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delft-Qさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 122
性別 男性
自己紹介 自分の感性は、きわめて平凡だと自分でもわかっています。ただ、ほんとうはよくわかっていないのに、「わかった!」「よかった!」というのだけはしないつもりです。

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61.  切腹 《ネタバレ》 
仲代・津雲が「千々石求女は、少々縁がありましてな」(ちょっとセリフ違う)と言い出すシーンから、ぐっと引き込まれた。井伊家の庭先にいる現実と、津雲の語りで繰り出される過去とが重層的な映画構造をつくり、複雑な面白さが展開されていたように思う。みなさんおっしゃるように、このあたりの脚本の工夫には冴えが感じられる。   回想が現実に追いついてからは重層構造もなくなり、以後は一般的な映画と同じように進展、やや平板な印象に。復讐劇という大筋は読めているものの、どういう落とし前の付け方をするかについては、引き続き引っ張られる。   最終盤の立ち回りについては、ところどころ稚拙な部分はあるが、主役が圧倒的に強くて敵を斬り続けるといったものではなく、仲代・津雲も次第に疲れてきて、少しずつ傷つきながら闘い続けるふうにしたのはリアルでよかった。で、津雲が死に、三國家老が生き延びるという大ラス部分は、前半の脚本の工夫を見たあとでは、いささかすんなりと終わった感があり、少し物足りない。   では、どうすればいいのかとなると、よくわからないが、たとえば、見る者の意表をつく、胸のすくようなセリフで津雲が喝破し、三國家老がもっと打ちひしがれるといったシーンとかあれば、もう少し盛り上がったような気がする。そのうえで、歴史上の「記録」ではそんなこと一切なかったとする“虚構性”を見せつけたほうが印象がより鮮やかになったような気がする。   40年前の映画なので評価がすごく難しいけれど、いちおう7点也としておきます。仲代さん、昔のほうがうまかった?
[DVD(字幕)] 7点(2005-07-14 01:38:15)
62.  スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 《ネタバレ》 
30年近い年月を経てついに完結したSWオデッセイ。あのジョン・ウイリアムズのテーマ音楽とともにエンドロールが流れ、そしてすべてが終わった瞬間、必ずしも特別なSWフリークというわけではない私でも、感無量的気分になりました。封切り第1回上映だった館内からは、満場ではないものの拍手も湧き起こりました。   「エピ1」「エピ2」とクオリティが低下していた(と私は思う)だけに、最終作となる本作がいかがなものか半ば期待、半ば不安な心境で観賞しましたが、これまでいちばん人気のあった「エピ4」および「エピ6」に匹敵する水準だと思います。いや、全6作シリーズのなかで、もっともよい出来だったといっても過言ではないというのが私の評価です。   突っ込みどころは、もちろんあります。アナキンとパドメはなんであんなペントハウスみたいな家で生活できてるの?(笑)とか、いくら何でもあんなに溶岩の真上にいたら焼け死んじゃってるよとか、R2D2ちょっとスーパードロイドすぎない?とか。でも、まあ、そんなことはいいじゃないかと思わせるだけ、観客をグイグイ引き込む力があったと思います。   あえてケチをつけるとしたら、最高の見せ場であるアナキンの“転向”の描き具合があっさりしすぎたこと。もちろんパドメの命を救いたいという葛藤が説かれてはいましたが、マスターウインドゥを殺してすぐさま簡単に議長に「こんどは、あなたがマスター」とひざまづき、ひいては子どもたちをも虐殺しまくるというのは?でしたね。たとえば、子どもたちを殺すシーンそのもので、もっともっとアナキンの苦悩を描くなどしてほしかった(もっとも、子ども向けの要素が強い本作ではそんなことできないだろうが)。   ビジュアルエフェクトも素晴らしい進化を遂げており、大団円にふさわしい仕上がりでした。映画に求めるもの自体がSWシリーズと完全一致しませんのでこの点数ですが、私としては最大級の賞賛としての8点也を捧げます。なお、ベイダーの扮装をした人は見かけませんでした(笑)。 
