまう所が痛い。 私は最後まで違和感が有りました。あんなアバターは嫌です。 直感的に理解出来る部分が有ったとしても、細部が非常に説明不足で 例えば原発の制御や、人工衛星の制御をオズで一元化するというのであれば それに足る理由付けや、大きな未来観や世界像が無いと非常に陳腐に成ります。 「その方が合理的で便利だから」では全く納得出来ません。 その他、暗号をノートに列記して解読していますがこれは何故でしょう? 何故、ノートに書き写す必要が有るのか??? 計算ならパソコンの計算ソフトの方が早いでしょう。 製作者側の未熟さと言ってしまえばそれまでですが そういう勘所をおざなり、曖昧にしたまま、勢いで物事を片付け様としても共感は出来ません。 その他、終盤のご都合主義などもいただけませんね。 ただ、そういう目の荒さを除けば非常に勢いがある作品です。 特にラブマシーンの描き方などは斬新ですね。シナリオ自体の目の付け所も悪くない。 問題は細部に拘ってないという事です。話の勢いでカタをつけ様としてしまっているので 最後が花札のコイコイに成ったんでしょう。(笑) それと、ネットワークの全体像や最後は衛星が落ちてくる、じゃあ軌道をずらそう キーボードを乱打して鼻血が。。。これはどこかで聞いたお話ですよね。 いえ、某作品のマネは良いんですが それがが未消化のままに散りばめられているのでかなりイライラします。 もっと作品のシークエンスをキッチリと煮詰めて 独自性に溢れた作品であれば随分と印象が違ったのかも知れません。 [地上波(邦画)] 5点(2010-08-07 00:19:39) |
32. それでもボクはやってない
この作品は裁判も含めた日本の司法制度という物の不備を描くだけでなく 人が人を裁くという正義や法律の原点原理が いかに不完全で嘘っぱちな物かを明らかしにた作品でしょう。 また、日本の場合、江戸時代からの大岡裁きとも言うべき 「まず、お上に対して恐れ入れ、罪を素直に認め、恐れ入るなら許してやる」 こういう封建的俗習に元付いた起訴便宜主義が、未だに当局側で罷り通っている。 逆に考えればこれは犯罪者側にとってはオイシイ話です。 軽微な犯罪なら、被害者に相応の示談金を払い 後は素直に「ハイハイ」と従っていれば、自動的に検パイ(検事裁量の起訴猶予)に成り、釈放だからです。 逆に、今回の主人公の様な冤罪被害者にとっては非常に不利です。 やってもいない犯罪を「やったと言え、やったと言えば許してやる」 と、言われて否認すれば、お上に楯突いた事となり、当局は何が何でも有罪に持ち込もうとする。 警察側の意図でワザとズサンな証拠集めと捜査が成され 有罪を前提とした誘導尋問や、証拠の歪曲が行われた後、検察が強引に起訴に足る証拠固めをする。 裁判所は裁判所で有罪に都合の良い証拠だけを、裁判官の独断で取り上げ それを合理的根拠として強引にコジ付け、有罪判決を下す 全てが可及的速やかに効率重視で、一方的に進められて行く。 これでは有罪率99.9%もうなずけます。話に成らないのです。 何故、欧州などの先進国には死刑制度が無い国が多いのか? つまり、人が人を裁くという行為がいかに不完全で理不尽な行為であるかを 裁判員や裁判官自身が認識し、だから死刑判決の様な重い責任は負えない。こういう事ではないでしょうか? そもそも、海外の裁判員制度は素人の国民でも裁判に参加させる事で 民意を判決に反映させる事が出来るという、公平原理の大儀名分からですが しかし内実は当局側の責任分担(責任逃れ)として作られた制度とも言えます。 翻って考えれば日本の様に死刑制度が有る国が 今までよくも無神経に、こんな司法制度を続けて来たものだと 再認識させられる作品でも有ります。 話は変わりますが電車内の痴漢被害は 「満員電車という、馬鹿馬鹿しい電車の乗り方を無くすだけで0に成る」とは思いませんか?? まあ、これも司法制度と同じく、効率重視の社会倫理の中では馬鹿げた方法だと 一笑に付されてしまうのでしょうけれど。 [DVD(邦画)] 8点(2010-06-15 03:56:31)(良:3票) |
33. ヒトラーの贋札
