Menu
 > レビュワー
 > ボビー さんの口コミ一覧。4ページ目
ボビーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1016
性別 男性
ホームページ http://blog.livedoor.jp/gepper26/
年齢 37歳
自己紹介 いつまでもこどもでいたいから映画は感情で観る。その一方で、もうこどもではいられないから観終わったら映画を考える。その二分化された人間らしさがちゃんと伝わってくる映画が好き。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314151617181920
212223
投稿日付順1234567891011121314151617181920
212223
変更日付順1234567891011121314151617181920
212223
>> カレンダー表示
>> 通常表示
61.  天然コケッコー 《ネタバレ》 
この作品に出てくる登場人物たちは皆、驚くほど魅力的に描かれている。一人一人の登場人物たちがそれぞれの思いを胸に生きていて、悩んで考えて、日々を過ごしているのがすごく伝わってくる。そこには平凡な日常があり、平凡だからこそ理解できる想いがそこにはあった。そよの他人への純粋無垢な優しさや思いやり、そよを取り巻く登場人物たちの感情。全てが疑うこともなくすんなりと心に届いてくる。もう、信じるとか疑うとかそんな感情はもともとそこにはなく、彼女たちの住む町の海のように、少しの汚れもなく澄み切っていたように感じた。彼女たちの些細な行動一つ一つからもそれが伝わってきた。例えば、海に行けばバケツを持っていって家族のために貝を捕ってくるし、たったワンシーンしか出ていないお好み焼き屋は彼女たちが毎日のように通っている憩いの場だということも感じ取ることができた。全てが断片の物語で情報量も少ないはずなのに、そこに説得力があるのは、その全てに生き生きとした登場人物たちが存在しているからだと思う。ぼくはこういう作品を心のどこかでものすごく望んでいたような気がする。東京から引っ越してくるイケ面の大沢君と恋をするそよ。なんというベタ。だけど、いやだからこそぼくは共感という視点で彼女たちの成長と変化を楽しく見ることができたんだと思う。この作品に登場する人物たちが、ぼくは愛しくてしかたない。そよと大沢君の未来をずっと見ていたい。二人はこの先どうなるんだろう?ケンカもきっとするだろうし、でもすぐ仲直りしそう。いや、してほしい。ずっとこれからも二人には最後のキスシーンみたいに輝き続けてほしい。まるでこの世のどこかにいるみたいに二人のことを思ってしまう。改めて感じる。これが映画の最も素晴らしいところだと。そしてそう思わせてくれるこの作品は、素晴らしいと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2007-08-02 18:54:21)(良:2票)
62.  レミーのおいしいレストラン 《ネタバレ》 
冒頭のレミーの紹介から中盤のレミーがリングイニと一緒に料理を作るまではとても面白い発想ですごく引き込まれるものがありました。この世界にしかない世界としてしっかり完結していて、違和感なく見ることができました。ただ、気になったのレミーはリングイニの気持ちを知れるが、リングイニはレミーの気持ちがわかれていない設定に違和感を覚えました。観ている人間は、ネズミ語がわかるのでレミーの気持ちが分かりますが、リングイニはレミーのことを全然知らない。家族がいて、人間を恐れていて、料理が大好きなど、そういったレミーの感情をリングイニとは共有していないので、どうしてもこの二人の関係が薄く感じてしまいました。しかも、終盤ではほぼ全てがナレーション。説明でしかありません。結果としてそうなったのはわかるのですが、なぜそうなったのかこっちに伝わってこないので不完全燃焼な気分です。あと、あまりにも人間とネズミが近い存在になりすぎたのも納得ができません。非現実なのは全然問題ありません。でも、この作品のようにそれがあまりにも現実とくっ付きすぎると、違和感を抱いてしまいます。そして、無理に結論づけてハッピーエンドで終わらせようとしたラストは、多少強引すぎるのではないかと感じました。
