21. マグニフィセント・セブン
《ネタバレ》 「荒野の七人」が「七人の侍」をリスペクトして作られた映画である様に、この作品も「七人の侍」と「荒野の七人」をしっかりと勉強して、敬って、感化されて作られた事がひしひしと感じられる。 例えが良いか分らないが、「宇宙戦艦ヤマト」を見て育った現在のスタッフが、「宇宙戦艦ヤマト2199」を作り上げた感じと似ている。 現在の視点で描きながら、矛盾点を克服していく手法。「荒野の七人」の農民の裏切りや、緩い悪党の描写はモヤモヤ感があったもんなぁ。 様々な人種が出てくる違和感についても、この映画の描かれている当時は黒人の保安官も、東洋人も、本作には出ていないロシア系も西部には存在していたらしく、人種の坩堝であった事が最近検証されたとの事。なるほど、多少の盛りはあったとしても整合性は取れていると。 あと、次々制作された続編以降の駄作群(ヤマトの「愛の戦士たち」は除く)に対する憤り。本当に観たかったリメイクはこれだ!という心意気。 劇場で鑑賞後、改めて観たくなってブルーレイを購入したのだが、正解。 特典映像、これが良かった。 グッドナイトがエマ・カレンにピアノで弾き語る息抜きのシーンや、熊男のホーンがファラデーと打ち解けているシーン、極めつけがメキシコ系のバスケスがこどもと心を通わせる場面が見られたりと、未公開の映像は宝箱。大収穫であった。 前述の方々が記されている様に、前作であった心に残るシーンが描かれていないのは、そこを見過ごしているわけでは無く、尺の問題と思われ、スタッフは分っていた。苦しんでいたに違いない。志はしっかりとあったんだ! 特典映像で感激したのは珍しい。この未公開シーンを加えたら、西部劇としての完成度、かなり高そう。 いずれにせよ、特典を観なければ物足りなさがあったのは事実。 もちろん痛快なアクションとスピーディーな展開の、久々に観た傑作西部劇として十分楽しめた訳だが、背負ってしまった神的二作品の十字架は、鑑賞しているこちらにも存在しているわけで、当然辛口になってしまう。 最後の音楽でかなりウルウルしてしまったが、それだけでは駄目なんだ。 尺を後30分伸ばしたら、絶対リメイクの傑作になる。 完全版やディレクターズカットが観たい!期待! 崇高なる7点で。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-06-08 16:42:53) |
22. シェーン
《ネタバレ》 この映画は、時折無性に鑑賞したくなる。 大抵、それは仕事の行き詰まりやストレスを感じている時。 ワイオミングの雄大な情景。男同士の固い信頼関係、義理と情。 道ならぬ恋は見つめ合うだけ。美しい旋律。 悪役は悪役たれ。職場放棄をしない無慈悲な殺し屋。微笑みながら死んでいけ。 自分の背中を少年が見ている。優しい言葉と、厳しい決意でその場を去る。 少年も深追いをせず、大人への道を歩み出した。 テレビでの初鑑賞から40年経つ。当時、登校拒否気味だった自分を救ってくれた映画。 今でも守護神のまま。 [DVD(字幕)] 10点(2017-01-12 08:15:45)(良:4票) |
23. ビッグ・ウェンズデー
《ネタバレ》 自分はサーフィンをやらないどころか、海に行くと赤く火ぶくれになってしまい、しかも泳げない。海は行くものではなく、眺めるもの。裸になるのも肉体的に自信がない。夏は苦手。 そもそも暗い映画館浸りの青春だったから、眩しい太陽なんかとは縁がない。海で裸で、女の子が常に傍にいるなんて事有り得ない。 映画サークルに在籍してたんだ。男子校の中でも「いけていないカテゴリー」だったんだ。 だから、この映画に出ているような連中なんて大っ嫌いだった。乱痴気騒ぎのパーティーや、友情の絆を試みるような徴兵、車で国境を超えて行くドライブ、そして何故だか何年かに一度、水曜日にやってくるという伝説の大波。。。。水曜日、自分とこには、水野晴郎の水曜ロードショーくらいしかやってこなかった。しかも毎週。悔しくて、羨ましくて涙が出てくる。 大好きな映画。 [DVD(字幕)] 9点(2015-06-24 08:33:43)(良:2票) |