《ネタバレ》 良い作品ですね。 主人公のサリーはロシアから逃れた、元画家の偽札作りの名人で小悪党然とした男ですが 彼の特技は天性、人の本質を見抜く力が有り、それにより彼は生き延び様とする。 当時、写真はごく限られた上流階級にしか縁が無く、カメラ自体も超高価で 下層階級の人間は街で似顔絵を書く、似顔絵師という連中に似顔絵を描いて貰っていた。 つまり、そこまで考え抜いて、あえて危険を承知で伍長に 「絵を書いたのは私です」と、名乗り出る事で自分を特技を売り込んだ訳です。 目論見は図に当たり、単純な伍長はご満悦で自分の似顔絵を書かせ ウマイい具合にそこへ隊長まで通り掛かってお駄賃に食料を貰う事が出来た。 と、まあ、機を見るに敏と言いますか、実に抜け目の無い男なのです。 そんな男が移送先でバッタリと出会ったのが 以前贋札作りで逮捕された犯罪捜査局のヘルツォークと 共産主義者のブルガーという若者だった。 このヘルツォークも実はサリーと同じく、抜け目ない奴で たぶんサリーを知っていたからこそ ヒムラーにベルンハルト作戦(偽札作戦)を進言したのかも知れない。 実に食えない男です。 また、ブルガーはサリーと正反対な理想主義者です。 ある意味、死にたがっているとも言える程に現状に絶望している。 サリーが単純な小悪党に終らないのはその精神の根底に 「悪党に成り下がった現在の自分」と「ロシアで捨てたはずの理想や同胞意識をむき出しにした過去の自分」 の両方が有ったからでしょう。 彼が単なる小悪党ならブルガーをナチに売っています。 それをせずに極限状態の中で何度も危ない橋を渡りながら ブルガーや仲間達を庇ったのは、ブルガーの中に過去の自分を見たからであり 忘れ掛けていた同胞意識の目覚めと相まって、彼等を助ける事が目標に成った。 逆に言えばブルガー等を庇うサリーの立場をギリギリまで立てて 事を遂行しようとしたヘルツォークも、タダ者ではないと言えますね。 現に偽ポンド札の製作には大成功して、実際にトンでもない額が当時の市場に流れてしまいました。 サリーは戦後、マンマとヘルツォークから贋札を奪って逃げ失せますが 結局思い直して、カジノでわざと全部スッてしまう。この辺りはまあ、出来過ぎですな(笑) しかし、この手の映画の中では、実に小気味良く、しかしちゃんと内容有る作品に仕上がっています。 [DVD(吹替)] 8点(2010-05-26 04:26:23)(良:1票) |
34. シッコ
《ネタバレ》 今見終わりました。 お恥ずかしい事に私もこの監督の事を色眼鏡で見ていた1人でした。 しかしこの作品は文句無しに素晴らしい。医療ドキュメンタリーとしては傑作の部類です。 アメリカにおける医療問題の歴史を細部に至るまで詳しくリサーチして 彼独特の表現方法で作品にしています。 彼の作品は全般にどれもシニカルです。 だがこの作品は、そう、確かにシニカルでは有りますが 同時に暖かいヒューマ二ズムにも溢れている。 突き詰めれば結局、アメリカは資本主義がトコトン行き着いた国だと言う事なのでしょう。 政治が1部大企業の言い成りに政治を進め それが医療に関してまでクチバシを入れると、どういう事態に成るのか? それを年代も踏まえ、赤裸々に暴露しています。 政治家は皆、金を掴まされ製薬会社の代弁者となり ごく限られた金持ちだけしか正当な医療を受けられない。 貧乏人は文字通り、身ぐるみ剥がれる様に、有り金を全部医療費に巻き上げられ 必要な医療を途中で打ち切られ、そのままガンが進行して死んだり カネが無くなったと見るや、路傍へ打ち捨てられてしまう。 文字通り、「文無しは死ね!うせろ!」と、こうです。 私は目を疑いましたが、今やアメリカではそんな事が日常茶飯事に行われて居る。 はた、と、考え直すと日本でも現在、特別養護老人ホームに申し込んでも 全国で42万人の待機者が居て、仕方なく劣悪で小規模な介護ホームへ押し込まれた 寝たきり老人が火災で7人焼死したというニュースや 他にも収入が無く、健康保険料が払えないからと言って自治体に保険証を取り上げられ 医療を受けられない人々も増えていると聞きます。 