561. 人間の條件 第五部 死の脱出
《ネタバレ》 第4部での戦場。そして敗戦し、敗残兵としての内地に帰るための大陸逃避行である。 「戦争に負けた国の女ほど惨めなものはないよ」 途中、出会った日本人女性たちの一群の言葉である。 その言葉の意味することの、残酷さを考えさせられる。 そしてロシア兵に暴行された女性に乱暴する日本兵。 この大作「人間の條件」のいよいよ最後の問題提起かもしれない。 いよいよ最終回へ。 (最終話を見たが、問題提起はさらにさらに続いた・・) [DVD(邦画)] 7点(2020-07-24 18:13:19) |
562. 花と龍(1973)
《ネタバレ》 前半の金五郎とマンの夫婦の生き様は、 「日本侠客伝 花と龍」の方がまとまってて、分かりやすかった。 が、後半の息子のカツノリが成長してからの話は、やはり原作に忠実な本編ならでは。 恐らく、このカツノリが原作者の火野葦平なのだろう。 ストライキつぶしに刀で斬り合うなんて、本当?と思ってしまうが、 北九州は、こういう町なのだろうか?う~む・・ ここが「日本侠客伝」との違い。 「日本」は組の抗争で蝶々牡丹が活躍するのだが、 本編では組合のストライキつぶしの抗争(でも結局、組同士のつぶし合いなのだが・・)で 蝶々牡丹の、しかも娘が活躍する。 同じ原作使っても、料理は様々ですね。 [DVD(邦画)] 7点(2020-07-24 12:39:19) |
563. トキワ荘の青春
《ネタバレ》 NHKの「わが青春のトキワ荘」を見ていると、誰が誰か分かりやすく、 この作品のテーマも読みやすい。 というか、市川準は、漫画にそれほど愛情を持っていると思えず、 いつもの市川節ならば、もう前述のNHK特集を見ればいいわけで、あまり制作の意図が読めない。 本木くんの映画と思えば、すっきりはするが・・ 長回しというか、淡々と情景を撮るというか、長いCM(昭和に流行った感じの)のようである、 市川節では、この素材はもったいなさすぎである。 でも自分を殺さず、時流に取り残されていく作家の話としては、 見応えがありました。 [ビデオ(邦画)] 7点(2020-07-22 01:35:37) |
564. ジョーカー
《ネタバレ》 これを観ると、バットマンの観方も、ハーレンクインの観方もガラリと変わるね。 深いね~。 [DVD(字幕)] 8点(2020-07-19 00:48:43) |
565. 日本侠客伝 花と龍
《ネタバレ》 火野葦平の「花と龍」を日本侠客伝シリーズに取り込んだバージョン。 一本一本が独立した話のシリーズと聞く。 監督は、あのマキノ監督。 本当は「花と龍」を観たかった。 が、本編も面白い!侠客シリーズ、面白いんだ。 一体、どこからどこまでが「花と龍」なのか分からないが、 本編の魅力は、高倉健を愛する二人の女にある。 下町の女性とヤクザの世界に身を置く藤純子。 ラストの修羅場を、ともに生き残って、奥さんに「私の負けだわ」というアタリ。 カッコ良すぎです!藤姐ェ! [DVD(邦画)] 7点(2020-07-13 22:49:34) |
566. 記憶にございません!