24. 冒険者たち(1967)
《ネタバレ》 ジョアンナ・シムカスの無邪気さは罪。たまに見せる寂しげな表情とのコントラストには、アラン・ドロンならずともやられてしまう。それを見守るリノ・ヴァンチュラ親父の方に彼女が惹かれていたという設定も、世の男性にはたまらない。 ストーリーはあくまで妄想的。死ぬのだったらこんな逝き方がいいとか、看取るのならばこういう粋な台詞言って送ってやりたいとか、三角関係はあくまでプラトニックが基本とか、格好良すぎて有り得ない。そもそも要塞島での銃撃戦など、ガキの思い描く戦争ごっこレベル。妄想大爆走映画! でも、海と空の深い青色と、口笛と、囁くような歌声、そして彼女の「レティシア」という名前の響きが全てを包み込んで、忘れ得ぬ名画に昇華させてしまった。そもそも妄想って大好きだったんだ、自分。 この映画の良さを人に語るとき、つい熱くなりすぎて引かれてしまう。言葉で伝えるのは無理。自分の心に大事にしまい込むべき愛しい映画。 [DVD(字幕)] 9点(2015-02-19 07:58:00) |
25. ヘアー
《ネタバレ》 「グッド・モーニング・スターシャイン」のコーラスが素晴らしい。オープンカーで荒野を疾走するシーンは何とも明るく、楽しく、そして切ない。 ここでの背景の青空に感じられる解放的なイメージは、「カッコーの巣の上で」のクルーザーで釣りに出かけるシーンと相通じる。疑いもなく今を楽しんだ後に訪れる現実とのギャップ。あくまで本能のまま生きようとする主人公たちに待っている残酷な試練。 この時代のミロス・フォアマン監督は笑いと、そこからの突き落とし、そして静かに染みわたっていく怒りを描くのが実に巧みであった。 ラストの大群集のシーンでの「レット・ザ・サンシャイン・イン」。何度も繰り返されるフレーズ。未だに心の中で鳴り響いて止まない。 [DVD(字幕)] 8点(2015-02-18 08:50:50) |
26. タワーリング・インフェルノ
《ネタバレ》 他の方の投稿を観て、何だか無性に懐かしくなり改めて夜中の鑑賞。 やはりマックイーンは相当に格好いい。 特に、宙吊りエレベーターの必死の救出後、息つく間もなく再度屋上に誰かを登らして、貯水タンクを爆破しその落下水圧で消火しろ、という実際滅茶苦茶な計画を上層部から告げられる場面。 緊張感がすごく高まり、ついにマックイーンがキレるかと思わせた直後、一瞬の呆れ顔と自虐の捨て台詞を残し、彼は自ら颯爽と現場へと立ち向かう。このヒロイズム、ニヒリズム。 あと建築家のポール・ニューマン。身内業者の手抜きが火災の原因という負い目はあったにせよ、率先して人命救助に当たり、パイプ伝いの必死の救出劇を繰り返す。 頭も身体も目一杯使う。昨今の先逃げ船長たちに見せてやりたい彼の責任感。 また、冒頭、ジョン・ウィリアムスの躍動感あるテーマ曲に乗せて、ヘリコプターでビルの屋上に降り立ったニューマン。 拳を掲げてパイロットに挨拶するさりげない仕草。本当に格好いい。 もう二人とも故人。 懐かしさと寂寥感に包まれた再見であった。 [DVD(字幕)] 10点(2015-01-15 08:02:04)(良:1票) |
27. 横道世之介