その一方で大規模外食チェーンのオーナーが病院経営の規制緩和を求め 病院事業の株式化を政府に働きかけていたりしている。 つまりわが国も決して「対岸の火事」では無いと言う事なのです。 作品の後半に呼吸器の薬がアメリカ本土で買えば120ドルもするのに キューバでは僅か5セントで手に入る事を知り、女性が号泣していた場面が有りますが 「日本では絶対その様な事態に成らない」と言えるのでしょうか? 私は今の日本医療の現状を考えると空恐ろしく成ります。 また同時に、オバマ大統領の成立させた皆保険制度が早晩覆らない事も祈ります。。。 [DVD(字幕)] 9点(2010-05-03 00:44:46) |
35. ワルキューレ
《ネタバレ》 この作戦の誤算は作戦参謀のシュタウフェンベルクが 戦略家では有ったけれども戦術家では無かった事でしょう。 シュタウフェンベルクは明らかに大局だけを見つつ、この綻びだらけのクーデター作戦を成就しようとしていた。 空白地帯と化している本拠ベルリンにおいて予備兵を総動員し、重要拠点を力ずくで押さえ込む。 あとは出たトコ勝負の時の勢いを借りて、強引に全てをひっくり返してまおう。 確かにその大局的視点においては非常に素晴らしいクーデター作戦でした。 もし、シュタウフェンベルクが少しでも局地的な観点から物事を見れる人間なら ヒトラーが死のうが生き様が、狼の巣から伸びる電話線を全て切ってしまったはずで それは1個小隊ほどの私兵が居れば可能だったはずです。 決行後は事の成否に関わらず、オルブリヒトが直ちに予備軍司令官フロムを拘束し、即時作戦の実行へ移る。 実行後、宣伝相のゲッべルスと宣伝省を真っ先に押さえたのちに 伝令部を制圧して情報統制を図り、その後SS本部、ゲシュタポなどを各個襲撃して行けばもしかするとこのクーデターは成功していたかも知れない。 特に通信兵大将のフェルギーベルに通信遮断を依頼する事自体が間違っています。 彼からは狼の巣から伸びる電話線の位置を聞き出せばあとは事が足りたはず。 また、ヒトラーは自分が反ナチス派から再三狙われている事は、以前から分かっていました。 いま味方としている側近の中にも自分のやり方に対し、迷いが有る事を見抜いていたのかも知れません。 そう考えるとヒトラーは反逆者を炙り出す為に ワザと彼等を泳がせてこのクーデターをを決行させる事で一挙に事態の収拾を図ったのではないか? 実はこの作品はそれも暗に匂わせた作りに成っています。 トレスコウが取りに行ったリキュールを「ココで飲みますか??」と、意味有り気に笑うブラント大佐。拳銃を卓上に出したまま、反逆者の事にも触れています。 別荘で新任の予備軍参謀長であるシュタウフェンベルクを呼び、ギロリと見据え「ワーグナーを知っているな」と、言うヒトラー 「生かす者と死すべき者を選び。。。」この辺りは相当にキワドイシーンです。。。 事実、このクーデター失敗以後は反体制派の大粛清が行われ、敗戦まで1度も暗殺計画は起こってません。 歴史的事実は事実として記録される以上に、深く暗く横たわっています。。。。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-15 18:05:13)(良:1票) |
36. アイアンマン
先ほど観終わりました。 まーケレン味タップリに作ってある典型的なアメリカンムービーです。 ストーリーは突っ込み所満載で雑だし、主人公はお気楽野郎で好きに成れない。 ですが他の人も書いてますが SF小説を具現化した様な機械化歩兵の先駆的なメカデザインと そのアクションの見せ方には本当に脱帽しました。。。 7点はその部分だけに付けた点数です。 大まかにはスパイダーマン的な味付けと、ロボコップをコミカルにした感じですが 細部に渡るロボアクションや、メカギミックなどには一切の手抜きが無い。 特に試作機から最後には完璧に仕上がったメカを装着して行くシーンなどは鳥肌モノで これだけのモノを映像で見せた作品はアニメーションでも皆無でしょう。 トランスフォーマーがメカ星人で圧倒的な力感と強さの元にしたアクションとするなら このアイアンマンは中に人が入っている分、色々壊れちゃったりと面倒な事も多い。 