501. 小鳥たちのいない花園
《ネタバレ》 すごく暇な時に『まだレビュー数0の作品』のトップに、たまたまこの作品名があり、どんな映画だろう?と検索したら、某動画配信サービスで丸々全部観られるのを発見。短い作品だし観てみました。 時代はバブル真っ盛り。男女数人がホテルの一室に集まり、ドラッグキメてパーティのつもりが…みたいな内容。服装から髪型から、何もかも懐かしい… 短編映画なのでインパクト重視の創り。最初のスクーターの事故回想シーン(リアリティはともかくだけど)はインパクト大。その話を聞いて盛り上がってるんだから、全員偏った趣味(&性癖)の人達の集まりのようだ。 この集まりの目的が乱交なのか、集団自殺なのか、イマイチ伝わらなかった。自分の体を切らせる客の話で「今度私にも紹介して」とか言ってたと思うから、運悪く薬が効きすぎての事故なんだろう。 子供の頃、ギニーピッグとかってリアルな暴力描写がウリのビデオ(未見)があったけど、本作はその進化系だろうか。実際の凶悪犯罪により、過激な描写に制限が掛かっている時代、内蔵とかのグロ描写は極力避けて(でも血まみれのドバドバです)、笑顔で殺し合う男女(薬のせいだけど)を思いっきり撮ってみたい。そんな監督の心の声が聞こえてきそうな作品だ。 だけど正直、映画の中の彼らがどうなろうと、一切興味を持てなかった。映画的には1人くらい薬の効いてないマトモな人を置いてほしかったけど、出てくるのは似た者同士。金と時間がありすぎて、普通の娯楽に飽きたのか、人の死を喜んで話すような若者たちが、他人を傷つける事なく勝手に殺し合うんだから、もう好きなようにしてくれと。 そもそも万人受けを狙っていない短編映画なので、この映画を観るよう誰かに頼まれた訳でもないのに、自分の意志で勝手に観て、私には合わないからと、低い点を付ける事に、ちょっぴり申しわけ無さすら感じるわ。 こういう映画は好きな人たちで勝手に盛り上がれば良いんだわ。この映画の男女のように。 [インターネット(邦画)] 2点(2022-07-26 22:56:43) |
502. 遊星からの物体X ファーストコンタクト
《ネタバレ》 -The Thing- “無生物”・・・って、前作と全く同じって思い切ったタイトル、初めて観たかも。 それもリメイク物ならまだしも、前日譚で。『オリジナルと本作を合わせて一つの作品』という、大胆な着想からかも知れない。 宇宙人を発見したから女性学者が呼ばれたって設定には納得できる。でも現地には既に別の女性の学者が居て、当時の南極に女性隊員って、ちょっと考えにくいけど、今の時代を反映しての事だろう。 ヘリのシーンは「お前の方かよ!」って楽しめた。あの顔が溶けてるヤツが、どうやって出来たのか?とか、壁に刺さった血まみれの斧とか、前作を見た直後だと『おぉ!』って思えるシーンも多い。歯の治療痕で判別するのはシンプルで良い。 でも続きモノとして考えると、舞台(閉ざされた南極基地)も展開(アレに次々殺されていく)もオリジナルと一緒で目新しさが少ない。火炎放射器で焼かれて足がジタバタ動くとかオマージュも絡めてくるから、オリジナルのパターンを微妙に変えただけの同じ作品、リメイクものを見ているようだ。 更に登場人物の区別が付きにくく、何人生き残っているのかとかがイマイチ解りにくい。オリジナルの『ノルウェー基地には10人だったはず』の設定は踏襲しているけど、そこに主人公たちアメリカ人が来たから、総人数がゴチャゴチャに。 UFOを起動させた効果はイマイチに思えた。UFOの持ち主(宇宙人)は他にいて、アレは宇宙人に寄生していただけの危険な物体だと思っていた。実はアレが高度な科学力を持った存在でした。と言われても…でもな、前作でブレアが地下に小型のUFOモドキを造ってたよな…やっぱ高度なのか。 最後、予想通りの“オリジナルに繋がる”終わり方は素晴らしい。それだけにラーシュを“どこかで生き延びていただけの作業員”ではなく、例えば“アレの倒し方を知っている変わり者の化学者”とか主役級の扱いにして、本作の物語にグイグイ絡めてほしかった。『ラーシュを殺したから、犬の正体は愚か、アレの倒し方もわからなくなった。』って感じにすれば、オリジナルのバッドエンド感も強くなったかと・・・ 主人公ケイトの最後。「ここからロシア基地まで80km。充分行ける」距離だそうだから、無事そこに行けたんだろう。 そこを描かなかったのは、途中マクレディとチャイルズを回収して、オリジナルの後日談を創る構想でもあったのかな。当時のCG技術でトロン:レガシーみたく俳優の若返りは可能だったから。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-07-24 13:31:36) |
503. アフロ田中
《ネタバレ》 原作が好きであればあるほど、実写化、映画化には不安がつきもの。原作の再現度と雰囲気の再現。オリジナル要素がどれだけ馴染むか等、沢山の障害がある。“高校”から“結婚”まで全部実家にある私だけど、高校を中退してからプレハブ小屋生活、旭工務店に勤めるまでを足早に流した時には、初めて観る人を置き去りにする作風、正直期待できない作品。だと思った。 でもコレがなかなか、2時間の映画として、良くまとまった作品に仕上がっていると思う。この作品は、アフロヘアーだけど中身は普通の青年・田中広が、社会の仕組みや男女の恋愛に勝手に悩み、等身大の成長をしていく物語。当時原作は“さすらい”の頃だけど、一番脂ののっていた“上京”をベースに“中退・高校”のエピソードを交えて、友人井上の結婚と自身の彼女作りに、原作の雰囲気を壊さないよう、オリジナルの彼女候補・佐々木希を絡めて描いている。 松田翔太の見事な熱演。ちゃんと田中広に観える。動揺や不安感といった心の声を被せることで、田中が何を考えているかがよく分かる。無愛想だったり無口だったり、エロい誤解を与えないよう自重したり。あんな見た目(アフロ)や雰囲気の裏で、こんな事を一生懸命考えてたんだって、可愛く思える。 野良猫の餌やりは優しすぎ(映画オリジナル)に観えたかもだけど、ここも心の声で補完。田中は実家にクロって猫を飼っていて、会えないのを寂しがっていたのを再現したと思うと納得。それを見て亜矢(佐々木希)が勝手にキュンとしただけ。人がどう思うかなんて解らないもので、最後も亜矢が何を考えてるのか、経験不足の田中には良く解らないままにフラレて終わるのも、アフロ田中らしい。 友人の再現度もなかなかのもの。ただ大沢(堤下)は、もっと小柄でブサイクな俳優さんでやってほしかったかな。 一番感心したのはロボ(井上のお嫁さん)。原作をよく知らない俳優さんなら、うつむき加減の根暗演技になりそうなところ、背筋伸ばしてちゃんと嬉しそうに笑顔を出してた。結婚式の『ご本人主演の再現VTR』凄く良かった。完璧なロボを実写で観られただけでも大満足。原作への愛があるなぁ。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-07-24 12:21:41) |
504. ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
《ネタバレ》 -Knives Out- “複数のナイフが出た状態”って訳が多いのでそれで行きますか。ハーラン・スロンビー実は生きていて、コレは今回の事件をモトにした新作小説のタイトルじゃないか?とかって思ったけど、ソレはなかった、私の妄想どまり。 生前のハーランとの回想シーンに、怪しい家族の嘘が織り交ぜられているのかと思ったら、そっちは全部事実でありネタバレでもある。というのは斬新だった。ハーランの子どもたちが衝撃的な“今後の有り様”を告げられ、死の真相は回想の通りだとすると・・・え?もう事件は解決してるんじゃん。と思わせてからの捻りが面白い。こんな展開よく思いつくなぁ。 最後までイマイチ優秀に思えない名探偵ブラン。格安スマホ(BLU)の画面がバキバキにヒビ入ってるのとか、車が安いヒュンダイとか、今の低所得層の代表のようなマルタ。僅か1年後に007で共演してるけど、2人とも役柄違いすぎ。 嘘をつくとゲロを吐くヒロインが人を騙すという斬新設定。言葉を選べば吐かずに事実を隠せるのも、雑に証拠隠滅していくのも、なかなかハラハラして楽しめた。あと後半のカーチェイス。「めちゃ踏んでる!!」ハリウッド作品とは思えないノロノロ~~っとした本気のカーチェイスに、ついフフッてなった。 裏で色々やってるけど、ハーランの死後もマルタを養っていこうとするなど、それはそれで結構善良な家族の面々。よく“争いが続く=争続”とかって言われるけど、遺言書の中身でお互いの本性があらわになって・・・ハーランも真剣に子どもたちの今後を考えていたからだろう。案外、家族にとってベストな遺言内容だったのかも?相続から外されるのは、人生最良の日であり、今後の人生の糧になるんだし。少なくとも子どもたち同士で争うことは無くなったと思う。表向き。そしてマルタもスロンビー一族を路頭に迷わすことはないだろう。そこまで考えてのベストな遺言内容かも。 「ググったの」「ネトウヨ」「パヨク」字幕にネットスラング入れるの、ある意味頑張ったなって思った。10年もすればシャイニングの「おこんばんわ」並みに寒くなるかもだけど。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-07-21 23:44:03)(笑:1票) |
505. エクソシスト
《ネタバレ》 -The Exorcist-“悪魔払いの祈とう師” オカルトホラーの傑作。と言われています。が、悪魔や殺人の怖さより、少女が「ギャー!ファックミー!グエェ~~~!!」と叫んでるインパクトのほうが強くて、ついついボリュームを下げて鑑賞した思い出があります。今回も夜中に窓を開けて鑑賞したので、近所迷惑を考えてボリュームダウン… イラクで発掘された悪魔が、なぜリーガンに憑依したのかが理解できなかった。そしてこの悪魔が“パズズ”という名前なのも、ウィキで知ったくらい…ハウディ船長じゃなかったんだ。ベッドに十字架を置いたのは誰?とか、最後のコイン(メリン神父がイラクで見つけたのと一緒?)はどうしてリーガンの部屋に?とか、私がどこかを見落としたのか、理解できてないシーンも幾つかある。 あれだけベッドがガタガタ動いて、首が360度曲がって、宙にも浮くんだから、リーガンに悪魔が憑いたのは間違いない。けど、カラス神父の母親の旧姓を答えられなかったり、水道水を聖水のように怖がったり、“悪魔じゃない可能性”を観せてくれたのは、サスペンスとして面白い。医者(科学)が悪魔祓い(宗教)を薦めるというのも意外で面白かった。 悪魔パズズが、悪魔の存在を表沙汰にせずに、メリンとカラス両神父を殺害する話とするのが一番落ち着きが良い。 だけど最初の被害者は神父ではなく映画監督のバーク。首を180度撚るとか、リーガンの力では無理。でも悪魔に取り憑かれた状態だと首はグルグル回るから、パズズはバークに憑依して、首を曲げた状態で自殺させたのかもしれない。 だけど全てがパズズの仕業だったのか?リーガンがもし、母親とバークが結婚(それ以前の関係に思えるけど)することに、心のどこかでモヤモヤしたもの感じていたとして、リーガンの意志でバークを殺したとしたら?って。そっち方面の可能性を匂わせていれば、悪魔の憑依ではなく、悪魔との取引・契約の話になる。…でもなぁ最後ケロッとしてるリーガン観ると、そうとも思えないし… エクソシスト2や3を観れば、悪魔の考えや解釈も深まるかもしれないけど、もしかしたらフリードキン監督の中ではエクソシストの後継作品は“恐怖の報酬”の方なんじゃないだろうか?両作品には全く繋がりはないけれど。 恐怖の報酬の原題は-Sorcerer-“魔術師”。フリードキン監督はエクソシストやソーサラーといった非科学要素を、現代社会のリアリズムの中に落とし込んで、サスペンスとして創ってみたかったんじゃないだろうか? [ビデオ(字幕)] 6点(2022-07-19 21:39:54) |
506. シルバラード