《ネタバレ》 三谷節が良く弾けてる。 まず大筋が面白い。 記憶喪失のまま、総理大臣を続ける。 そして国をいい方向に向けていくべく、周りがサポートする。 そして最後はホロリと来るラスト。 器用に大河ドラマも、歴史も政治もこなすが、 彼の、ありえない状況から来る笑いは、日本映画に新風を入れてくれて、 今ではお馴染みの監督になった。 [DVD(邦画)] 7点(2020-07-11 22:28:28) |
567. 見えない目撃者(2019)
《ネタバレ》 面白いサスペンスでした。 「羊たちの沈黙」と「暗くなるまで待って」を足したような作品。 猟奇殺人犯がもっとも身を守るのに不利な目の見えない女性を襲ったら、どうなるか しかもその犯人が身内のはずの警察官だったら、とか最悪な設定で創り上げた作品でした。 最初は乗り気じゃない、感じの悪い警察官(大倉孝二)が 「正義ってものをみせてやる」と言って、犯人にもっとも残虐な殺され方を されるところにこの監督のセンスを感じました。 [DVD(邦画)] 7点(2020-07-11 16:47:04) |
568. 旅のおわり世界のはじまり
《ネタバレ》 黒沢清監督と言えば、ホラーの名手である。 得体のしれないものを描くのが得意である。 最初、スマホに夢中の現代の若者が平気で海外をうろつく、 この現代日本そのものが得体のしれないものであるという捻ったホラーかと思った。 この日本の若者の得体のしれないぶりは、カメラをもたせることで 映像の手前にいる自分は安全地帯なのだと錯覚を起こしてしまい、異国の地で大胆な行動を起こして ピークに達する。 前田敦子と言えば、「もらとりあむタマ子」の女優だ。 なんとラストは、異国の地で情に触れ、感極まって、ウズベキスタンの きれいな山脈をバックに「愛の賛歌」のアカペラを披露する。 旅と映画は似ている。 流れがあって、異世界での体験にクライマックスもあるからだ。(人にもよるかもしれないが) 一本で両方の効用がある、見事な傑作だった。 [DVD(邦画)] 9点(2020-06-28 02:04:31) |
569. 宮本から君へ
《ネタバレ》 原作掲載時、リアルタイムで読んでました。 もう「あの」シーンの壮絶さはトラウマになりそうなくらいでした。 そして「アノ」シーンも、「そのまたアノ」シーンも・・ そして「チョーキモチイイ」あの場面! 忘れられない、インパクト強でした。 それぞれのキャラクターが、原作に近いので驚きです。 池松君も、蒼井さんも、好演です。 昭和の終わり、平成の初めの作品なので、 今の子たちがどう思うかは分かりませんが、 いつの時代にも通じるものがあると思います。 [DVD(邦画)] 8点(2020-06-27 22:54:07) |
570. 荷車の歌
《ネタバレ》 明治終り頃から、第二次世界大戦終戦までの 二人の夫婦の一生をずっと描いている。 時代おくれの荷車挽き、生活苦、姑の子供虐待、年を取っては夫が妾を作ったり、そして戦争になって、 送り出した子が病気で帰って来たり、そして戦死して、もう苦労苦労の連続である。 今の時代も、失業やらコロナやら、悩みだしたらキリがないが、 いつの時代も、この国は悩みだらけなのだなぁと思う。 それでも養女に出した娘が帰って来たり、姑との和解があったり、 ホッと一息つける時間もある。 「人生とは絶望と希望の戯れである」 ゼミの先生の言葉であるが、まさしくそれを映画化したような映画だった。 [DVD(邦画)] 7点(2020-06-20 14:47:05) |
571. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 本作品は、黒澤監督が世界に認められた作品ではあるが、 いつもとちょっと違う。 三船と志村の演じる人物の対比がない。 そして京マチ子の出演である。 妖艶な京マチ子がここではあどけない女性のような表情を見せる。 筋も面白い。 芥川の「藪の中」を黒澤風に料理している。 鬼才黒澤の世界からの祝福は、日本映画史に残る大きなポイントだろう。 [ビデオ(邦画)] 8点(2020-06-14 19:58:15) |
572. 火口のふたり
《ネタバレ》 最初は???って感じだった。 いとこ同士のセックスシーンばっかり。 でもある時、はたと気がついた。 これは神話の世界なんじゃないかと・・ 近親相姦、地殻変動・・ 国づくり神話でもこんなんばっかりじゃないかと・・ (古事記とかよく知らないけど(笑)) そんなんで最後は富士山が噴火で納得のラスト・・て? でも日本的ですよね。 同じようなラブストーリーでも欧米のベルトルッチ「ドリーマーズ」やメルヴィル「恐るべき子供たち」は ちょっと違ったテイストだったもんねぇ。 追記)荒井さんは「身も心も」で柄本親子両方の濡れ場を描いちゃったことになる。 [DVD(邦画)] 7点(2020-06-13 13:25:16) |
573. 事件
