561. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
《ネタバレ》 前作2作が“立て続け”にグダグダだったのに対し、今作の汚名返上振りは最高だった。 「希望」の前の「絶望」のカタルシスの描き方が秀逸。 CGの完成度も格段に質感を感じられる凄味が増した(トリロジー版の質感に勝るとも劣らない)し、ストーリーの繋がり方が良い。 アナキンが闇に堕ちていく決定打。 ファーストシーンにおける師弟の絆が憎悪に変わる瞬間の恐ろしさ。 前2作の空振り具合といつものアホ丸出しのイチャイチャ振りが、より一層アナキンが闇に堕ちていく様を際立たせる。やってくれるぜルーカス。 アナキンの絶望、 オビ=ワンの憤り、 そしてジェダイの滅亡・・・。 「新たなる希望」のための絶望としては最高の出来。 最後の最後でその「希望」を見せる演出も素晴らしかった。 前2作を見直してしまいそうになるくらいね。 唯一残念といえば、もう少しダースベイダーの声が聞きたかったかなー。 スターウォーズはやっぱり吹き替えか字幕無しの原語で聞くに限る。 戸田奈津子の「ボランティア軍」や「掃除が大変だ」には反吐が出るね。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-08 20:15:31) |
562. スクール・オブ・ロック
《ネタバレ》 最高に愉快な音楽映画です。 劇中で演奏するミュージシャンは大人から子供まで全部モノホン(本物)。 極めつけはデューイを演じるジャック・ブラックの狂気地味たハイテンション! 次から次へと機関銃のように飛び交うセリフの応酬! ライブで盛り上がる夜のバー、ロックで最高にハイになる音楽馬鹿の彼だが、彼は受け止めて貰えるほど愛されて(認められて)いなかった。 自分の音楽に酔っていた“現実”を思い知らされるデューイ、それでもロックへの情熱は燃え尽きない。 デューイは親友のネッドを騙してまで仕事を引き受ける。 だが待っていた職場は正に彼の運命、天職、音楽の才能に溢れた子供達との出会い。 子供達の才能を親と教師たちは無視していた。 しかし、誰よりも仲間を求めていたデューイは子供達の才能を見逃さない。 デューイにとっては利害の一致、子供達にとっては自分を認めてくれる恩人への恩返しだ。 しかしいくら何でも「夢は諦めろ」を先生がいうなよ。当っているかも知れないけど! それでも褒めて伸ばす、付きっ切りで教えるのは上手い。デューイもまた様々な子供達と出会う事で少しずつ成長していく。モチロン狂気に満ちた野望を抱えて。 「ロックは頭を試されるんだ」 QUEEN&レッドツェッペリン「左様」 「ダイエットは?」 「食うのが好きだからしない」 デブの鑑かコイツは。 やがては教師も掌握して磐石・・・かと思いきやそう都合よくいかないのが世の中です。 それでもデューイの魂は生徒に届いていた! 彼を経歴ではなく“魂”で教師として認める子供達の心意気! デューイも腹をくくる。デューイの情熱に親友の魂も蘇る・・・! でもあの半ズボンは無いわー(褒めてる)。 ダイブにはじまりダイブに終わる。 メタいセリフが飛び交うエンディングも最高だったぜ。 DVDの特典でツェッペリンにライブで許可を貰おうとするシーンが面白い。 電話を取らせないために火まで付けるとかどんだけだよ。 「“The”で始まる映画はコケるんだ」 遊星からの物体X(The Thing)「!?」 ジャック・ブラックがオーソン・ウェルズみたいになっててワロタ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-08 17:52:42)(良:2票) |
563. コロッサル・ユース
《ネタバレ》 これは、本当にデジタルで撮られた映画なのだろうか。 まるで昔のカメラで撮ったかのような奥行きと映像美が拡がっているではないあ。 そう、今の時代には失われてしまったロスト・テクノロジーとでも言うべきか。 「ペドロ・コスタ」は、絶望に沈むある街で生きる人々を描くのだ。 消えゆく孤独な魂、消えていく土地の哀しみを・・・。 かつてロバート・フラハティは「極北のナヌーク」を撮った。 イヌイットと生活を共にし、彼らの生きた姿をフィルムに残した。 日本の小川紳介もまた。 ペドロ・コスタは、この時代にその域まで己の精神を研ぎ澄ました作家と言えよう。 作品は一見すると楽しみづらいかも知れないが、ドキュメンタリーとしても、一つの娯楽としても是非とも見て貰いたい作品だ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 18:32:28) |
564. 硫黄島からの手紙