《ネタバレ》 正月休みにゆったりと鑑賞。で、題名から感じ取れる長閑な印象のみを頼りに、全然予備知識も無い状態で観たのが本当に良かった。 それと自分の中での吉高由里子という女優のポジショニングが、どうにも定まらなかったのが、当作品鑑賞後に明らかに大好きな女優として位置づけられた。学祭のサンバ部の楽屋で、彼女が世之介を団扇で扇ぐシーン。扇ぐ勢いが喜びの度合いで変化して、犬のしっぽみたいで本当にカワイイ。その後のカーテンに包まるデレデレシーンは言わずもがな。 さて、物語。おそらく自分よりやや下の世代の1980年代の彼らの生活は、多少の非日常的な出来事はあっても、おおよそ親近感が持てる程の存在に感じられ、懐かしさという感情が自然と湧き上がる。 人生について特に目的もないが、決して厭世的ではなく、人に対して当たり前に優しい。恋愛に対しても遠慮はしないが、ガツガツもせず、どちらかというと受け入れる事で成就される。そういった主人公を好きにならずにいられない。 時代を前後させる演出においても、実に自然で押しつけがましい主張がない。これが観ていて大変心地良い。 あんな奴がいたな、という誰もが持つ過去の友人に対しての感慨を、空気感と優しい台詞だけで表現する。途中ラジオの放送で知る事となる、世之介が関わってしまった、ヒロイックで劇的な「ある事件」すらをも劇中では、サラッと流してしまう。映画を観ている側はとても切なくなってしまう一瞬であるが、当時世之介に接していた友人や家族、恋人は彼の事を笑顔で思い出している。 こんな日本映画、最近あったか?いや昔もあったのか? 出演者全てが好演。画面が美しい。心に留まり続ける宝物のような映画。観終わるのが寂しい。鑑賞後、制作側の「笑ってください」という思惑に反し、少しだけ涙を堪えきれなくなった。この件については自分が歳を重ねてしまったから。 [ブルーレイ(邦画)] 9点(2015-01-05 07:52:49)(良:4票) |
28. カプリコン・1
《ネタバレ》 ジェリー・ゴールドスミスの躍動感ある主題曲が印象的。朝焼けに浮かび上がる発射台の冒頭シーンの臨場感は正統派のSFスペクタクルの幕開けを予感させる。 観覧席における政治家同士の皮肉の応酬も現実にありそうで、開始15分ですっかり引き込まれてしまった。 その後の展開は、迫力あるチェイスシーンや渋いゲスト陣の好演によりメリハリのあるものだったが、国家陰謀を描いた部分の完成度は、随分と隙や手落ちがあった感も否めない。 異変に気がついたNASA職員の消され方に比較して、FBIまで動員しながらエリオットグールドを抹殺しきれない展開や、フェイクの撮影をしたセットをそのまま残しておくなど、もう少し丁寧な描き方(ネタの回収)がされていればサスペンス物としての完成度も更に上がるはずなのに。多少残念。 だだ、多くのレビューの中で比較的評判の良くないラストシーンの描き方に関しては、自分としてはすごく好印象。 新聞記者と、生き残った宇宙飛行士のがスローモーションで走り寄って来るシーンを、テレビ局のカメラが一斉に捉える。火星着陸のトリックを信じ込まされた国民が、今度は有り得ない現実をまた生中継で目にする事に。その後起こった騒動を想像するだけでもカタルシスを味わえる。 何故今さらこの作品を鑑賞したかと言うと、最近カレン・ブラックさんの訃報を知り、彼女の迫力ある風貌を見たくなった為。出番は僅かだが、発するセリフがとても粋で、テリーサバラス同様、とても輝いていた。 [DVD(字幕)] 8点(2014-01-31 09:05:41)(良:1票) |
29. 激動の昭和史 沖縄決戦
