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anemoneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 646
性別 女性
自己紹介 2006年のレビュー本数4本ってあんまりですわね。
2005年には「姑獲鳥の夏」まで見ていたクセに。
ってこういう使い方やっぱ邪道ですよね。来年こそは。

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61.  太陽がいっぱい 《ネタバレ》 
音楽と映画って切り離せない存在である。ニーノ・ロータのあまりにも有名なテーマ曲を聴くたびに、あの美しい海の青と空の青、何も知らずに電話の呼び出しに応じるアラン・ドロンの、孤独な、なのに満ち足りた表情を思い出して涙してしまう。ただでさえ青と黄の強いこの頃のカラー映像は、最近の映画では滅多にお目にかかれないほど、この暗い個性の俳優の目と、海や空の色をどこまでも青く映し出してしまう。まるでその瞳の奥に隠された富への狂おしいほどの憧れを映し出すかのように。友を殺し、女を欺いてまで彼が欲しいと願ったものは、決して友の持つ財産だけではなかった。彼が心の底から望んでいたのは、たまたま運命のいたずらから太陽の当たる場所に生まれて来た友人の存在そのもの。アメリカから渡って来た貧しい青年は、ヨーロッパで豪勢な毎日を送る友人になり代わることを願ったのだ。羨望から殺人を犯す若者の卑屈な個性に、飢えた目をしたアラン・ドロンが見事にはまった。原作のトム・リプリーは、卑屈というよりはむしろ大胆不敵さが売り物の稀代の天才詐欺師だが、映画はその彼のキャラクターをどこまでも暗く、陰鬱なものに変えて人々の心に永遠の哀愁を刻み、パトリシア・ハイスミスの名声を確固たるものにした。それにしてもあの音楽がなかったら、この映画はこれほどまでの傑作になり得たのだろうか。
10点(2003-12-10 22:07:27)(良:2票)
62.  エド・ウッド
とりあえず現時点ではティム・バートンの最高傑作。今後もまだまだ傑作をモノにする無限の可能性を秘めた監督であるので、あくまでも現時点ではとだけ言っておく。ジョニー・デップは単なるハンサムボーイで売り続けようと思えばそういう道もあるだろうと思うのだが、敢えてこういうクセの強い役で勝負しようという強い意志が伺い知れて頼もしい存在である。おバカなドタバタの中にも、監督自身の映画に対するとてつもない愛情が感じられる、同レベルの熱狂的な映画バカに捧げられた作品として、こればっかりは絶対に譲ることができない。テーマは「人はどこまで映画バカになることができるか」または「映画は人をどこまでバカにならせることができるか」。史上最悪の映画監督は、たぶんティム・バートンが本当になりたい映画監督でもあるのだろう。万歳。
10点(2003-12-09 00:00:09)(良:1票)
63.  エイリアン
「スター・ウォーズ」を皮切りに、空前のスペースオペラブームに沸いた70年代末期。アメリカはベトナム戦争とJFK暗殺の暗い時代からようやく脱却し、人々が未来への夢と希望に溢れていたこの時代、「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」という名コピーと共に、突如夢と希望の空間を隔絶された恐怖の密室へ転換させてしまったのがこの作品である。いきなり人々の憧れに「NO」をつきつけたのも新しければ、それまで難関をくぐり抜けた一握りのエリートたちばかりだったはずの宇宙船の乗組員が、貨物船に乗り組む肉体労働者たちという宇宙を労働の場とするブルーカラーに設定したのも新しい。これってアレですよね、現代ならさしずめマグロの遠洋漁船に乗り組んでる人たちみたいなやつですよね。