《ネタバレ》 後に南北戦争を描いたスピルバーグの「リンカーン」を予告していたかのような作品。 武器が尽き、どんどん追い詰められる様子は南北戦争の南軍の様。アメリカ人の視点で日本人の生き様、死に様をありありと刻んでいく。 そこには狂信的な異常はなく、ただありのままが描かれているに過ぎない。 実際にあった激戦をアメリカと日本の二つの視点から描いていくが…「硫黄島からの手紙」の方はアメリカ軍相手に予想以上に持ちこたえた戦略だとか、硫黄島を守備していた日本兵よりも多い敵を倒したとか、数字的な物はこの映画からは感じられない。 そこに描かれるのは赴任した栗林中将が、いかに戦いまでの準備をし、いかに生活し、いかに戦い、いかに死んでいったか。 特に穴を掘って立て篭もり、島全体を天然の要塞とする戦法。そしてそこを守った他の日本兵たちがいかに暮らし、いかに戦い、いかに死んでいったか。そこに重点が置かれているようだ。 目に映る凄惨な死闘、そして兵士の語りによる人間ドラマ。 発掘される手紙の数々、死を覚悟した男たちが何を残して散っていったのか。 バロン西のカッコ良さは異常。 「万歳!」の渇いた声が耳に残る映画でもあった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 18:21:26) |
565. 父親たちの星条旗
《ネタバレ》 「硫黄島からの手紙」が戦場中心に描いたのに対し、この映画は主人公が硫黄島での激戦と星条旗を掲げた者たちの戦後を描いていく。俺はコッチの戦後に焦点を当てたドラマの方が好きかな。 星条旗の裏にある真実と現実。 表向きの希望、その理想の裏でプロパガンダとして消えていった男たち。戦争に国も人も関係ない。 それぞれにしか解らない苦しみを抱えてみな生き、死んでいく。 英雄になったから何なのだろうと。そんな虚しさがこの映画から伝わってくる。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 18:18:15) |
566. ミリオンダラー・ベイビー
《ネタバレ》 前半は「鉄腕ジム」や「ロッキー」みたいなサクセスストーリーだが、終盤は今までの総てを破壊されるような、そんな哀しき決断が待ち構えている。 フランキーもエディも最初マギーの依頼を断るが、先に彼女に声をかけたのはフランキーが育てるボクサーのウィリーだった。 ウィリーが去ったのは自分の夢のためでもあるし、マギーをフランキーに育てさせようとしたのかもな。 しかし30代は男でも諦めるレベルだ。 フランキーは夢破れた者を余りに“見すぎた”。 エディの事があってやや過保護にもなっていた。だが、フランキーは勝負に出る。 ウィリーが出て行って吹っ切れたのか、あるいわ焦りでか。 フランキーは冷静な姿勢でマギーにボクシングを叩き込んでいく。 焦らず、氷を削るように確実に。二人は限界まで挑み続ける。 フランキーのアドバイスもあって勝って勝って勝ちまくる。苦戦はほとんどなく本当に「鉄腕ジム」を見ているような気分だった。 しかし、本物のボクサーと殴りあった彼女のファイトはリアリティがあり見応え充分。 強すぎて試合にならない、八百長ではなく「金払ってやるから試合しやがれ馬鹿野郎」料を払って戦う日々が続く。だからって挑発しすぎだフランキー。 それにしたってマギーの母親がクソBBAすぎる。 「いい男を見つけてまともにお暮らし」 「でも負けたんだろ? 残っているものを守らなきゃ」 言ってる事は正しい。でもうぜえええっ 傷ついた娘を見て一応は優しい言葉をかける両親。「娘を酷い目に遭わせて」とさぞかしフランキーを恨んだ事だろう。 フランキーもエディに当り散らすなど人のせいにしてしまいたいくらい自分を責める。 ラストは賛否があると思うが、俺はハッキリとマギーが「やって」と言ったのを覚えている。 体は動かなくとも心はまだ一人の人間、ボクサーだった。彼女は最後まで立派なファイターだったよ。 フランキーは、マギーの“遺言”を受け取り去っていく。 「カッコーの巣の上で」を思い出すようなラストだった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 18:15:19) |
567. イップ・マン 葉問
《ネタバレ》 「序章」も好きだけど特に「葉門」が一番好きだ。前作を見なくても存分に楽しめるぜ。 異種格闘技! 武術vs現代格闘技!! 鉄も砕く拳vs鉄以上に鍛え上げられた肉体!!! 中国4000年vsアメリカ200年!!!! 200年といってもヨーロッパ、アジア、アフリカといった様々な国のハイブリットだ。コイツは手強いぜ。 特にボクシングは中国武術同様に「大地を蹴る」スポーツ。タフネスとスピードなら負けない。 悪態ついて挑発するのは最早常識、それが火に油を注ぐこともまた常識ですねハイ。 異国に蹂躙され続けてきた中国だが、太古から受け継がれてきた武術を犯す事は何人にも出来なかった。 戦争も終わり、平穏を得てもまだまだ貧乏との戦いは続く。 最初のこの何処かほのぼのとした感じが好きだ。 道場や工場時代の同志が真っ先に駆けつけそうだけど、そんな甘くは無いか。 