《ネタバレ》 仕事で沖縄を訪問した際に、彼の地で起こった激戦の史跡を見る機会に恵まれた。それぞれ資料館も併設されており、悲壮な史実も改めて知るに至った。 その勢いで帰宅後、この映画をDVDにて再見。 岡本喜八監督は「死」の表現を、それこそ圧倒的な艦砲射撃のような勢いで描き続ける。そして観るもの全てに容赦なく「死」を叩きつける。 切腹という自決方法を選んだ牛島中将や長(ちょう)参謀長の「死」(切腹の様式美にこだわろうとする幹部面々の思いがめちゃめちゃになる演出が秀逸)から、戦車に轢き殺される兵員の「死」、鎌で幼子と自らの首を掻っ切る「死」、乙女達の服毒「死」。本当にあっけない。感傷などに浸っている隙もないほど当然にそして慌しくそこにある「死」。 その「死」の持つ意味を見出す事が鑑賞後の責務といえる。 実際、その期間の沖縄に何が起こったのか、じっくりと考える時間を持たねば、この映画も史実も単なる悪夢に過ぎなくなってしまう。 この沖縄戦に限って言えば、自決を含め、兵士や士官の死(日米双方)は殉死であり、刀を振り上げて突入する姿はある意味悲壮感とは程遠く、覚悟を決めて「格好良い死に方」を自己表現出来た幸せな「死」であったといわねばなるまい。 一方で敵味方に自らの大地に踏みにじられ、訳も判らないうちに「皆死ぬんだから」という空気の中で、集団自決を強いられた多くの県民の「死」は、それこそ浮かばれるはずも無く、ただ、ただ悲惨で残酷である。決してここの地の「死」は平等では無い。 それだけに、「戦場を歩く少女」が、ラストで死者の水筒を手に取りその水を飲み干すシーンの清々しさは鮮烈な印象であった。生きる権利を掴み取った者の強さとたくましさ。彼女こそ、戦後の沖縄県民の象徴であり希望である。 重い重い2時間半の最後にやっと救われた思いがした。 日本軍部、アメリカ軍、それぞれの思惑に翻弄され続け、県民全体の約4分の1の尊い命を失い、さらに四半世紀も占領下であり続けた沖縄県。戦争前から続く侵略と略奪の歴史。現在の基地問題。等々・・・。 常に歴史の厳しさの矢面に立たされながらも、どこかで「受け入れる事」「共存する事」を日常化してしまっている沖縄県民。愛おしすぎる。 日本人として見るべき映画。 [DVD(邦画)] 8点(2012-11-04 16:41:05)(良:2票) |
30. 炎のランナー
《ネタバレ》 初見は公開時の日比谷の映画館。予備校生時代の鬱屈した精神を、この映画に出てくる同世代の若者たちの信念の強さや、高貴な意識に打ちのめされた想い出がある。 ある一時期、五輪に向かう日本の選手達が流行語の様に「楽しんできます」「遊んできます」との発言を連呼していた。マスコミに対しても必要以上に不機嫌な表情を露骨に見せていた。。。彼らのアスリートとしての実力は尊敬に値するが、五輪に挑む覚悟や、強靭な信念はそこに感じられなかった。 国民の期待やプレッシャーや、煽り立てるマスコミが、彼らの思考をネガティブにさせていた事実は否めないが、この映画に描かれた若者達には、もっと崇高でもっと歓喜に満ちた五輪への思いがあったように感じられた。 その時のパリ五輪での事実をありのままに伝えようとした映像は、結果として時代を超越して見事な光線美と溢れる格調の高さをスクリーンにもたらしている。心にしみる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2012-08-02 07:59:47)(良:1票) |
31. 世界大戦争
幼い頃、土曜の昼間にテレビで見て、無性に怖くトラウマとなった作品を40年振りくらいにDVDにて再見。台詞回しや、ミニチュアの特撮に時代を感じるものの、ドラマとしてしっかり腰を据えて作りこまれている。東宝映画スタッフの良心に敬意を表したい。 再見後、改めて思った事。それは、終末戦争の危機感と並行して、世の矛盾をあらゆる角度から見せつけている作品であるという事。 軍人や政治家を含め、世界の誰もが核戦争なんて望んでいる訳ではないのに、明らかにその愚行に進んでいくシナリオを書き治せない各国首脳。戦争の悲惨さを敗戦を通じて十分に理解しながらも軍需産業の株価に一喜一憂する一般庶民。 ラストの笠智衆の船上での「人間は素晴らしいもんだがなあ。一人もいなくなるんですか、地球上に」という発言こそ、まさに言い得て妙である。 この矛盾の打破(もちろん善意の方向に)をしない限りは、常に終末への不安は消え去らないという事を改めて考えさせられた。 主人公フランキー堺の夕陽に向かっての絶叫は確かに感動する。但し、そこに自己批判もあって欲しかった。終末は政治家や軍人が勝手に起こしているだけではない。本当に戦争を望まないという庶民の意識にも変化が必要だという事を。 [DVD(邦画)] 7点(2012-05-23 08:38:27) |