元々がそういう連中だから、宇宙で発見した異質な生命体に科学者ほどの危機感を持たない。「なんだこれ~」と軽いノリで、ちょっと調べてみちゃったりする。この安直さがやがては宇宙船ノストロモ号を壊滅の危機に追い込んで行くワケだが、ジョン・ハートやイアン・ホルム、ハリー・ディーン・スタントンやベロニカ・カートライトなど、渋めのバイプレイヤーを集めながらも、始まった時点では誰が助かりそうなキャラで誰が真っ先に死にそうなのか全然読めないところもミソ。集団ホラーにありがちな「主人公は絶対死なないの法則」を適用させないようにしたことで、オチが皆目予想できなくなった。H.G.ギーガーのグロテスクな世界観の中で、絶対に殺すことのできない超完全生物エイリアンと丸腰のブルーカラーたちの壮絶な戦いは、他をの追随を許さない圧倒的な存在感で映画史上に燦然と輝き続ける。
10点(2003-12-08 23:03:19)(良:2票)
64.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
原作やテレビシリーズ等で既に多くの人々にイメージづけられた個性的なキャラクター達それぞれに、役柄に見合った役をきちんと割り振り、それらがこの映画のために用意されたストーリーの中でその魅力を最大限に示すことができたという点で、正しく原作を消化し、脚色し、自らの世界観に引き込んで新しく再構築するというあまり成功例のない試みに勝利した人物として、特にアニメに関心のない私のような観客にとっても、押井守の名は長く記憶に残り続けた。たとえば生徒をどやしつけながら、今日が何月の何日なのかとうわごとのように言い続ける温泉マーク。あざやかな推理で友引町に起きた奇妙な現象の謎解きをするサクラ。そして宇宙人ならではの素朴さで、自らの夢を楽しげに語るラム。不毛な笑いが売り物のドタバタコメディマンガを原作に、ここまでそれぞれのキャラクターの持ち味を活かしたまま、独特の世界観にまで物語を昇華させた手腕は実に見事というより他にない。「アニメなんて・・・」と抵抗を持つ、実写こそ映画の素晴らしさの一つであると信じて疑わない、私もその一人である。日頃アニメに関心のない人々にこそ、この作品は滅多に観られない傑作の一つとして、是非トライしてみて戴きたいと思う。
10点(2003-12-08 22:33:21)(良:1票)
65.  いとこのビニー
スコセッシ監督のマフィア映画では、あれほどカッコいいキレっぷりを披露してくれるジョー・ペシが、こういう役をちゃんと真剣に演じてくれるのって嬉しいですね。悪趣味で下品で頭悪くて、こういう役をやれる人って頭いいんだろうなぁと思います。彼と同じぐらい下品でイケイケのモナ・リザを演じたマリサ・トメイも、ちょっとテレビシリーズに出てたぐらいのはっきり言ってポッと出の新人だったくせに、いきなりバネッサ・レッドグレーブを押しのけてオスカーを獲ってしまうって、ハリウッド史上に残る快挙だったと思います。しかもコメディで受賞ですし。これは珍しいですよね。映画は非常にテンポ良く、ほどほどに笑えますし、ちゃんと最後には爽快感もあります。本当のコメディファンにはもう一つ二つ納得の行かないレベルだと思いますが、コメディ寄りの一般作品と考えればかなりのハイレベルを保っています。かなりおバカで、ハイテンションです。はっきり言って、一見の価値はあると思います。
10点(2003-12-06 22:41:29)
66.  双生児
徹底して俗世間を排し、閉じた世界を作り上げた塚本晋也の才能に脱帽。その独特の世界に違和感なく馴染んだ本木雅弘も大物ぶりに磨きをかけている。こういう映画を作れる才能が、日本からも出て来るようになったんだなあ、とある種の感銘を受けた作品。こういう作品は、少しでも売らんかな精神がこぼれ出ると何もかもブチコワシになってしまいがちだが、揺るがぬテンションで最後まで突っ走り抜いた気合いが見事。ウソっぽさも、徹底して貫けば芸術になる。この監督が出て来て初めて、日本映画もここまで来たかという感じがした。完璧。