拳を通じて弟子や仲間が増えていく感じが良い。 脳撃たれようとも魂までは死なず。“蘇る”シーンには不覚にも涙が。 道場同士の争い再び、 包丁の峰打ち、 不安定なテーブルの上での激しい舞闘、 髪もフサフサ&リア充で幸せ者のカム、 そして動けるデブことサモハン・キンポーが老練な武術家として命を燃やすシーンには震える! 意地の張り合い、誇りを汚す奴は死んでも許さねえ。 蹴るな=ハンデですねハイ。 何度殴られダウンさせられようとも立ち上がる葉問。仲間のため、新しい命と共に待つ家族のために。鋼の肉体を打ち破る鉄の意思、鋼の精神。 「これはホン師匠の分!」とばかりに憤怒と哀しみ混じる撃拳、撃拳、撃拳連打!! 話の解るアメリカ軍は全アメリカ人の誇りです。 ラストにブルース・リー少年を出す憎い演出が良い。 欲を言えばキン・フーの映画みたいに女性武術家が大暴れするシーンも見たかったけど(「序章」で工場の女性従業員が戦ってはいたが)、それ以外は大満足です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 17:59:28)(良:1票) |
568. イップ・マン 序章
《ネタバレ》 キン・フー、ジャッキー・チェンと数々のカンフー映画の傑作群に武術指導をしてきたサモハン・キンポー。 ウィルソン・イップやドニー・イェンたちと組んだこの「イップ・マン」は、カンフー映画の最高傑作として長く語られ続ける事だろう。ブルース・リーも師事した伝説の拳法家・葉問(イップ・マン)の名と共に。 原点にして頂点、それが葉問だ。 戦争や権力者の圧力に屈しない武術を綿々と受け継いできた中国。 カンフー映画の肉が裂ける、骨が砕ける音、汗の匂いも同時に。 木人形を使った鍛錬から始まるファースト・シーン。 美味そうに飯を食べる葉問は、無用な争いは避ける男だ。 手合わせで技は教えても、殺してしまっては教えるものも教えられないし成長もできない。 だが、いざとなればリボルバーからシリンダーだけ外す事も、道場破りにきた野党をホウキでブチのめす事も朝飯前。 ホウキ買おうかな・・・。 頼まれれば武術指導も快く引き受ける。 「良い拳法は老若男女を問わない」 どんな敵でも怖くなんざねえ、仲間に手を出すやつぁ許さねえ、怖いのは嫁さんだけだ! 奥さん「物を壊さないで!(意訳:あとは勝手にしやがれ)」 殴り合いから斬り合いまでやるカム・サンチャウが良いキャラすぎて微笑ましい。殺しはやらないこだわりも憎めない悪党だ。 どちらにも付かず第三勢力として度々葉問たちに絡むのが面白い。 どんなに家が無くなろうが、食に困ろうとも、鍛錬を続ける拳と魂が腐る事はない。それが葉問。 戦争の無力感に苛まれようとも、彼は耐えて耐えて耐え、殴って殴って殴りまくる。 誇りを捨ててまで家族のため拳を振るうリュウ師匠もカッコイイ。彼も魂までは腐っちゃいない。 プライドまで捨てた武術家を侮辱する事は許さない。葉問の撃拳連打が十人の空手家をブッ倒すシーンはスゲエぜ。 どんな傷を負おうとも、その志は人々の中に生き続ける。 斉藤閣下も太っ腹です!形はどうあれ正々堂々と立ち会った閣下は偉い。 だが三浦のクソ野郎と階段で顔面砕かれた男はザマあかんかん。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 17:58:24) |
569. シンデレラマン
《ネタバレ》 実在したヘビー級ボクサー、ジェームス・J・ブラドックがどん底から再び蘇る姿を描いた伝記映画。 ロン・ハワードはどうしてこう伝記映画が面白いのだろうか。 題名とは対照的にシンデレラどころか落ちぶれた中年サラリーマンみたいな内容。 全盛期の華々しい試合場面から始まるファースト・シーン。 1920年代末期の狂騒的な空気、その後30年代の大恐慌の暗い空気。 一度の敗北で折れた魂、大恐慌の厳しい波が彼を窮地へと追い込む。 怪我に悩まされ選手生命もギリギリ、ライセンスを剥奪された事は幸か不幸か。 必死に金を稼ごうと仕事を探す日々。中には拳銃で「仕事をよこせ!」と行動するような人間も出てくる。 彼は仕事を求めて走る。ボロボロの肉体に鞭を打つが、仕事仲間や家族の存在が彼の心と身体を少しずつ回復していく。 酒にも煙草にも逃げなかった彼は立派だよ。 そもそもそんな金すら無いしね。 家族のためなら“負け戦”でも戦ってやらあ。たった1回のチャンスでも喰らい付く根性、ハングリーハート。 労働で“鍛え直した”ボディは伊達じゃない。 トレーナーも財産を削って彼を支え続けてくれた。 闘志は、蘇る・・・! 復活したブラドッグはオーナーの金儲けのための飼い犬(ブルドック)ではなくなった。 一人のファイターとしてどんな強敵にもブチ当たり、ブチのめす。 アバラが折れようとも闘志は二度と折れない。 殴られても歯を喰いしばって耐え、反撃に出るブラドックの姿には燃えるぜえ。ファイトシーンのこの熱さ! ブラドッグの姿に会長の心にも変化が現れる。 実在のマックス・ベアは奥さんを罵るどころか殺してしまったボクサー(映画では何故かもう一人殺害)への贖罪の気持ちで溢れ、試合後に相手の健闘を讃える真面目なボクサーだったそうだ。 本編はDQN熊vs不良オヤジのクライマックス。 未公開シーンも必見です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 17:57:22) |
