581. イングリッシュ・ペイシェント
《ネタバレ》 これだけ長々と果てしないストーリーを展開されて、最後の最後に単なる昼メロ不倫映画だったと気づかされることの驚き。顔もわからないほどに負傷した男性が従軍看護婦に語る身の上話の中に、戦争の愚かしさや虚しさを痛烈に告発する力強いメッセージを期待してしまった身としては、強烈な脱力感は残るものの驚きも感動も未来への希望も失わせるには充分な映画。こういう男をカラダを張って助けてしまったのがジュリエット・ビノシュだから別にいいけど、昼メロなら昼メロと最初に言ってよね、という感じ。唯一、ウィレム・デフォーだけが痛い個性を充分に発揮してくれたので3点。彼が出ていなかったら0点でもお釣りの来る映画。テーマは無限の退屈。 3点(2003-11-29 12:33:50)(良:1票) |
582. タイタニック(1997)
《ネタバレ》 皮下脂肪は体温維持に絶大な役割を果たすというダイエット社会への重大な警告は謙虚に受け止めたいと思うが、十代から類稀なる個性を発揮して将来を期待されていたレオナルド・デカプリオがキャリアを棒に振ってまで伝えなければならないメッセージであったかどうかは正直疑わしい。これだけの制作費をかけ、ジェームズ・キャメロンが気のすむまで豪華な作品を撮ったのだから普通におもしろいのは当たり前。だいたいこんな映画だろうと思っていたけどやっぱりその通りの映画だったし、わざわざ劇場に観に行かなくて良かったなぁ、と普通に安心もした。唯一不思議だったケイト・ウィンスレット主演の謎も最後に解けたし、まあ1度くらい観ておいても別に損はないと思う。この映画を「十戒」と並べて宣伝した配給会社の図々しさに敬意を表する。「大空港」ぐらいにしておけばよかったのに。 5点(2003-11-29 12:27:04)(笑:1票) |
583. ミュージック・オブ・ハート
よくある教室モノの一つで、普通にしてても暑苦しいメリル・ストリープの存在感がここでも際立つ一篇。だから何なんだ感は否定できないが、言うべきほどの欠点もないごくごく普通の映画。偶然TVでオンエアしていたらわざわざチャンネルを変えるほどではないが、番組表に張り付いて録画予約をするほどでもない、という感じ。でもまあ、子供たちは可愛い。 6点(2003-11-29 12:20:33) |
584. 恋におちたシェイクスピア
《ネタバレ》 特に何も新しい発見や感動はないが、普通に面白い娯楽作品ではある。テンポも良く、コスプレならではの目に楽しめる衣装やセット、豪華なキャストとコミカルな台詞運び、グウィネス・パルトロゥの不潔な個性が際立つ一篇。当代きっての間男俳優ジョセフ・ファインズがここでも淫らな裸体を惜しげもなく披露してくれ、非常に楽しめる作品だと思うが、重ねて言うが特に感動はない。ウィノナ・ライダーにオファーされていた役をグウィネスがもぎ取ったと聞いているが、男装の演劇マニアを演じるにはウィノナの方が個性が合っていたように思う。未完の恋を描かれるとどうしても感動したような錯覚に陥りがちだが、実は豪華なコスチュームに彩られた平べったい娯楽恋愛映画。でも楽しいのでこんなものでしょうという感じ。 7点(2003-11-29 12:17:30) |
585. ボーイズ・ドント・クライ
《ネタバレ》 どう見てもオトコにしか見えないヒラリー・スワンクのオスカー受賞は当然のことのように思われたが、その後、別の作品で彼女を見てもやっぱり女装にしか見えないので、もしかして特に演技力に秀でているワケではなく、単に中性的なキャラクターに騙されただけなのではないかと疑いを持つに至った。そういう意味で見れば、単なる人権擁護賛美の立場からこの役を無視できなかったにすぎないわけで、これだけ特殊な役を例えばレネー・ゼルヴィガーが見事に演じて見せてくれてこそスゴさがあるんじゃないかと思う。正直、ヒラリー・スワンクの男装以外に特に見るべきもののない作品で、ストーリーは見る前から大方想像できるようなモノ、性同一障害に対する覗き見趣味的好奇心を満足させるには充分だが、だから何なんだ感は否めないスリルもサスペンスもほとんど感じられない作品。こういう作品で本当に偏見が取り除けるのかという後味の悪い疑問だけが残る。現在若手女優の至宝とも言えるクロエ・セヴィニーの存在感だけが救いだが、観に来た人間に自らの野次馬根性を見せつけるだけの実にあざとい映画であった。だいたい性同一障害者であろうがなかろうが、人を殺したらイケナイなんて当たり前ではないのか。少なくとも女装してたから殺されるとか、そういう土壌の全くない日本の風土ではほとんど意味がないように思う。アメリカってそういう国なのね、という一つの教材にはなっていると思うが、そもそも性同一障害が殺されちゃうほど悪いことだと思っていない日本国内に関して言えば、却って偏見を助長する結果になってはいないか。 2点(2003-11-29 12:11:32) |
586. チャーリー(1992)
もしも私が男性で、ハリウッドで俳優をやっていて、「チャップリンの役やりませんか」と言われたら恐ろしさのあまり倒れると思う。そういう意味で、この役に挑戦したロバート・ダウニーJr.の心意気を非常に高く評価したい。実物を期待しても気の毒だが、とりあえず彼は考えられ得る範囲では最高レベルの演技をしたと思う。ミラ・ジョボビッチやダイアン・レイン、マリサ・トメイなど1人1人はかなり輝いている女優のはずが、こうやって集められると微妙に学芸会っぽく感じられてしまうのは何故だろう。まあ楽屋オチ物って映画ファンにはそれだけで楽しめてしまうところがあるし、チャップリンに特別の思い入れのない私のような一般ファンには充分楽しめる作品だったように思う。 8点(2003-11-29 03:08:52) |
587. フィッシャー・キング
《ネタバレ》 どうもすごく良い話らしい、ということは観ていてわからないでもないのだが、その雰囲気のほとんどが例のグランドセントラル駅のシーンによってのみ支えられている感じがして手放しで褒められない辛さを感じる。ロビン・ウィリアムスにはこの頃すでに飽きていたし。ジェフ・ブリッジスとカート・ラッセルってどちらか1人いれば十分な気もするし。テリー・ギリアムの映画にしてはやけに薄いな、というイメージが。 6点(2003-11-29 03:03:19) |
588. ダンス・ウィズ・ウルブズ
男性の友人達は口を揃えてこの映画を素晴らしかったと言う。女性には理解出来ない男のロマンというものなのであろう。少なくともこれだけの長尺を、居眠りもせずに最後まで観られたのであるから、それなりに面白かったんだろうとは思うが、残念ながら傑作というほどの素晴らしさは感じられなかった。金返せ、とは言わないが、お買い得、というほどでもない映画。普通。 6点(2003-11-29 03:00:40) |
589. ゴースト/ニューヨークの幻
そもそもパトリック・スウェイジという俳優がちっとも魅力的に見えないために、彼が帰って来てそんなに嬉しいか?と、さっぱりストーリーにのめり込めなかった。目の幅の涙を流して世の女性たちの涙腺をかきむしったデミ・ムーアも、ずいぶん首の太い女優さんだなあ、という印象を残したのみ。いったい何がそんなに泣けたのか、おそらく私が理解する機会は一生ないであろう。 0点(2003-11-29 02:57:57) |
590. グッドフェローズ
《ネタバレ》 非常に面白く、まったく飽きずに最後までどんどん観てしまったのだが、どうもあのオチはいけない。いつもながらジョー・ペシの殺されっぷりには頭の下がる思いがする。ある意味スタイリッシュで、マフィアを描いた作品としては「ゴッドファーザー」よりこちらの方が好みではあるのだが、最後の最後で「全然グッドフェローズじゃないじゃん!」と激しい憤りを感じてしまったので1点減点。男同士の美しく熱い友情で最後まで突き進むもんだと思ってワクワクしたのに、そりゃあないでしょ。どうもこの作品以来、レイ・リオッタが信用できない。 8点(2003-11-29 02:54:11) |
591. 羊たちの沈黙
おそらく原作を愛しすぎたのであろうが、特にクライマックスの間中、目まぐるしく変わるカット割りの速さに、原作を読んでいない人が果たして本当について来られるのであろうか、といらぬ心配をしてしまった。傑作として世の評価は定着したようなので、おそらく原作無しでもちゃんと理解できたのであろう。個人的にレクター博士のイメージがもうちょっと狂人じみていたため、あの恰幅の良い紳士然とした博士像に立ち遅れた。ジョディ・フォスターのクラリス役には、公開前には非常に不安を覚えたが、心配するほど悪くはなかった。それにしても世間のこの映画に対する評価は、ちょっと尋常でないほど高すぎるように思う。普通に面白い映画、程度の認識しか私にはないのだが。 6点(2003-11-29 02:49:47) |
592. JFK
渾身の、という表現がこれほどふさわしい作品もないでしょうね。オリバー・ストーンは文字通り命賭けでこの映画を撮った。というよりむしろ、この映画を撮るためにあらゆることをやってここまで這い上がって来た。JFK暗殺でアメリカが何を失ったのか、その全てがここにある。1度でもこの映画を真剣に見たことのある人なら、マイケル・ムーアの何が甘いかわかるだろう。Rolling Stonesが「Sympathy For The Devil」の中で歌う、「Who killed the Kennedys? When after all, It was you and me.」の意味がわかるだろう。ブッシュは再選し、テロとの戦いは続く。大統領が殺されてしまう国で、人々にいったい何が出来るのか。誰も死にたくはない。あなたも私も、出来れば死にたくはない。「これは正義の問題ではなく、システムの問題なんだ」。そのシステムが一握りの正義を殺すことによって、この国は生き延びて来た。あなたも私も、その恩恵に与って来た。あなたも私も、心では戦争に反対しているが、湯水のように電気を使い、石油化学製品に囲まれ、温室で育てられた、空輸された野菜を食べて、1人1台が携帯を持ち5人に1人が大学に行けるこの生活を続けることで全員が戦争に参加している。11月22日、アメリカの正義が死んだ日が、今年もまたやって来る。 9点(2003-11-29 02:45:17)(良:1票) |
593. 白い刻印
DV犠牲者のトラウマを扱った作品としては月並み感が否定できない。ジェームス・コバーンの絵に描いたような荒くれオヤジぶりも痛いが、殴られている子供たちのあまりにも典型的な「濡れた瞳」も痛い。ニック・ノルティが歯を抜くシーンも痛いし、ボケたコバーンの年寄りぶりも痛い、とにかくあらゆる意味で痛い映画。ジェームス・コバーンのオスカー受賞から、さんざん待たされてやっとの思いで観たワリには、私の期待は満たされなかった。ポール・シュレイダーの映画って当たると大きいんだけどハズレた時の痛さもひとしお。父コバーン、長男ノルティ、次男デフォーの組み合わせはまったく家族にしか見えないので笑える。コバーンは確かに頑張ったけど、「トゥルーマン・ショー」のエド・ハリスを押しのけての受賞にはまったく納得できない。冥土の土産にオスカーを贈る悪習はやめよう。 3点(2003-11-29 02:40:24) |
594. アイズ ワイド シャット
キューブリック監督でなく、しかも遺作でなく、ニコール・キッドマンとトム・クルーズ夫妻(当時)主演でなかったら誰が観に行っただろう?と思うと辛目の評価にならざるを得ない。過激な描写としてかなり話題になった気がするが、今どきもっと過激な映像なんか捨てるほどある。残念ながら世間はちょっとキューブリック・ブランドに騙されているのではないかというのが率直な感想。ここに描かれている貞操観念自体が既に前時代の遺物でしかないのに、過激さで時代の最先端を行けるわけがないのだが。キューブリックはこの作品の公開を拒んだという噂がまことしやかに囁かれたが、数百本もあると言われるオファーを断り続けて2年間もこの映画に捧げてしまったトム・クルーズの関係者によって暗殺されたのではないかと真剣に考えてしまう。映像は美しく、音楽は厳選されており、特に言うほどの欠点も見当たらない映画なのだが決め手に欠ける。とは言うものの、派手な見せ場の多いトム・クルーズに比べ、抑えた演技を要求されたニコール・キッドマンの素晴らしい演技はもっと評価されるべき。なんとなく前夫の七光り的な評価を受けることの多かったニコールだが、この映画でもその秘められた実力を十分に発揮できない苦しさを感じる。実は凄い力を持った女優さんだと思うのだが。 6点(2003-11-23 23:28:16)(笑:2票) |
595. 女はみんな生きている
ここ何年か観て来た映画が全てかすんでしまうほど強烈な印象を残しましたね。冒頭の掴みからテンポよくどんどん話に引きずり込まれ、サスペンスでありながら爆笑モノのコメディでもあり、「男と女」という永遠の命題を扱った痛烈な男性批判映画でもある。これを観て感動する男性はほとんどいないだろうと思うけど、女性にとってはこれほど小気味良く、最初から最後まで楽しめる作品というのは実際それほど多くないのではないでしょうか。わからず屋で仕事一筋の夫、家を出て恋人と同棲を始めてしまった息子に振り回されっぱなしの平凡な主婦と、これまでの人生のほとんどを男に踏みつけられて生きて来た娼婦の、痛快とも言える復讐と再生の物語。この映画を観ることが出来て良かったと、長く思い続けられる一作だと思います。 10点(2003-11-23 23:05:30) |
596. フォレスト・ガンプ/一期一会
好きな映画ではないし、楽しい映画でもない。どちらかと言えば痛い映画だと思うし、アメリカ人らしい愛国心に訴えかけるあざとい映画。もちろんアメリカ人がこれに夢中になるのは納得できるのだが。悔しいことに完成度の高さは否定できない。ロバート・ゼメキスにやりたい放題やらせたらどうなるか、という一つの結論にはなっていると思う。サリー・フィールドが素晴らしかったこと、ゲイリー・シニーズを紹介してくれたことに敬意を表して6点。でもよくよく考えたらサリー・フィールドがこの程度に素晴らしいなんていうのも特に驚くようなことじゃないんだよなあ。辛い。 6点(2003-11-22 23:45:28)(良:1票) |
597. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 普通に面白いとは思うけど・・・これが最高、と思う人の多さにちょっと驚く。確かにモーガン・フリーマンは上手いので、原作への挑戦とも取れるあのインチキなラストでもうっかり泣かされてしまうのだが。原作小説と映画は別、と思ってはいても、これだけ原作に感動してしまった後でこれを食らったら落胆もまた激しい。監督はあの小説のどこが凄いのかをきちんと理解しているのだろうか。 5点(2003-11-22 23:41:36) |
598. ムーンライト・マイル
見る前からだいたいのストーリーとオチがわかってしまいそうなキャストならびに宣伝内容であったわりには最後まで飽きずに楽しむことができた。まあスーザン・サランドンが出ていてこの程度だったら残念ながら映画としての出来は正直あんまり良くないでしょう。守りに入ってしまわれましたね。残念なことです。 6点(2003-11-22 23:25:16) |
599. パルプ・フィクション
コメントすることさえ恐れ多く感じられるほど素晴らしいの一語に尽きる傑作。おそらくかなりな映画人が「こんなことやっちゃってみたいけどおっかなくてできないな~」と感じていたことをさくっとやって見せてくれちゃうタランティーノという人は本物のバカだ。だから素敵なんだけど。非常にインチキ臭い仕立てではあるが実は緻密に計算されていることは明らか。ただしミスター・クリーン役を演じたハーヴェイ・カイテルが急遽電話で呼び出された時、なんで朝の7時からカクテルパーティなんかに出ていたのかとか、みみっちい疑問は残る。だから何? 10点(2003-11-22 23:20:02) |
600. アポロ13
世界中が興奮した実在の宇宙ロケットアポロ13の奇跡の生還、これだけのネタがあって監督がロン・ハワードなら、もうちょっと面白く出来たんじゃないのかというのが率直な感想。普通に考えれば十分面白い映画なんだけど、掛かっている期待がケタ外れに違う。ついでに目の幅の涙を流して観客の同情を誘うトム・ハンクスにも私はちょっと飽きている。どう見ても間抜けな三枚目だった若い頃の彼を知っていると、この男に乗員の運命を委ねることが危険にすら思えて来るし。昔の話なので確かにあんないい加減なやり方で帰って来れたとしたら本当の奇跡だ、という納得はあるんだけれども感動がない。特に感動させる狙いはなかったのかも知れないが、もうちょっと面白くする方法はいくらでもあったんじゃないだろうか。特にキャサリン・クインランは本当に必要だったのか、など言いたいことは尽きない。ほどほどに面白いという事実が一層私を腹立たせるのだよ。いつもながらエド・ハリスだけは良い。 6点(2003-11-22 23:16:33)(良:1票) |