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41.  かもめ食堂
おにぎりを握る、ちゃっ、ちゃっ、ちゃっという音、フライを揚げるじゅわ~っとジューシーな音。さくとん、さくとんと鳴る包丁とまな板のリズム。料理の載ったお皿をテーブルに置く、ごとっという音。それらを聞かせるために、料理中はBGMを排除していたようだ。小林さんの美しい手の動きとこれらの音を楽しみたくて、またこの映画を見たいと思ってしまう。同じく食べ物を扱った癒し系「ショコラ」では、視聴したあと特にチョコレートを食べたいとは思わなかったが、今回は黒い海苔を巻いたシンプルなおにぎりが無性に食べたくなった。それと何より、箸とおにぎりに何の違和感もなく食事を楽しんでくれるフィンランド人のお客の姿が日本人として嬉しくて、最高の癒しになった。
[DVD(字幕)] 10点(2010-03-17 10:41:38)
42.  阿弥陀堂だより 《ネタバレ》 
癌の痛みからどうしても伏していられず、それでも座して騒がず、妻に死期を悟った挨拶をする。幸田の潔い姿に、さすがに刀を所持していただけの侍魂を持っていると感動した。一瞬泣きくずれそうになった妻は、夫の死の覚悟を乱さぬよう必死で耐えて、やがて座りなおすのだが、その一過程がたとえようもなく美しい夫婦愛に見えて、侍とその妻の美学を感じた。外国人は刀やちゃんばらに熱くなるけれども、侍のスピリッツがあって初めて美学に通じるものだとは、なかなか分かってもらえないだろう。強ければいい、かっこよければ全てよしだから、例えば、淋しいけれどもモンゴルの人たちは朝青龍引退の件に対して反日感情を募らせるのだし、彼らがこのシーンを見ても、どうして妻が泣き崩れないのか理解できないだろうと思う。また、人の顔をアップにして必要以上に喜怒哀楽を強調せず、かなりカメラを引いて遠巻きから人々を映している。その姿勢には、監督の誠実さを感じずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2010-03-14 14:58:35)(良:1票)
43.  フィクサー(2007) 《ネタバレ》 
人物の相関図がほんとややこしくて、2度見てどういうドラマかやっと分かった。 だけど、アーサーの長々としたセリフが、かなりすごい。たくみに、狂人のたわごとに見せかけていながら、実は、恐ろしい事実をちゃんとしゃべっているという、このセリフマジック!「天才と狂人は紙一重」という真実を利用して仕掛けた伏線だったとは。一度全ての事情を完全に掴んでしまってから、つまり、アーサーは、「躁うつ病だった」という先入観を完全否定してから、改めて再度視聴すると、アーサーの全セリフが、面白いほどすらすらと解読できてしまう。この感覚は、急に暗号が解けて文章が解読できるというか、全く聞き取れなかった英語が、突然日本語になって耳の中に飛び込んでくるというか・・・・・・。と同時に、急にマイケルにイライラしてくる。「何て鈍いフィクサーだ、必死でアーサーが説明しているのに」と。(でも、最初は私も確かにマイケルと同じ立場だった) 一度先入観が解けてしまうと、二度とアーサーの支離滅裂ぶりを味わえない。一言一句、まともに聞こえてしまう。では、なぜ一度目の視聴のときに、彼の演技が本物の躁うつ病に見えたかというと、「彼はふだんから薬を処方されていた」という設定があったから。マイケルはしつこいほど、「薬を飲め」「薬を飲むのをやめるときは」と強調する。これは脚本家の巧みなテクだと思う。2度目の視聴ではっきり分かる。アーサーが自分で壁に書いていたように、彼は精神など病んでいない、と。それにしてもトム・ウィルキンソン、台本を見て卒倒しなかったろうか、そう状態でしゃべるセリフだから、饒舌になるのも無理ないけど、古畑任三郎どころじゃない早口で、何ページ分もの量を一気にしゃべる、あれは撮影も、声優さんも大変だったんじゃないかと。クルーニーの相槌のタイミングがちょっとでもずれてNGが出たとしたら、そのときのトムの落ち込みようが目に見える(笑)。また、この作品は二度失笑するシーンがあった。1つ目は、アーサーが「フル・モンティ」のジェラルドよろしくいきなり服を脱ぎ出したとき。2つめは、「オーシャンズ11」の時限爆弾のドジを彷彿させる殺し屋たちのミスで、クルーニー自身が命拾いをしたこと。(オーシャンズではクルーニーがドジったのだった)「フィクサー」はコメディではない、と言い聞かせながらも、つい笑ってしまった。