《ネタバレ》 -Silverado- (架空の?)地名。黄金郷を意味する“エルドラド”の銀版。強引に訳せば“白銀郷”辺りかな。 '80年代は西部劇が衰退していて、本作以外にパッと思いつくのはサボテンブラザーズとペイルライダー、あと変化球でBTTF3も入るか?このシルバラードは“現代版の正統派西部劇として良く出来た作品”って当時の評価だったと思うけど、実際この映画を観た多くの人は、西部劇が観たい人よりも、売れる前のケビン・コストナーの姿が目当てで、後年ビデオで借りて観たよ。って人が多かったんじゃないだろうか?私も当時観てなくて、今回が初見。 過去、復讐、友情、愛情、家族、兄弟、町、開拓地、強盗団、保安官、博打打ち、酒場…まぁま、西部劇で思いつくキーワードの、ほとんど全てが詰め込まれています。それだけのキーワードを詰め込むには主人公1人では足りないから、ヒーローが4人も居ます。4人が並んで馬を走らせる姿や、最後のペイドンとコッブの一対一の決闘のカメラなんて、まるで西部劇の教科書から引用したかのごとく、西部劇スタンダードな造りとなっています。 序盤のペイドンが僅かな金で壊れた銃を買って復讐するところなんて、「おぉ!」って思ったけど、以降は西部劇スタンダード。 あの西部劇が死に絶えた'80年代に、正統伝承者として間違いのない作りなんだけど、過去の名作や'90年代以降のテーマがしっかりした作品と比べると、この作品が創られた目的が『今の時代に西部劇をやるゾ!』って事だけに思えて、再現に拘るあまりに新しさのない。あまりに優等生過ぎる創りかも。 異彩を放つのがダニー・グローバー演じる黒人ガンマン・マルの存在。あの時代の黒人が農地を所有して、白人と対等に話し、自分の意志で銃を持って戦うのって、作品としてちょっと目にしたことがない。 過去の西部劇の殆どが白人が主役で、ラテン系やインディアンの悪者を倒すものだったけど…そういえばインディアン出て来ないね。 制作された時代を反映してか、肌の色関係なく楽しめる西部劇を目指したんだろうか。“西部劇・冬の時代”は続く。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-07-18 11:19:28) |
507. 小さな恋のメロディ
《ネタバレ》 -Melody- “快い調べ”…ほう、なるほど。今更だけど邦題の解釈が深まる。トレイシー・ハイド演じる女の子の名前でもある。 また- S.W.A.L.K -のタイトルが付けられたこともあったそう。意味はwikiに。 学校生活や運動会の様子が実に自然で、あの年代の子供を活き活きと描いている。気軽にタバコを吸っているのに驚くけど、お国柄かな。 男の子たちは空き地の廃墟で手製爆弾に火を付けて盛り上がってるし、女の子は墓場でミック・ジャガーのポスター(“ミュリエルへ愛をこめて”ってサイン付き。本物ならとっても貴重)にキスしてる。 幼い2人のデートも、ホントただ遊ぶだけで可愛らしい。恋愛と友情は別物なのに、その区別が曖昧な年齢だから、ダニエルをメロディに取られたことに嫉妬してるトム。なんかわかるその気持。ダニエルをからかって憂さ晴らしするのは子供らしいけど、ケンカのあとすぐに謝れるのは、やっぱりトムって一歩大人。家でおじいちゃんの世話をするだけある。 性を語るにはまだ幼い男女の恋愛、お互いが好き同士で、ずっと一緒にいたい。けど好きのその先どうして良いか解らないから、いろんなものをすっ飛ばして辿り着いた結論が、結婚。 スパッと一言でいうと「お前にはまだ早い!」なんだけど、理屈をぶつけるのではなく幼いメロディに解るように話すお父さんの優しさ。「幸せになるのって何でこんなに難しいの?」社会を知らないからこそだけど、もっともな正論を言うメロディ。有名な墓場の雨宿りのシーンから続くこの場面大好き。 この映画、米英ではヒットしないで、日本で局地的に大ヒットしたとのこと。 最後の“自分たちでなんとかしようとする子供 VS 社会のルールに則って阻止しようとする大人”の構図は、日本のジュブナイル物でよく出てくる構図で『ぼくらの七日間戦争』なんかを彷彿とさせる。 社会のしがらみからどこまでも逃げていく2人が、抑圧からの開放っぽくもあり、四畳半フォークが流行ってた当時の日本で、この映画がウケる要素が詰まっていたのかなぁ。この映画の『キスシーンもない純粋な子供の恋愛映画』の一面より、そっちの面がウケたような気がしないでもない。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-07-13 10:41:33) |
508. 私の頭の中の消しゴム
《ネタバレ》 -내 머리속의 지우개(Eraser in my head)- 邦題まま。 また -A Moment to Remember- “この瞬間を忘れない” 若年性アルツハイマーって、記憶力の低下みたいなものだと思っていたけど、医者の言う『肉体的な死よりも精神的な死が先に訪れます』がガツンと効いた。・・・そうなのか。それじゃ“脳トレ”とかイワシとか、無駄な抵抗じゃないか。 創作の映画に対する『実際はもっと・・・』は付きもので、この映画はアルツハイマーのイメージを解りやすく表現出来ていたと思う。観た人に病気に対する恐怖を与え、ズンと重たい気持ちで観終わるのではなく、希望を残すカタチで、悲しいラブストーリーに特化して描いているので、多くの人に抵抗少なく受け容れられたんじゃないかな。 帰り道がわからなくなる。メモの付箋だらけの室内。不倫相手を今の恋人と錯覚。失禁。こんな悲しい描写と、「一生恋ができるぞ」みたく病気と前向きに戦うチョルスの言葉が、スジンだけでなく見ている私にも希望を与えてくれる。 記憶が蘇ったときに書いた手紙の、溢れんばかりの気持ちの込め具合に、スジンの愛情の深さが感じられる。 だけどどうしてか、登場人物みんな、極端に第一印象が悪い。スジンは不倫、チョルスは暴力。まぁ主役2人は時間を掛けて描かれるから良いとして、医者はズケズケと本人に病気を突き付けるし、師匠はチョルスの仕事に冷たく、母親は問答無用で食ってかかる。 後に印象リカバーする機会があるから、みんな根っから悪い人じゃないんだな。ってなるけど、映画が2人の恋愛に特化したためか“最後に突然良い人になってた感”を感じてしまい、コンビニのシーンに、何で?って驚いたのが先行して、スッと心に入ってこなかった。 「ゴチャゴチャ考えないで、そこは素直に泣けよ」と私自身に言い聞かせる。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-13 09:14:03) |
509. 異人たちとの夏
