721. レイニング・ストーンズ
《ネタバレ》 ああーこりゃまたケン・ローチらしい・・。また私の「仲間」がやられている、と思った。貧困と不運に。まだしも健康でガッツがあってユーモアも友人もあるから陰惨というほどではないけど。でも首の皮一枚だ。 ほんとに、真面目で信仰心もあって娘のために必死で、友人の子を思ってヤクの売人に怒りを爆発させる良き人間がなぜこうも経済的に窮しているのだ。かつての大英帝国の社会のひずみは深刻だ。 このお父さん、ケン・ローチ作品のなかでも群を抜いて運が無い。もっとも、一度きりの娘の聖餐式に服から靴まで一式揃えようという分不相応な出費はなあ。神父さん曰く「分別の無い」行為で自分の首絞めちゃってるわけで、いやおとーさん、そこはレンタルで良いと思うよ?周りも皆そう言ってるじゃないですか。かくして彼の運は坂を転がり続け、とうとう自暴自棄に一線を越えそうになるのですが告解された神父さんが実に良いんだ。Fワードを吐きながら真に正しい方向へ父親を諭す様はロックなキリストのようだった。 ラストも監督ったら冷や冷やさせてくれちゃって。バンかよ!お父さんの運もようやく上がり始めたみたい。ケン・ローチらしい匙一杯分の粋な締め方でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-10-18 19:54:55) |
722. 殺したい女
いやーこれおっかしいですよね。アメリカのコメディって下ネタだけでしつこく騒いだりとか、あちらの旬ネタが伝わらなくて笑いのツボがずれたりで、作品を選ぶんですけどこれはほんと良くできてます。 コメディだけど伏線張りも丁寧に、騒動が拡散してゆく展開もリズミカル。「違う状況を話しているのに話がかみ合っちゃう」このコント、どれもぴしーっと決まって爽快です。あっぱれ。 署長、気の毒だったなあ笑。家電ショップでビデオ再生すんなやー。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-16 23:04:24) |
723. ウォー・ドッグス
《ネタバレ》 面白かったです。”ハングオーバー”で見せた脚本作りの巧さをいかんなく発揮できてる感じです。起承転結がキレイに決まってストレス無く観賞できます。畳み掛けるような展開と、納得行く落とし方。画も紛争地の現場などはリアルで緊張感もちゃんとある、一級品の出来です。 この作品、主役二人に肩入れも応援もできないというのが好感した作品では珍しいところです。小ズルそうなデブと間抜け面の白人アメリカン。仕事は武器商人。こいつらが武器調達に成功し、いい気になってくくだりはなんとなくイラーっとさせられます。あの奥さんもどうだ。あんな異常に豪華なマンション、まともなシノギで住めるわけないだろうが。気づけ。 で、半分トーシローなこいつらの甘ちゃん認識を吹っ飛ばすガチな闇商人のB・クーパーが良い仕事をします。ちょっと存在感から違うもんね。 ところで彼がカジノに現れてルーレットの卓に着いたとき、細身の黒いスーツ姿といい、おやあの4人組の不良先生か?と一瞬思っちゃったのは私だけじゃないよね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-11 16:39:11) |
724. セイント
うわー安易だなーB級だなーとひしひし感じつつ、退屈しない程度には引っ張ってってくれます。そこそこ面白い、とも言えます。 でもさほど魅力を感じないのはなんでかというと、やっぱりキャスティングかなあ。ヴァル・キルマー、やっぱ彼は主役を張る器ではなかったですよ。何変化しようがヴァルキルじゃん、と客に思われては企画倒れ。そもそもヴァルキル七変化が見たい客は何人いるのか。ルックスどうこうという問題でもない気がする。マット・デイモンがジェイソン・ボーンを見事にやってのけた例がありますから。この差は演技力かそれとも役者の持つ華の有る無しなのか。 エリザベス・シューも問題だ。”リービング・ラスベガス”でオスカーを獲っていれば後に来る仕事のオファーの質もだいぶ違ってきたんだろうになあ。軒並みB級作が続く近年の仕事っぷりを見ていると、”ベスト・キッド”から見守って(?)いる身としては大変残念な思いがするのだった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-10-09 00:17:30) |
