481. ジョニーは戦場へ行った
《ネタバレ》 設定の強烈さでインパクトのアドバンテージが生じているような気はするのだが、しかし、その置かれた状況を余計な加工をせずに一直線に描き出している誠実な手法が、今日に至るまでの作品としての衝撃を維持している。「俺を見世物にしろ」という単純な一言があまりにも重い。 [DVD(字幕)] 7点(2012-01-01 02:10:21) |
482. ダウト ~あるカトリック学校で~
重厚堅実な演技の応酬を見ているだけで十分楽しめる作品。ただし、ストリープについては、設定上やむを得ないとはいえ、黒フードと黒コートで表情や所作の多くが隠れてしまっているのが惜しい。ホフマンは、善でも悪でもどっちでも成り立ちそうな微妙なラインを繊細に表現している。しかし、MVPはやはりエイミー・アダムスだろう、むしろストリープもホフマンもそれに刺激されて芝居が前進しているのが分かる。僅かな登場で役柄の存在意義を残しているヴィオラ・デイヴィスも忘れがたい。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-11-28 00:25:54) |
483. ツォツィ
《ネタバレ》 作品としての構成は単純なのだが、ラストシーンに至るまで余計な要素に浮気せず、原始的な説得力を持たせることに成功している。また、乳をもらった女性宅から主人公が出てきて、カメラが横に動いて別の店内の仲間をキャッチする動きなど、撮り方にもさりげないこだわりが感じられる。一番印象に残ったのは、紙袋を抱えた主人公が土管の野原を訪れるシーンで、ここが作品に一本の芯を通していると思う。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-11-26 01:11:36) |
484. ソーシャル・ネットワーク
《ネタバレ》 中身はただの若手実業家成功譚であり、特段目立ったドラマも何も感じられないのに、表現や演出のテクニックがなぜかどれも上手くいってしまい、作品として無事成立しているという困った作品。せわしなくめまぐるしい描写と対象であるネットコミュニケーションのあり方自体が何となくマッチしているというのもできすぎ。ラスト、薄暗い大部屋でたった1人パソコンに向かっている主人公の姿で締める、そしてそこにそこはかとない安堵感が漂っているというのが秀逸です。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-11-13 23:57:28) |
485. 迷子の警察音楽隊
《ネタバレ》 導入部分に顕著な絶妙な「間」と、横並びを多用した構図、そして堅苦しい制服や重そうな楽器と荒涼とした風景のギャップだけで、コメディとしては完成しているわけです。あえて一足飛びに関係を発展させることなく、ぎこちなく礼儀正しく交わされる会話にも、何ともいえない味があります。その中でも、最低限の台詞で登場人物の心理の揺れを表し切っている脚本が、よく見ると凄く練られています。また、ユダヤとアラブの対立背景を全部削ぎ落とした潔さも、かえって作品世界に緊張感を与えています。 [DVD(字幕)] 7点(2011-11-11 03:49:01) |
486. アメリカン・クライム
《ネタバレ》 シルヴィアが両親に再会する場面、「えっ?実際の事件でそんなことなかったでしょ?」とずり落ちそうなくらい驚いたのですが、つまりあのシーンこそがこの作品に必要だったのですね。むしろ、祈りを込めてそのシーンを撮り、シルヴィア・ライケンスに鎮魂の意を捧げることこそが制作の出発点だったのかもしれません。だから、虐待描写は量的・時間的には意外に少ないにもかかわらず、作品全体から、一筋の真摯な静謐な想いを感じます。照明やカメラにも丁寧さを感じました。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-25 01:21:20) |
487. フェイス/オフ
《ネタバレ》 導入部の設定からして、てっきり、爆弾の爆破阻止をめぐって最後まで攻防が繰り広げられると思っていたら、そこのところはあっさり(しかも逆の方向で)片付けて、それによってもう一段上の課題を提示するというのが新鮮でした。さらには、無意味に教会を飛び回る鳩とか、無意味に三角形+αの拳銃の突きつけ合いとか、ジョン・ウー様式美がコテコテに満載。それでいてきちんとスリルとスピード感も維持しているところも良い。ただし私が一番好きなシーンは、ジョアン・アレンが「あの男と夫婦として過ごした・・・」と告白したときの、何ともいえない感情の凝縮された空気感。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-18 04:10:33) |
488. 真昼の決闘
《ネタバレ》 特に気合みなぎるような活躍もなく「ただ何となく」クライマックスを迎えてしまう主人公の立ち位置が凄いし、肝心なところで美人のヒロインに助けてもらう(それも2回も)というのも凄い。アンチヒロイズムに対するある種の執念すら感じる。そして、行けども行けども誰も味方をしない主人公の描かれ方には、何というか、制作者の底知れない人間不信の情怨を感じる。 [映画館(字幕)] 7点(2011-09-01 03:04:39)(良:1票) |
489. 運動靴と赤い金魚
《ネタバレ》 もう、あの妹ちゃんが反則なわけです。可愛いだけじゃなくて、ちょっとした視線や表情で、微妙な心理をきちんと表現している。止まった演技も走る演技も両方できる。あの兄貴ならずとも、この子のためなら何としても靴を手に入れてやるってなもんです。レースの最後、呼吸音の重なりだけで場面を進めるという技も凄い。実際、走っているときはああいう感じです。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-06-29 02:36:28) |
490. 伊豆の踊子(1974)
《ネタバレ》 単なるアイドル映画かと思いきや、意外にきちんとした作りではないですか。あくまでも旅芸人一座の日常描写に軸足を置いて、百恵と友和の接点はむしろポイント部分のみ。それが、主人公2人の感情の醸成の生々しさを湧き上がらせることに成功している。中山仁と佐藤友美の堅実なサポートも、作品に大きく貢献している。ところであの、定石通り盛り上げた後でのいきなり超不幸暗示ラスト・・・この監督はもしかして性格悪いのだろうか。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-06-11 02:10:37) |