《ネタバレ》 片岡鶴太郎の演技力がとても評価されてた記憶がある。コメディアンが映画に主演して、真面目な演技をして評価されるって、当時としては珍しいことだったと思う。そんな人、北野武くらいじゃないかな?テレビで初めて観て、なるほど納得。見事に“英雄のお父さん”を演じていた。 本作が大林宣彦監督作品だって忘れてた。若者の青春映画の監督ってイメージだったから、こんな大人のメルヘンファンタジーを撮っていたことに驚いた。当時の私は知って観てたのかな。ホント忘れてた。 画面から伝わる夏の暑さ。浅草の異世界感。「暑いから脱げ」ってセリフがホント両親っぽい。もう40歳になる英雄を子ども扱い。この両親、自分たちは既に死んでいることを自覚しているけど、どういう仕組みで現世に戻ったとか、よく解ってないんだろうな。英雄と再会した喜びとか、涙とかは無く、出会いから日常生活から、スッと自然に取り入れていくところが、本当に不思議な世界を観ているような気持ちにさせてくれる。 英雄と房子がアイスのカップを取るシーン(いやこの場面も、裕福な家庭でないのにそんな物があるのが、なんか実家っぽい)。英雄も私たちもドキッとしてしまうけど、落ち着いてる房子のギャップが面白い。下手したら年下のお母さんだけど、子供の母親は何歳でも母親なんだな。 そんなお母さんが趣味でラジコンカー(本格的なのでなく子供のオモチャのヤツ)で遊んでるなんて可愛い設定、どっから思いつくんだろ?凄いよ大林監督。 すき焼き屋の別れは涙が溢れてくる。時間が来たら消えてしまうことは理解している両親。それも子供の為と受け入れているところ。両親に食べてほしい英雄と、子供に食べてほしい両親のお互いの思いやりが何とも切ない。 桂の正体。「バカな、今は空き室ですよ!」慌てる間宮と管理人に、当時はゾ~~~ッとしたわ。怖かった。その後のホラー描写はやり過ぎ感があって、なんか、今までの感動や余韻を台無しにされた感があったなぁ、やっぱり。 でも今観ると、案外悪くない結末なんだよね。身体フワーリ、ベッドグルグルー、血がドバー。は、当時の流行りだろうか、やりすぎだと思うけど、気がついたら地縛霊になってた桂は、彼女なりに、自分が原因とも知らずに、英雄の身を案じてたと解釈すると、それはそれで切ない。 [地上波(邦画)] 8点(2022-07-11 00:11:44) |
510. トップガン マーヴェリック
《ネタバレ》 -Maverick- “焼印の押されていない子牛”≒“群れに馴染めない存在”=“一匹狼” なんか久しぶりに『映画館で映画を観る醍醐味』を味わわせてくれたわ。懐かしさと新しさ。ジェットエンジンの爆音とトップガンアンセム→デンジャー・ゾーンの流れは鳥肌モノだった。本作の主役機はF/A-18スーパーホーネット。前作の時代から現在まで活躍している、ちょい古い世代の戦闘機(の子孫)。 現役バリバリの第5世代戦闘機F-35をチラッとだけ映しといて、「お前の出番じゃねぇよ」と言わんばかりに力強く空に舞い上がるF/A-18の勇姿。 60歳近いのに未だに現役パイロットで大佐止まり。コールサインのせいじゃないだろうけど、彼があの年齢まで結婚しないのも、年上で野心家のシャーロット(チャーリー)と続かなかったのも、なんか頷ける。 そしてカワサキGPZ900R(まだ持ってたの?)にまたがるマーヴェリック。懐かしい革ジャン(これもまだ持ってたの?)、背中の日/台ワッペンもバッチリでひと安心。トムは映画でしょっちゅう観てるけど、ホント久しぶりにマーヴェリックに会えた気分。 当時と変わらない彼が、現代の若者とのジェネレーション・ギャップに苦労したり、トレーニングでついて行けなくなって年齢を感じさせたりするのかと思いきや、「まだお前等の出番じゃねぇよ」と言わんばかりに、衰えを知らない体力と精神力で、若者たちを軽くあしらう様子が痛快。いい意味でヤンチャなままのマーヴェリックだったわ。M:Iシリーズのイーサンみたく若い女性パイロットに手を出さないで安心したわ。 ペニー・ベンジャミン。前作で2回ほど出た名前だけど、そうか、彼女が“司令官の御令嬢”か。グースの妻・キャロルが名前を知ってたくらいだから、カラオケでマーヴェリックを『1回目は撃墜され黒焦げ』にしたのも、きっと彼女だろう。 ジェニファー・コネリーが懐かしく、それでいて若い。前作のレビューで『懐メロが~』とか書いたけど、まさかデビッド・ボウイを懐メロ枠で聴くことになるなんてね。懐かしいねラビリンス。 デートのあとドア開けっ放しにしてピートを招き入れ、そのまま受け入れるトコなんて特に若い。あの年齢でメイク直したり照明消したりしない潔さがカッコいい。前作のチャーリーもペニーも古いポルシェ乗りなのは、なにかの縁なのかな。 中盤のブリーフィングのシーンで猫みたく耳がピン!と立った。え?ええっ?これ前フリ?絶対そうでしょ!? 達成困難なミッション。からの絶体絶命。そこから先はもう、今までとは別な映画のよう。これ以上のサービスは思い付かいゾってくらい、素晴らしいご褒美。やっぱカッコいいわ。こんなカタチで全部解決してしまう説得力。まぁ細かいことなんてどうでもいいわ。 私は何の不満も無いわ。もう全部許す。これでいい。CGとかアニメとかじゃなく、こういう映画を映画館で観たかったんだ。 「でもそれは今日じゃない」これはかつて、トップガンで熱くなってた世代へのメッセージ。 あれから36年の年齢を重ね、当時の想像とは違った現実と日々戦っている、私たち当時の若者達すべての胸に、熱く響く言葉だった。 [映画館(字幕)] 10点(2022-07-10 23:12:51) |
511. 俺たちに明日はない
《ネタバレ》 -BONNIE AND CLYDE- “ボニーとクライド” 普通に名前を並べただけだけど、これだけで通じる辺り、ロミオとジュリエット並みに神格化されてたんだと思う。ボニー(女)が先に来ているのは、語呂の良さだろうか? 邦題の“俺たちに明日はない”は、かなり魅力的なタイトル。明日など無い。今日、いま、この瞬間を刹那的に生きた2人の生き様を見事に表現していると思う。 2人きりの犯罪者カップルだと思ったら、バロウ・ギャングというある意味身内で固めた犯罪者集団だったのは意外。 貧乏人からは金は取らないと、義賊的な活躍が神格化された原因かと思ったら、案外あっさり銀行員を撃ち殺したモンだから、これにもビックリ。ネットの時代なら盛大に手のひら返しをされてた可能性大。 新聞がメディアの中心だった時代、社会も彼らを過剰に持ち上げていたんだろう。実際の犯罪もあれば、疑わしい犯罪を彼らのせいにしたものもあったろう。 OPから斬新。