[映画館(字幕)] 8点(2005-07-09 17:06:09)(良:1票)
63.  リトル・ダンサー 《ネタバレ》 
この映画のすぐれた点は、登場人物ひとり一人がすべて魅力的に描かれているところです。主人公のビリー少年はもちろん、あれほどバカにしていたバレエのためにスト仲間を裏切ってまでお金を得ようとするお父ちゃん、ビリーを乗せたロンドン行きのバスが出発するとき、なんと「I miss you」と泣かせる言葉を発する兄貴、ビリーの才能を発掘し、実はかなり献身的な指導を施す先生、そして何といっても映画に不思議な魅力を添えた美少年マイケル。クリスマスの夜は切ない限りで、彼にとっては一生忘れられない晩となったことでしょう。誰一人として嫌な人物はおらず、ともすれば勧善懲悪型のドラマが多いなか、脚本のよさが光ります。   ただ本作の場合、最初からサクセスストーリーとなるのは既定路線なだけに、いかに観客を退屈させないかの工夫が求められる余り、ところどころこねくり回したように感じる箇所もありました。たとえば、合格通知がきたシーンなど、もっと素直に喜びを表現したらいいのにと、このあたりはイギリス人の理屈っぽさが鼻につくものがないではありませんでした。もっともそれは、以前、ロンドンで人種差別を受けた者の悪印象が残っているせいかもしれませんが(苦笑)。ともあれ、見終えたあと清々しい気持ちになれる秀作でした。ということで7点也です。原題より邦題のほうがいいですね。
[DVD(字幕)] 7点(2005-07-07 22:33:43)
64.  ギャラクシー・クエスト 《ネタバレ》 
おバカ映画のふりをしていますが、脚本がすごくよくできています。宇宙機雷を活用した攻撃方法やオメガなんとかという謎の究極兵器によるドンデン返しなど、「なるほど~!」と快哉を叫んでしまいます。また、泣かせどころもあって、トカゲアタマの弟子が死ぬシーンなど、私も怒りにふるえてしまいました(笑)。さらに、ラストのほうではファンたちのサポートが絶大な役割を果たしており、細かい配慮も怠らない筋書きが見事です。   そうしたスペオペとしてもよくできていますが、本作には「+α」のテーマが込められています。それは「自己再発見」です。最初、「ギャラクシー・クエスト」出演者の面々は、現状に倦み無気力、惰性に流されてイヤイヤやっているばかりでした。しかし、一連の体験を経て、ラストでは見違えるように輝いていており、自分たちに誇りさえ感じられるように変わっています。自分のなかにあった可能性と素晴らしさに気づいたわけです。   サーミアン人たちにしても、あれほどの科学力をもちながら、当初は自主性が欠落していました(このあたりは社会批判とも受け取れる)。ちょっと強い敵にはなぶられ放題で、誰かのマネをするしかできない、ひ弱な花といった存在でした。が、こちらも最後には自分たちのなかに真のリーダーを見出し、雄々しく大宇宙へと旅立っていきます。   つまり、自分を高め、強めてくれるものは、実はもともと自分のなかにあるんだよというメッセージであり、そのため観客も観終えてから、なんとなく勇気がわいてくるような気持ちになれます。本作は、そうした人間賛歌の精神が通底しているがゆえに、観ていて気持ちよく、心温まるものが感じられるのだと思います。すばらしきB級映画ではありませんか! ということで、8点也です。「ギャラクシー・クエスト2」を希望! 