32. 華麗なるヒコーキ野郎
《ネタバレ》 イントロダクションの躍動感が何とも心地良い。航空ショーを見に通う常連の子供に対して、ウォルドがガキ扱いして邪険にしたと思った矢先、次のカットでは機上で満面の笑顔の少年が描かれる。ガキであろうと「男」は「男」として扱う。このテンポ。このセンス。ジョージ・ロイ・ヒルならではの演出が輝いている。ヘンリー・マンシーニのスコアもすこぶる快調。 ケスラーとの「男」の一騎打ち。その後に待ち受けるだろう「死」などは眼中には無く、ひたすら本気である。バカバカしい。でもすがすがしい。惚れ惚れする。 [DVD(字幕)] 9点(2012-05-02 12:55:21)(良:1票) |
33. 渚にて
キューバ危機以前にこの映画が作られた事は、今考えると凄い事だと思う。 戦後、東西両陣営の核のバランスの脅威から、時代への警鐘としての作品のはずだが、封切られて2~3年後に、現実にかなり際どい所まで世界情勢は行ってしまった訳だ。この時代にこの映画を見た人は、結構トラウマとしてその世界観をすり込まれていた事だろう。 反戦映画の抑止力がどれだけのものかなんて、誰にも判らない。 しかし、「その後の出来事」を淡々と、そして堂々と描ききったこの作品は、この時代にとってとても大きな役割を果たしたに違いない。 日本にも、もっとストレートに核戦争を描いた「世界大戦争」というフランキー堺主演の映画があり、小学生時代の土曜の午後テレビで見た記憶が、しっかりとトラウマになっている。 こういう、作り手の情熱が感じられる映画はその事だけでも評価するべき。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-23 08:22:43)(良:1票) |
34. リトル・ロマンス
この映画を見て、同世代のダイアン・レインに憧れたのが高校2年の時。もう39年前。 ファンレターを一生懸命、英語で書いて、何だか語学の勉強になってしまった。 元来、大好きなジョージ・ロイ・ヒルが監督なので、観る前から期待度は高かかった。 それこそ、2年間くらい「リトルロマンス」テンションが続いていた。 「何とかロス」って言葉が昨今使われているが、映画の上映が終わる度、まさに「リトルロマンス ロス」になり、ロードショー公開が終わっても二番館、三番館に通い詰めていた。自分の純情シネマ時代の象徴的映画。 パリ・ベニスの美しい風景、J・ドルリューの心に響く旋律、時に「明日に向かって撃て!」の左右に振るカメラワークを彷彿させるロイ・ヒル監督の心憎い演出。主役の若い二人の新鮮で楽しい駆け引きなど、すべてが大好きな映画だった。 そしてローレンス・オリビエ卿。温かい演技。映画のラスト、幼い二人の痛い程切ない別れを、優しい眼差しで見つめていた。 同じくティーンエイジャーの楽しくも切ない男女逆転恋模様を描いた、大林宣彦監督の傑作「転校生」。 明らかにこの映画をリスペクトしている。去りゆく彼女の車を追うラストシーン、主人公の男の子が映画好きって設定まで一緒だもんな。 今でもDVDで思い出したように見る映画、傑作。思い入れも強すぎるから、満点になってしまう。 [DVD(字幕)] 10点(2009-04-22 22:17:30) |
35. トラ・トラ・トラ!