[映画館(吹替)] 7点(2007-07-28 00:54:28)
63.  ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 《ネタバレ》 
物語の展開が非常に早く、テンポ良くトントン拍子でシーンが変わっていく。残念なことにぼくはその早さに着いていくことができませんでした。登場人物、物語の内容、展開などが非常に多く、またシーンが変わるのが極端に早いので情報量の多さについていけず、何をやっていのかはわかるのですが、そこへ今までの作品のように感情を乗せて物語を観ることが困難でした。また、ハーマイオニーやロンなどの成長は今回観る事ができず、それは同時にハリーの成長だと思うので、そういった面を見ることができなかったのも今まで感じていた感情的な部分を薄く感じた理由だと思います。結局、感情の変化で物語が展開していないので、出来事の連続としてでしか見ることができず、視覚的には面白かったですが、作品自体の面白さはあまり感じませんでした。
[映画館(字幕)] 6点(2007-07-21 01:12:30)
64.  痴漢男
現実味がありすぎる。痴漢と間違われて、それが逆に彼女が出来る原因になることなんてまずありえないけど、男と女の地味でゆっくりとした関係があまりにもリアルで親近感を覚えすぎて、すごく感動した。カンサイは魅力的過ぎる。あんな純情で可愛い子、世の中にいないよ。でも、キンタ。お前はまるで僕だった。情けなくて弱虫。感情移入のし過ぎで、本当にカンサイを好きになってしまったぼくがいた。この映画の人間関係の構図はあまりにも身近。ラブストーリーにはなくてはならない壁も、ベタだけどあの感じはリアルで説得力がある。そんな現実的な物語を下から支えているのは、にちゃんねらーたち。あのアニメーションで顔の見えない存在はそのままに、しかし身近に感じるというその、二兎追いながらも二兎捕まえている感が素晴らしかった。ロマンチック馬鹿に捧げる最高にピュアなラブストーリー。僕は大好きだ。
[DVD(邦画)] 9点(2007-07-12 17:43:46)
65.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 
残される者の物語ですね。テーマが明確なだけにすんなり物語が心に浸透してきて強く残りました。役者さん一人一人の演技も安定していて、安心してみることができました。ただ残念なのは、原作を読んでから観にいってしまったことです。オチがわかっているので、どうせこれはあれで、あっちがあれだろうとかゴチャゴチャ考えながら観てしまいました。それでも終盤でのドルジの回想シーンは映像化ならではの音の効果と演出により物語に集中する事ができました。もし原作を読まずに観にいっていたらと思うとすごく惜しいことをしたな、という気持ちになります。是非この作品は予備知識すらない状態で鑑賞して欲しいです。
[映画館(邦画)] 8点(2007-07-01 21:48:45)
66.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
とりあえず、観た後に「スパルタァー!」つって何かをドーンッ!と蹴飛ばしたくなりましたね。もう身体の奥深いところから漲るこの何とも言えない高揚感、興奮感。「スパルタ教育ってこれか!」とぶつぶつ呟きながら映画館から出たものです。 映画そのものに関しては、戦闘のシーンがすごかったですね。スローモーションを多用して、ドロドロベタベタした質感が画面から伝わってきます。エグくてグロくて、何度も目を瞑ってしまいましたが、すごかったです。 ナレーションに鬱陶しさを感じましたが、終盤のシーンで「あ、そういうことね」と気付かされ、この映画は歴史のお勉強だったのだと知りました。 説明が多くて、とてもわかりやすい作品でした。