570. メメント
《ネタバレ》 どうでもいいけど、「444」番目のレビューとはちょっと不気味。 最初出て来た1枚の写真。 何が起きているのか解らないと思っている内に、ポラロイドカメラ、男の死体、それを殺す瞬間と次々に逆再生で状況を伝えていく。 冒頭が語るように、「メメント」は逆再生の映画だ。 デビュー作の「フォロウィング」の形式に似ている。 主人公が何故その男を殺す事になったのか、そのキッカケは何だったのかを観客の視点で遡って行く。 電話の主が最後まで明かされないのも、観客がその正体を追っているためだろう。 一通り見た後、チャプターで最後からもう一度見返すのもまたこの映画の楽しみ方。 冒頭部分を「逆再生」して本当の順序を把握するのも一興だろう。 夥しいメモ、写真、肉体に刻まれたメッセージ、頭に残る記憶、記憶、記憶。 ある事件がキッカケで10分しか記憶が持たない状態になってしまった主人公。 彼のその“後遺症”に目を付け、複数の人間が彼を自分の私利私欲のために利用し、身を破滅させていく。 主人公が語るように、記憶は記録ほど正確じゃない。 かといって、記録もまた他者が手を加える事でどんどん正確じゃなくなる。 復讐を生きがいにしてしまった主人公。 それを利用する者も、彼に利用されていた事に気付く。誰かが気付いても、肝心の主人公はすぐに忘却。 嫌な事を忘れてしまうべきか、覚えておくべきか。 忘れたくても忘れられない人もいるってのに・・・便利なんだか不便なんだか解りゃしない。 だが、それでも体は反射的に“何か”を覚えている。 温もり、痛み・・・主人公が持つ“注射針”もそれを物語る。 彼の肉体に刻まれた記憶が彼自信の脳味噌を、魂を解放しない限り殺人は永遠に続いていくのだ。怖い映画だよ。 襲ってきた男をぶん殴って監禁した話も「誰だっけ」なんだぜ? 怖すぎて笑えねえ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 17:56:05)(良:1票) |
571. インセプション
《ネタバレ》 クリストファー・ノーランによる傑作の一つ。 夢の中で「これは夢だ」と意識をハッキリ保つ明晰夢。 その世界を詳細な設計までして自由自在に操ろうとする正に夢見たいな映画だ。 脳味噌だけ生きてさえいれば、その世界で永遠に生き続ける事さえできる。 だが、現実は常に動き続けけして止まる事はない。 人の夢の中に侵入して記憶を盗むという企業スパイたち。 作られた夢の世界と二重、三重の階層空間。深く潜りすぎれば心が死んでしまう。 階層事に感じる体感時間の違い。 現実と夢の狭間で行き交う人々、夢から夢へジャンプしていく無限の世界観。 コブは自分の罪と失った者の事をズルズル引き連りながら戦い続ける。 妻のための“インセプション(植え付け)”が仇となる罪の意識、夢と現実の区別が付かなくなる恐怖。 夢の中の過去を断ち切らなければ次に進めない。 自分の都合で仲間を危険に巻き込む危ない奴だ。 世界の運命よりも過去との決別。 そんなグラグラなコブを献身的に支える古女房のアーサーがカッコ良い。 イームスのオッサンも隠れ武闘派で頼りになるぜ。孤軍奮闘して仲間を守り作戦を遂行する頼もしさ! CGを協力抑えてこれだけの世界観を構築してしまうノーランは凄い。 雪山のスキーと銃撃戦の迫力、夢の中は何でもありだ。 コブは現実に戻れたのか、それとも・・・駒はあの後止まったのか、回り続けたのか。それは解らない。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-07 17:55:09)(良:1票) |
572. ジャージー・ボーイズ
《ネタバレ》 再見。 最初この映画を見た時は「イーストウッドの新作だ!」というだけで熱狂的に迎え入れていたが、今見返すと今作と「アメリカン・スナイパー」ほど退屈なイーストウッドの映画もないだろう。 これ以前の作品群と比べると照明にしてもストーリーにしても、何か毒が足りない。闇の中をもがくような恐怖と面白味をそれほど感じられないのだ。 それでもところどころの演出は流石イーストウッドと言ったところか。 イーストウッドはこの作品以前にも「バード」や「ブロンコ・ビリー」「ピアノ・ブルース」といった音楽愛に溢れた作品を幾つか撮ってきた。 この「ジャージー・ボーイズ」もその一つになるだろう。 四季(フォー・シーズンズ)を通して彼等の生き様を謳い上げたミュージカルの舞台を、歌をエネルギーにして伸し上っていく伝記映画にしてしまった。 