[DVD(字幕)] 10点(2009-09-29 00:02:26)(良:1票)
44.  日本の黒い夏 冤罪 《ネタバレ》 
なぜ高校生たちがテレビ局を取材するという形をとったか、わかる気がする。この事件は警察はもちろん、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ等あらゆる媒体が起こした冤罪事件なので、糾弾すべきプロのジャーナリストを設定することができなかったのだろう。唯一声を大にして批判できるのは、次の時代を担う未成年者だ。しかし、俳優陣はそのため子供たち相手に噛み砕いた口調でセリフを投じなければならず、大人対子供という見苦しい葛藤になるなど、どうしても迫力がそがれ、倫理か道徳の授業素材のような作品になってしまったのでは。だからこそ、高校生を配慮する必要のなかったラストの事件の再現シーンは、監督の本領発揮で、鳥肌が立つほど恐ろしかった。ただ、真犯人が公表された瞬間、冤罪に関わったジャーナリストたちの血の気の引いた表情を生々しくアップで写して欲しかった。自分たちの使命やら信念やら、全てが覆されたに等しい瞬間。自分の声や姿が、公共放送にのって個人を犯人に仕立て上げてきた。それはビデオ録画されれば一般家庭ですら記録として簡単に残ってしまう。現場の人間にとっては相当な恐怖だったろうと思うのに、この作品ではその痛手が弱かったように感じる。「赤信号、皆で渡れば怖くない」ではすまされない。マスコミや簡単に煽られる世間一般ともに、強く恥じ入らなければならなかった事件なのだから。
[DVD(邦画)] 5点(2009-09-28 19:26:50)(良:1票)
45.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
 美しい絵も、話の尊さも、音楽のすばらしさも一応わかる。それでも全編に漂う偽善の匂いにむせ返りそうだった。監督がごっちゃにしているものが2組ある。まずは、大人と子供。魔法を見ても子供の心を忘れていないといわんばかりに、全く動じない大人たち。子供が望めば、ものわかりがよく全て受け入れ、いつもにこにこ笑っている。ちょっと意地の悪い老婦人以外は全員神の国の住人みたいだ。それは、大人と子供の世界をきっちり分けて描いたトトロ、またはハイジと決定的に違う。このお話は、過剰なまでに子供の世界に大人が入り込んできているため、登場する大人たちはみな幼稚に見えるのだ。さらに、宗助が母親以上にしっかりしている点も、大人と子供の境界線があやふやに。友達のような親子関係は問題が大きいから、あまり今の親や子供たちに推奨してほしくない。  2つ目は、現実と幻想の区別。そもそも、オーソドックスの人魚姫の方がよほど心に食い込む力を持っていると思う。なぜなら世界中の誰もが、この童話のテーマは無償の愛だと一言で説明できるからだ。でも、このぽにょは? 会いたくてたまらないから津波を起こしてでも宗助に会いに来た、という我儘ながらも愛くるしい一途な気持ちをテーマにするなら、津波はラストにもって来るべきだ。宗助の家に上がりこんで、現実とファンタジーをごっちゃにした辺りから、恐ろしく退屈になった。会えるか会えないかで、さんざん気を持たせてくれた方がきっと集中できたし、話の流れが分かるから退屈せず、ラストの感動も大きいというものだ。最近の宮崎さんは、話を必要以上に複雑化しすぎる。子供を対象にして作ったというなら、手塚作品のユニコのようになぜ極力シンプルにしないのだろう。この作り方は、やはり大人の視聴もほしかったのだと思う。
[DVD(邦画)] 3点(2009-07-20 10:05:16)(良:2票)
46.  蟲師
数話アニメで見た程度の先入観でこの作品を見た。やっぱり音楽が神秘的。幽玄の世界というか、あるかなきかの微かな気配を音楽に直して表現しているという感じ。妬みや憎しみ、執拗な愛情など疲れる対人感情は扱われていないから、確かに癒された。しかし、原作を読んでないから、相関関係のややこしい複数のキャラが過去と現在を行ったりきたりすると完全にお手上げ。またギンコのイメージが悪かった。アニメの中でいい味を出していた、あのひょうひょうとした軽さがなくて、妙に重たいし。成人して妖怪度の落ちた鬼太郎が背負子(しょいこ)を背負ってる姿にしか見えなかった。あれは辛い。(ぬいは砂かけ・・・いやもう書くまい)
[DVD(邦画)] 4点(2009-05-12 11:12:30)
47.  カポーティ 《ネタバレ》 
