21. ライトスタッフ
《ネタバレ》 この作品は、ほとんど喜劇です。登場人物個々の立場は同情するけど、世俗の垢にまみれた俗物ばかりに見えます。アメリカ全体がバカやって浮かれてる。彼らはこれと同じのりで北ベトナムを絨毯爆撃してたわけです。ジョンソンを下品な権力亡者に描いてるのは、監督の嫌悪感でしょうか。ただ、対象をつきはなした喜劇ではあっても、愛情をこめてることがわかるので、キューブリックのような冷たさはありません。 この作品で唯一、笑いの対象でない男はただひとり。イェーガーだけです。 [DVD(字幕)] 7点(2011-08-24 22:47:01) |
22. 用心棒
《ネタバレ》 ・・・黒澤監督は点数つけるのとても困ります。 もう、面白さについては皆さん書いてるので、私は「パンフォーカス」を書いときましょ。間近の飯屋のおやじと三十郎はピントが合っていて、窓の向こう側の 店の様子もバッチリピントが合っている。こりゃ実際すごいんだよ。 聞けば望遠レンズを使ってすごい遠くから撮っているらしい。この異様な画面をじっくり楽しむのも一興かと。 [ビデオ(邦画)] 10点(2010-10-13 21:54:48) |
23. がんばっていきまっしょい(1998)
青春映画は、青春を終えた人には郷愁の物語だ。でもそれは今現在が青春の人には味わうどころではない。老人はたいがい郷愁に生きざるを得ない。40代・50代の人の現在も老人には郷愁となる。自分の普段の生活に対して涙腺ゆるまれるのは、若者もいい迷惑だろう。たまにはこんな映画もいいが、すべての映画がこんなだったら嫌だ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-07-10 21:07:04)(良:1票) |
24. マルタの鷹(1941)
《ネタバレ》 映画公開からすでに70年・・・・ この映画こそリメイクすべき映画です。 映画では削除された、スペードとオショーネシーの会話・ フリッツクラフトの物語。あれがあればこの映画もずいぶん変わったでしょう。 コッポラ監督なら・・・と以前思ったけど。誰かやってくれないかなぁ・・・ スペードは結末で傷ついてるんだけど、ヒーロー然とさせちゃってるこの映画はイマイチです。 [ビデオ(字幕)] 5点(2010-06-27 01:45:07) |
25. 転々
《ネタバレ》 70年代のATG映画のような感じがあるものの、70年代では技術的に撮れない 映像なんだろうな。だってスタディカムで撮ってるし、ハイビジョン 撮影だから高画質。安っぽくなりそうな東京の秋の景色がみな美しいのです。 三木監督の作品だから、奇妙さだけ期待すべきかと見る前思ってたのですが、 一本スジの通ったちょっとしんみりするいい話。嬉しい誤算でした。 これを観た後散歩に出てみると、町が意外と小ネタばかりに思え、些細な面白さに 気づきます。三木さんの小ネタ理論は俳句の視点と似ているみたい。 [DVD(邦画)] 7点(2010-05-01 02:33:59) |
26. 涼宮ハルヒの消失
《ネタバレ》 この作品は、原作が「ハルヒ」シリーズ中飛びぬけた人気を誇り、ファンが長らく映像化を待ち望んでいたものです。それだけに、ファンも制作スタッフも期待と不安がずっしりと蓄積されていました。完全秘密裏に制作が開始され、1年以上の工程を経てこの2月、ついに日の目を見たわけです。完成した『消失』は、驚くべき作品でした。小説の映像化をここまで律儀に忠実に作った映画が今まであったでしょうか。個性の強い監督なら原作は自分色に染めるための焚き木くらいにしか考えていません。160分という上映時間も破格。興行的にいうなら長尺の作品はマイナスです。それを結果的に無視しここまで主人公たるキョンの語り口に惚れこんだスタッフの姿勢に感服します。 キョンと一緒に泣いて笑って苦しんで、傍観者であることをやめる彼を応援したくなる素敵な映画になりました。シリーズを知るものとして9点をつけさせてもらいます。 [映画館(邦画)] 9点(2010-02-13 18:35:24)(良:2票) |
27. ゴッドファーザー PART Ⅲ
《ネタバレ》 前回2作を鑑賞し、しっかりおさらいしてから映画館に入りました。 マイケルの湖畔の屋敷が朽ち果てている場面から始まり、ここでまず感動します。 この映画、コッポラが黒澤監督の「乱」を観た事で生まれた映画と思っています。 黒澤監督は「リア王は英邁な君主だが、もし暴虐な男だったなら・・・」という、 シェークスピアの原作にない要素を「乱」で付け加えました。 コッポラはこれで、「暴虐だった男の善行があだをなす」老いたマイケルを描く気になったのです。その試みは成功していると思います。よい完結編でした。 [映画館(字幕)] 8点(2010-02-06 01:28:59) |