《ネタバレ》 ハツ子は義父に暴行を受けながらも、健気に前向きに生きようとしていた。 しかし、チンピラの宮内は浮気を繰り返す男だった。 ヨシ子の彼氏の宏は誠実そうだった。 そこで、義父の毒牙が妹ではなく、姉の自分に向けられて、 自分の人生がこうも満たされないものになった妬みが 妹の彼氏を誘惑することだった。 いや、宏がちゃんとしていたら、こんな間違いもなかったろう。 しかし酒の力も手つだって、ハツ子に甘えてしまう。 義父を迎えることになった、少し弱い母親を乙羽信子が好演している。 ここがポイントなのだ。 「私の何が悪いの」そんな絶望の叫びのような表情を浮かべて、 ハツ子は宏に刺される。 男の弱さにふりまわされたハツ子だった。 何とも寂しい話だ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2020-06-11 11:55:49) |
574. キクとイサム
《ネタバレ》 黒人の混血キクとイサム。 この頃は、社会に人情が残っていた。 今の時代なら、いじめ、ひきこもりなど暗い話になってたろう。 周囲のひとの人気者だったキク。 イサムとの別れに少し寂しそうな顔をするキク。 子どもを探しにバイクに乗るキク。 どんな時もめげないように見えるキク。 しかし自殺未遂を起こすまで悩んでいたのだ。 この辺はさらりと描いている。 この子の健気な性格に、涙すら出てくる。 そして北林谷栄、圧巻の老婆である。 しかし何を言ってるかまるで分らない。 字幕入りで観たかった。 でもハートの伝わる演技だった。 [DVD(邦画)] 8点(2020-06-09 10:39:37) |
575. 異母兄弟
《ネタバレ》 田中絹代が堪える、耐える。 彼女は戦時中の国民の嘘を呑み込んで、演技していた。 末の男の子が好きになった女中を、二人一緒にさせない絹代の演技の深さ。 「陸軍」の絹代と比べると興味深い。 三国連太郎も怪演。 軍人の時、出世していく息子を褒める時、戦後、ボロボロになった時のそれぞれの三国。 目力を演技できるのかなと思ってしまう位の変わりよう。 このズレた夫婦を通して、戦争を描いてる。 どちらかというと兄弟の軋轢を描く映画ではなかった。 [DVD(邦画)] 7点(2020-06-07 11:28:59)(良:1票) |
576. セブン・イヤーズ・イン・チベット
《ネタバレ》 有名な登山家とダライラマの友情の話である。 この友情は事実らしい。 この登山家との出会いがなければ、中国のチベット事件のときに ダライラマは亡命しただろうか? そして、チベット文化は残り続けたろうか? 中国は恐ろしい。 戦後すぐで気が立っていたからだろうか? でも今の香港を見ても、中国のホントのところは分からない。 中国映画を観ても、人情もあり、魅力ある人たちの国だとは思う。 でも政治が国を動かしているからなぁ・・ スコセッシの「クンドゥン」も似た話である。 こちらはダライラマを主人公にして、チベット事件を描いてる。 [DVD(字幕)] 7点(2020-06-06 22:54:12) |
577. 醜聞(1950)
《ネタバレ》 三船と志村喬の絶妙のコンビ。 黒澤さんの映画の大黒柱だ。 今の日本映画は、人間の微妙な綾を描こうとするが、 黒澤さんは、ドラマツルギーを成り立たせるために、 分かりやすいキャラ設定で挑む。 だから人間賛歌の物語も、分かりやすく面白い。 今の時代、こんな分かりやすいキャラではバカにされるかもしれないが、 それでも黒澤さんだけの芸当にしてしまうのは惜しい。 [DVD(邦画)] 7点(2020-06-02 09:32:48) |
578. フォー・ウェディング
《ネタバレ》 結婚式が映画の冒頭にてくる映画は多い。 「ディアハンター」「ゴッドファーザー」「悪い奴ほどよく眠る」等々 しかし全編、結婚式のシーンという面白い着眼点。 皆さん、お盛んなんですね~~ 結局、モテ過ぎの男女が結婚という選択肢をとらず、 「結婚」するという話。 エンディングの皆のその後が描かれてるときの マクダゥエルの素直な表情が良かった。 [ビデオ(字幕)] 6点(2020-06-01 10:12:31) |
579. どん底(1957)
《ネタバレ》 黒澤さんはホント、一流の不良でもあるんだな~ 物語の構成が相変わらず凄い。 前半、長屋からほとんどカメラは出ることなく、 登場人物の紹介をしてしまう。これが絶妙! そして後半、次々不幸が出てくるんだけど、 したり顔のおじいさんが、サッと逃げるとこが面白い。 ラスト、長屋の連中の酒飲んでの乱痴気騒ぎ。 これが囃しになってて、見応えある。 黒澤さん、凄いっす! [DVD(邦画)] 8点(2020-05-29 12:40:41) |
580. 生きものの記録
《ネタバレ》 タイトルで損をしているが、さすが黒澤明!面白い! 水爆の放射能は、誰もが怖いだろう。 令和の今は、原発の放射能が怖くない人はいないでしょう。 しかし、皆、忘れたふりをして、目の前の問題に夢中になっている。 この老人は、ちょっと異常にデリケートで、有能であるがために、具体策まで考えて、それを強行しようとする。 ブラジル行がそれだ。 それを周りの人は、禁治産者という法的に判断できぬ人、現実が分からぬ人として、 なんとかしようとする。 確かにわがままな老人の世迷言の一つかもしれない。 しかし、最後に孫をおんぶして、老人の見舞いに来る女性には、 そこには愛があったと思えていたのだろう。 さすが、黒澤節! [DVD(邦画)] 7点(2020-05-28 02:10:07) |