[DVD(字幕)] 8点(2005-07-06 13:27:39)(良:4票)
65.  オーシャンズ12 《ネタバレ》 
好きか嫌いかでいえば、この映画、決して嫌いじゃないです。軽いユーモアを全編にちりばめながら、リッチだけれどカジュアルなところが、いい雰囲気じゃないですか。   ただ、映画の出来という面からいえば、これはもうヒドイといわざるを得ません。ジュリア・ロバーツの禁じ手はやっぱり禁じ手でしょう。脚本家の自己満足にすぎず、ごっつう白けさせられます。ヴァンサン・カッセルの体操的泥棒術は、いくらなんでも誤魔化しすぎ。ロープも何もなしに忍び込む方法は、「いわなくても、わかるだろう」なんていうセリフで説明したことにするなど、脚本の行き詰まりを露呈しています。前作にあった緊迫感や盗み自体の工夫で見る者をうならせてくれる見せ所も欠落しています。撮影面でも、あまり意味のないハンディカメラの多用など疑問が残ります。   と考えてくると、結局本作は、予想もつかない盗みのテクニックを堪能させてくれるものでも、信じられないようなアクションで圧倒してくれるものでも、高度な頭脳ゲームで観客を引きずり込んでくれるものでも、いずれでもない中途半端な作品に終わっていることが浮き彫りになります。アムスでの盗み、さほど意味がないわりに(映画の)時間を取られた感じがしたから、ローマ一本にしたほうが濃い内容になったでしょうね。ということで、残念ながら4点也です。ゼタ=ジョーンズ、ジュリア・ロバーツも妙にやつれて撮られていてもったいない。 
[DVD(字幕)] 4点(2005-07-05 00:44:48)(良:1票)
66.  さらば、わが愛/覇王別姫 《ネタバレ》 
夢がうつつで、うつつが夢……蝶衣にとっては、石頭とともに舞台でライトを浴びている時間が人生のすべて。幻想の劇世界のなかに生の証を求めようとする蝶衣の精神は倒錯したものではある。だが、倒錯の世界に埋没するしか、蝶衣は自分の愛を満たすことができない。なんと哀しく、純粋な愛か。そのありさまに気づくとき、観る者は、性差を超え、ノーマル・アブノーマルといった既存の枠組を超えて、激しく心を揺さぶられる。   時代背景は中国が歴史の波に翻弄され、大きく揺れ動いた時期。日本軍の進駐、文化大革命の洗礼……。波乱が訪れるたびに、人心は猫の目のように様変わりし、社会は変貌をとげる。そうした、あらゆるものが不定形で変転きわまりない一方、蝶衣の愛だけは岩盤のように不変なものとして描かれる。その対比が際立つ脚本は見事であり、これほど愛を貫ける人間の凄みといったものが胸に迫る。   最終的には蝶衣の愛は、蝶衣自身をも飲み込んでしまったということになろうか。決して実ることのない愛であったが、いや実ることのない愛であったがゆえに、それに殉じる道を選択した蝶衣の生きざま(死にざま?)は哀れを誘い、私はこみ上げてくるものを止めることができなかった。   レスリー・チャンの美しさはこの世のものとは思えぬものがあり、本作の妖しい魅力をより増していた。あの「ピャラ、ピャラ~」という京劇の切ない笛の音を聞くたびに、私はこの「覇王別姫」を思い出さずにはいられない。3時間があっという間に感じられた壮大な叙事詩に敬意を表し、フルマークを捧げたい。子役も大変素晴らしかったのは、いうまでもない。
[DVD(字幕)] 10点(2005-07-03 19:18:51)
67.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
期待値が高かっただけに、ガッカリした面が大きかったです。私は映画に対しては、脚本やストーリーを重視するタイプなので、あの結末は……いただけません。もっとも100年も前に書かれた原作ですから、今日的視点でアッというような物語を求めるのは、ムリがあるのですが。   主人公の活躍は、「敵を倒すため」ではなく、ひたすら「逃げ切るため」で、映画がかなり進んでも人類の根本的な反撃がなかったので、どうやら「インデペンデスデイ」のような展開ではなく、ラストは、本作のようになるか、あるいは公害によるかのどちらかだろうなと、途中で見えました。   冒頭シーンで、主人公がジャンパーのポケットに「冷たくなっていた石のようなもの」を入れたので、これが伏線かと思っていましたが、結局、それは何もなく、この点は映画的欠陥だと感じました。トライポッドマシンは「ナウシカ」の巨神兵に似ており、もしかしたら宮崎作品へのオマージュも込められているかもしれないと、一緒に見に行った人と話していました。   映像と音響が命の作品で、そういう意味では映画館での鑑賞が正解かもしれません。ということで、6点也です。ティム・ロビンスは、最近、こういうちょっとイカレ加減な役ばっかりですね(笑)。  