同じく四季を通して描かれた「アマルコルド」も、ミュージカルから愉快なコメディ映画になった事を思い出す人もいるのではないだろうか。 この映画も、喧嘩や暗闇は多いがそれを吹き払うように歌って歌いまくり、照明も街の灯も彼等を照らすように明るい。ボーリング場のネオンも彼らに素敵な名前を送るために輝く。 舞台と同じように一人一人、四季に応じて御丁寧に自己紹介。 喧嘩も徒手空拳もセッションのうち、彼らが歌うのは警官の注意を仲間に向けさせないため、気になる彼女を笑顔にするため、老夫婦の眼に涙を与えるため、娘を安心させるため、二人のカップルの情事を祝うため、仲間たちを、みんなに笑顔を届けるため。 それは小さなバーで一人、二人の観客のために歌っている時も、ステージの大観衆の前で歌っている時も変わらない。 何度もブタ箱にブチ込まれようがめげない、ギャングだろうが警官だろうが屈しない! 久々にイーストウッドの平和で心温まる映画を見たかも知れない。 なーに、せいぜいショーウィンドウに突っ込んだり車内で脳天ブチまけたり食器や書類をブン投げるだけさ。 ビルを下から上へ撮り、そこに集うライバルたちを強調して彼等と歌で競い合う・・・そんな事を期待して胸を膨らませた瞬間が俺にもありました。 おっぱいを強調したジェーン・ラッセルみたいな女とも 口 づ け 一 つ で結・婚・式! ドッキリ大成功?よーしフザけんなブッ殺す。 イーストウッドも若返って一瞬だけ登場(「ローハイド」~)! [DVD(字幕)] 8点(2014-10-07 05:28:03) |
573. めまい(1958)
《ネタバレ》 ヒッチコック作品の中でも「サイコ」とこの「めまい」は毛色が違う作品のようだ。 螺旋を象ったオープニング、印象的な“眼”、ジェームズ・ステュアートが“めまい”の恐怖に捉われる経緯を語る一瞬の銃撃・死・恐怖で構成されたファースト・シーンから一気に引き込まれる。 とにかくこの映画、ひたすら“落ちる”。 冒頭からステュワートが落ちそうになるし、ノヴァクは水に飛び込むわ夢の中まで落ちて落ちて落ちまくる。 かつての婚約者であるミッジの家でのやり取りもそそる。 ステュワートがイスを登るだけでもスリルが発生する凄さ。窓の外を見た瞬間の、あの血の気が引く感じ。 ヴェラ・マイルズの「めまい」も見たかったけど、やはり本作のキム・ノヴァクの存在感は圧倒的。 彼女を車でジリジリと追跡する瞬間の異様な緊張感。 下手に車を猛スピードで走らせるよりも、こういう慎重かつ徐々に敵を追い詰めるようなスリルの方が何倍も怖い。「恐怖の報酬」しかり、「探偵学入門」しかりしかり。 突然ノヴァクが消える瞬間も息を呑む。 この間一斉セリフが無いのも凄い。映像だけで一切退屈させずに観客を引き込むのだ。 「セリフの入らない映画こそ本物」なのだろう。 ステュワートが出会う彼女は得たいが知れない上に「カルロッタ」の記憶とやらを引き継いでいるらしい。彼女の混乱は観客も混乱させる。ノヴァクの夫も何か臭う。 デヴィッド・O・セルズニックと組んだ「レベッカ」も亡き人間の亡霊が人を操るような演出だったが、このヒッチコック“による”「めまい」は生存する人間が亡き人間の亡霊を操る。 ヒッチコック本人は死んだ人間の真似をする事を「屍姦」と言ったらしい。 生前の人間とそっくりの格好、そっくりの仕草をしてその女性の名誉を辱めようとする行為だからだろうか。 まあ、「カルロッタ」との長々しい接吻、何度もブッ“殺す”結果は死姦に等しい行為なのかもな。 セコイアの木は「ラ・ジュテ」や「12モンキーズ」でも引用される。 この作品はまるでタイムスリップするような感覚を登場人物が語るが、後年の上記2作は本当にタイムスリップしちゃうんだから凄い。 終盤のどんでん返し、明かされる真実、ステュワートまで狂気に染まる怖さとアニメーション、蘇る「カルロッタ」、衝撃的な“オチ”…賛否はあるだろうが、とても好きな映画。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-06 20:08:01)(良:1票) |
574. セブン
《ネタバレ》 この映画はある意味ハッピー・エンドなのかも知れない。 フリッツ・ラングの「ビッグ・ヒート」にも通じる部分がある「犠牲と心境の変化」。 フィンチャーは「ゾディアック」とか00年代の作品の方が好きだが、彼の最高傑作を1本選ぶならコレになるだろう。 市川崑と宮川一夫の「おとうと」の頃から銀残しという演出は使われてきた。 非常にコントラストの強い画面は、見る者に閉鎖的な息苦しさを与える。 この映画に描かれる下品さ、人間の汚れた部分を徹底的に見せる映像には嫌悪感を覚える者もいるだろう。 だが、人間の心理に向き合わせようとする物語・・・アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの哲学を絡めた見事なシナリオには唸らざる負えない。 