無音にシャッター音(?)だけが響き、サブリミナル並みの速さで映されるモノクロ写真。フェイ・ダナウェイのセクシーな唇。見えそうで見えない裸。退屈な毎日から抜け出させてくれそうな運命的な出会い。銃を撫でる手のエロさ。突然始まる非日常。強盗してから名乗り合う2人。場違いにも思える陽気な音楽…この新しさは、当時相当ショッキングだったんじゃないかな。 ユージンを乗せてからの変な空気も面白い。本当にその日その場を楽しんでるというか、後先考えてないというか… あの有名な射殺シーンから、無音の THE END の流れ。あそこでブツリと終わるのも“俺たちに明日はない”感がとても良く出ている。 ボニーとクライドが出会ってから、死ぬまでを描いた映画、それ以上でも以下でもないと言う意味で、-BONNIE AND CLYDE-も魅力的なタイトルだと思う。 撃たれる瞬間の、お互いの表情を交互に映すカメラも良い。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-07-07 22:58:07)(良:1票) |
512. BEST GUY
《ネタバレ》 -BEST GUY- “最高の男” 航空自衛隊千歳基地の201&203飛行隊のトップパイロットに与えられる称号。 この映画が千歳を舞台としているのに気がついたのって、映画の中盤。基地以外では現地ロケしてたのかな。全然北海道感がないんだけど。最後チラッとトマムが出るくらいで、道民としては…アレレ?って思いました。 当時の若者が熱狂した『トップガン』の日本版を創ろうとしたそうだけど、制作陣は創ってる最中…アレレ?って思ったに違いない。 日本版トム・クルーズ役をゲットした織田裕二。キャリアアップを目指した結果、まさかの足踏み。むしろ黒歴史扱いに…アレレ?って思ったハズ。 海軍パイロット希望者がわんさと来た映画の日本版と聞いて、航空自衛隊も精一杯期待と支援をしただろうけど、完成作品を観て…アレレ?って思ったことでしょう。観る人も、創る人も、演じる人も、題材にされた組織も、誰一人として得しない映画って、あるものですね。 深雪にバーティゴの話を突然始めたり、自信喪失で今まで出てない元カノに会いに行ったり、関係断られたからって『じゃあコッチで』って深雪の家行ったり…キャラがブレブレの梶谷。民間人なのに基地の司令室とかブリーフィングルームとか自由に行き来出来る深雪。 特別出演:シェリー…誰? よく解らなかったんだけど、ゴクウとイマジンが戦って、「梶谷お前はキル(撃墜)された」「いやキルされてない!ベイルアウト(緊急脱出)だ!」云々…「見ろよ!俺は生きてるぞ!」って流れ。撃墜を避けるために墜落したってこと?まるでゲームで『K.O.される前にリセットボタン押しました~』って言ってるレベルに思えたんだけど。この解釈で合ってる? ゴクウはここでF-15J一機墜落させてるんでしょ?その後バーティゴで墜落したけど、ゴクウは都合二機もF-15J墜落させたってこと?貴重な国税を…トップガンを彷彿とさせる海上救助シーン。コッチは1人だけ、死者も出てないのに、なんか悲しいシーンっぽくしてるのが悲しい。 F-15Jの実機映像は文句なくカッコいい。それだけが救いなのに、盛り上がるシーンに限ってチャチな特撮。酷い。 私はこの映画と関係ないけど、自分の意志で115分間しっかり観たけど、なんか、謝って欲しい。 [インターネット(邦画)] 3点(2022-07-06 21:32:07) |
513. 12モンキーズ
《ネタバレ》 -Twelve Monkeys- ・・・と言う名の過激な自然保護団体。 テリー・ギリアム作品のなかでは珍しく、エンターテインメントとして、かなりスッキリしていると思う。未来の世界とタイムスリップを扱っているので、最初観ていて??って思うような部分も、後々きちんと事情が解る創りで、私はこの監督ではこの作品が一番好きかもしれない。 ブラッド・ピット演じるジェフリーの狂人演技、ハイテンションのヤバいヤツ感が抜群に素晴らしく、また人を引き付ける魅力も感じさせる。 そして主人公のジェームズ。主人公としてマトモなハズの彼だけど、キャサリン視点で観るとマトモとは思えず、怖くて仕方ない。妄想に思える人類滅亡のシナリオが、オオカミ少年の顛末や(出来すぎ感があるけど)第一次大戦の写真で、キャサリンが信じるまでを、一歩一歩踏みしめるように追っていけるシナリオが見事。 キャサリンが未来を信じた所に、未来を妄想と思い込んだジェームズをぶつけるのも面白い。あの不気味なテープから正気を取り戻し、テンポ良く結末に向かっていく流れも秀逸。 12モンキーズの起こした事件の清々しさ。・・・そりゃ危険なのもウロウロするわけだから、手放しじゃ喜べないんだけど、今までのドロドロしたダークな雰囲気を吹き飛ばす爽快さを感じた。 ここまで観ると、結末は悲しいものになることも想像できるけど、タイム・パラドックスを信じるなら、あの場に居たジェームズ少年には、空気の美味い明るい未来が待っている。と思えるかな。 サッチモの“この素晴らしき世界”がとても印象深く耳に残る。観終わって『良い映画観たな』って思える作品。 [地上波(吹替)] 8点(2022-07-06 20:41:49) |
514. トップガン
《ネタバレ》 -TOP GUN- “アメリカ海軍戦闘機兵器学校(NFWS)”の通称。 当時大ヒット&大ブレイクしました。トム・クルーズもトム・キャットも格好良かった。音速のドッグファイトとノリの良いサウンドの組み合わせ。デンジャー・ゾーンのノリも好きだけど、トップガンアンセムの静かに盛り上がる曲も好き。どうしてサントラ盤はギターが激しいんだろう、大人しいバージョンも入れてほしかったわ。 ミサイルが同じ場所から出てたり、洋上なのに陸地が見えたり、敵機が残り1機なのに2機映ってたり、そんな事が些細に思えるほどに本物のF-14Aの美しさ。特撮じゃない空撮の迫力。世界最強の航空戦力。あの雰囲気、あの格好良さに勝るもの無し。 カラオケで告白なんて、アメリカ人があの陽気なノリでやるから、もう格好良いのなんの。マーヴェリックてかトム・クルーズが相当歌が下手なのも見事にノリでカバーしてる。最後トイレまで追い掛けていって、グースとの賭けにインチキで勝つところもオチャメ。 アイスマンって嫌な奴&あの事故ってわざと?