感情移入しない淡々とした演出で、国内外の政治的駆け引きを前半これでもかと見せつけた上での、後半の戦闘シーンのカタルシス。大本営発表によって歓喜した当時の日本国民同様、歴史としての敗戦を周知している自分も、奇襲による圧倒的、一方的な戦果を描いたシーンには不謹慎にも興奮、喝采してしまう。 印象的な攻撃シーンとして、カーチスP40がゼロ戦の機銃掃射で離陸前に撃破される場面。何度見ても驚愕する。死傷者が出たという撮影の凄まじさは納得できる。またレシプロ機といえども、急降下で迫りくるそのスピード感はCGでは表せないであろう迫力である。 しかし、本命の攻撃目標たる空母を発見できない状況下、南雲中将の弱腰の帰還命令や、山本長官の虚しい思いを述べたラストシーンで、あっけなく現実に引き戻される。実際、その後目覚めた巨人の国を挙げての復讐戦のすさまじさは、日本国民に取り返しがつかない犠牲を生んでしまった。 ほとんど軍人と政治家、外交官関係者しか登場しない劇中、彼らの苦悩、悲劇がストレートに感じられた。日米合作である事の意義が見事に活かされている。 そして日本軍人の凛々しさと尊厳を、ハリウッド資本の映画でここまできっちりと描く事を是とした米国製作者一同に心から感謝。 [DVD(字幕)] 10点(2009-04-22 21:53:05)(良:1票) |
36. 遠すぎた橋
《ネタバレ》 空一面を覆い尽くす落下傘部隊の映像と壮大なテーマ曲だけで、ミリタリー好きの中坊は簡単にノックアウトされた。 しかし、友人からは映画に使用された戦車等の使い回しが、現実に使用されていたものとかけ離れすぎているなどと、激しく批判された事もよく覚えている。どうでもいい中学生の知ったかぶりの会話だ。 ただ、G・ハックマン演じるポーランドの旅団の悲劇や、J・カーンの軍曹のエピソードなど、ストーリ上のいかにも映画的なシーンが、実はノンフィクションであったりした訳で、あくまで真実の歴史と、戦争の空虚感を描く事に重点を置いて、時代を継承させる重要な映画であったことを、再見した10代後半の頃にようやく気づく事ができた。 それとR・レッドフォードの登場シーン。何か、画面が輝いていたような気がする。 結構、後半に、しかも数少ない出演場面。敵の弾を自分が華麗によけて、結果後方の部下に当たらせて死なせてしまうような間抜けなシーンもあるのだが、やっぱり当時はダントツに恰好良かった。聖母マリアへの祈りを呟きながら河をボートで渡るシーンなど、鳥肌もの。 世間からは過小評価されすぎの様な気がする。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2009-04-22 21:31:22) |
37. 明日に向って撃て!
中学2年生の頃(37年前)、名画座で観た「駅馬車」にはまって西部劇ファンになった。コテコテのアメリカンクラッシクフィルム。 その頃はテレビでも頻繁に西部劇が放映されていたから、名匠ジョン・フォード監督の作品なんかは、それでほとんど見ることができた。NHKの教育テレビなんて、白黒映画の宝庫だった。マカロニウエスタンの様な残酷で血みどろの映画も当時流行っていたが、ジョン・ウェインのポスター(雑誌「スクリーン」の付録)を眺めながら、頑なに「西部劇は昔ながらの勧善懲悪ものが良いんだ」なんて、中坊がいっぱしに語っていた。 そんな折、アメリカの西部劇ってジャンルだけで、予備知識無しで観たのが「明日に向かって撃て!」。 おそらく、多くの古典西部劇が好きだった人達が受けたのと同じであろうショックが全身を貫いた。こんなので良いのか、これが西部劇なのかと。 でもそれは、映画の新しい魅力を、世間知らずの中坊に教えてくれた。 この映画の出会いは人生の中でも重要な瞬間だった。目の前が急に開けた、自分にとっての黒船のような映画だった。 新たな試みが時代や習慣を変化させていく。そんなアメリカの過渡期に生まれた傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2009-04-22 13:05:48) |
38. アメリカン・グラフィティ
《ネタバレ》 ラスト近く、R.ドレイファスが飛行機の窓から下界を見ると、一晩中街で探し回っても出会えなかった白いTバードが、あっけなく見つかる。だが、彼は機上の人。手の届かない距離感に、苦笑するしかない。熱病のような一夜の感情は、それでも案外苦笑だけで収まってしまう。 その画面に主要登場人物のその後が、白黒のフリップで浮かび上がる。過酷な未来を、それも結構突き放した感じで。そして、ビーチボーイズの「オールサマーロング」が軽快に流れてエンドロール。 未来への辛い予感を漂わせながらも、永遠に彼らの脳裏に刻み込まれたであろう一晩の出来事を見事に演出しきった、若き日のルーカスのセンスに脱帽。 [DVD(字幕)] 9点(2009-04-22 08:50:02) |