それに美しいシーンもある。 莫大な情報が眠る夜の図書館の静寂とかさ。 凶悪な犯罪や殺人が耐えない現代社会。 サマセットはそんな世の中に嫌気が差していた。定年を迎え辞めようという時に起きた「七つの大罪」になぞらえた連続殺人。 奴は何故殺人を繰り返すのか、それが徐々に浮き彫りになっていく。 殺人犯の説教なんてクソ喰らえだ。 大量かつ複雑な情報をコンパクトにまとめてしまうフィンチャーは正に職人だ。 サマセットとミルズは早く平和な家に帰りたがっていたが、殺人を止めるため、「安心して子供を産める世の中」にするために犯人と戦う覚悟を決める。 サマセットは、ミルズの妻とそのお腹の中にいる新しい命に触れる事で「人を信じてみたい」と希望を持ちはじめる。 最後の戦いの前にフル装備で身を固めていくシーンのワクワク感は何なのだろうか。 それを絶望の淵に叩き落すのだから油断できない。 結末は残酷なようにも思えるが、ミルズの表情に“憤怒”は無く、かといって“哀しみ”にも染まっていなかった。 勝ち負けではない。 「もうこれ以上犠牲者を出さないためにも・・・このクソ野郎は俺がブチ殺す」という冷静な戦士の表情だ。 車の中で贖罪を求めていた筈の彼が、警官として責務を負う覚悟を決めたのだ。例えどんな絶望が待っていようとも。 フィンチャーが“アレ”を見せなかったのも俺は気になる。 実は犯行にはおよんでいなくて、警官に嫉妬する自分と憤怒にかられた刑事を“精神的”に殺そうとしただけだった可能性もあるのではないだろうか。 俺はそういう結末があっても良いと思うんだ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-05 22:04:33) |
575. イングロリアス・バスターズ
《ネタバレ》 タランティーノ流「地獄のバスターズ」×「特攻大作戦」 眼には眼を、歯には歯を、虐殺には虐殺を。 冒頭の床下への“死刑執行”、死刑執行人(ハングドマン)たちに復讐を誓う少女。 タランティーノの長回しは、眠ろうとする瞬間に叩き起こすような溜めに溜めて溜めた破壊力を味あわせてくれる。 マカロニウエスタンのような西部劇かと思えば、エルンスト・ルビッチのような洒落たコメディになったり、最後の最後でロバート・アルドリッチの最高にゲスい戦争映画になったりと。 とにかくブッ殺してブッ殺してブッ殺しまくる戦争復讐活劇「イングロリアス・バスターズ」。 戦いに卑怯もクソも無いぜヒャッハーってとこが好きです。 女性陣も最高にビッチで素敵ですね。 ナチスに虐殺された者達のために自らブッ殺し返すバスターズたち。 死を恐れない彼等はどんな死地にも飛び込む。 一方、復讐を誓う娘もまたその時を待って待ち続ける。 映画という大衆の心に火をつける火薬、復讐を望む2つの火薬、3つの火薬がクライマックスで木っ端微塵に炸裂する瞬間は凄まじい限りだ。 クリーム・ブリュレに煙草捨てるようなクソ野郎は死んで当然(意味不明)。 食い物の恨みが加算されました。 黒人の話は後の「ジャンゴ」に繋がる部分。 指やアクセントの違いで正体がバレてしまう瞬間の戦慄、一瞬で終わる銃撃戦の破壊力!! 皆さんもその国の習慣と発音だけは正しく覚えましょう。 G.W.パプストが出るならこの映画の元にもなったエルンスト・ルビッチやフリッツ・ラングの話題もして欲しかったというのは欲張りか。 「国家の誇り」撃ちすぎバロス。 まさかゲッペルスやヒトラーまであんな事やこんな事になっててクソワロタ。 歴史的に全滅だから結果オーライ!! 最初から最後まで退屈させてもらえなかったぜ。タランティーノ本人は長い間暖めた最高傑作といっている。俺もそれくらい好きな映画だ。 少なくとも「キッド」がチャールズ・チャップリンの最高傑作の一つである事は確かだぜ。 ・・・え? 何でチャップリンが出てくるんだって? それが知りたきゃ、映画館の前で女性をナンパするドイツ兵の声を聞きにこの映画を見やがれっ! [DVD(字幕)] 9点(2014-10-05 17:42:22)(良:1票) |
576. ラストエンペラー/オリジナル全長版
《ネタバレ》 ベルナルド・ベルトリッチの最高傑作は「暗殺の森」や「1900年」だと言われているが、やはり一番好きな映画はコレになるだろうか。 こういう歴史ものって退屈な映画が多いけど、コレは一切退屈しない、とにかく面白い映画だった。 最後の皇帝・溥儀の人生を描いた壮大な歴史絵巻。 セルジオ・レオーネの「ウエスタン(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウエスタン)」の脚本を務めたその壮大さ、そして溥儀をめぐる様々な女性の物語。 坂本龍一の音楽が彩りを添える。 列車、人の群、自殺を図る謎の男・・・どうやらこの男が溥儀らしい。 物語は、第二次大戦後に連行された溥儀の回想と現在が交互に描かれる。 