10点(2003-12-06 02:19:35)(良:1票)
67.  ガタカ
青の強い画面。静かな映像。イーサン・ホークの暗い個性と、ジュード・ロウの冷徹な表情。不適正者の烙印の下、それでも宇宙を目指す孤独な若者と、スーパーエリートの資質を持ちながら不幸な事故で半身不随となった挫折者の間に芽生える不思議な友情。時には自虐的に、そして自嘲的に、将来を限定され、夢見ることを否定された時代に生きる出来損ないのジェミニとも言うべき二人の姿を軸に、夢を見る自由の尊さを静かに、だが切々と訴えた至高のSF映画。優性な遺伝子を持つ若者になりすましてガタカに採用され、エリートとして宇宙を目指す主人公の身の回りに空気のように横たわる恐怖。同じように限定された将来に向かって歩き続けるヒロイン。そして不適格者でありながら命をかけて烙印に挑戦する友人に最後の夢を託す挫折したエリート。3人の一風変わった恋と友情の物語の中に、人は遠い昔に未来を夢見た幼い頃の自分の姿を重ねる。幻想的とも言うべき美しい映像は、人間世界の不条理さをほんの少しシニカルに描きながらも、明日を生きるささやかな勇気を与えてくれる。
[映画館(字幕)] 10点(2003-12-06 01:42:06)(良:2票)
68.  アルビノ・アリゲーター
「どういう映画?」と訊かれたら、「『狼たちの午後』と『死刑台のエレベーター』を合わせたような映画」と答えることにしている、ケビン・スペイシーの異色サスペンス。つまらないひき逃げ事件を起こしたチンピラ3人組が、たまたま一休みを決め込んだ酒場の客に大物武器密輸人が混じっていたため、いきなり警官隊に包囲され、追い詰められて行く数時間の模様が、密室ならではの異様な緊張感の中で描かれて行く。単なる勘違いが招いた泥沼の包囲劇は、やがて小悪党らしい気の弱さで逃げ腰な展開をして行くのだが、マット・ディロンにゲイリー・シニーズ、ウィリアム・フィチナーといういかにもな顔ぶれといい、人質役のフェイ・ダナウェイ、スキート・ウールリッチなど個性豊かなメンバーで、良く出来た舞台劇を観ているようだ。これが初監督のケビン・スペイシーの知性と才能に驚嘆させられる緻密なプロットと上質な演出。密室劇というスタイルで観客の心をグイグイと引っ張って行く手腕は見事というより他にない。派手さはないが、ガッチリと良く出来た映画、というのが本作の印象である。これは上手い。
10点(2003-12-06 01:28:48)
69.  ファイブ・イージー・ピーセス 《ネタバレ》 
「イージー・ライダー」を動とするなら、「ファイブ・イージー・ピーセス」は静である。エリート音楽一家に生まれ、将来を嘱望されながら石油採掘場で肉体労働に従事するボビーは、自由を求めてアメリカ中を旅するキャプテン・アメリカ&ビリーのコンビとは対照的な存在だ。彼らに共通しているものは唯一つ、現実からの逃避。混迷する時代の中で、将来への夢も目的も見失ったアメリカそのものの姿を象徴するかのように、その日暮らしを続けるボビーの日常。逃げることしか生き延びる道を知らないボビーの前に、言葉を失くした父は答える術を持たない。ただ無学であるがために、したたかに明日を生き抜いて行くであろうボビーの恋人レイの無垢な瞳だけがこの映画の救いだろう。ラストシーン、妊娠した恋人からも逃げ出したボビーの帰りを疑いもせず待ちながら、雨のしょぼ降るガソリンスタンドでコーヒーの紙コップをかじり続けるレイの無欲な眼差しこそ、精神の崇高な自由という幻想に追い詰められて行った60年代のアメリカが見落としていた真実そのものなのだ。逃げるアメリカ。汚辱にまみれたその魂の再生を予知するかのように、無知で愚かなレイはボビーが戻るのを待っている。おそらく彼女はその愚鈍さで、たくましく赤ん坊を産み育てて行くだろう。「イージー・ライダー」を編集段階まで監督しながら、ついにクレジットされることのなかった監督ボブ・ラフェルソンが、再びジャック・ニコルソンと組んで作り上げた、この作品はアメリカン・ニューシネマというムーヴメントに対する一つの答えでもある。