冒頭からひどい皮肉をとばすトルーマンを見て、「性格の悪そうな作家だなあ」と引いてしまったが、事件の取材で、いとも簡単にナンシーの親友から彼女の日記、捜査担当刑事から捜査ノート、犯人のペリーからは日記の提供を受けるのに驚いた。信用がなければ決して人にゆだねることはできない個人的な資料ばかりだ。また、仕事の名誉欲はある、しかし人並みの情もあり、ペリーの死刑を望むべきか否かで苦悩する羽目になるトルーマンの人間臭さに恐れ入った。まるで人間の不合理さを絵に描いたようだ。「もう1人の自分」であるペリーが目の前で処刑され、彼の精神的な何かが一緒に壊れてしまった気がする。自分が処刑されたような自己暗示にかかったのかもしれない。もしペリーがトルーマンと生まれ育ちが全く違い、被害者に対する奇妙ないたわりを見せず、単なる残虐非道な人物であったら、「冷血」以降も作家はペンを取り続けただろう。私には途中からペリーとトルーマンがドッペルゲンガーの関係に見えた。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-22 21:07:03)(良:1票)
48.  4分間のピアニスト 《ネタバレ》 
 厳格な老教師と手のつけられない攻撃的な少女のこのコンビは、まるでサリバン先生とヘレン・ケラー。ジェニーが彼女のやせた頬にいきなりキスをするシーンが目にこびりついている。手錠をはめられたまま、腕の中に彼女を入れてダンスするシーンも。  ラストの前衛的なピアノ演奏は、絵画でいうところの抽象画というか、彼女の心象風景をピアノの音に変えたものだと思う。足で器用にスツールを引き寄せながらの演奏はかっこよかった。あの4分間は、ジェニーにとってピアノの腕だけを披露するのではなく、自己証明でもあったはず。メロディに乏しい無機質な、エネルギーのほとばしるあの曲は、私は正直すばらしいと思った。手錠をかけられながら、「どうだ」といわんばかりのジェニーが、悲しくも美しい。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-19 11:25:42)
49.  ラスト サムライ
あちらの国の人たちが日本を愛してくれる気持ちはとても嬉しいのだけれど・・・・・・あまりにも日本を美化しすぎていて、気恥ずかしくて見ていられなかった。西洋風の上着、ズボン姿の官軍に、戦国時代の武士軍団なんて・・・・・・真田さんなんてバイキングかと思うようないかつい兜かぶってるし(涙)、あまりにもミスマッチで、逆に「侍」の時代錯誤っぽいダサさが目に付いて辛かった。ふつうの時代劇を見ている方がリラックスできたかも。強引に「武士道」に感動させようという狙いが強すぎて、かえってこちらは引いてしまった。昔見た「将軍」という三船敏郎のドラマが懐かしい。
[DVD(字幕)] 3点(2009-04-13 15:30:11)(良:1票)
50.  007/カジノ・ロワイヤル(2006)
ボンドが「Mというのは」と切り出したところ、「それ以上続けたら殺すわよ」と言ったM。ボンドが彼女のプライベートの部屋を出入りし、彼女の叱責を感情的にならずに受け止め(むしろ叱られるのを望んで彼女の元へ戻るような気も)、「この仕事は早死にする」と甘えたことを言ったりし、危機に陥ればコンタクトを取り、「敬愛するM」と呼ぶ。MとはMotherの頭文字の意味もあるかも。それにしても、こんなに母性本能をくすぐられる007も初めて見た。
[DVD(字幕)] 9点(2009-04-12 11:23:26)
51.  ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 
ダニー・アーチャー(ディカプリオ)もほとんど少年兵に近い。彼が最後に人間性を取り戻したのは奇跡に近い。ソロモンの息子が父親に諭されて我に返るシーンと連動している気がする。
[DVD(字幕)] 9点(2009-04-12 11:13:51)
52.  死ぬまでにしたい10のこと 《ネタバレ》 
夫以外の人とつき合ってみること、自分に恋に落ちるよう誰かを誘惑すること・・・・・心優しいアンの最後の冒険と思えば、夫や子供たちにとっては大きな裏切りだけど、自然と許してあげたい気持ちになった。死ぬ前にしたいリストに何の毒も含まれず、優等生が書くような完全無欠のものなら、逆に映画にする必要はないのでは。人間には矛盾がつきもので、理性では抑え込めない情熱を欠いてしまっては、魂の抜け殻だ。雨のシーンが多いのも、先の短い彼女の命がみずみずしく画面に映えて、切なかった。彼女に都合のいい話の進行も気にならないくらい、理屈ではなく感性で視聴できた。ある意味、癒し系の映画だったと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-06 17:02:45)