って思ってたけど、規律を守る常識人だし、本当に不可抗力な事故だったんだろう。ロッカールームでマーヴェリックに、一旦呼吸を整えてから「・・・ミッチェル」って名前で話しかけるトコ、ホント根が優しい人って感じ。 トップガンと言えば格好良いシーンで掛かるノリノリのロックが目立つけど、面白いのは懐メロが3曲ほど出てきたとこ。 カラオケで歌ったライチャス・ブラザーズの“ふられた気持ち”はピートとチャーリーのお互いの告白に。 グースが愛する妻キャロルにピアノ弾いて歌ったのはジェリー・リー・ルイスの“火の玉ロック”。 ピートの両親が好きだった曲としてオーティス・レディングの“ドック・オブ・ベイ” ノリノリのトップガンのサントラには入ってない3曲だけど、この映画では2人の愛を懐メロで表現しているのが面白い。 ベルリンの“愛は吐息のように”この曲も今ではずいぶん懐メロだけど、ピートとチャーリーの愛のテーマであり、デートムービーとしてトップガンを観た私たちの愛のテーマにもなっていた(と思われる)。だってみんなサントラ持ってたし。クラスに1人はサントラCD持っていて、それをみんなカセットテープにダビングして聞いてましたよ当時は。私もTDKのADに入れてたっけ…あぁ懐かしい。 最後にマーリンについて書いておこうと思う。今ではネットで簡単に調べられるから、ご存じの方は飛ばしてください。 公開から暫くして、ビデオとかで観てる時、最後の甲板で突然ヌゥっと出てきて「え!?もしかしてティム・ロビンス?」って、私たちををびっくりさせてくれたのが、マーリン。公開当時は無名だったから気にもしてなかった。 彼はいつから居て、どこで何してた?実は最後、マーヴェリックのレーダー要員、つまりグースの後任を努めてました。グースの死後、トップガンでは日章ヘルメットの黒人レーダー員(サンダウン)が後任だったけど、卒業式の緊急命令の時にヴァイパーが「レーダー員が居なければ私が飛ぶ」って言ってたから、この2人のどっちかがレーダー員を努めてたと思ってた。なのにどうしてマーリン? 実はマーリンは最初のミグ遭遇時の、クーガー機のレーダー員。本来だと空母エンタープライズからはクーガー/マーリン組がトップガンに行く予定だったけど、クーガーが辞職してマーヴェリック/グース組が行くことに。マーリンはそのまま空母に残ってたんだろう。腕は良いんだろうに。 で最後の緊急命令時もたまたまエンタープライズが母艦に選ばれて、最初の編隊チームだったマーヴェリックとマーリンの2人が、お互い固定パートナーが居ないから組めた。って流れでした。最後に突然登場したと思ってたけど、最初から映ってて、けっこう喋ってたんですねぇ。 [映画館(字幕)] 7点(2022-07-04 00:38:39)(良:1票) |
515. ポンペイ
《ネタバレ》 -Pompeii-ナポリ近郊の2.5万人規模の都市。ベスビオ山の噴火で消滅し、2千人程が亡くなった。…市民全滅ではなかったのね。 火山の噴火という自然災害に身分の異なる男女の恋愛を取り入れ、贅沢にも剣闘士のアクションまで取り入れた欲張りな作品。タイタニックとグラディエーターをいっぺんに観てるような、そんな気分になれるかもしれない。 しかしあそこまで恋愛路線に傾いてるとは思わなかった。何故か一目惚れして、何故か相思相愛になってて、何故か逃走して。あの短時間に恋敵であり親の仇が登場し、ヒロインが連れ去られたり取り返したりと忙しい。闘技場から屋敷に走って、また闘技場に戻ってと、本当に忙しい。ポンペイってディズニーランドくらいの広さなんだろうか?人口から考えて本当にそれくらいかも? 2人の恋にベスビオ山の噴火がどう関わってくるか。火山の噴火と火砕流に呑まれる街の描写は中々気合が入っている。だけど、突然噴火するだけで、火山の前フリとか登場人物との絡みが殆どないのね。劇中、溶岩が溜まっていく様子とか、頻発する地震とか、建物のひび割れとか、馬に落とされて亀裂に呑まれる人とかの“噴火の予兆”はあったけど、それを俯瞰で観察して、ポンペイの未来に危機感を感じてる登場人物が出てこない。当時の学者なんかを主要人物に入れて、予兆を体験させて「このままでは噴火するぞ、市民を逃さないと」みたいな盛り上げ方は必要だったかと。 あ、剣闘シーンはなかなか。歌いながら場面説明をする、黄金のマスクマンたちは雰囲気出てた。 オープニングの石膏で再現された遺体。あの石膏遺体がどうやって再現されたか?とか、他の映画でよく描かれる古代ローマ都市とポンペイがどう違うのか?とか、観ていて歴史の勉強になる要素は殆ど見つけられなかったのは残念。 2人の最後は、ちょっとロマンチック過ぎないかい?カッシアを守ろうとマイロがキツく抱きしめたカタチで…くらいの表現で良かったかと。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-06-29 22:53:41) |
516. テルマエ・ロマエ
《ネタバレ》 -THERMAE ROMAE- “ローマの公衆浴場” 顔の濃い日本人でローマ人を表現するセンスは素晴らしい。中途半端に西洋人を出すよりもずっとインパクトあるし楽しそう。 あとは肩肘張らずに、原作の面白さと阿部ちゃんのスットボケキャラの相乗効果を味わうだけ。・・・だと思ったんだけどなぁ。 漫画原作の邦画って、どうしてかダイジェスト的に話を詰め込み過ぎになりがち。 ①銭湯→②家風呂→③ショールーム。この、それぞれでドラマの30分枠を充分に埋められる面白い話を、たった35分で消化してしまう駆け足具合。シャワーの便利さ、富士山の壁絵の雄大さ。フルーツ牛乳の甘さと冷たさ。シャンプーハットの懐かしさ。果てはウォシュレットの気持ちよさ。…私たちの生活に当たり前に浸透している、日本のお風呂文化(いや水回り文化か)を見て、ルシウスが驚いて感動するところがこの作品一番の目玉だと思う。私たちには当たり前の光景が、どうして素晴らしいのかをルシウスに語らせる。そしてそれをローマに帰ったルシウスが、当時の技術で上手に再現するところも含めて“日本のお風呂文化って凄いんだな”って。 日本ローカルの愛すべきお風呂文化が、同じくお風呂が好きな古代ローマ人に喜んでもらえる嬉しさ。最近流行った『世界に誇る日本の文化』みたいな風潮のモトって、このテルマエ・ロマエかもしれない。 