28. ああ爆弾
《ネタバレ》 冒頭、狂言(芸としての)から始まる映画なんてこの作品しかないでしょう。 すごく斬新な作品で、音楽・音響・カットの組み合わせで作り出されたギャグ は凄いです。「どんつく」「ぽっぽー」ではどうしても笑ってしまう。 でも・・・ミュージカルでこんな寒々しい気分になったのも初めてでした。 オチに飛躍が足りない・・・大名一家の行く末は決して明るくないよ。 中島哲也監督なら、どう作るだろう・・・と考えたりします。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-01-29 21:18:45) |
29. 風の谷のナウシカ
《ネタバレ》 この作品は難しい。すでに連載中の原作を読んでいたせいで予備知識を持ちすぎていました。まんがでの独特の表現にも慣れていたため絵柄が清潔すぎてうまく自分に噛み合いません。「ラピュタ」や「カリオストロ」と比較すると、動画枚数が明らかに少なく、不満でした。原作のほうも、物語のテーマと演出法に齟齬が生まれている気がしていまひとつです。ナウシカにとって「正しい」ものと「美しい」ものは同義です。でも 美しいものは、本当に倫理的に正しいといえるでしょうか?宮崎氏の考え方に疑問を感じた最初の作品です。 [映画館(邦画)] 5点(2010-01-10 01:35:28)(良:1票) |
30. ヤッターマン(2008)
《ネタバレ》 まず良いところ。CG・衣装・美術これはとても良い。スタッフの技術力・センスはすばらしく、今後の日本映画の希望と思いました。また、実写化する決断力も好感できます。 しかし・・・悪いところも書かねばなりません。あそこまで作りこんで制作されたからには綿密な計算をとことんしたものと思います。絵コンテがなければCGアニメは絶対ムリですから。それなのに、なんという間の悪さでしょう。テンポのなさでしょう。ここまで作りこんで、なんという下品なギャグセンスでしょう。監督の素の感性なのが明白なので救いようがありません。 役者さんに素人が多いので、演技は甘くしたほうがいいのかもしれませんが、ちゃんと演技指導したの?と監督に訊きたいです。監督の力量を疑います。 [DVD(邦画)] 4点(2009-12-20 21:44:49) |
31. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
《ネタバレ》 美術・デザイン・音響・アクションは別の人たちがしているので省略しましょう。「三百六十五歩のマーチ」が似合う作品でした。「序」でも思いましたが、幸せに生きたいと望むたくさんの人々が新劇場版では描写されています。前回のシリーズでは社会は冷徹で無慈悲で、閑散とした市街は孤独や疎外感を感じさせました。さまざまな群集シーンが付加された今回の作品は、(自然に対する視点が付加されたこともあって)それとは別な、前向きな暖かさを感じます。主要キャラクターのほほえましい日常は、全員を抱きしめたくなるほどでした。やられました。しかもそのすべての(幸福な)伏線が惨劇へとして収束されてゆく展開もまた見事。練りこまれた脚本を堪能いたしました。次回も楽しみです。 [映画館(邦画)] 7点(2009-08-13 22:00:58) |
32. ダークナイト(2008)
バットマンの設定が、ここまで暗く・重くなり、しかも全米の観客に 受け入れられたという事実に、隔世の感を感じます。米国も変わりました。 昔、バートン監督がバットマンを映画化したとき、僕はこの作品がピカレスクロマンになるという発想がなく、暗い暗い物語に出会って興奮したのですが、この作品は さらに上を行きました。 貧乏のどん底でどうしようもなくなって犯罪を犯した人もいるでしょう。そんな犯罪者を、ありあまる財産を湯水のように使っていじめまくるバットマン。好きです。 [DVD(字幕)] 8点(2009-08-11 19:40:19)(良:2票) |
33. ルパン三世(1978)
《ネタバレ》 この映画をはじめて観たときは感動しました。ちょうど新ルパンがテレビ放送されてて、その内容にがっかりしていたときだったので。 シャープな絵柄・お色気・ダーティなダンディズム・ギャグ。すばらしいハイセンスな雰囲気にほれぼれしました。 五右衛門のヘリの斬りかたに感心した人も多いかと思います。 あの十三階段の冒頭場面は、よっぽど度胸がないとできません。 奇跡のような作品です。ホントに。 [地上波(邦画)] 9点(2009-04-18 03:24:49) |
34. ルパン三世 カリオストロの城