725. 最後の晩餐 平和主義者の連続殺人
《ネタバレ》 いっぱい人が死ぬ(というか殺される)けど、タッチはユルめというのが結構人を食ってます。それも政治信条・宗教・モラルetcが対立する相手を論戦の末やっちまうという、およそディベート下手な我が民族はそこまで熱くならないであろうシナリオ。 かなり黒さが濃いブラックコメディですが、落とし方も含めて楽しかったです。まずこの大学院生らがいけすかない。インテリで無自覚の高慢ちきらがそこそこリッチな共同生活を送りながらあーだこーだと理屈っぽいんだ。だがしかし所詮は世間知らずの頭でっかち。海千山千のTVキャスターR・パールマン登場後は、彼の意外にも常識的な中道の見解にことごとく論破され、パニックになって仲間割れ寸前。いやー小気味良かったですねえ、ここ。 顛末がどうなったかは静止画で知らされます。子供が描いたようなその情景のまあ皮肉なこと。自ら用意した毒杯に足をすくわれた。そんなもの用意してなきゃいいのよ初めから。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-07 17:41:50) |
726. パーソナル・ショッパー
《ネタバレ》 セレブの買い物係を務める女の子。高級ブランドを品定めし、次々購入するも所詮自分のものではなく、雇い主のわがままにも振り回される。鬱屈がたまったある時事件が起こる。・・耳にした予告あらすじは大体こんな感じ。ハイブランドのキラキラと妬みと、それに絡むサスペンスかと思うじゃありませんか。・・まさかD・リンチ風な変化球を投げてくるとは予想だにしなかった。 冒頭からオカルト全開でスタートしたときから頭の中は?でいっぱい。見終わっても?が消えるわけではないのだが。いろんな疑問が湧くけど、解答を用意しないタイプの映画です。考えても検索してもハッキリすっきりしない。客の解釈に丸投げしてるわけで。ワタシの解釈はこうです。呼び出されたホテルで彼女は殺されちゃってるんだな。出てった霊はモウリーン。直後、ホテル外観の画を静止カメラで数秒流した後から視座が変わるのだ。すなわち、その後に見せられる話は全て死んだモウリーンの希み。 兄の後釜にすわる男の人間性を確かめ、オマーンの恋人に会いに行く。そんな遠くにまで現われる兄のラップ現象。「これは全て私の気のせい?」と問うと答はYES.すごく矛盾してるやり取りなんだけど、彼女がこの世に存在しないと考えればすとん、と落ちるような気がします。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-10-07 00:45:59) |
727. 隣人は静かに笑う
《ネタバレ》 映画作品としては十指に入るくらいのバッドエンド。たしかにあの幕引きには充分驚いたんだけど。 でもこの映画、冒頭の入り方がちょっと強すぎないですか。白昼血を流しながらふらふらと住宅街を歩く少年、だよ?白目を剥いて腕は血まみれ。発見者のJ・ブリッジスが助けを求めても誰も出てこない上、看護婦とのやり取りでのブリッジスの絶叫「僕はあの子の名前も知らないんだ」。ここでワタシは予想したわけです。身元不明の少年と成り行きで関わることになった主人公、少年を狙ったサイコパスの引き起こす連続事件に否応無く巻き込まれてゆくのだった・・。全然違ったけど。だってあまりにインパクトが強かったんだもん。だもんでその後父親同士の腹の探りあいになってっても、あの子の怪我の真相は?という思いがずーっと消えなくてどうも集中しきれない羽目に陥りました。やっぱり強すぎでしょスタート演出が。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-10-05 21:09:03) |
728. ハドソン川の奇跡