[映画館(字幕)] 7点(2007-06-15 19:50:21)
67.  スパイダーマン3 《ネタバレ》 
とにかく単純明快。登場人物からストーリーまで全てがわかりやすく、子どもから大人までしっかり楽しめる作品になっていると思います。また、この作品に込められたテーマはそういった表面的な分かりやすさとは対照的に非常に深いものを感じます。ピーターの祖母以外、全ての主要な登場人物たちが何かしらの憎悪を胸に抱いています。それは現在の社会、あるいはアメリカへのメッセージのような気がします。やられたらやりかえす、目には目をの復讐心。終わりのない、いたちごっこ。そしてこの中で唯一許しの心を持つ登場人物がピーターの祖母。彼女は「怒りは自分を見失う」と言いますが、まさにその通りのストーリーになっています。一見分かりやすく単純な物語に見えますが、これは宗教的な思考の強い作品だったように思いました。それを踏まえて考えると、憎悪の塊である黒いミュータントはまさにそれの象徴で、教会の鐘の音(許し)だけがあのミュータントを倒すことができました。悲しみや苦しみ、怒りなどの感情を抑えることは非常に困難ではありますが、これを我慢、あるいは受け入れ、乗り越えることが唯一の解決法なのかも知れません。出なければ永遠に争いは終わりません。僕はそういった想いをこの作品から受け取りました。この部分まで考えると、非常にこの作品がどういった目的で撮られたかが観えてきます。スパイダーマンや他のキャラクターたちを写し、反射させることで、隠された意図も見えてきています。この作品の中で、人物を直接見ず、反射している像を見るという演出が非常に多かったのもそう言った思いの現われなのではないかと感じました。この作品にはまだまだそういった隠された演出があるような気がするので、これからもDVDや地上波などで観た時はそういったことを意識しながらこの作品を観たいと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2007-05-02 00:27:57)(良:1票)
68.  さよならみどりちゃん 《ネタバレ》 
できることならユタカみたいな人間になりたい。あれだけチョロチョロと女性を変えてみたい。でもそんな風になれるわけないから、より一層羨ましい。爽やかに最低のことをあっさり言うユタカ。でも本心でソープになれなんて言ってるわけではない。そういう言葉でしか人と向き合うことの出来ない可愛そうな男なんだ。ゆうこはゆうこで、この子も可愛そうで、何のために生きているのかも、アイデンティティーさえも見失っている。唄が下手糞で、料理も出来ず、顔は可愛いのに身体は貧弱、そして愛した人に愛してもらえない。何かを始めることも終えることもできない人間。でも、みんな形は違えど、同じような悩みを抱えている。だから分かるような気がする。うん、そんな気がした。だからこそ、最後、下手糞でも、今まで歌おうとしなかった下手糞な歌を楽しそうに歌った。そこには彼女の変化を見た。何かを終え、そして歩き出した彼女の素敵な一日を見た。
[映画館(邦画)] 8点(2007-04-30 14:51:55)(良:1票)
69.  神童
同じ事を考え、悩んでいる人と人との間に言葉は必要ない。この映画はまさにそれの塊だった。“音楽”を共有している、うたとワオの間には台詞がとても少なかった。そこには様々な意図が含まれていた。ぼくが最も強く感じたのは、この作品が説明することを避けていることだった。うたとワオを見て、感じ取り、考えて欲しいという想いが伝わってきた。古き良き日本映画にあった、「言葉で伝えられないことを言葉以外で伝える」を前面に押し出していた。情報と表現で構成された脚本には無駄がなく、見終わった後、考えたら考えた分だけ目には見えない奥行きの深さに驚かされる。この映画は多くのきっかけを与えてくれる。ドラマもしっかり描かれており、人間を観たと心底感じた。
[映画館(邦画)] 8点(2007-04-22 22:41:01)