お爺さんたちが古代ローマに行ってしまうと、いままでの日本のお風呂文化の素晴らしさが伝わる喜びが無くなって、途端に退屈になる。 ・・・というかネタを詰め込みすぎてお腹いっぱい。上戸彩が実家に帰るあたりにはもう飽きて長さを感じてる。 原作は途中までしか知らないけど、ローマに行ったお爺さんたちが後方支援とは言え、戦争の一方に自主的に加担するのも安直だし、クライマックスにオンドルなんて、あまり馴染みのない、朝鮮半島の文化を入れてくるのも不自然。この当時のフジテレビの韓流ゴリ押しは異常。 こんな無理やりな展開入れるなら、もう銭湯からショールームまでで90分くらいの映画で良かったんじゃないか?って。 ケロリン桶の美しさを解説する全裸の阿部ちゃん(股間は上手く隠れてる)なんて、想像するだけで笑えるのに、サラッと。 ワンダーウェーブ洗浄とかBILINGUALとか、映画独自の笑い要素もあって、全部が悪いわけじゃない。 しかしエンディングのお風呂でくつろぐ登場人物たちは、私に“お風呂入りたい欲”を沸き立たせる。 [地上波(邦画)] 4点(2022-06-28 22:07:49) |
517. 英国王のスピーチ
《ネタバレ》 -The King's Speech- 邦題まま。 立場的に逃げられず、苦手とすることをやらなければいけないのって、とっても大変。 私も人前で話すのが苦手で、仕事上大勢の前で話す時とかとっても緊張します。英国王に比べてスケールが小さいですが、乾杯の挨拶とか、出来れば、この世から無くなってほしいものです。って思ってたらコロナで宴会無くなってラッキー。 デイヴィッド王子が居るから、表舞台に立たなくて良くてラッキーと思っていたところ…な本作。 幼少期に脚や利き手を矯正されて、食事も抜かれて胃腸も弱ったアルバート王子。無理な矯正が別なカタチで歪みを生んだのかと思うと、同じ左利きとして同情してしまう。 対象的に自由を謳歌するデイヴィッド王子。立場的に彼のほうがストレスが多そうだけど、そんなの気にも掛けず、世間から白い目で見られようと、愛する人を選ぶデイヴィッド王子の生涯の方が、映画的に面白そうにも思えた。 治療の光景は独特で、歌に乗せたり汚い言葉を使ったり、ローグの原因の引き出し方、戸惑いつつも治療を投げないバーティの関係、バランスが見事。ローグが食卓で「…やりすぎちゃった」と落ち込む姿は、治す側も手探りなんだと感じさせてくれた。 最後の演説、ヒトラーの演説を観てからではスケールダウンは否めないラジオの放送だけど、却ってそこがいい。 新進気鋭の独裁者の煽り演説に流されない、威厳ある王室の姿勢をしっかり観せているように思えた。 しかし、トム・フーパー監督。私はちょい苦手なのかも。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-06-26 20:18:46) |
518. 遊星からの物体X
《ネタバレ》 -The Thing- “無生物”・・・って事は、アレは生命体じゃないってことか?寄生型の・・・何か。邦題は“物体”としたんだね。遊星ってのは惑星と同じ意味みたい。 で、アレだけど、完璧な擬態を見せて人間(と言うか生物)に近づき、普通にコミュニケーションをして、おぞましい姿で寄生する。犬の変身がおぞましくて凄かった。他の犬が関心を持ちつつチラチラ見てるなか、バックリ裂けて大変身。触手をピシュンピシュンしならせる。あの不気味さはパペット技術の産物。もしブルーバック合成やストップモーション撮影だったら、きっと人形っぽくてシラケてたと思う。 明るい医務室でじっくり観えるノリスの変態。常識を逸脱した部位の使い方。炎から逃げるために首だけ脱出させるセンス。蟹のような足とカタツムリのような目。逃げて隠れずじっとして燃やされる最後も意味不明で怖い。 寄生されるとどういう感覚なんだろう?ノリスが寄生されてた時、縛られてるパーカーも既に寄生されてたと思うけど、アレどうし助けるとか協力するとかしない。助け合い、協力。その裏にある裏切り、疑心暗鬼。そういう感覚がもう生物的で、アイツら無生物とは違うのかもしれない。寄生した個体のどれかさえ生き残ればOKって考えかな。 そう考えると医務室の検査の前に、外で不気味に叫んでたベニングスは「寄生されたらこうなるよ」って、人間に嘘の情報を植え付ける役割だったのかも。 でも、ノリスもパーカーも、寄生されたことに気がついてない可能性もあるしなぁ、正体を表す直前まで人間的すぎたから… アレによる被害も大きいけど、人間による被害も同様に大きい。乗り物や無線機とかは人間のブレアが壊しているし、建物を破壊したのは人間同士の話し合いの結果。建物焼いても人間が不利になるだけなのに、ブルドーザーのような重機は動くんだからそれにガソリン積んで逃げるのも方法だったろうに、パニックで誰も疑問に思わない。アレは雪の下で何万年も生きていられるのに。 “ちょっとビビらせたら勝手に争って、勝手に自滅する”のが、アレに言わせれば、直接的にしかコミュニケーションを取れない生物、社会を形成して群れて生きる人間の、欠点であり、倒し方なのかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 8点(2022-06-25 23:09:29)(良:1票) |
519. トイ・ストーリー4
《ネタバレ》 やはり私も『最高の終わり方をした3の後日談を創る意味ってあるの?』って疑問もあったためか、4は劇場で観るつもりだったけどタイミング悪く観られず。1~3はそのうち円盤を買おうと思っていたけど、4は賛否両論あることを知り、どんなタイミングで観るか迷っていたところ、ネットニュースの『金ロー最悪。3の翌週4やるなんて』って記事にまんまと踊らされた。どんだけ酷いんだ?ようし、テレビで観てやるべ!って…観たんです。 今回のテーマは「子供は毎日のようにオモチャを失くす」そう、確かに。 “あげる”“壊す”“捨てる“売る”あと“あの場所で失くして、探したけど見つからなかった”そんな、最後どうなったか?を覚えているオモチャはともかく、もう一つ“どうしたか忘れた”があると思う。この4はその持ち主のもとで天寿を全うできなかった“忘れたオモチャ”のアンサーだ。 序盤の回想が、3から出なくなったボーとRCがメイン。漠然と“どっかの時点で捨てたんだな”って思っていたボーのその後が、ここでようやく解る。