10点(2003-12-05 00:59:14)
70.  ジャイアンツ 《ネタバレ》 
伝説のスター、ジェームス・ディーンの遺作として余りにも有名な作品だが、個人的には初の本格的映画として評価したい。この作品で見せたジェームス・ディーンの素晴らしい演技力は、単なるアイドルにとどまらず、彼が無限の可能性を秘めた演技者であったことをうかがわせるには充分である。正直なところ、この人がこの若さで急逝しなければ、あの人やこの人や、何人もの「大物」が現在の地位を保っていたかどうかは怪しい。死ぬことによって伝説となったスターは多いが、死ななくても伝説となり得たのではないかと想像できる数少ないスターである。アメリカン・ドリームの体現者として富を掴んだ貧しい牧童は、ついにその人生で手に入れることのできなかった愛だけをいつまでも望み続ける。努力や勇気こそが報われる道であると説き続けて来たアメリカの正論を、踏みにじるのがこの映画だ。愛こそが人生で手に入る唯一にして最高のものであるという少々使い古された感はあるが、富や名声だけが人を幸福にするわけではないと歌ったこの作品の精神はやがて次なる世代のアメリカン・ニューシネマに受け継がれて行くことになる。ジェームス・ディーンの前にジェームス・ディーンはなく、ジェームス・ディーンの後にもまたジェームス・ディーンはいない。どんな役者も成し得なかったこの小柄で貧相な演技者の足跡として、忘れることのできない作品である。
10点(2003-12-03 01:44:14)(良:1票)
71.  狼たちの午後 《ネタバレ》 
いろいろな価値観があるとは思うのだが、とりあえず「何回観ても飽きない」ということを一つの価値観として捉えるなら、オチがわかっているにもかかわらず何度でも夢中になって観てしまう作品としては「太陽がいっぱい」と並んで迷わず挙げる作品。あまりにも無計画な銀行強盗を企てた一味が、絶望的な包囲網の中で繰り広げる人間性剥き出しの数時間のドラマは、人質との間に生まれた奇妙な連帯感や仲間同士の裏切り、挙句は主人公ソニーの「愛人」まで登場して予想外の方向へと転がって行く。愚かな人間たちの、哀れな中にも笑いを誘う人間模様は、やがて観客の祈りも虚しく最悪の結果へと流れ着いて行くのであるが、後味の悪さとは裏腹に奇妙な安堵感をもたらすのはひとえにソニーの絶望的な人生と、その先に待っているであろう二重、三重の後悔にまみれた汚辱の後半生が誰の目にも明らかであるからだ。根っからのワルでなく、弱さゆえに愚かな賭けに踏み切らざるを得ない人生の落伍者たちの姿が、何故か人々の心を惹きつけて離さない。これがあるから私は、アル・パチーノが何をやっても許してしまうんだよなあ。そういう意味では、私も同罪なんだ。早逝した個性派、ジョン・カザールの演技も特筆モノ。本当に惜しい人を亡くしたものである。
10点(2003-12-03 01:30:37)(笑:1票) (良:1票)
72.  交渉人(1998) 《ネタバレ》 
後にも先にも、私の映画人生の中で最も多く劇場まで足を運んだ映画。現在の私のちょっと異常とも思えるサミュエル・L・ジャクソン狂の元凶ともなった作品。ミステリーとしての出来栄えもさることながら、プロの人質交渉人が人質を取って立てこもり、別の人質交渉人と交渉を続けるという着眼点が素晴らしい。親友を亡くし、障害者基金の使い込み容疑をかけられて窮地に追い詰められる人質交渉人という役柄もオイシすぎるが、サミュエル・L・ジャクソンの天性の不幸顔がこの役を限りなく暗いモノにした。