70.  檸檬のころ
この作品はぼくの目から見れば、青春そのものだった。誰もが通り、誰もが少なからず感じる学生時代の淡い感情。ぼくの中での青春の定義は、夢中になっている状態で、それは人によって色や形や大きさは様々だけど、誰の心にも少なからず必ずあると思う。この作品に出てきた五人の男女は皆、何かしら夢中になっていた。またそれと同じように皆、悩み苦しみ、そして今を精一杯生きていた。目をキラキラと輝かせ、生き生きとしていた。理由も考えず、ただ無意識のうちに着実に大人へと成長していた。ある者は音楽に夢中になり、またある者は夢中で人を好きになり、けれども皆同じように自分の力を疑い、迷い、苦しんでいた。順風満帆に生きていない彼らの心は、痛いほど共感できる想いで一杯だった。「あと一歩踏み出せ」「もう一言なのに」そんな風に胸の中で叫んでしまう。あの頃のぼくらは、みんな不器用で、諦める勇気も始める勇気もなくて、いつも何か不安を抱えていた。だからこそ、応援したくなる。がんばれと、背中を押したくなる。青春の中で悩み苦しんでいる人間を見ると、ぼくも同じようにがんばりたくなる。大人になる少し手前の彼らは、誰かの何気ない一言で、簡単に前に進めたりする。だから、ぼくの変わりに言ってくれると、自然とありがとうと感謝したくなる。今までにも数え切れないほどの青春映画が世に生み出されてきた。それでもその中に一つとして同じものがないように、ぼくらの経験も一つとして同じものはない。だけど、心は同じ人間だから、彼らの感じることは同じように感じることができる。夕陽に染まる町並み、蝉の鳴き声、誰もいない静かな教室。日本にしかない日本の文化の中で、同じ日本人の心を持つぼくらは、彼らの見た世界に心震わす事が出来る。 夢を追い、一つの恋を終え、それでも前に進み続ける。そういった事の積み重ねが何より大切で、生きるということはまさにそういうことなのではないだろうか。この映画は呼吸をしている。ぼくはまた一つ、大切な映画に出会うことができた。
[映画館(邦画)] 9点(2007-04-22 22:16:27)
71.  チルソクの夏 《ネタバレ》 
あの時代にぼくは生まれていない。だから、どういう生活があり、どういう社会背景があったのかさっぱり知らない。そのおかげで、別に突然歌いだそうが、驚くほど元気一杯だろうと気にならなかった。 ぼくが観ていてもっとも心引かれたのは、彼女と韓国人の青年との間にある壁だった。身分の違いを無視して愛し合ったロミオとジュリエットを比喩して、二人が住む世界が違うというのを壁にしていたのは巧い演出だと思った。観ていても少しも臭くないのは、やはり映画全てがそういう演出方法で構成されているからだった。 さらに主人公の少女は走り高跳びという競技をしていたが、これもまた比喩がされており、彼女は越えるべきバーに挑み続けている。無理だと思わないその精神が、ストーリーの中にも巧く描かれていた。 韓国人の青年に対しての思いを迷った瞬間に、全てが一緒に無理だと思い始める。何のために今までやってきたのかわからなくなる。誰しも感じれる心。非常にスタンダードな恋愛映画ではあるけれど、この作品の壁の置き方は素晴らしい。 ただラスト、現代に戻ったところで「あの頃は良い思い出」というような締めくくりになっている。それは少々唐突ではないだろうか。せっかく本編で少女、あるいは青年に感情移入していた心はどう持っていったらいいのだろう。何十年という月日が流れ、心も身体も大人になった、それはわかるけど、でもぼくはそこまでは着いていけなかった。
[DVD(邦画)] 7点(2007-04-15 11:12:57)
72.  青いうた~のど自慢 青春編~