[映画館(字幕)] 6点(2005-06-30 11:03:38)
68.  ソウ 《ネタバレ》 
面白かったです。よく練られた脚本で、観終えて「非常に緻密な映画だったな」という印象をもちました。もっとも、それはあくまでも印象であって、具体的に何がどう緻密なのかは判然としませんでした。その後、「完全解読」なるサイトがあると知り、それを読んで感服しました。ほとんど、シャーロック・ホームズ級の観察と洞察で、見事にこの映画の絡まり合った糸をすべてほぐして明らかにされています。   あそこまで読み解ければ見応えもすごいものがあるのでしょうが、私なんぞの読解力では到底ムリ。ですから、完全解読さんほどの見応えは得られませんでした。それはおそらく、大多数の人も同じでしょう(違う?)。制作者側にしても、あらゆるパーツをくまなく汲み上げての鑑賞までは期待していないでしょう。   そういう意味で、本作はどこまで読み解けたかによって観る人の満足度が違ってくるのだろうなと思います。脳内整理能力と観察力と推理力が問われる映画ですね。したがって、このレビューでの各人の点数は、そのまま頭脳明晰度を示しているといえるかもしれません(笑)。ま、私ゃこんなもんだろう、という7点也です。でも、犯人の目的が「生命の大切さを訴えること」というのは違うと思いますね。犯人は「安寧」を得たかったのだと私は見ました。それから決定的な違和感として、いくら「最前席」といっても、死んだふりをしていては何も見られないと思うのだが。 
[DVD(字幕)] 7点(2005-06-26 22:43:31)
69.  ガタカ 《ネタバレ》 
まるで鉄道列車のように頻繁に飛び立っていくロケット、血液照合でIDチェックするゲートやハンディスキャナー……そうした近未来のどこか無機質、どこか醒めた雰囲気が抜群によかったです。テーマ自体は、逆に、古典的といってもいいもので、「努力する者は、たとえ資質で劣っていても報われる」というメッセージ。ヘタをすれば、汗と涙のお決まりの物語になりかねないところを、乾いたタッチで新鮮に見せました。   と同時に、本作が深みを増したのは何といってもジェロームの存在。本来、スーパーがつくほどのエリートであったはずの彼の挫折、大金を支払ってまで自分の痕跡を歴史に刻みたいと欲した強い気持ち。しかも、念願が成就した際に選択した、あの強烈な結末……。正直なところ、凡人の私なんぞには量りかねるものがありましたが、上り詰めた人間には、「堕ちることが許されない」という哀しい孤独な世界があるのだなとは感じました。   かたや資質には恵まれていないものの情熱と努力で夢を手にしたヴィンセント、こなた素晴らしい資質をもちながらも他人を借りねば夢を果たせなかったジェローム。不完全と不完全が補い合って初めて何かを得られるのだというストーリーは、絶対に完全などあり得ないわれわれに、常に「足らざるを知れ」という教訓も残してくれます。   ラストの抜き打ち検査でヴィンセントの正体がバレたときの係官の対応が最高でした。ということで、納得の8点也です。ユマ・サーマン、こういう役はピッタリ。 
[DVD(字幕)] 8点(2005-06-22 22:17:30)(良:2票)
70.  ペイチェック 消された記憶 《ネタバレ》 
まあまあ、つうところではないでしょうか。アイデアはいいと思うんですよ。失った自分の記憶をたどるのはサスペンス的要素もあるし、その失った記憶のなかには自分の未来も入っている――つまり、過去の記憶を探すことで未来がわかるというパラドキシカルな設定も面白いと思います。   ところが本作は、「いかにマシンを壊すか」の物語になっているんですよね~。謎の20アイテムも「急場を逃れるためのツール」という役回りです。そうではなくて、「いかに失われた記憶を取り戻すか」の物語にして、20アイテムも「記憶を取り戻すためのツール」にしたほうが面白かったんじゃないかと思うんです。つまり、アクションは犠牲にして、サスペンスに全力投球するということです。もっとも、監督がジョン・ウーだからムリな相談なんですが。   主人公が死ぬシーンが何度も出てきたわりには、簡単に(都合よく)死なないですんだのも違和感がありました。どうして死ぬ運命を変えられたのか、説得力が弱いです。そのあたりの処理は、「マイノリティ・リポート」のほうがうまかった。   もし別の監督が映画化していたら、かなり違ったものになっていた気がします。なんでもかんでもアクション命というのは幅が狭いですよ、ウー監督。ということで、5点也です。ユマ・サーマン、こういう役、合ってません。
[DVD(字幕)] 5点(2005-06-19 19:12:55)(良:1票)
71.  光の旅人 K-PAX 《ネタバレ》 
これを投稿する時点での平均点が6.68点、最多点数が6点。ん~、厳しい。この作品、ワタシ的にはかなり素晴らしいと思うんですが。よく練れた脚本、ケビン・スペイシーの不思議感をうまくにじませた好演、静かに心に届いてくる劇中音楽。センスあふれる映像、どれも高い次元でバランスが取れていると思います。   全編通してSFファンタジーテイストが維持され、単純にエンタテインメントとしても楽しめますが、本作の正体はそれだけにとどまりません。大気や水、食品は汚染され、高級ホテルに出入りするような人間もほとんどが「臭い」。にもかかわらず、それに気づかず、あるいは内心気づいていても平然と生活している私たち。ピュアに反応する人間は「あいつはオカシイ」で片付けられ、精神病院に入れられてしまっています。   そんな理想とはほど遠い地球の現状から、K-PAXへの移住に憧れる患者たち。でも、プロートは連れて行けるのは一人だけといい、3つの使命を与えた患者には最後の使命は「ここに残ることだ」と伝えます。あるいは、別れ際、「K-PAXを見てみたいな」というパウエル博士にプロートは「自分の世界を見ろ」といいます。このプロートのひと言は強烈で、本作がただの娯楽作品とは一線を画しているところです。   逃避願望――それは誰にでも多少なりともあるものです。会社へ行きたくない、仕事辞めたいな、こんな家に生まれなかったら、いつか素晴らしい未来が待っている……でも、ほんとうは逃げても何も解決しないし、理想的な「いつか」なんて自動的にはこないんですよね。真の解決は「いま・ここで・ありのままの私」が真摯に生きていくしかない。本作は、押し付けがましくなくその人生の哲理を観る者に教えてくれます。   禅の教えに「衆生本来仏」という言葉があり、「ここが浄土であり、その身が仏である」と説きます。その心は、本作と相通じるものがあります。古来よりのアルカディア幻想を否定し、現実との対峙を求める本作。軽い娯楽作品の皮をかぶった哲学的秀作だと思います。プロートが「家族」にそこはかとない憧れを感じていたのも見逃してはいけないんでしょうね。レビューを書くにあたってDVDで再鑑賞しましたが、何度も観てみたいと思わせる魅力がありました。ということで、9点也を捧げたいと思います。ニートの人たちにもぜひ観てほしいと感じました。
[試写会(字幕)] 9点(2005-06-19 13:27:05)(良:2票)
72.  コンスタンティン 《ネタバレ》 
2時間超の長尺ながら、さほど時間の経過を気にすることはなく、ということは、けっこう面白かった。ラストのパラドキシカルな成り行きによってジョンが“死に切れなかった”筋書きは、一ひねりあってよかった。パート2を予感させる終わり方でもある。  突然ショッキングなシーンと大音響が飛び出して観客を驚かせる演出はやや稚拙な印象。また、お腹の中で悪魔が暴れ回るCGもよくない。剣も、もっと重厚な意味をもって“活躍”するかと思ったが、そうでもなくちょっと拍子抜け。  ルシファーは、これが大魔王サタンかとみると、えらい軽いやっちゃな~と思ってしまうが(笑)、私はけっこう気に入った。ジョンを地獄へ引っ張っていこうとするが、とてつもなく重くなり、ルシファーでさえ引きずれなくなるシーンはよかった(キアヌの腕、もげないのかなと心配したが。(笑))。  いまとなっては(たぶんアメリカにおいても)前時代的なキリスト教的思想(死んだら天国か地獄か)をここまで完全肯定し大前提としたことは、ものすごくズレてると感じながらも、それによってこの映画を完全にファンタジーの世界へ置くことには寄与したかと思う。とはいえ、「パッション」のキリスト教完全肯定とは、まったく意味合いが違い、同じキリスト教映画(?)といっても、つくり手の思想は正反対といってもいいように感じた。6点也です。激ヤセキアヌ、役づくりも大変!
[映画館(字幕)] 6点(2005-05-15 10:39:51)
73.  ターミナル 《ネタバレ》 
まずいわせてもらうと、JFK空港はあんなにきれいではない(私の知っている限りでは、だが)し、米系航空会社であんなにきれいかわいいアテンダントは見たことない(笑)。それはさておき、それなりに面白かったと思う。私も宣伝から「感動ヒューマンドラマ」かと思っていたが、実際には「ファンタジーコメディ」とでもいうべきもので、泣くようなことはなかった。ストーリーは、まさに実写ファンタジーそのもの。ありえないけれど、観ていて楽しい展開ではあった。  しかし、ファンタジー基調ながら、ポイントポイントでリアリティが顔をのぞかせる。アメリアと決して結ばせることをしなかった「運命」はその最たるもで、そこだけは映画の他の部分から切り離されて、切ないだけではなく生々しくすらあった。この描き方は賛否分かれるかもしれない。  そこで私は、唐突ながら、『もののけ姫』との対比を試みたい(以下、『もののけ姫』のネタバレ有)。考えてもみれば、アシタカとビクターの境遇は似てはいないか? 使命を胸に故郷をあとにし、異郷で美しい女性と出会う。最初は孤独だが、次第に仲間ができるのも共通する。そして、『もののけ』ではアシタカは故郷を捨て(?)、サンとともにある生活を選ぶ。対してビクターは、アメリアと一瞬クロスオーバーするも、そのまま別れゆき、故郷へ戻る。前者はどこかアシタカとサンの関係に一種の「甘さ」を残すが、後者はそこは冷厳にリアリスティックに描いた。どちらを是とするかは、これはもう好き好きの世界だろうが、間違いなくいえるのは、『もののけ』はあの描き方によって消化不良感が残り、本作はこの展開によって印象を強くした。スピルバーグの手練れというべきだろう。  にもかかわらず、私もラストは物足りず、中途半端感が拭えなかった。ということで、6点也です。ラストで1~2点は損したと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2005-05-13 00:22:23)
74.  初恋のきた道 《ネタバレ》 
1回目は父が初めて母の家に行き、「そのときの母さんはまるで一幅の絵のようだった」と語った(と聞かされた)とき。「一幅の絵のようだった」という言葉に心が揺さぶられた。2回目は髪飾りの贈り物を母がもらったとき。明らかに安物なのにこのうえない喜びようの母ではあった。3回目は父が不在中の学校の障子を母が張り替え、その障子に切り絵を貼っていったとき。さぞかし時間をかけてつくったのであろう。4回目は病の床についていた母に父が帰ってきたことが知らされたとき。母はほとんど表情を変えず、ただ大粒の涙だけ流した。5回目は「私」が父の手づくりの教科書で1回だけの授業をしていたとき。以上、最低5回、私は泣いた(家で見てよかった)。  現実には、こんな話はないかもしれない。それは分かっていても、これほど純粋に人を愛し、強い気持ちで思い続けられるとは、なんと神々しいものかと圧倒されずにはおられなかった。その人が食べるものを一生懸命につくる、その人がいる場所をひたむきに掃除する、その人が通る道をいつまでも見守る……いまでは、すぐれた既製品がたくさんあるし、掃除なんかもヘルパーさんを頼むケースもあるだろう。それはそれで便利だし否定するものではない。でも、それだけになお、その人のことを思い、心を込めて手仕事をするというのは他に代えがたい深い意味があるように思える。「愛しているよ」と口にする100のセリフよりも、はるかに真心を伝えてくれる。都会の垢にまみれたわが心を、ひととき清浄にしてくれた名作だと思う。ビジュアルも大変美しかった。  完全に術中にはまったことになるが、この映画に素直に泣ける自分がまだあったことが嬉しい。久々に10点也を捧げたいと思います。イーモウ監督、心理描写も上手じゃない!