稀代の犯罪者役としてゲイリー・オールドマンを凌ぐかに思われたケビン・スペイシーを善玉として持って来たキャスティングも見事。結果、正義の味方ケビン・スペイシーをして若い女のコたちのアイドルにまで押し上げる作品となったが、タフで、頼れる、クールな男として突っ張りぬいたサミュエル・L・ジャクソンの「パルプフィクション」に次ぐハマリ役として何度観ても飽きることがない作品である。残念ながらラストのオチにはいくらなんでも天才ブリが発揮されすぎた気もするが、まぁIQ180の人たちのすることだから凡人にはちょっとついてけなくても仕方がないんではないだろうか。どうもここに至る経緯を観ても、どちらもソコまで凡人離れしたIQの持ち主には見えないんだけど。そこはまあ、ご愛嬌。あくまでも娯楽映画としての満点。
10点(2003-12-03 01:22:18)(良:1票)
73.  トゥルー・ロマンス
一瞬のうちに燃え上がり、最後の最後まで一途に突っ走るハイテンションな恋。誰もが心の奥底で憧れながらも、実際に手にする人は滅多にいない「本物の恋」を具現化した、現代人にとっての究極のファンタジー。「トゥルー・ロマンス」というベタベタなタイトルからも伺い知れる通り、ここには打算もなければ駆け引きもない。オタクなコミック店員と、駆け出しのコールガールという、あんまり頭の良くない二人だからこそやってのけられる無軌道で出たとこ勝負な逃避行を描いたこの作品は、混迷を極める「今」を生きる全ての人々に、人間本来のピュアな欲望と、シンプルかつストレートな行動力への憧憬を起こさずにはおれない。いろんな意味でおバカな人々、たとえば短い人生の中で全ての薬物にトライすることに情熱を傾けている麻薬中毒患者や、プリミティブに現金を追う人々、息子を守るためなら命も辞さない父親は体を張って追っ手の行く手を遮ったはずが、壁にはしっかり息子の連絡先、当の息子はピンク色のキャデラックというあまりにも派手な車に乗って一路西海岸を目指す。コミカルというにはあまりにも愚かな、これら登場人物の姿を通して、人の世のバカバカしさ、人生の無意味さ、唯一「愛する」ことのみによって救われるシンプルな魂のあり方を映画はつぶさに描き出して見せる。ドタバタ劇と呼んでしまうにはあまりにも衝動的な、金でなく栄光でもなく、多くの人にとって今や何よりも手に入れることの難しくなった「トゥルー・ロマンス」を、安っぽさのオブラートに包んでポン!とテーブルの上に投げ出してみせたこの作品は、せつないまでの荒々しさと無知であることの楽しさを観客の心によみがえらせてくれる。テカりきった肌にくたびれた表情、見事につけ根から地毛の黒さを覗かせたイミテーションブロンドのアラバマが、衝動的に人殺しをして戻った恋人に言う台詞がいい。「なんてロマンティックなの!」
10点(2003-12-03 01:10:07)(良:4票)
74.  セブン
恥ずかしながら、20年以上映画を観ていてこれほど「映像」そのものの雄弁さに気づかされた作品は初めて。引退を間近に控えた老練な刑事と、活気逸る新米刑事のコントラストを軸に、前半は雨、雨、雨の陰鬱な街をカメラは人の腰から下の位置で水平に移動する。対象的な後半は、晴れ渡る郊外に舞台を移し、空撮を多様した縦のラインでカメラはちっぽけな人間達を見下ろす目線。7つの大罪はストーリーを組み立てるためのモチーフにすぎず、映像のダイナミクスにあっと驚かされながら最後まで一気に引っ張って行く手腕には脱帽した。刑事部屋や図書館で見られる完璧なパンフォーカス、執拗なまでに遠近法を強調したラインの美しさや図書室のグリーンのライト、ミルズの追跡をどこまでも下から追い続けるカメラの目線、光と影、色と形、映像そのものが持つ凄まじいまでの存在感が、ストーリーの異常なまでのウソっぽさを全て忘れさせてくれる。何度でも観たくなる、神々しいまでの美しさがここにある。
10点(2003-12-02 01:00:47)(良:9票)
75.  チャイナタウン
スタッフ、キャストの遊び心が楽しい、ハードボイルドをとことん遊んだ映画。浮気調査専門の私立探偵が元警官なのもハードボイルドなら、浮気調査を頼みに来る女が偽者なのもハードボイルド。ハメットが、チャンドラーが築き上げた、どこまでも情けなく己を笑い飛ばす悲しい男たちの後姿を、オリジナルシナリオで描き切った心意気は見事。ワンカットごとにクスクス笑いをこらえる撮影現場の茶目っ気が伝わって来るかのような、ベテラン達だけに許される大人の余裕が楽しい作品。「チャイナタウンで起こったことは忘れるんだ」・・・いかにもな名文句と、哀れな女と悲しい男。二重の責め苦を背負った女をけだるげに、ミステリアスに演じたフェイ・ダナウェイの存在感と、どこか間抜けで人が良く、タフになり切れない私立探偵ジャック・ニコルソンのとぼけた表情が、どこまでもやるせなく観客の心に残り続ける。傑作。
10点(2003-12-02 00:34:49)(良:1票)
76.  キャリー(1976) 《ネタバレ》 
「キャリーをいじめないで。彼女が泣くと恐ろしいことが起こる」・・・怪物と呼ばれた一人の少女、キャリーを主人公に、望まぬ妊娠から生まれたわが子を憎悪する母親と、死に物狂いで愛情だけを求める娘の姿を描いたジュヴナイル・ホラーの傑作。キャリー・ホワイトは17歳の時、ハイスクールのシャワー室という最悪な状況で初潮を迎え、しかも女性の生理に関する知識は皆無。母親のマーガレットは狂信的なキリスト教信者であり、セックスを憎悪し、私生児キャリーを徹底的に虐待する。母親の娘に対する仕打ちは、自ら犯した罪の償いそのものであり、彼女を生み落とした罪により母子共々地獄の業火に焼かれると信じている。そしてキャリーが、人知れず恐ろしいテレキネシスの持ち主であることを誰も知らない・・・ アダルト・チルドレンが話題になるのはこの作品から実に20年以上も後のことであるが、愛情に恵まれなかった子供としてのキャリーこそまさにACの先駆けとも言えるだろう。彼女は同級生たちからの執拗な苛めに遭い、異端として仲間はずれにされながらも母親の許しだけを乞い続ける。癒されない心、ひたすらに母親の愛情だけを望んだキャリーの末路に、今なお涙を絞り取られる作品。有名なラストシーンは、この後ホラー映画の一つのパターンとして広く模倣されることになる。ブライアン・デ・パルマの出世作としてあまりにも名高い作品だが、主に雑誌や新聞の記事と当事者の回顧録・インタビューなどをつなぎ合わせるという実験的な形で描かれた原作の、映像化の難しい部分を巧みなエピソードでつないだ辺りは、デ・パルマが単なる「映像の魔術師」にとどまらないことを示していると思う。
10点(2003-11-30 23:45:29)(良:3票)
77.  ニュー・シネマ・パラダイス 《ネタバレ》 
映画を愛する人としての良心が試される映画。あざとさでなく、お涙頂戴でなく、自分を育てた人、街、時代に愛情と感謝の気持ちを持てる人がいったいどれだけいるだろう。映像としてエピソードを語る手法の巧みさにかけては、この時代、この人の右に出る者はほとんどいない。たとえば広場の建物の壁に映し出される映画。たとえば切り取られ、フィルム缶に封印されるキスシーン。少年トートはこの街で映画を愛することを学び、映画の作り手となることを選ぶ。遠い街、遠い日々、決して続きの語られることのない未完の恋、少年を取り巻く暖かい人々の笑い声、すべての思い出がアルフレードの残したフィルム缶の中から甦って来るラストシーンは、私がこれまで観て来た映画の中で唯一、声を出して号泣することを止められなかった瞬間である。この映画を観る時、人はトートと少年時代を共に歩く。この世に映画があることを喜び、笑い、そして泣く。映画を愛する全ての人々のために、誰よりも映画を愛する作り手から贈られた、これは大いなる贈り物である。
10点(2003-11-30 22:35:01)(良:1票)
78.  ラスベガスをやっつけろ
ドラッグ、ロック、ロードムービーというアメリカン・ニューシネマの手法を借りて、この時代を自嘲的に振り返ることを許される最後の世代としてテリー・ギリアムが描いた最後のニューシネマ。アメリカ史上最大の汚点であり、人々が出口の見えない焦燥感の中を彷徨い続けたドラッグ・カルチャーの時代。ジミ・ヘンドリクス、ジム・モリソン、ジャニス・ジョプリンがドラッグに命を散らして行ったこの時代が、アメリカにとっていったい何だったのか。多くの人が目を背けたいと願う、人々が現実から目を背けた時代に、真っ向から「NO」の答えを突きつけることが許されるのは、実際にこの時代を駆け抜けた一人だからこそ。その義務を、今このタイミングできちんと果たしておこうとしたテリー・ギリアムの、これは遺書代わりとも言える渾身の力作。ドラッグ漬けの二人の奇矯な振る舞いにお腹を抱えて笑いながらも、その行動の無意味さと非生産性には呆然とするばかり。「神の試作品」ゴンゾはあっさりアメリカにサヨナラを言い、祭りの後の静けさの中で抜け出し切れなかった過去を書き綴るラウルの姿をカメラは遠く俯瞰で捉える。アメリカの抜け出せなかった長いトンネル、その先には灯りが見えると誰もが信じたがっていた時代。無駄だったよね、で片付けるには人々の支払った代償は余りにも大きい。敢えて美しすぎる粉飾もせず、無駄を無駄として冷徹なまでに描き切ったこの作品のラストシーンに、涙が止まらない。
10点(2003-11-30 17:33:49)(良:3票)
79.  アマデウス
神に見捨てられた男・サリエリと、その歪められた羨望の的であるモーツァルト。栄光と挫折、欲望と愛情、音楽史上最大の謎と言われているモーツァルトの不可解な最後を描いた80年代の最高傑作。「神よ、私がモーツァルトを殺した」・・・衝撃の告白から始まる息をもつかせぬ160分間で、天才の名を意のままにしたモーツァルトの華麗なる半生と、芸術に理解のない父親の下で音楽への情熱をくすぶらせた少年サリエリの努力に次ぐ努力、名声への渇望を対比させ、やがて物語は運命の復讐劇へと突き進んで行く。凡人として生まれながら身に余る夢を抱いてしまったサリエリの苦悩は、世の中の圧倒的多数を占める我々凡人の心を掴んで離さない。「カッコーの巣の上で」と並んで、ミロス・フォアマンの名を映画史上に永久に刻みつけた傑作である。
10点(2003-11-29 23:19:27)
80.  12モンキーズ 《ネタバレ》 
テリー・ギリアム作品にはいまいちピンと来なかった私だが、ギリアムファンから総スカンを食らったこの作品には大いに笑わせてもらった。とにかく物語そのものが成立してないジャン、と気づかされるラストのオチには呆然自失。出だし快調、あちこちで同じ格好で洗われているブルース・ウィリスの背中に爆笑、「オレは未来から地球を救いに来た」と大真面目に語る間抜けぶりに爆笑。おそらくブラッド・ピット以外の全員が、真剣にSF映画を作っていると信じ込まされているかのような異様なひたむきさが余計に笑いをそそる。これはテリー・ギリアムとブラッド・ピットが徹底的に世の中を笑い飛ばしちゃった映画。テーマは矛盾、だから笑われているにもかかわらずヤラレタ感からついつい笑ってしまう自虐的な作品。ブラピのキレっぷりだけは確信犯だったような気がします。何度観ても笑える、コメディだとわかって観ていればこれほど楽しい作品はない。「12モンキーズ」という意味ありげすぎなタイトルにも打たれました。撃沈です。過去最高に笑った映画でしたが劇場で笑っているのは私一人だったのが微妙に寂しくもあり嬉しくもあった。マジメな人には向かないだろう。
10点(2003-11-29 14:30:56)
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