まさにこれは田舎に住む若者(僕もそう!)の理想と現実を描いた作品。東京にいけば何かが変わる、大きくなれる、金持ちになれる、そういった田舎に住む若者ならば誰もが思う理想が、現実の厳しさの前で脆くも崩れていくというストーリー。だが、そこには郷愁に駆られる若者の清き心も描かれている。逃げ帰ったわけではない。もっと早く分かっていたが、逃げになると思っていたのか、あるいはプライドが邪魔していたのか、青年は帰らなかった。あるいは帰れなかったのか。あまりにも現実的で切ない物語ではあるけれど、同時に爽やかな清々しい作品でもある。若いゆえに出来るあの行動力、躊躇いもなく好きだと言えるその純粋さ。うむ、素敵な作品だ。全ての登場人物の、痛みと喜びをわが身のことのように感じることができる素晴らしい作品でした。
[DVD(邦画)] 8点(2007-03-12 02:15:58)
73.  初恋(2006)
みなさんがご指摘の通り、登場人物の映写がまったくされていない。誰が誰で、どの人がどの人なのかまるでわからない。照明が暗いせいもあるのか、顔すらわからない。完全に人物映写の時点で失敗している作品だった。主人公二人にもびっくりするぐらい魅力がなく、薄っぺらい。宮崎あおい演じる少女の親はなぜいない。どうしていなくなった。なぜ他人の家にいるのか。そのへんがまったくわからない。もしかすると説明があったのかもしれないが、まったく印象に残っていないから説明していないのと同じ。でもって主人公の青年も酷い。何を思っているのかもわからない。無免許で運転が出来るのと、女であることが選んだ理由。おいおい、好きになった女を逮捕されてしまうかもしれない犯罪につき合わすのか?そんな事ができたくせに彼女に会いにいかない。彼女が捕まることを恐れてか?設定の時点で絶対この人、馬鹿だろう。絶対頭よくないだろう。人物映写ができていない事で、感情の部分でも辻褄があっておらず、腑に落ちないことが山ほど発生していた。ストーリーがつまらないならまだ許せるけど、人物映写ができていないってそれって、脚本のプロとして基礎中の基礎ができていないことになるのではないのか?だからもう、シーン一つ一つがバラバラ。感情のつながりを感じない。感情の変化も存在していないように見える。車内で「生理か?」「…最低」という掛け合いの後での演技はアドリブだろうか。あそこで変化が見えたような気がしたが次に繋がっていない。もし、あれをアドリブでやらせていたのだとしたら、あれは完全に監督のミスだ。あれはNGにすべきだ。もう、否定はまだまだ山ほど出てきそうだ。これ以上やったら機嫌が悪くなりそうだからもう辞める。得点の全ては宮崎あおいさんのコスプレに。まぁ、とにかく、“つまらない”以前の問題が多すぎる作品だった。
[DVD(邦画)] 4点(2007-03-12 02:01:24)
74.  いつか読書する日 《ネタバレ》 
冒頭の数シーンで田中裕子さん演じる中年女性のそれまでの人生を垣間見ることができます。毎朝行っている牛乳配達。朝の長崎の坂道を、青白い光が優しく染める。どんビキの画の中には静けさがあり、その中で僅かに聞こえる牛乳瓶のぶつかり合う音。それは町中に響く。毎朝、毎朝。田中裕子さんは、その中に完全に染まっていた。めだち過ぎず、それでいて埋もれていない。この演技。これぞ演技だと実感する。気合を入れて上る長い坂道、玄関の前で座って待っているおじいちゃんに渡す牛乳瓶、それを急かす訳でもなく呼吸を整え飲み終わるまで待つ、そこには慣れを感じる。歳を感じるのにも関わらず、老夫婦の家に来ると子どもに見える。そこには昔からの積み重ねを感じる。そして躊躇するかのような表情を見せる一軒。10分かそこらで、町にとっての彼女の存在位置を理解することができる。話が進むに連れて、彼女がなぜあそこまで辛い仕事をするのかが理解できていく。彼女の台詞にもあったように、考える暇がないほど働き、疲れた状態で一日の終わりに読書をする。それが彼女の幸せだと。しかしその一方で、その全てが“愛”を意識しない為に行われている行動だという事にも気付く。そして、彼女は意識してしまう。考えてしまう。ミスをしてしまう。そんな彼女の変化、動揺、葛藤がヒシヒシと伝わってくる。生きていること、その中で人は誰かを愛さずにはいられない。彼女もまた、愛に溺れた。象徴的な展開だった。燃えるように愛し、そして燃え尽きた。が、しかし、彼女の中にからつっかえは消えた。意識しなくてもいい日々が訪れた。と同時に悲しみを背負った。だけど、そんな表情一つも見せない。それが彼女の強さであり、美しさだった。愛する人がいなくなった家に届け続ける牛乳瓶。そこに彼女の消えていない愛を感じる。