[DVD(字幕)] 10点(2005-04-14 21:45:30)(良:2票)
75.  リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い 《ネタバレ》 
厳しい評価が多いですが、私はけっこう見られました。いや、勇気を出して正直にいうと面白くさえ感じました(笑)。吸血鬼、ジキル・ハイド、透明人間、ドリアン・グレイ……日本人にはちょっと馴染みがないけれど、ヨーロッパではたいていの人が知っているであろうヒーローたちが勢ぞろいっていうだけで、ワクワクするじゃありませんか。ネモ船長強すぎるとか、あの船でベネチアの運河をどうやって進むんだとか、そりゃまあ、突っ込み始めたらいろいろ出てくるでしょうが、この作品については、「まあ、そんなこといいじゃないか」と思えました。  (私にとっての)何よりの勝因は、やっぱりショーン・コネリーの存在ですね。そこにいるだけで作品がしまります。こういう存在感のある役者さん、貴重です。ショーン・コネリーへのオマージュという意味も込めて、7点也をつけたいと思います。でも、もしショーン・コネリーがいなかったと考えたら……お~、コワ(笑)。
[映画館(字幕)] 7点(2005-04-14 00:12:01)
76.  リディック 《ネタバレ》 
出だしで状況説明のナレーションが入ったところで嫌な予感はした。ネグロの塔の顔を見て、予感は強い疑念に変わった。それでも、「もうちょっとガマンしたら盛り上がり始めるだろう」と期待を捨てきれずに見続けた私。1時間ぐらいした時点で悟った。「この映画って、きっと最後までこの調子やわ」(遅い?)。そう見きわめてからは緊張感が解けて(というか、なくなって)、ゆる~く最後まで見ることができた。SFアクション映画だけど。途中、明治アカデミアホワイトチョコを食べながらがちょうどよい具合だと気づいた(謎)。  終始、主人公がバカっぽく見えてしかたがなかった。終始、主人公が鈍重に見えた。終始、主人公の水中メガネが気になった。灼熱の日の出からあれで逃れたことになるのか?といった突っ込みどころは、いちいちあげつらう気にもなれない。ラストのどんでん返しらしき筋書きにいたっては、まるで悪夢。笑うシーンではないのだが、思いっきり笑ってしまった。製作者は続編をつくるつもりらしいところが恐ろしい。  見終わって、さっそくここを見たら、予想通りの評価のオンパレードでなぜか安心。ついに私のレビュー初の2点也です(たしか)。DVD、新作扱いで500円も取られたのに悔いが残るわい。あ~あ、こんなに書いてしまった。。。
[DVD(字幕)] 2点(2005-04-13 22:36:06)(笑:1票)
77.  LOVERS 《ネタバレ》 
イーモゥ監督の前作『HERO』と比べると――という見方があるが、本作と『HERO』は異質。比較してもあまり意味がないのでは? この映画は、ギリシア神話以来の普遍のテーマともいえる「悲恋」の綾が、3人の主人公をめぐってどう紡がれていくか、そこに納得&没入できるかどうかが眼目だろう。その観点からすると、(後半は)なかなか練れたシナリオだった。金城クン、アンディ、チャン・ツィー、それぞれに「うんうん、オジサンはわかるぞ、その気持ち」と共感できた。また、ラストではどう“落とし前”をつけるのか最後までわからないのもよかった(悲恋が成就することはないのは分かっていても)。誰かを「悪者」に仕立て上げ、勧善懲悪で物語をすます単純な映画に比べるといいストーリーだった。  アクションシーンやさっきまで紅葉だったのにもう雪原かなど、「ありえねー」シーンは満載だが、一種のファンタジーと見れば、いちいち突っ込む必要もあるまい。また、梅林氏の音楽は素晴らしかった。  ただ、練れたシナリオだとは思ったが、見ていて「胸が締めつけられるような切なさ」といったものは感じられなかった。したがって、泣くこともなかった。「筋」はうまくつくったが、それをさらに生かす「心情」の見せ方という点では課題があるということだろう。このあたり、「悲恋」と「アクション」の両立をめざしながら、どちらも中途半端になったと指摘されてもしかたないかもしれない。チャン・ツィーの可憐さはとてもよかったということで、7点也です。邦題の「LOVERS」ってのはやめてほしい(苦)。