授乳中に連れて行かれたり、幼い溥儀に説明する人間が説明後に絶命とか・・・どういうシーンなんだよ。 やんちゃ坊主な幼い溥儀は気味の悪い宦官共を遊び相手に退屈な日々を過ごす。 紫禁城で鬼ごっことかスゲーな。 中々乳離れできない溥儀。何あのプレイうらやま(ry イッキ飲みならぬインキ飲み。 この頃中国の支配を目論む軍とは見せかけの“共和国”。 生みの母親よりも育ての母から貰っていた愛情・・・「アーモ」と別れるシーンは不覚にもウルッとしてしまった。 知識を得ながら成長する溥儀だが、井の中の蛙は大海という外の世界では王でも何でもない。 だが溥儀は外の世界を見たくてしょうがない。 ピーター・オトゥールの大佐との日々は微笑ましく進む。自転車で走るシーンは印象的だ。 中佐の次は大佐ですか、出世しましたな“ロレンス”さん。(イギリス違い) 初夜のお相手は積極的にキスしまくりなモダン女性。シーツの裏でナニしてんでしょうね。 宮廷を追われる溥儀は関東軍と結託して満州国の王の座に。操り人形にされているとも知らずに・・・。 踊らされる溥儀、壊れていく女たち。 NTRしたドライバーを消すシーンは「暗殺の森」を思い出す。(アッチよりも短く、かつ過激に) 過去の栄光と現在の何もかも失った虚しさが重なる瞬間・・・。 ファックオフはコッチのセリフだぜ毛沢東のハゲ野郎!テメエが雀ブッ殺しまくったせいでイナゴ大発生で国民飢え死にだよクソバカヤロウがあっ!あの野郎には地獄すら生ぬるい。 だが、時代の波に流されてきた溥儀は少年に“コオロギ”を渡して去っていく。 自転車にはじまり自転車に終わる。つわものどもの夢のあと・・・。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-05 04:39:48) |
577. 死霊館
《ネタバレ》 「SAW(ソウ)」はあまり好きじゃないけど、この「死霊館」は別格、もう大好きスンゲー面白い。 ブッチぎりでジェームズ・ワンの最高傑作っす。 悪魔祓い(エクソシスト)を題材にした作品といえばウィリアム・フリードキンの「エクソシスト」があるが、ワンのこの映画はそれを遥かに上品にして、本当に怖いほど面白くした傑作だ。 まず「資料館」を「死霊が巣喰う館」的な感じにかけた邦題が気に入った! アメリカの有名な超常現象研究家であるエド&ロレイン・ウォーレン夫妻が「実際に体験」したという出来事をベースに造り上げられた本作。 何処まで本当か解らないが、全編リアリティと緊張感のある演出が素晴らしい。 ファーストシーンの不気味な人形のクローズアップ、夫婦が怪奇現象を解決する場面から物語は始まる。 妻は霊感があり霊の姿がハッキリ見えるという。霊との戦いで命を削る妻、それを献身的に支える夫も様々な研究に通じる。 今回描かれるエピソードは、その中で最も凶悪な事件だったらしい。 郊外の古い館で起こる様々な怪奇現象、ポルターガイスト、徐々にエスカレートし命をおびやかす恐怖。 “警告”が“虐殺”になるまで恐怖をどんどん練り上げていく。 一斉に落ちる額と一瞬聞こえる子供の笑い声、閉じたり開いたりするドア、ドア、ドアの恐怖。 「ナウい」とか言っている場合じゃねえ。 「タンスにゴン」はちょっと可愛い。 目隠しのかくれんぼとかマジで怖ええよ。母親が階段から脚を滑らせて落ちんじゃないかと怖かったよ。 しかしホラー映画の階段て何でこんなに怖いのだろうか。 「疲れて初夜は無理?」 子供5人も生んどいてまだまだですか、凄い体力。そのパワーを利用されようとは恐ろしい。 UVライトが照らし出す足跡、“落ちる”瞬間は霊の仕業か単なる老朽化か解らない。 でもせめてマスクくらいしようぜ奥さん・・・。 ペンダントに触れただけでその家族にまで攻撃を加える怖さ。魔女怖すぎ。 ラストバトルもスリルの連続でメチャクチャ面白かった。最高。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-05 04:08:01) |
578. ウルフ・オブ・ウォールストリート
《ネタバレ》 「タクシードライバー」や「グッドフェローズ」「キング・オブ・コメディ」と数々のブッ飛んだギャ(ン)グ映画を撮ってきたスコセッシだが、スコセッシ、いや映画史上に残るギャグ映画がここに誕生した。 「タイタニック」の頃は歩くだけで一面に薔薇が咲き誇るような美少年だった刑事プリオ。 そんなプリオも、今ではアヘ顔とドヤ顔入り混じる表情でマシンガン(ファ●キング)トークをぶちまけ、ウォール街を暴れまわるヤリ(チン)手の不良実業家となってしまった。 セールストークという名の株の陵辱プレイ、破廉恥な実業家がウォール街の頂点に絶頂するまでを描いた凄まじい映画だ。「鉄腕ジム」のような破壊的な爽快さ、「白熱(1949)」のような破滅的にブッ飛んだ内容。 これがほぼ実話何だからオーマイガ。 「暗黒街の帝王レッグス・ダイヤモンド」よりもフルスロットルでストーリーは進む。 「暗黒街の顔役」における妹に欲情とかそんなレベルじゃねえ。 