《ネタバレ》 この作品には思い出がいっぱいです。初公開時映画館で観た少数派です。 あまりの面白さに仰天し、周囲に盛んに吹聴したのですが、誰も知らんのですよ。 この作品を。興行的に失敗したんです。信じられんでしょ? おかしな人扱いされました。 今ならみんなこの面白さに同意してくれますが、あの時は悪夢。翌年テレビ初放映で 騒がれだし、「いまごろ知ったか!」とよろこび半分憤懣半分でした。 そうそう、次元がルパンにプロレス技をかける場面は尺の問題から長らくテレビでは カットされていました。冒頭、五右衛門が札束に埋もれています。よく観てみましょう。 [映画館(邦画)] 9点(2009-04-18 03:02:17) |
35. 乱
《ネタバレ》 映画館で観た初めての黒澤映画。もの凄く美しかった。プリントが新品だから というのもあったけど、映画が美しいと感じた最初の映画と思う。 崩壊の美学にも酔った。 「神や仏は泣いているのだ!」という場面で、ちょっと目頭が熱くなった。 最近ハイビジョンで見直すと、自然の美しさが本当に大事な要素だったのだと納得。 みんな、ハイビジョンで観るんだ! 公開後25年。ますます評価が上がってる気がする。 [映画館(邦画)] 8点(2009-02-14 00:39:14) |
36. 七人の侍
《ネタバレ》 リバイバル上映時、大学の友人達と集って観に行った思い出深い映画です。 映画館ではみんな一体感があっていい雰囲気。3時間半を長いなんていう人は 一人もいませんでした。休憩時間というのを味わうのも今はめったにないはず。 いい経験でした。 黒澤さんは、白黒の美しさに惚れこみ、カラー映画が珍しくなくなった60年代も ずっと白黒にこだわった監督です。炎上する水車小屋に菊千代が向かう際の 川面の美しさ。板の木目の感じのよさ。こんなところも観てくださいね。 そうそう、斬られる音は昭和29年版にはなかったんですよ。 [映画館(邦画)] 10点(2009-02-13 23:57:52) |
37. 蜘蛛巣城
《ネタバレ》 この映画を最初に観たときの感想は、「弓矢怖い」でした。 あの、テグスを使った弓矢の技法は、「七人の侍」で開発され、他の映画でも よく使われるので、珍しくないのですが、これは怖い。城門前で矢が遠方からヒュンと飛ぶあたりから始まって、最期の恐怖の場面へと続くわけです。 カメラが視点を変えると、小屋や亡霊が消えるあたりのテクニックも面白かったです。 この作品は、黒澤作品の中でも音声が聴き取りにくい一本。最近「羅生門」を修復しましたが、次はこちらをお願いしたい。 原作の『マクベス』もおすすめです。 [ビデオ(邦画)] 8点(2009-02-08 18:14:26) |
38. 太平洋ひとりぼっち
《ネタバレ》 堀江さんがヨット単独太平洋横断に成功したのが1962年。それからすぐこの映画は撮られています。今では実感できないでしょうが、法を犯しています。しかも意図的に犯しています。この行為について非難すべきか、賞賛すべきか、まだ決めかねる状態で制作されたために、この映画には異様な緊迫感があります。武満徹の音楽も世間の冷たい風を思わせ、堀江さんのあっけらかんとした独白が、さらに疎外感を高めています。 世間の巨大な力に抗う少年として、憧れを持つものの、やはりそれに押しつぶされるのではないか、あわれな道化師になるだけでは、と心配する気持ちが感じられます。 今でこそそれは杞憂だったと言えるわけですが・・・ 俳優の松平健さんが、この映画を観て感動し、役者を目指したそうですよ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2009-01-14 22:58:55) |
39. 亀は意外と速く泳ぐ
《ネタバレ》 「人生これ小ネタの集積」という視点がしっかりしています。 コメディではあるけれど、監督の「どう生きるか」という、ちょっと深刻に なりそうな思いも、ほんの少しだけ伺えます。 エンディングの、飛び立つ飛行機の前でポーズする上野樹里が素敵です。 「南風」も名曲でした。 こういう題材が、映画のネタになることは驚きです。 また、映画として成立したことを喜びたいと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2008-12-23 23:42:21) |
40. スウィングガールズ
《ネタバレ》 昔、合唱団などに入って大人数でハモった経験がある男としては、この作品 愛情なしに観ることはできません。 後で思えば、上野樹里、本仮家ユイカ、貫地谷しほり他ビッグになってゆく人たち総動員の映画となりましたね。 ロケ地も魅力的で、自然の美しさ・季節の移ろいが良いアクセントです。 [DVD(邦画)] 8点(2008-12-23 08:56:58) |