53.  オープン・ウォーター2 《ネタバレ》 
 溺れる心配の無い室内で視聴していれば、つっこみどころは満載、彼らのおバカぶりに呆れるほかないが、決して海に入らない女性が船上にいるとわかっているから、4人のうち少なくとも夫は安心して梯子の有無など確認しなかったのだし、前作と違って全員素泳ぎ。体の冷えはすぐにくる。携帯の奪い合いも、彼らがスーツやボンベを背負って浮きやすい状態でいたなら、あんな愚かなパニックは起こさなかったろう。立ち泳ぎで体力の尽きる不安、冷え、船内に乳児、怪我人続出など、経過時間に脅かされれば、視野や思考回路も狭くなる。落ち着いて考えれば安易に見出せる救出法や、体力維持の方法も、助かりたい一心で闇雲にもがけば何も見えなくなってしまう適例だと思う。これを海難事故と限らず、人ごとと思わずに、自分が生死を問われるような立場におかれたとき、どれほど落ち着いて行動できるか、ふだんから考えておくべきだ。  しかしこの海難事故の最大の原因は、「海は危険だ」という認識を持って、航海を終えるまで気を抜かず常に緊張感を保っているべき人間が、ヒロイン以外誰もいなかったことだ。たとえ梯子を下ろしていても、万一にそなえ全員が海に入るべきではない。船上に唯一上がれたのが彼女だったのも、感情的に納得できる。(しかし、乳飲み子を抱えた船上のレクリエーションなど、私なら絶対に避ける!)
[DVD(字幕)] 7点(2008-12-08 09:56:59)(良:1票)
54.  オープン・ウォーター 《ネタバレ》 
最初に出てきたクラゲでぞっとさせられたが、これが序章だったとは。波酔い。冷え。空腹。脱水症状。痙攣(こむら返し)。眠気。雷鳴とどろく夜間の恐怖。サメの被害に到達するまで、こんなに試練があったとは! 海に漂う恐怖を思い知らされる。地上(屋外)でひと晩過ごすにしても、これほど体力が消耗することはないだろう、つくづく人間とは陸上の生き物なのだ。ラスト近くで地上の映像が少し出たが、どれほどほっとしたことか。それに、天を覆う雲が気になって仕方がなく、時間の経過を示す数字と、次第に黒ずんでゆく空の陰りに、「こんな状況で夜になったらどうするんだ!」とずっとハラハラさせられた。 特に音楽もないし、技巧的なものを極力排して撮られているので、もの足らない人もいるだろうが、漫然とした時間の経過がいかにも本物の重み、凄みがあって、ドキュメントタッチの方が私には数段怖い。目前の他人の災難をどうすることもできず見ているしかないという疑似体験になった。船を返す前に、ボンベの数を確認しなかったインストラクターに心底腹が立つ! 実話ということだが、被害にあった人があまりにも気の毒で胸が痛い・・・・・・
[DVD(字幕)] 9点(2008-11-24 13:46:48)
55.  スパイダーマン3 《ネタバレ》 
何十回致命傷を負っても不思議じゃない戦闘をあれだけやって、親友をかばったときだけ助からないって、それはあまりにも恥ずかしいのでは。いや、そもそも何が辛いって、コスチュームの脱ぎ着を披露されること。頭は平凡な男性、首から下は蜘蛛男だなんて、公私(ヒーロー&凡人)混同も甚だしい。アクションショーをする俳優は子供の前で脱ぎ着を見せちゃいけないっていわれるけど、自分もそういう不細工なとこは見たくない。コスチュームって、単なる衣装じゃまずいわけで、日常臭さをまきちらされると、神聖さが感じられなくて本当に白ける。アメリカのかぶりもののキャラクターって平気で観客の前でコスチュームを脱ぎ着するけど、違和感ないのかな。
[DVD(吹替)] 3点(2008-08-14 16:33:21)
56.  ニコラス・ケイジの ウェザーマン 《ネタバレ》 
主人公は気が小さいために細かいことにこだわりすぎて、かんしゃくもち。しかし彼は自分の家族も父も、つまりメインキャラクターを全員深く愛している。決して自分1人だけでなく「皆で幸せになろう」と必死でもがいている不器用な彼がいじらしい。家族なしで大金を得ても仕方がない、という彼の価値観もほほえましい。実際、人生は予想のつかない天気予報のようなものだ。誤報だろうが当たろうが、結局人間は生きていくしかない。しかし主人公の父親の葬儀のシーンを見ると、少なくとも「人生はクソだ」とは思えない。ほろ苦い、微妙な人生観を皮肉とユーモアでつづった、主旨のぶれないいい映画だったと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2008-07-27 09:23:02)(良:1票)
57.  アザーズ 《ネタバレ》 
娘はいい子を装って母にこびることなく、言いたいことを正直にきっぱりと言う、その姿が勇ましい。彼女は母に襲われた記憶があるから始終つっぱっているけれども、受けた心の傷はむしろ弟より深そうだ。母親役のキッドマンが娘役の子役に圧され気味にさえ見えた。母と子の緊張感が、屋敷内の不協和音をいやがうえにも盛り上げていく。その過程がとても自然で巧み。またセリフの応酬など、舞台向きの作品だ。独特の死生観にわが子殺害問題をからませ、光と影、または生者と死者の服装などから時代のギャップを表したりと、シンプルだが古典的な演出が効いて、全体的にクラシカルなムードが漂う上質のミステリー作品だと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2008-07-16 09:54:49)
58.  日本沈没(2006) 《ネタバレ》 
アニメなら許せるけれど、大人が楽しむ映画ではない。小中学生が道徳の時間で見るには適しているかも。『デイ・アフター・トゥモロウ』を見てコケたのと同じ衝撃を受けた。天変地異を人間の力でいとも簡単に操作できるような、筋書きに甘いラストは許せない。ゴジラが日本の街をぶっつぶすのとは訳が違うのだから。また、殉職者を描くのに宮沢賢治のグスコーブドリじゃあるまいし、人気俳優がおいしいところをかっさらい、少女の母が死ぬシーンを始めラストに至るまでお涙頂戴の安っぽい演出にうんざりだ。ただ、奈良や京都の惨事に韓国の世界遺産の楼閣放火事件を思い出してしまった。こっちは現実の話だ。国宝を失った韓国人の心痛の深さを思いやらずにいられない。
[DVD(邦画)] 3点(2008-04-28 09:31:26)
59.  ヒットラー 第1章:覚醒/第2章:台頭<TVM>
先入観を持って視聴してはいけないと自分に言い聞かせていたのに、第2部のラストまでヒットラーが『オーメン』のダミアン本人に見えてしまった。いや、本家などかすんでしまう迫力だった。これが史実とは! それにしてもベルサイユ条約であれほどまでに屈辱的な賠償金をこうむりさえしなければ、もしかしたらドイツはここまで歪まなかったかも。ドイツ人には視聴がさぞかし辛い映画だろうと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2008-04-28 08:39:26)
60.  パフューム/ある人殺しの物語 《ネタバレ》 
誕生から死まで『オーメン』のダミアンを見るようだった。自ら殺人を犯すまでもなく、主人公に関わる人間は皆ろくな死に方をしない。搾取する側の貪欲な人間として描かれているから、彼らの哀れな末路がいかにもエンターテインメント。また、主人公が職人気質を残酷なまでに貫き、最高傑作を制作後、虚無感に陥り自ら命を絶つさまは、芥川龍之介の『地獄変』と酷似している。けれどもグルヌイユの決定的な個性は、臭覚で得るもの以外は無関心であること。名誉欲、物欲、性欲、人を困らせて快感を得ようとも思わない。ラストでも香水の威力を確かめれば満足で、支配欲はない。これぞ究極の職人気質では。さらに絶世の美女より、匂いの初恋ともいうべきプラム売りの少女の方が、彼にとってはその死が重い。視覚で得る美は臭覚の美より下だからだ。ただ、殺害される前にローラが投げた眼差しの意味は大きい。彼女が見た侵入者の表情は極悪非道には見えず、しかし体は棍棒を振りあげている、そのギャップにぴんと来なかったというところか。グルヌイユのためらいは、無邪気で美しいものを壊す罪悪感を呼び起こしたことから来たものだ。退化した尾の名残として人間に尾骨があるように、無意識に人間らしい躊躇が脳裏をかすめたのだろう。その瞬間の表情を、グルヌイユ本人のではなく、ローラの顔が鏡のように表現しているのだ。媚薬の香水をかぎ、また人々の愛の享楽ぶりを見て、彼自身もプラム売りの少女から癒しを受けたいという気持ちにつながったのかも。グルヌイユの不幸は、欲してやまなかった至高の香水が決して心の渇きを癒すものではないと知ったこと。生甲斐を失った職人ほど哀れな者はいない。
[DVD(字幕)] 10点(2007-10-03 15:52:26)
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