それもキチンと描いています。 但し、総体的には勧善懲悪のハッピーエンドと底浅ですし 兵器会社の闇もスターク社(笑)などと何処かで聞いた名前を付けてしまって 国家なんとかウンヌン省とか、有名な某ドラマ作品のオマージュが随所に散りばめられていて この辺りはどうにもイライラします。 もし、絶品のメカギミックとアクションが無ければ3点を付けたい作品ですね。 ただ、ロボメカ物が好きな人にはたまらない作品に仕上がってますので 難しい(笑) [DVD(字幕)] 7点(2010-04-03 18:30:39) |
37. 消されたヘッドライン
《ネタバレ》 ん------ ちと、納得が行かない映画です。 話のプロットなどは結構丁寧に作られてますが 最後の最後で全部ひっくり返すというこの手法を 一番悪い手で使ったと言わざろ得ない。 疑問も幾つか有ります。 最後の最後で主犯を明らかにするのであれば それに繋がる経緯やタネ明かしをもっと重厚に用意しておかなければ なんだコリャ?? と、言う風に成らざろ得ないのです。 その扱いが非常に中途半端で怒りすら覚えます。 幾らマンマと騙されたにしても主人公が長年の親友と ああもアッサリと決別し、その記事を淡々と書いて「はい、お疲れさん」 後は若い可愛い子ちゃんとさよなら。 これでは観客は納得しないんですよ。 話の持って行きかたも24とかで散々やられている 政治と民間軍事会社の癒着と汚職。そこに集まるカネと利権。 これは最初の30分で察しが付いた人が殆どだったでしょう。 作った人は「でもそうじゃなかったでしょ?」と、言うかも知れませんが あのラストでは到底納得できません。 見終わってガックリした人が多いのでは無いでしょうか? なのですいませんが、ちょっと辛口の評価と成りました。 [DVD(字幕)] 4点(2010-03-27 20:31:01) |
38. ターミネーター4
《ネタバレ》 先ほど見終わりました。 言いたく有りませんが かなりズサンな作品としか言い様が無い出来ですね。 まず、幾つかの大きな矛盾が有る。 マーカスの役目が敵に潜入してジョンやカイルを殺すのが使命だったとしたら 何故すぐに殺さなかったんでしょうか? カイルと町で出会った時に殺してしまえば自動的にジョンも消滅してスカイネットの勝利と成ったでしょう。 あと、マーカスはどう作られ、何処に長期保管されていてどうして動き出したか? スカイネットはどう管理していたのか? 死刑間際に死体提供を求めた女の正体は??? その辺りの謎解きは一切無いまま、スカイネットにカイルが捕まって殺されず そのカイルをジョンが助けに行って敵の本丸へいとも簡単に侵入する マーカスは首の後ろのリモート回路を自分でサクっと千切ってジョンに味方する。 そしてムチャ押しアクションですべてが大団円で終る。 また、他の人も言ってますが 何故か宇宙戦争やT2のオマージュが意図的に散りばめられている。 シリアスなのにウケ狙いですか??? 世界観ウンヌンやSFアクションウンヌン言う前に キッチリ押さえる所は押さえないと本当に陳腐な作品に仕上がります。 話は変わりますが ココ10年ぐらいハリウッドの出す大作が何処か似通っていると思えるのは 私の思い過ごしでしょうか? ともあれ、これを映画館で見なくて良かったです。 [DVD(吹替)] 3点(2010-02-09 01:32:17)(良:2票) |
39. 刑務所の中
《ネタバレ》 一見するとほのぼのとした「刑務所ライフ」を描いた様にも見える映画ですが 私はちょっとそら恐ろしい気がしました。 刑務所の実態を形式的に表した作品としては非常に良く出来ていると思いました。 しかし、本当の実態は多分こんな物では無いと思います。 主人公達を「5匹の犬の生活」と題され始まる刑務所生活。 朝起きてから寝るまでのほぼ全てを管理され、人権や尊厳の殆どを制限される生活。 それは自身が囚人(犬)であるからに他なりません。 多分、専属の栄養士が献立を立てて作っているであろう刑務所の給食。 主人公達はこれを何よりの楽しみとして皆嬉々として食う。 