《ネタバレ》 原題はSully、サレンバーガー機長の愛称ですね。ですからこの映画は邦題の与える印象とはちょっと違って「事故そのもの」を描いたのではなく、その後事故責任の有無を問われることになった機長その人にスポットを当てています。 リーダー役をやらせたらいるだけで信頼感の厚さを醸すT・ハンクス。彼を機長役に据えたイーストウッドのタクトは主張ぶれることなく、サレンバーガー氏に添った描写をします。100%機長判断を支持する副操縦士や、「いかにも」役人的な安全運輸委員会の面子等は分かり易い脇役です。現場にいて、最良の判断をしたと思っても、後になって外野から異を唱える連中というのはいるもので機長もこの理不尽に飲み込まれてしまうのかも、とどきどきしました。あのシミュレーションは突然生死の境にぶち込まれた人間の心理状況をまったく酌量してないですもんね。機長がちゃんと「人的要因」の存在を主張できるほどに言語能力が高い人物で良かったなあと思いました。ワタシが彼の立場だったらイライラして声を荒げるだろうなあ。 ラストに実人物を挿入しているのも、感動一割増しの効果ありでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-09-28 17:46:52) |
729. 危険なプロット
《ネタバレ》 奇妙でねじれてて、こんなにも変な心理劇を魅惑的に見せることができるとはいかにもオゾン監督らしい。 破滅したのは、仕掛けた方。フィクションをより高いレベルで構築したいばかりに、深入りしすぎて現実の方を壊してしまった。クロードの文章によって展開するその世界が実話なのか創作なのか、観てるこちら側も若干混乱するのですが、その辺は「解釈はお好きなように」と監督に預けられた気分です。 はっきりしない、もやーとしたストレス。画面のこちら側は立ち去れば良いけど、国語教師は破綻してしまった。黒い羊に関わったばかりに。 黒い羊のエルンスト・ウンハウワー、見事に悪魔的な妖しい美少年でした。芝居が並でも、雰囲気でカバーできるとはこの年でなかなかの逸材です。 だけど絡む相手が必ずおばさんなので、ちょっとほんまかいな、という気持ちにもなっちゃった。クロード、マジなのか君。イケんのか。フランス人の愛欲って奥が深いなあ。そういえばかの国の現役大統領夫妻も母子ほどのカップルでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-09-24 15:16:55) |
730. アメリカ アメリカ
《ネタバレ》 カザン監督、どれ自分の出自を皆に語って聞かせよう、と思っちゃったらしい。彼の叔父がいかに苦労してアメリカに渡ったか、を暑苦しいほどに重ねて描写してます。もう、力入っちゃって、主人公スタヴロスの境遇の悲惨なことといったらそこまでやるかーと言葉失うほど。旅の序盤そうそう悪魔みたいなトルコ人追い剥ぎに出会って一族の全財産盗られたくだりは、田舎モノの主人公の朴訥さがこちらも歯がゆくてねえ。絶対騙されると思ったよお、なんでもっと早く闘わないの。それから状況は厳しくなる一方ですから、そりゃだんだん顔つきも変わって口数も少なくなったでありましょう。ただ、この役者さん、物語のスタートからあまり表情数が多くなく、ずっとむっつりと無表情な印象。経験が顔に出る演技に至ってないのが残念でした。それと、やっぱり説明不足に感じるのが裕福な家の婿になる話を蹴ってまで渡米したがるエピソード。故郷の家族をもっと早く確実にラクにできたのに、とは誰でも思うところではないでしょうか。男娼になってまで貫くアメリカ愛とは相当ですよ。彼のその思いがもっと切実に伝わると良かったのですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-09-23 23:31:05) |
731. 最高の花婿