[DVD(字幕)] 7点(2005-04-13 18:45:43)(良:1票)
78.  マイノリティ・リポート 《ネタバレ》 
面白かった。「これから生じるであろう犯罪」を未然に取り締まるという発想、そのシステムの中核が人間の予知能力に依存するという神秘さ、3Dパネルを駆使したハイテク映像分析装置がある一方、コロンところがり出てくる木の玉のアナログさ、などなど、まずアイデアと舞台装置に引きつけられた。トム君のまるで演舞のような映像分析ダンスも、ちょっと笑えるがユニークはユニーク。  本作には、「管理社会への告発」とか「情報操作の恐怖」とかいったテーマも汲み取れるかと思うが、「不確実性に対する謙虚さ」を改めて教えてくれているようにも私には思われた。私たちを取り巻くこの世界、実はほとんどすべてのものが不確実ではないか? 自分のことは自分が一番よく知っていると思いがちだが、それはほんとうか? テレビで識者が「小泉政権の無策のせいで、不況が長引いている」というが、事実か? 好きな人と結婚できれば幸せとホントにいえるのか? 何か問題があったとして、一つの「解決」が決められれば、それでほんとうの解決になるのか? 真実はそう簡単にはわからない。なのに、私たちはあまりにも安易に物事を断定的に捉えてしまっているのではないか(←私?)――そんな警鐘が鳴らされているように思えたのだ。  不確実性を侮るのは、傲慢というものだろう。もし一人ひとりがもう少しずつ「不確実性に対する謙虚さ」をもてれば、無用な争いは減り、この世はもっと暮らしやすくなることだけは確かな気がする。ラストを見ていて、そんなことを考えた。7点也です。でも、それって、とっても難しいとも思うが。
[DVD(字幕)] 7点(2005-04-13 16:16:49)
79.  アイ,ロボット 《ネタバレ》 
総体的には楽しめる映画だったけれど、サニーの行動がよくわからなかった。どんなキャラでも、そのキャラなりの“論理”があれば、共感できるできないは別にして、行動の必然性はわかるというものだが、彼(?)の場合、どういうロジックに貫かれているのかが見えなかった。前半ではやたらとウィル・スミスたちを攻撃(あれは「自衛」ではなく、明らかに「殺す」目的に見えた)し、後半ではともにvikiの暴走を止めようとする。それがどうしてかが、わからない。なぜ“転向”したのかも謎のまま。あるとき突然、「唯一の味方」となって再登場するだけで、そこに引っかかってしまった。サニーは主役クラスのキャラだから、この意味不明度は致命傷ではないだろうか。    ロボット3原則を突き詰めれば、矛盾を起こし破綻するというところも、よくわからなかった。もうちょっときちんと理詰めで納得させてほしかった(人間を管理すること=殺すことは短絡的)。そのように、本作では肝心なところが不鮮明で、そのために鑑賞後の満足度が低くなってしまった気がする。ラストシーンはパート2への伏線、またまたロジック不明の“転向”でサニーがひと暴れしそうな予感。6点也です。※鑑賞環境は正確にいえば、「DVD(字幕)+液晶プロジェクター映写」です(他作品も同じ)。
[DVD(字幕)] 6点(2005-04-13 13:24:34)
80.  パッション(2004)
敬虔なキリスト教徒が見たら、いったいどのように受け止めるのか、というのが本作を見ての最大の関心事。メル・ギブソンは、まさにそんなキリスト教徒だそうだが、彼自身どういう意図をもって本作を撮ったのか、それがよくわからない。キリストはこんな苦痛に耐えて民衆の救済を願ったんだぞ、ということ? それとも、キリストといえども人並みに苦しみもしたし泣きもした。決して超人ではなかったと一種の親近感を伝えたかった? あるいはキリスト教黎明期の歴史を実録ふうに描くことで、改めて現在のキリスト教徒たちへ気持ちを深めてほしいというメッセージ? 作品意図が見えてこないので、本作に対する感想は、結局、「だから、何なんだ?」という戸惑いに尽きてしまう。ただ、歴史書では「迫害」という簡単な単語で説明されることの中身が、現実にはこうしたことであったろうという生々しさは衝撃的ではあった。5点也。
[DVD(字幕)] 5点(2005-04-13 11:12:54)
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