491. パピヨン(1973)
《ネタバレ》 見ているときははらはらどきどきで最後まで一気に見切れたのだが、振り返ってどこが主題だったのかと考えると、意外に難しい。どちらかといえば、時間をかけて盛り上げている部分よりも、一瞬の切り取りの描写の方が印象に残った。例えば、2回目の独房の5年間を一切描かず、白髪と足腰の弱りだけで表現するセンスとか。また例えば、最後の最後に、割とさらっと発されるホフマンの一言の重さとか。 [DVD(字幕)] 7点(2011-06-07 13:17:02) |
492. この自由な世界で
《ネタバレ》 このリアルタイムの社会問題に着目し、しかも主人公を必ずしも善人としていなかった設定のセンスは優れていると思うが、描写そのものはややストレートにすぎ、主人公の内省だけで話が終わってしまった感がある。ところで、日本でも派遣問題や低賃金問題は存在するのだが、切り込もうという映画人はいないのかな。 [DVD(字幕)] 7点(2011-06-05 23:17:50)(良:1票) |
493. ビヨンド・サイレンス
《ネタバレ》 例えば、父と娘の会話の場面で、会話の切れ目に父の視線が反れると、娘は手をちらちらさせて、父の視線を自分に向けさせる(そうでないと手話が見えない)。そのような描写の1つ1つがしっかりしているところに感嘆するし、しかもそれは日常生活の前提にすぎず、さらにクラリネットというエッセンスに寄りかかることなく、日々の一歩一歩を地道に描いているところが良い。ラストシーンも、突然栄光に包まれるのではなく、あくまでも薄暗いステージであるところがいいですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-06-01 23:47:41) |
494. 竜二
《ネタバレ》 派手な喧嘩も銃撃戦もない。ひたすら地道な生活の描写。その中からにじみ出てくるヤクザ者の悲哀。途中であっさり堅気の生活に転進してしまうのも、今から見るとかえって斬新だったりする。さっと切り上げるラストも、ある種の容赦なさを感じさせて清冽。ただし、永島瑛子のベリーショートはあまり似合わないと思う。 [DVD(邦画)] 7点(2011-05-21 00:58:22) |
495. ラブリーボーン
現実の世界と想像の世界を大胆にミックスした描写が、美麗を追求した映像とも相まって、見ていると頭が中から押し広げられそうな感覚に陥る。死後に見える世界というのは本当にそうなのかもしれないということも感じさせる。それに加え、シアーシャ・ローナンは、ちょっと考えすぎの子を演じさせたらぴたりとはまる逸材であり、2時間以上にわたって映像負けしていないのは大したもの。グレッグ・キニアを格好良くしたようなマーク・ウォールバーグの中年の渋み、いつもはクセのある役を得意とするレイチェル・ワイズの意外な普通の主婦としての好演も印象深い。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-04-17 20:19:37) |
496. 同窓会(2008)
《ネタバレ》 やたらと説明的場面+説明台詞ばかりな上に九州弁が下手な前半は、ほとんど何も期待していなかったのです。しかし、時系列を行き来する回想の見せ方が巧く、後半はほろ苦系青春映画としてなかなかよくまとまっています。二段オチのインパクトも強力ですが、おかげで肝心なところの印象が薄くなったような気もしなくもない。 [DVD(邦画)] 7点(2011-03-09 02:11:47) |
497. ヒア アフター
死というものは常に身近に存在しているものであること、そしてそれは、決しておどろおどろしかったり禍々しかったりするものではなく、むしろ距離感をとりつつ受け入れられるものでもあること。それをきっぱりと静謐な空気の下で映像化したこの作品は快挙である。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-06 23:06:45) |
498. 英国王のスピーチ
《ネタバレ》 スピーチというのは、書いてある原稿を読めばよいというものではない。そこで言うことを自分が心底確信していなければならないし、またそれを全力をもって目の前の人に伝えようとする意志がなければならない。その一事を踏まえている時点で、すでにこの作品は成功しているし、だからこそ主人公や周辺人物の背景描写が生きてきている。ジェフリー・ラッシュやヘレナ・ボナム=カーターの好演はいうまでもない(2人のお嬢様がヘレナにそっくりなのもびっくり)。カメラワークにあまり工夫がないのが残念。 [映画館(字幕)] 7点(2011-02-27 22:03:02)(良:1票) |
499. ウィスキー
地味に淡々と進むかと思いきや、その中にいろんなことが盛り込まれているから油断ならない。普通ならこの先で本腰入れて盛り上げるだろう、というところで説明をシャットアウトしてあとは想像に委ねる。ちょっとした描写でさりげなく登場人物の思考の背景を表す。私は、「逆さ言葉遊び」のこの話における位置づけに思い至ってぞくっとしました。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-20 01:57:23) |
500. 摩天楼を夢みて
《ネタバレ》 私は勝手にアル・パチーノがブレイクをやると思いこんでいたので、いきなりボールドウィンが喋りだしたときにはコケました。豪華キャストの演技アンサンブルを見ているだけで十分楽しめますが、一晩の話とかではなくてもっと拡がりのあるドラマがあると期待していたんだけどな・・・。ただ、パチーノがあれだけぎゅっと抑えた優等生的演技をするのは、逆に新鮮でした。ケヴィン・スペイシーは、当時は映画界ではまだ無名だったと思いますが、いつの間にかこのキャストを相手に存在感を誇示しています。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-05 11:22:34) |