コイツは正に「ソドムとゴモラ」だ! 劇中のジョーダン・エロフォートは、鉄砲ではなく舌先で金を持って人々を(社会的に)ブッ殺したり犯しまくるマフィアよりもタチが悪いファ●ク野郎。 「タクシー・ドライバー」もここまで狂って無かったぜクソ●タレ。 つうかどんだけF●CK FU●K FUC●って言うんだよ。 「パルプ・フィクション」や「スカーフェイス」よりも●UCKがゲシュタルト崩壊していやがる。 いやいや、この作品に比べたら序の口レベルとしか思えないほどだ。 ディカプリオはヤクを吸ってはF●CKと吐きまくる。FU●Kのゲロ河。医者も黙って首を横に振るレベル。 ヤクでラリッたク●野郎共のハイテンションな下品さが、逆に心地良く感じられる領域に達してしまっている。 「タイタニック」のローズも、船の上でゲヒャヒャヒャヒャと笑うプリオを見たら速攻で彼を海に沈めるだろう。 コイツ…船の次は飛行機を墜落させる気か。 スコセッシは溜まりに溜まった映画魂を映画というマシンガンで全国のフ●ッキンクライストな観客共を狂気と笑いとFU●Kで孕ませて腹筋を破壊しなければならないようだ。 だが、スコセッシはけしてオ●ニー映画を撮らない。 そんな最高にクソ●タレなスコセッシよ、これからも頑張って最高にF●CKYOUな映画を撮り続けて欲しい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-10-01 18:36:00)(笑:1票) |
579. 三里塚 辺田部落
《ネタバレ》 小川紳介のドキュメンタリーは傑作が多いが、この「三理塚」シリーズの辺田部落も凄い。凄すぎる。 自分達の仲間や先祖が眠る共同墓地が他者に蹂躙されるのではないか、“奪われる”のではないかという恐怖、警官に逮捕され何をされるのか解らない恐怖、恐怖、恐怖。 権力に挑む農民たち、人間同士の魂のぶつけ合いを捉えてきた本シリーズだが、不当な弾圧や村を引っ張る若き青年団の逮捕、時期的にも厳しい冬場と次から次に問題が起こる畳み掛け振り。とても苦しい1年間を2時間強に収めた監督たちは凄い。 何せ人々の闘いを捉え続ける傍ら、小川プロも資金不足やフィルムのやりくりでどうにか撮影を続け作品を完成させていたのだから。 NPRという機械、それに1950年代頃から映画史の舞台裏を支える事になる「ナグラ」を揃える事で可能となる同時録音のシステム。撮影された70年代、「ナグラ」はまだまだ高価な機材だ。 人々が同時に語るシーンで、その威力は大いに発揮されている。 農民たちの執念を、小川プロも執念で応える。素晴らしいです。ドキュメンタリーってこんなにも血が通っているのかと感動しました。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-30 22:08:15) |
580. ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
《ネタバレ》 トム・クルーズが立ち上げたこのシリーズは今までブライアン・デ・パルマ、 ジョン・ウー、 J・J・エイブラムスと名立たる監督が手掛けてきた。 特にこのブラッド・バードが手掛けた4作目は最高傑作になるのではないだろうか。 ブラッド・バードとエイブラムスが組んだ「ゴースト・プロトコル」は、トム・クルーズにとっても最高の1本! 「Mr.インクレディブル」を初めとする数々の傑作アニメーションを手掛けたバードの演出が冴え渡る! とりわけバードのアニメーションを意識した演出は、「カリオストロの城」といった縦横無尽なアクションとパワーを感じさせるほどだ。 ビルを上から上に登ったかと思えば、下から下へとガラスの壁を這うように動くトム・クルーズ。 ロック・クライミングなら岩を掴めば済むし、ハロルド・ロイドの「要心無用」も窓の手すりを掴めば一安心。だが、全面ガラス張りの窓を割れば速攻で水の泡。 片手でぶら下がるシーンの絶望感、そんな場面なのにトムがいるだけで何故か物凄く安心してしまう不思議。 初代の「M:I」にあったシリアスな空気は何処に消えてしまっただろうか(良い意味で)。 トムが車ごと落下するシーンにしたって、起爆装置だけを奪い合う殴り合いにしたって、まったく余りに馬鹿馬鹿しくて逆に超清清しかったぜチクショウ! この映画は落ちるシーンが多いね本当。 偽の映像で見張りを突破するコミカルなシーンや、 駐車場でのアクション、 女性陣の殴り合い、 砂嵐が迫る場面の緊張とスペクタクル等々「スパイ映画の無駄なスケールのデカさ」はどうしてこうも楽しいのだろうか。 ラストで「さあ次は何処へ行こうかと」意気揚々に次の戦場へと赴く表情、そして愛する者のために何処か孤独に戦う哀愁も感じさせる後姿が良い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-23 22:39:41)(良:2票) |