みんなのところへ戻そうとするウッディだけど、ボーの持ち主は妹のモリー。モリーがあげると決めたなら、ボーは貰われて行くしか無い。 ここで一瞬、ウッディも箱に入ろうとするトコ。最後に繋がる見逃しちゃ駄目なポイント。これがオモチャのウッディの自我、意志。だけどまだ自分がアンディに必要とされていることを自覚して残るウッディ。 ボニーのお気に入りになれなかったウッディ。まだ持ち主のモトにあるのに、既に忘れられつつある存在になっていて、このまま居てもきっと最後どうなったか、ボニーは覚えてないし、探しもしないだろう。 その後ボニーが大人になって、アンディと会った時「ウッディってカウボーイのオモチャ覚えてる?」とか言われて「あれ?う~ん・・・近所の子に全部あげたと思う」とかってなるかも。そんな未来が観える中、ボニーのことを思い続けるウッディが涙ぐましい。 そして最後、ボニーに必要とされないからではなく、9年前に思いとどまった事を実行したウッディ。迷うウッディの背中を押してやるバズの友情。 これでトイ・ストーリーを観た子供に「そういえばわたしの○○(オモチャの名前)、どこにいったの?」と聞かれた時「自分でどっかに捨てたんだろ」と冷たく言う以外の回答「○○もきっと、ウッディやボーのようにじぶんのかんがえで、たくましくいきているんだよ」って言える。このテーマを1~3の劇中に挟むのも難しかったろうし、単独の話として創って正解だったと思う。 トイ・ストーリーは1~3まで、公開年と劇中の時系列が一緒だったハズ。3が2010年の話で、この4も同じ2010年の話。だからカブーンの決め台詞がオバマ大統領のキャッチコピー。ちなみに9年前の回想シーンは実は2001年になる。 別に2019年のウッディたちの話でも良かったろうに、シリーズで例外的に時系列から外して創ったのは、やはり1~3が完璧と思う層(4を受け容れられない層)に配慮したように思える。そしてトイ・ストーリーは2010年で終わったシリーズを意味するんだと。4って付けてるけど、番外編でいいですよ。って。だから5は無いんじゃないかなぁ? 私は、4大丈夫だった。この出来なら劇場で観たかった。 ちなみにRCのその後、成れの果てが、スカンク・ラジコンなのかな?いやそんなウマい話無いだろう。たぶん壊れて捨てたんだろうけど。 ただフォーキーは…本作のスカンク・ラジコンみたく、オモチャなのに命のないものも居る中で、アレをオモチャとして良いのかどうか…これが例えば“お婆ちゃんが創った刺繍の人形”とかなら命も入りそうだけど。 アレだと、鉛筆さんや消しゴム君にも命があるってことになりそう。そういうので遊ぶ子供への配慮かもしれないけど、コッチの“どこまでがオモチャ?”の線引は、どうかなぁ?って思った。 [地上波(吹替)] 8点(2022-06-25 12:42:10) |
520. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 ※極力ネタバレ無しで書いてみましたが、難しいですね。有りにしておきます。 リアルタイムにはザ・ウルトラマンや80の世代になるんだろうけど、子供の頃は初代からレオまでが大好きで、夕方や夏・冬休みの再放送を、何回も観ていました。ほぼ全話見ていると思う。そして私が初めて映画館で観た映画が、ウルトラマン(ハヌマーンのやつ)。何かと縁がある作品です。 オープニングのゴメスやペギラにビックリ。そうか、そこから話が繋がってるんだ。元々が30分完結の独立したショートストーリーを、1本の映画として連続性を持たせて完結させるための取捨選択。綺麗にまとまっていたと思う。 公開前から、どうしてネロンガとガボラって似た怪獣をチョイスしたんだろ?って思ってたところ、アタッチメントの件でひとりヲタ笑いしそうになったわ。似てる理由も、映画の中できちんと処理していたのは上手いな。 しかし登場人物全員の、あの理屈っぽく固っ苦しいセリフはなんだろう。みんな頭が良いからだろうか、禍特対も宇宙人も似たような難しい喋り方してて、私の周りにあんな人いないから、違和感感じたわ。子供は楽しめないだろうな。 神永が子供を助けに飛び出すのは、一般人と距離が近い科特隊なら違和感ないんだけど、対策本部で研究と指揮だけで、現場活動しない禍特対では難しそう。 1回目と2回目で容姿の変わったウルトラマン。AタイプからB・Cタイプに変わる理由としては上手いけど、このすぐ次にニセ・ウルトラマンを出したからまた容姿が変わっただけのように思えて、ニセ感が弱くなった気が…ここはもっと、目とつま先で表現してほしかったと思う。 ウルトラマンは神ではなく、特殊能力のある60mの巨人でしか無く、ゼットンには敵わないのを解っていたのに人間のために戦いを挑む姿に涙が出た。 どうしてカラータイマーが無いんだろう?って疑問は、劇中では解決せず。後で調べて、そういうマニアックなトコから設定を引っ張ってくるんだぁって感心する反面、当時の製作陣の知恵と工夫、白黒からカラーテレビに変わる時代背景を落とし込んだのが“カラータイマーのあるウルトラマン”だとも思った。カラータイマーがロボット的だという考えを織り込むなら、無機質な“光る目”も、生物的なディテールにしても良いのでは?って思ったりした。 よりオリジナル設定に寄せる訳ではなく、怪獣図鑑の後付設定“一兆度の火球”とかは入れるあたり、つまりは制作側が好きなものをブチ込んだ結果がこのシン・ウルトラマンなんだろう。 ウルトラマンは100人のファンが居たら100通りの思い入れがある作品なので、このシンがベストマッチの人もいれば、大ハズレの人もいるだろう。 庵野監督がウルトラマンが大好きなのは知っていたから、どんだけ“お約束ネタ”を仕込んでくるかと思ったけど、うん、これがもし押井監督とかだったら、絶対魚眼レンズの顔アップや、みんなで並んでカレーライスからの・・・は入れただろうなって。 もちろん期待ハズレという意味でなく、後半にかけての展開の意外さ。繋がりの上手さは楽しめました。だけどウルトラマンの王道リメイクと言うよりは、庵野秀明版・ウルトラマンの同人作品ってポジションがしっくり来るかも。 最後の方の会話は、どうしてウルトラセブンで怪獣より宇宙人が多く出ていたのか?に上手く繋げていたと思う。シン・セブン作るのかな。 [映画館(邦画)] 7点(2022-06-24 16:18:53) |