《ネタバレ》 いやー、何度声を上げて笑ったことか。深刻な社会問題であろう移民のネタを軽く笑いに代えるとは、フランスの成熟度の高さを思い知るなあ。 ヴェルヌイユ家の両親の気持ちって大多数の人が抱いているのと同じですよねきっと。「自分には差別意識はない」と。でも我が人生に宗教の違う他民族の人間が身内となる事態が発生したら、ちょっと平静ではいられない。”希望の星”末娘の相手は真打ちともいうべきアフリカ系。「なんでこんな目に?」とまで言っちゃってましたねえお母さん。 この作品の凄いのは「偏見は存在します」とはっきり認めながら、その馬鹿馬鹿しさをコント仕立てで表出してるそのセンス。移民の婿三人が互いの出自で感情こじらせつつ、黒人現るとなると結託して「パパラッチ風作戦」で末娘の結婚を妨害しようとするくだりは、あまりの無意味さに脱力笑い必至です。 鬱気味の三女の絵とか、ちょっとイラっとする神父とかがまた別口の笑いとしてお話のアクセントになってます。エスプリの効いたフランス映画です。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-09-18 18:38:36)(良:1票) |
732. クリムゾン・ピーク
《ネタバレ》 画面からほとばしるようなギレルモ・デル・トロの美意識、世界観。画の力が圧倒的です。 アメリカパートは英国部よりずっと光量が多くて、淑女たちの絹のドレスの華麗なことが際立ちます。なんとふんだんに布が使われていることか。ミアもジェシカも彼女らにベストに似合う色合いの衣装を纏って、帽子からコートから本当に素敵です。 そしていかにもここからが本番、といった趣の英国の古屋敷。ゴシック・ホラーと聞いて期待する全ての要素を揃えております。重厚・薄暗・長廊下・高い天井、そして地下。屋根が抜けていては廃屋感が出てしまうので個人的にはそこまでボロくしない方が好みなのですが。雪がちらちらと舞い降る視覚効果が欲しかったんでしょうな、監督は。降り積もる新雪ににじむ赤い土。鮮烈な色彩舞台を考えついたものです。 とにかく目が楽しくて、美術点は満点。ただ個人の好みを言ったらキリがないですけど、姉が狂うほどに完璧な弟像を描くならベン・バーンズ級の美貌を使ってほしかった。お話もあと2mほど(?)奥行きが欲しかったところ。 それとこの話に出てくる幽霊はよく考えると皆親切で助言をくれるんですが、それならなんであんなオソロシイ風体で出てくるんだよう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-09-14 16:25:16) |
733. ミッドナイト・スペシャル
《ネタバレ》 え、なんだこれびっくりした。「予想不可な展開!」とかって煽ってたけどまあその通りなんだけど。序盤はマイケル・シャノンが渋面作ってリアルクライム風にスタートしたと思ったら、子供の目がピカーって、これが特撮モノなセンスでほんとにピカーって光線が出る。いやあたまげた。あ、そういう方向の話なのか、とクライムサスペンスの線は捨てて気を持ち直して観続ける。で、どうやら「竹取物語」なんやな、と分かってくる。でもまさかオチまで件の昔話まんま、とは思わなかった。あの終わり方では消化不良甚だしい。かぐや姫は竹から発見されて、幼い頃から成長する過程を祖父母らと見守ってきたっていういきさつがあるじゃないですか。だからこそ最後の、世話になったおじいさんおばあさんとの別れの場面が悲劇的に盛り上がるのですよ。使者を追い払おうと、虚しく空を切る幾千の弓矢、地上の物理的攻撃をものともしない月光の道。画も完璧だ。 けど、この映画はじめから超能力のある8歳の子を取り合って騒いでいるとこからスタートしてて、親と共有できるストーリーが無いのです。両親も手放すために奔走してるように見えるし。そのへんの葛藤も薄い。かくして子供はあっさりと行っちゃって、客は母親もろとも置き去りにされた感はんぱないです。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2018-09-03 17:53:17) |
734. シークレット・アイズ
《ネタバレ》 オリジナルの半分も出来が良くない印象ですねえ。もさっとした展開なうえ過去と現在の切り替わりが分かり辛い下手演出。客寄せの豪華出演陣、なかでもニコール・キッドマンの「デキる」女検事キャラは余計に感じます。せっかく美人なんだから、とキウェテルとの恋情を絡めてきたのもまた余計。 逃げた犯人を追い求めて全米の犯罪者の顔写真を何年にもわたって見続けるとか、効率悪すぎてびっくり。犯罪者ってどんどん更新されてるのでは?また初めから見直さないとならないよ?しかもその中にいるとは限らないし。結果別人だったし。(なんじゃそりゃ!) 5万人もいそうなスタジアムの観客の中から犯人を見つけ出そうとしてたよなあ。それも日時も特定できてないのに下から客席を見上げてる捜査官二人に絶望的な気分になった。マジか君ら。 というわけで観ててため息ばっかりの本作ですが見どころといえば、目ばかりギョロついたJ・ロバーツの復讐顔が真に迫って怖い、ということくらいですかね。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2018-08-31 21:02:02)(良:1票) |
735. シェフとギャルソン、リストランテの夜
《ネタバレ》 アメリカで一旗上げようと意気込んでレストランを開業したイタリア人兄弟。商売の厳しさをいやというほど味わわされます。味音痴のアメリカ人に本場イタリアンを拒否され、このへんは昔日本の商社マンが醤油をかの地に売り込むのに苦労した話なんかも思い出されます。 話は苦い終わり方をするのですけど、さほど悲愴感が漂わないのは楽天的で暗くなり過ぎないイタリアン気質な兄弟のキャラがちゃんと描けているからでしょうか。天才肌の兄は頑固だけど好きな女性の前では中学生レベルの要領悪さが微笑ましいですし、経営者の弟は借金を頼みに行った地元顔役の女をちゃっかり寝取ったりしている。しかも二股(!!) 披露される料理の数々も美麗で見事です。フレンチとはまた違った、家庭的でボリュームのある暖かさ。兄弟の奮闘記とキュイジーヌムービーが合わさったような、印象に残る作品です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-08-28 17:42:06) |
736. スノーデン
《ネタバレ》 この事件、アメリカの不正義を何が何でも許さないオリバー・ストーンが手を出さないわけがない。CIAのやりすぎ監視システムに個人として疑問を抱き内情をリークしたスノーデン氏の心情を細かく追い、”国家反逆罪”に問いたいCIAの主張をふざけんな、と一蹴。100%スノーデン氏寄りの清清しい描写です。 人の権利を侵害して尚エラそーなアメリカの態度にむかつく国々に匿われて逃亡生活を送るスノーデン氏。彼がラストに元気で登場したのはうれしい驚きでした。 J・G・レヴィットの緻密な演技は見事で、ドキュメント作品としての品位をキープしてますが「起こったこと」をなぞる展開はちょっと起伏に欠ける気もします。娯楽サスペンスじゃないのでまあそこは仕方ないのですが。氏のキャリア前半にあった国家の陰謀によって人生を踏みつけにされたパキスタン人銀行家のエピソードは一市民としては心胆寒々とするものがあり、この手の実例をあと一つ二つ入れてたら、こちらもぐっと盛り上がったのにな、とは思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-08-25 01:12:53) |
737. ロスト・バケーション
”水着のお姉さんがサメのピンチに遭遇するB級映画”というイメージのまんまといやそうなんですが演出のひとつひとつに結構力がありまして「うわあ傷が痛そう」とか「陽がじりじり暑そう」とか「きゃーサメがでかい」とか客を飽きさせないで引っ張る力量はなかなかのものでした。 美貌絶頂の「旅するジーンズ」からだいぶ経って、正直なところ水着タレントの旬からは外れているブレイク・ライブリー。でもこの人、元々お色気を売るというよりは女子にも人気の高いサッパリ美人ですので今作のサーフィン好き医学生という役にハマってますし、かもめの治療を通じて悩みを通り抜けるサブストーリーもちゃんと機能していました。 タイトルどおり、見るからに”浅瀬”なのにビーチにたどり着けないもどかしさ。ギリギリ声は届くのに、浅いことが油断を招き犠牲者続出。シチュエーションも結構考えられてるのですね、コレ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-08-21 23:50:39)(良:1票) |
738. クライム・ヒート
《ネタバレ》 なんとなく安さ漂う邦題のせいで見くびってましたが、これがなかなか。新興マフィアに乗っ取られ、搾取される負け組”バー カズン・マーヴ”のスタッフと周辺の人間模様。哀切にじむ繊細な描写が見事でした。 人物は多くなく、トム・ハーディが七割方話を回すのですが、彼がすごく良い。トム扮するバーテンダーのボブはマフィアのボスにも一目置かれる実直さ。犬を飼うにもトイレのしつけ等に真剣に悩んでマーヴに「たかが犬」と呆れられ、教会に欠かさず通うので神父や刑事の信頼も厚い。ボブの人柄を表す演出が丁寧極まりなくて、ひとつひとつの所作例えばクリスマスの飾りをきちんと片付けたり、雪かきをサボらずせっせとこなしたりする姿が印象的で、観る側の「ボブはちゃんとした奴」というイメージを着々と築いてゆくのです。これがばーん、とひっくり返される午前2時の驚愕ときたら。私はナディアと全く一緒のリアクションになりましたね。「あのう、アナタこの人を○○ましたよね?」声も上ずるわー いや、ボブ鮮やかだったけども。 トム・ハーディは文句無く主役ですけど、かつての人生の輝きを取り戻そうとあがくガンドルフィーニがこれまた痛切に哀感漂う存在感を醸すのだった。人生に敗れたひとりの男の物語としても読めます。激苦です。 ケチなチンピラのM・スーナールツも上手い。「男前」な役を演ってる他作品もいくつか観ましたけど。顔立ちがどちらかというとプーチン大統領似の抜け目無さを感じさせますので、今作はハマリ役だったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-08-19 16:55:33) |
739. パージ
《ネタバレ》 年に一回、12時間のみ全ての行為が合法化されるぞって理屈つけてるけど、これって「わらの犬」ですやん。お前んちに逃げ込んだ奴を差し出せ、さもないと暴漢が家に押し寄せるぞ、と。こんな悪意、法律云々関係ないもん。悪意とはそもそも常識も正義も無い、無法状態ですからね。 「今日は犯罪になんねえから」暴れる奴らと違って、ペキンパー作の方は真性にイカれた連中だったのでよっぽど迫力がありました。なんでも「わら」と比べるのもナンですが、防衛側もまたその緊迫ぶりがD・ホフマンとE・ホークでは雲泥の差がある。ヒリつくようなホフマンの血走った目、あのキレ方を思うとイーサン父さんはもうちょっと家族のためにギアを一段上げられなかったかね、と思う。それとここんち、非常時に子供がどっか行くこと多いなー。それで何かやってくれるのかと思ったら(あの不気味なロボット含め)、足引っ張ってるだけだったよ・・。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-08-18 01:30:14) |
740. 高慢と偏見とゾンビ
《ネタバレ》 タイトルから期待しすぎちゃった。クラシカルなJ・オースティンの世界観にゾンビ、ってわくわくするじゃありませんか。「カウボーイ&エイリアン」の時とおんなじ種類の期待感。 でもあんまり両者の融合がうまいこといってないなあ、という消化不良に終わりました。「プライドと偏見」のストーリーの合間にゾンビ退治を挟んだだけだね。もっとはっちゃけてもいいのに。姉妹全員がゾンビ化したらダーシーは愛を貫けるのか?またはその逆とか。 ドレスを翻しての戦闘アクションが見せ場だと思うんだけど、さほど回数も多くないですし。 ゾンビパートと原作パートを別個に描くもんだから、どちらも掘り下げ足らずな印象。アイパッチおばさん要りますかね? あ、そうそう「不朽の名作、感染!」のコピーは上手いと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-08-12 23:53:06)(良:1票) |