[DVD(邦画)] 9点(2007-03-12 01:34:49)(良:2票)
75.  松ヶ根乱射事件 《ネタバレ》 
やっぱり素晴らしいです。山下監督。ふつうの演技をしてしまうであろう役者さんたちを、一体どういった方法であのように自然にしてしまうのだろう。まるで演技をしていないかのような演技。沈黙や台詞の掛け合いの一瞬の間にうまれるあの微妙な空気は、凄すぎます。ふつうの監督とはまったく違う観点。映画ならば次こうなるだろう、という僕らの予想、当たり前だと思う感情をことごとく裏切ってくれます。現在の日本で、独特の世界観をここまで強く持っておられる監督は山下監督とあと数えるほどしかおられないと思います。乱射事件というタイトルから完全にこっちは勝手に考えを膨らませ思い込む。そこがきっと山下監督の狙いなのでしょう。凄いです。あの裏切られた感。嬉しくて仕方ありません。あと、新井さん。あの人は作品が変われば人が変わりますね。それが演技なのですが、それが出来ない役者さん、あるいはそれを求めていないプロデューサーが多すぎます。この作品は新井さん以外の若手の役者さんには絶対できないと思いました。二枚目ではないけど、不細工でもない。地味ではないけど派手でもない。中途半端ではなく、完全なオリジナル。素晴らしいです。この作品もまた、中途半端でも平凡でもなく、とにかくオリジナル。異常なまでのリアルの積み重ねで出来上がったリアルの結晶。これぞダメ人間の作品。バカで、中途半端で、なんだそれって行動ばかり取る。あぁ、人間を見たな、とつくづく思う作品。
[映画館(邦画)] 8点(2007-03-12 00:47:01)(良:2票)
76.  さくらん 《ネタバレ》 
個人的には登場人物の誰にも感情移入できない作品だった。おいらんを頑なに拒んでいた主人公がいつの間にかおいらんになっていたし。よくわからない。ついていけない。設定はわかったし、主人公の性格も分かりやすかった。けど感情移入ができなかった。映像も綺麗。でもしつこい。あんまり同じようなものばかり見せられても、面白くない。金魚も、演出の一つとして巧いと感じたのですが、台詞でそれを説明してしまったらまったく意味がない。心に残らない。右から左で鬱陶しいだけ。蛇足です。そんな演出が多かった。あざとい、説明しすぎ。こっちに考えるという選択肢を与えない。全部答えを言っちゃってる。ここまでされるともう退屈です。映画の7割は観客に考えさせるというのが基本中の基本なのに、それを無視してテレビドラマのように説明する。テレビだった成功していたかもしれませんが、個人的には好きになれない作品です。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-01 03:17:21)
77.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》 
バブルの時代を知らないので、まるで非現実な世界に見えました。バブルの崩壊は多分、悲劇だったでしょう。20年経って、やっとその悲劇を遠い記憶のものに出来、その結果この作品が生まれたのではないでしょうか。現在の辛い部分と、過去の華やか部分をしっかり対比させる事で、いかに昔が夢のようで、意味馬鹿げた時代だったかが客観的に描かれていて面白かった。広末という存在を通して、バブルを否定したり、バブルはすごいんだぞとアピールしたり、その矛盾した監督の思考も理解できた。だから、その今と昔の対比は個人的には好きでした。でも、ラストで未来。しかも中途半端に描いた未来を見せられて、それが初めはただの違和感で済んだのですが、それが違和感ではなく徐々に実感として頭の中で形になった瞬間。監督の「やりたいことやった」以上の「やりすぎた」部分が見えてきて、全てに興醒めしてしまいました。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-01 02:53:20)