それに無常の喜びを感じる。美味いという。果たしてそうでしょうか? 消しゴムを床に落としただけで看守に「それを拾う許可」を求めなければ成らない囚人。 元々見ず知らずの5人が同じ雑居房という狭い檻に入れられ寝起きし ほぼ生活の全てを規則ずくで縛られる毎日。私ならとても正気では耐えられません。 つまり、この檻の中の5匹は文字通り犬に成り下がる事でしか 生きて行けない状況に追い込まれたと言う事です。 自分が犬だからこそ規則ずくめの中の「僅かな自由」を楽しめる。 そしてそれは自分達がその生活に慣れたのでは無く。 「それ」を刑務所から強制される事で慣らされただけなのではないでしょうか? この生活において犬になり切れない者は 非常なストレスや自我との強烈な葛藤に見舞われるでしょう。 だから私は刑務所の実態はこんなものでは無いと思います。 もっと後ろ暗く陰湿な苛めや暴行など、表に出ない形の実態が数多く有ると思う。 また、管理する側の看守も囚人を人間として扱わない事を日々訓練し、それに慣れてしまう。 名古屋であった看守のリンチ殺人などがクローズアップされ、検察が渋々公開した資料では 名古屋にある4つの刑務所だけで過去10年間に260名が死亡し そのうち変死とされた囚人がなんと120名以上もいたそうです。 この監督はもしかすると映倫に引っ掛からない様に わざとこの作品をほのぼのと作ったのかも知れません。 それほど日常の細々とした描写はリアルに描かれています。 ただ、その本音が何処に有るのかは巧妙に韜晦された作品だとも思います。 [DVD(邦画)] 7点(2009-03-29 17:51:07) |
40. トラフィック(2000)
《ネタバレ》 いま見終わりました。 メキシコから運ばれる麻薬は膨大だと聞きます。麻薬は当然カネに成る。カネに成ると言う事は 合法非合法問わず人間がそれに群がり、その莫大な利権を周旋調整する人間が メキシコ、アメリカ双方に必要に成るはずなのに 特にブルーのアメリカ側でそれが全く描かれてませんでした。 描かれてないのは意図的に描かなかった、とも取れます。 イエローのメキシコ側では警察は腐敗し国境警備軍(?)の将軍も 麻薬カルテルの手下に成り下がっている。これが現実です。 劇中メキシコ国境での摘発を描いてましたが、関係者の皆が威勢よく各部署を闊歩します。 飛行機の中(?)の会議で麻薬撲滅部の本部長であるマイケルダグラスが語調鋭く自論をぶち上げ 各部の代表にも斬新な意見を求めます。でも誰も何も言わない。黙り込んでいる。何故か? その答えは麻薬の売人の1人が捕まって、免責を受け元締めの裁判で証言をする為に 命を狙われるので警察に軟禁状態にされます。そこで彼が言います。 「お前等のやってる事は結局無駄なんだよ。麻薬戦争とお前等は言うがそんな物はとっくに終わっているんだ。お前等はもうとっくに負けているんだ」と。 そう、アメリカはもう負けていたと言う事です。それは政府も重々知っている。 本当の麻薬ルートというのはもっと合法的に、しかも大量に運ばれて来ると聞きます。 それには全く触れられて無い。圧力整形の人形ルートだけが僅かに言われただけです。 終盤でマイケルダグラスの娘が麻薬中毒になり 自らその職を辞する場面が有りますが あれは自分の家庭を優先したという事ではなく もうとっくの昔に勝負が付いているにも関わらず それを知らされていないアメリカ国民の溜飲を下げる為だけに 自分が政治家、官僚に利用されている事に気が付いたからではないでしょうか? 結局の所、この監督さんは麻薬撲滅戦争などと高らかに謳っている アメリカ政府の偽善と欺瞞をこの映画で描きたかったのかも知れません。 しかもこんな偏屈な切り口で しかしながらその麻薬撲滅の現場で働く人間は諦めてません。 建前のみのスローガンを掲げて実際はやる気の無い当局上層部とは違って 多少のブレは有ってもその正義を貫かんとする為に命を掛けています。 それをこの監督はラストにやさしく描いています。 そういう意味合いで1点プラスしました。 [DVD(吹替)] 7点(2009-02-22 20:49:52)(良:1票) |