78.  天国は待ってくれる(2007) 《ネタバレ》 
個人的には、ベタなのは問題ないと思うのですが、ここまで全てが予定調和だと観ている方は面白くありません。映画の6割は観客の想像に任せるのがふつうですが、この作品では僕ら側が想像する箇所があまりにも少なすぎます。幼少時代の女の子の演技が非常にわかりやすいので「あぁ、この子はこの少年が好きなんだな」とすぐにわかり、大人の状態では「あぁ、この子はまだこっちの男が好きなんだ」などと想像する点はいくつかありますが、それはまぁ、理解して当たり前のような部分なので微妙です。映画の面白いところは見る側の思い込みだとかをひっくり返してくれるような展開だとか、深い感情移入ですが、この作品にはのめり込むようなポイントがなかった。友達想いなのもわかる、人を好きなる気持ちもわかる。でも、だから何?何が言いたいんだ?この作品のストーリーならテーマやメッセージがあるはずだろう。でも、この作品にはそれが薄い。薄すぎる。友情のレベルも、ふつう、家族が息子を思う気持ちもふつう。それくらいするだろうな、というレベル。地上波のレベルではないだろうか、この作品の脚本。決してつまらないわけではないが、全てがあまりにもふつうすぎて、退屈だった。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-01 02:38:51)
79.  僕は妹に恋をする 《ネタバレ》 
二人が始めて感情を表に出すシーンは、完全なるワンシーンワンカット。撮影、照明の凄さを感じます。また、あのシーンではワンカットであるがゆえに“間”が素晴らしい。流行の無駄なカッティングがない分、そこにある二人の感情が画からヒシヒシと伝わってきます。それはそこに音楽がないからであり、あるのは時を刻む時計の小さな音と、二人の息遣い。ワンカットで撮るからこそ産まれる静けさの素晴らしさ。二人の感情が緊張感となって痛いほど伝わってきました。音楽が極めて少ないけれど、随所で感情の大きなゆれが表現される時に使われている。これもまた凄い。“間”と“静”が生み出す感情の流れを監督は完璧に描いていた。監督のおかげで僕は二人にしっかりと感情移入することが出来、二人が胸に抱える喜びと悲しみをしっかりと感じることが出来た。しかし、それらは今の現代では受け入れられないかもしれない。昔は当たり前だった長回しも、今ではほとんど観られることはなくなった。地上波のドラマでは意味のないところでカットがコロコロと割られ、まるでインタビューの時間削減をしているかのようにぽんぽんと変わる。そんな時代に“間”は受け入れられられないかもしれない。でも、そんな時代に真っ向から映画の本質をぶつけるが如く、信念を貫く安藤尋監督を僕は心から尊敬し誇りに思う。時代に流されない日本映画の持つ力強さをこの先も貫き続けて欲しい。期待と感謝を踏まえて満点に限りなく近い9点を点けさせていただきます。
[映画館(邦画)] 9点(2007-02-06 22:55:32)
80.  好きだ、
17年前は言えなかった事も、今は笑って話せる。あの頃は勇気を振り絞ってやれた事が、今ではあっさり出来てしまう。何が変わってしまい、何を忘れてしまったのか、その一つ一つをゆっくりと思い出し、また未来へつなげようとする男と女の話。そこにある後悔の念や、忘れられない想い、その全てが共感でき、二人の心の奥にある繊細な変化を読み取る事ができた。台詞が少なく、それでも“間”の中にあるちょっとした視線の動きや息遣いに乗せて感情の変化を届けてくれる。心地よい静けさが素晴らしい作品だった。何度も観返したくなった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-02-03 00:24:46)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS